日航123便 最強真相考察

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霧発生の別のメカニズムを考えてみる
前向き11tの異常外力は何秒継続したのか
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金属腐食と金属疲労の事故例
新聞記事の客室内気圧低下の報告は誤報なのか?
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フゴイド運動はエンジン推力調整でおさまったのか?
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外部飛翔体が垂直尾翼上部に衝突した場合の予想アニメーション
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事故調の温度回復のシミュレーションをhackする

解説書によりますと、機内は約7秒で約0.4気圧の外気圧と同じになり、断熱膨張の作用によりマイナス40度以下となります。
その後は、エアコンによって機内温度は上昇します。
機内温度上昇については、こちらの解説書の図9の温度回復のシミュレーションのグラフの通りです。

このグラフによりますと、0度に回復するまで130秒、20度に回復するまで340秒かかってます。
実は、このシミュレーションというのは報告書や報告書付録には記載がありません。
2011年発行の解説書にだけ記載があるものです。
おそらく、温度上昇が速やかに行われたことを示すことによって温度低下の乗客証言が無かったことへの説明としているのでしょう。
計算式やアルゴリズムは示されていませんので、どのような条件でシミュレーションを行ったかは分かりません。

そこで、今回、このグラフと同じになるようなシミュレーションを独自で行い、処理方法を特定して問題点を明らかにしてみます。
まず、報告書や解説書からいくつかの数字を拾います。
初期値となるマイナス42度での気圧は0.393気圧です。
エアコンの流速としては4.808kg/secです。エアコンから供給される空気は1気圧で温度は25度とします。
機内体積は解説書にある1600立方メートルを使います。
1秒間にエアコンが出す空気の体積は0.393気圧において、4.808/0.393=12.234立方メートルとなります。
これは1600/12.234=130.78ですから約131秒で機内体積と同じになる量です。


シミュレーションを簡単にするために、機内の空気を131分割したブロックの集まりと考えてください。
1つのブロックが1秒間のエアコンからの空気量に相当します。
1秒ごとに1つのブロックが機外に廃棄されて、その代わりエアコンから1つのブロックが追加される。

という処理を考えます。つまり、ブロックを入れ替えます。
そして、入れ替えた後は温度の平均値で機内全体が満たされるということにします。

温度の平均は、130個のそれまでの温度と、1個の25度の温度の平均ということなので、
(130x機内温度+25)/131となります。
これで1秒後の温度が決まります。
この1つのブロックの入れ替え処理を600回(600秒)繰り返します。
では、結果を見てみましょう。次のようになりました。


解説書とおなじようなグラフになりました。
グラフを半透明にして重ねてみましょう。

完全に一致してます。
事故調の温度回復のシミュレーションを完全にhackしました。
ちなみに、厳密には機内体積は解説書の1600立方メートルではなく報告書付録の客室+コックピット+貨物室=1458.2立方メートルの数字を使うべきなのでしょうけれども、
1458.2の数字を使うとほんの少しですがグラフの曲率が変わりますので、ピタリと一致させるために1600を使いました。

温度回復と隔壁開口

エアコンがすぐに最大出力になるとも限りませんから実際はもっと回復に時間がかかった可能性が高いかと思います。
しかし、少なくとも0度に回復するまで130秒かかっていることは確かです。
乗客がそれに気が付かないことはありえません。
エアコンから1気圧の最大風量が客室に流れたとして、0.4気圧になる段階で、エアコンからの風速はさらに加速します。エアコン風量の変化には気がつきそうなものです。
酸素マスクからは冷たくない温度で酸素は流れていたことでしょう。
また、乗客の鼻や口からも体温で暖められた空気が吐かれていたはずです。
そのような温度を比較する空気が存在していたにも関わらず、0度以下を体感できていないということはありえません。

今回の独自シミュレーションで明らかになったのは、この計算では隔壁開口が一切考慮されていないということです。
報告書によりますと、2から3平方メートルの開口があったはずですから、そこから空気は機外に流出するのです。
確かに、客室の気圧は外気圧と同じになってしまっているので、たとえ開口があったとしても空気が動かないとする理論的な理由はあります。
しかし、それでは実際の状況には合わないでしょう。
実機は、ダッチロールやフゴイドなどによって激しく上下左右に揺れているのです。
機体尾部で空気の擾乱が発生し、開口部を通して内部との空気交換があったと仮定したほうが実際に合っていると思います。
開口部の後ろは機外ではなく非圧力領域とはいえ機内ですが外気温と同じになってます。
時速550kmで飛行していて、機体姿勢や高度の変化があれば、それなりに外気流入は起きるでしょう。

それでは、少しパラメータを変更してみてどうなるか実験してみましょう。
外気温はDFDR(フライトレコーダー)によりますと、約マイナス15度でした。その空気がエアコンの供給量と同じ量で流入したとします。
客室の断面積を20平方メートルとすると、エアコンの供給量は12.234立方メートル相当なので12.234/20=0.61ですから、
約60cmの客室区域の空気が1秒間で外気と入れ替わった意味と等価です。

さきほどの処理方法に従いますと、1個のブロックはマイナス15度となります。
平均温度は(129x機内温度+25-15)/131で計算できます。
結果は以下となります。

このグラフによりますと、5度以上には上がらなくなるようです。
つまり、開口部での空気の擾乱を加味した場合は、エアコンの効きが悪くなるということになります。
もう少し現実的な想定をしてみます。開口しているということは、エアコンの温かい空気が機内に留まることなく開口部から外部へ抜けていくことが考えられます。
これは、例えるなら、窓を開けた部屋ではエアコンの効きが悪くなるのと同じです。
今までのシミュレーションはエアコンからの空気の100%が客室空気と混じることを考えていたのですが、それを80%としてみます。
つまり2割のエアコンの空気が開口から抜ける想定をしてみます。
平均温度は(129.2x機内温度+25x0.8-15)/131で計算できます。
そうしますと、このようになりました。

機内は2.8度以上にはならないという結果になりました。0度に回復するまで200秒(=3分20秒)かかりました。
冷えたままの状況になります。開口しているのでそうなりますね。
あくまでエアコンは25度の空気を常に供給するという単純な前提なので、インテリジェンスなエアコンでしたら、熱量をアップさせることは可能かもしれません。
また、エアコンの空気の2割が開口から抜けるという前提も、実際はどの程度の割合が正しいかは不明なのですが、
事故調の開口を全く想定していないシミュレーションに比べるとよほど現実的だとは思います。
空気が開口部から外へ流れていくわけなので、当たり前の結果なのですが、事故調のグラフだけを信用していると気が付かない落とし穴です。
このシミュレーションの温度というのは全体の平均ですから、実際は、外気流入の影響が大きい機体後部ほど温度は低くなっていたはずです。
仮に、外気流入量がこのシミュレーションよりも小さかったとしても、生存者が座っていた機体後部の温度はあまり上がらないと考えたほうが無理がありません。

参考までに、今回のアルゴリズムの他に次のような計算式でもグラフは作成できます。(開口を考慮しない式)
celsius[n]=(25-celsius[n-1]) x 0.0077 (初期値celsius[0]=-42)
ここで定数0.0077というのはエアコンの空気量/機内体積(=1/131)です。

また、今回は600秒間のシミュレーションで初期値は-42度でしたが、
試しに、ありえないですけど初期値を-200度、気圧を0.393気圧としてもほぼ同じ曲線となりまして、600秒後には約25度となります

そんなことが本当に可能なのか不思議ですが、空気を丸ごと交換するという発想ならそれで理論上は正しいということになります。
あくまでエアコンでは内気循環はしないという前提で、すべてフレッシュな外気から取り入れる、開口は考慮しない、という前提です。
熱を加えるという発想ではなく、空気を交換するという発想です。
つまり、エアコンで冷たい空気から暖かい空気に変換する性能というのはあまり関係がなく、エアコンの最大排気量、最大風量のほうが重要ということのようです。

次に、例えば、隔壁開口が途中でなんらかの作用により閉じたとしましょう。例えば開口から3.2秒後に閉じたとしますと、報告書の基準ケースのグラフからその時は約-20度で、気圧は約0.54気圧です。
この場合の温度回復をシミュレーションしてみました。機内のほうが機外より気圧が高いのですが、開口部からの流出は考慮しない結果です。

となります。0度までの回復で100秒はかかってますから、わずか3.2秒で開口が閉じたとしても、乗客が温度低下を体感していないという実情に合っていないのです。
そもそも2から3平方メートルの穴が途中で閉じることなど不可能なのです。
ですので、事故調は開口部が途中で狭まることもシミュレーションしてますが、
報告書のグラフを見ても、開口から酸素マスクが落ちる気圧になるまで1.4秒ほどの違いです。グラフの傾きの違いは小さいです。
事故調想定の開口部が狭まった程度では温度低下もさほど変わらないことが予想できます。

温度低下の考察

ちなみに事故調の7秒で-40度以下まで達する温度低下のシミュレーションについては、隔壁開口を考慮して計算された数字になってますので、大穴が開けば急激に温度が下がるのは必然のようです。
では、気圧が下がり続けている間に、温度低下が止まることや、温度が上がることはありえるでしょうか?
報告書付録に基準ケースの与圧領域の気圧低下と温度低下のグラフがあります。

こちらが気圧低下のグラフです。分かりやすいように赤色にしてます。


そして、こちらが温度低下のグラフです。分かりやすいように青色にしてます。

この2つのグラフを時間軸を合わせて、縦のスケールだけ調整して重ねてみます。

すると、ほぼピタリと一致しました。
つまり、気圧低下と、温度低下は不可分で、かなり強い相関があることが確認できるかと思います。
それもそのはずで、気圧は、開口からの流出量および温度から計算されて、温度は、開口からの流出量および気圧から計算されるからです。
相互に計算式のパラメータになっているので、流出量、気圧、温度はそれぞれ切り離しては考えることはできないのです。
結局、気圧が下がり続けている間に、温度低下が止まることや、温度が上がることはありえないということになります。
報告書付録の開口からの流出量のグラフを示します。

これは、つまるところ、与圧領域から吐き出された空気の量という意味になりますから、
単純に、このグラフの値を与圧領域の空気量から引き算していって、気圧を計算すれば、機内気圧のグラフと同じになるはずです。計算してみました。

形としては似てます。差がありますので、少し補正します。
この間は温度低下がありますから、
温度が高い空気は軽く、低い空気は重いので、それも考慮して補正してみます。
温度については、25度から開始して、最低気圧の時に-42度と仮定してます。

事故調のグラフと重ねてみます。

かなり近くなりました。
事故調の空気の流出量のグラフから機内気圧のグラフを再現できました
言いたいことは、隔壁開口があれば、気圧低下と温度低下は同時に進行するということです。これは開口からの流出が機内が外気圧に達するまで止まらないためです。
流出、気圧低下、温度低下を止めるには穴を塞がないといけません。しかし、玄関ドア相当の大きい穴が途中で塞がることは現実的ではありません。

では、隔壁からの流量のグラフから、今度は温度低下のグラフを再現してみましょう。
報告書の計算式を参考にして、微小時間dtの間の温度低下を次の式で求めます
(γ-1)×T×(G×dt)/m
ここで、比熱比γは報告書の通り1.4で、Tが現在の温度(ケルビン)で、Gは隔壁からの流量(kg/sec)で、mが与圧領域の空気の質量(kg)です。
空気の質量mは、時間が経過するごとに隔壁からの流量分減っていく処理となります。
流量Gは報告書の流量のグラフの値を読み取ったものを使用します。
つまり、流量だけの変位で温度のグラフを作成します。温度の初期値は25度(=25+273.15ケルビン)です。
計算式の答えは温度変化なので、現在の温度から引き算すると次の時刻の温度が求まります。
その処理を8秒経過するまで繰り返し適用します。
すると、こうなりました。

これを報告書の温度低下のグラフと縦横のスケールを合わせて重ねてみます。

いかがでしょうか。かなり一致しました。
流量のグラフから温度低下のグラフはたった一つの式で作成できたことになります。

では、さらに、流量のグラフの値と、この温度グラフの値を使って、気圧低下を求めてみます。
微小時間dtの間の気圧低下は、こちらも報告書を参考にして次の式で求めます。
(γ×R)/V ×T×(G×dt)
ここで、比熱比γは報告書の通り1.4で、Tは温度(ケルビン)で、Gは隔壁からの流量(kg/sec)で
気体定数Rは報告書の通りで287.053(J/Kg K)です。Vは与圧領域の容量で1485.2立方メートルとします。
計算式の答えは気圧変化なので、現在の機内気圧から引き算すると次の時刻の気圧が求まります。
その処理を8秒経過するまで繰り返し適用します。
すると、こうなりました。

これを報告書の気圧低下のグラフと縦横のスケールを合わせて重ねてみます。

いかがでしょうか。少し違いますが、だいぶ近いグラフになりました。おおよそ再現できたと言えます。

さて、計算方法がだいたいわかったので、前述の開口が途中で狭まった場合についても調査してみます。
報告書では次のような圧力グラフがあります。開口が狭まった場合のグラフです。


条件としましては、基準ケースと同じ1.8平方メートル(縮流係数0.7を考慮すると実際は2.6平方メートルに相当)の開口から開始して、0.5秒後に開口が0.7平方メートルに狭まった想定です。
困ったことに流量と温度のグラフが掲載されていないのですが、なんとか推定してみます。
上記の圧力グラフを生成したいので、流量のグラフを変更しました以下です。0.5秒で流量が小さくなってます。


そして、この流量から計算される圧力グラフはこちらです。

報告書のグラフと重ねてみます。

まずまず似ているグラフとなりましたので、流量の想定は先ほどのグラフでいいようです。

流量から計算される温度のグラフはこちらです。

開口が0.5秒後に61%も塞がった想定なので、現実的でないほど開口が小さくなっているのですが、
このグラフからわかることは外気圧との差がある限りは機内空気は出ていくので、機内気圧は下がり続け、温度も下がり続けるということです。
前述の予想の通りで温度変化は開口の縮小があっても大差なく、計算上は-40度に達してしまう結果となりました。
開口が小さい場合は、そのぶん機内が外気圧に達するまでより時間がかかるため、温度低下の速度は遅いものの、最終的にはほぼ同じ最低温度になってしまいます。

ついでに、今度は圧力グラフから温度グラフを生成してみます。
基準ケースの圧力グラフを読み取ります。
そして、気圧P1から温度T1を計算します。次の式です。
T1=T0×pow(A,(γ-1)/γ)
の式で、pow(a,b)はaのb乗の意味です。
初期温度 T0=273.16+25 単位はケルビン。摂氏25度とします。
初期気圧 P0=98 単位はkpa
気圧を初期気圧で割った値 A=P1/P0
気体の比熱比 γ=1.4
となりまして、気圧P1に値を入れると、温度T1(単位を摂氏にするためは273.16を減算)が計算できます。
求めた温度のグラフはこちらです。


これを報告書の温度のグラフと重ねてみます。

少し最低温度が低いようなのですが、ある程度再現できてます。事故調の計算ではエアコンが考慮されているので、それを考慮していない影響もあるのかもしれません。
事故調がどのような式でエアコンの計算をしたのかはよく分かりません。
客室へのエアコン流量の最大は4.556kg/secでして、客室の体積は1128m3ですから、1.2を掛けておおよそ1128×1.2=1354kgが質量です。
エアコン空気と客室空気の質量の割合が、エアコン流量が客室に影響をどのくらい及ぼすかということの目安になります。
1気圧の時の1秒間に影響する割合は4.446/1354=0.0033で、0.4気圧ですと0.0033/0.4=0.08でして、気圧がP1ならAで割ります。P1時点の平均値を使うのでさらに2で割ります。
その平均値に時間をかけて、エアコンによる温度上昇ぶんを計算しますと、以下の式です。
(T0-T1)×(4.446/1354) /A /2×時間
これをを前回グラフに加算すると以下のグラフとなります。


再度これを報告書の温度のグラフと重ねてみます。

ほぼ完全に一致しました。
気圧から気温が求まりました。特にこの計算式は繰り返しフィードバック不要なので任意時点の気温を求める場合に便利です。
しかし、エアコンの計算式が本当にあれで正しかったのか検証してみます。
8秒後には客室は外気圧とほぼ同じになっていて、そこからエアコンの空気が入っても、隔壁開口もありますから気圧は上がりません
その前提で、8秒以降も同じ計算式で25度に回復するまで計算してみました。するとこのようなグラフになりました。
25度に回復したらエアコンはOFFとして処理してます。

これはつまり、温度低下から温度回復に至るまで1つの独自の式でシミュレーションを行ったことになります。
事故調の温度回復のグラフと比較してみましょう。

平均値を使って計算しているので曲線ではなく直線にはなっているものの、十分に近い結果です。
エアコンの計算式の妥当性が確認できました。

※このページでは、単位としてそれぞれ、m2は平方メートル、m3は立法メートル、m/sまたはm/secはメートル毎秒、の意味として表記してます。/記号は割り算の意味です。

さて、報告書では基準ケースよりもさらにもっと減圧速度が遅いシミュレーションもあります。「ゆるやかな減圧時の与圧室圧力変化」というグラフがあるのですが、

これでも、APU防火壁と垂直尾翼の両方を破壊できるとしているわけです。両方破壊できるぎりぎり限界を計算した結果です。
※APUとは補助動力装置のこと。エンジンを起動するための圧縮空気の供給、エアコンなどへの空気圧や電力等の動力の供給を担う。
開口面積は基準ケースの1.8平方メートルと比べて0.4平方メートルと小さい設定です。
ゆるやかなだけあって、客室高度警報が鳴るまでに5秒かかる結果になってます。
※「客室高度」とは、標準大気の高度で表した客室内気圧のこと
実際は爆発音発生が18時24分35.5秒として客室高度警報は1.7秒後の18時24分37.2秒から鳴っているので、5秒ですと時間的に遅すぎるため現実的ではないのです。
先ほどの開口が狭まるシミュレーションでも2.46秒ですから、間に合ってません。
基準ケースで1.7秒ぴったりくらいですから、本当は基準ケースより警報鳴り出しが遅いシミュレーションというのは行う意味がないのです。警報が1.7秒で鳴り出す事実を無視しないと成り立たないからです。
このことは解説書の次の文章で説明されてます。
「垂直尾翼及び APU 防火壁とも損壊するという圧力条件(これより内部圧力の上昇が小さいと垂直尾翼は破損しない)のもとでは、
後部圧力隔壁の開口面積が最も小さい場合は 0.4m2 となります。しかし、警報音が作動した状況等から開口面積 1.8 m2を基準のケースとしているものです。」
と記載の通りです。
少なくとも、基準ケースより警報鳴り出しが遅いシミュレーションというのは警報鳴り出しを考慮しますと、ありえないということになります。
例えば、垂直尾翼はゆっくりとした減圧しても破壊できる、から客室内で風が吹かないのは、実際は相当なゆっくりな減圧だったからだろう、なんて考えは間違いなんです。
実際のところ客室高度警報がスイッチONしてから、コンマ何秒で鳴り出すのかは報告書に記載がないので、1.7秒ぴったりでもいいのかどうかは厳密な検証はできないです。
ゆっくりで垂直尾翼を破壊できる限界が「ゆるやかな減圧時の与圧室圧力変化」なので、これより遅くはできないし、これでも風は吹き客室温度も低下するわけですが、警報鳴り出しや自動のプリレコーデッドアナウンスが遅すぎて結局仮説としては不採用なんですね。
APU防火壁のほうが垂直尾翼よりも早く脱落するので、「ゆるやかな減圧時の与圧室圧力変化」よりも遅いと、垂直尾翼内にゆっくりと空気が詰まっていくことはできなくて内圧が高まらないうちに低下します。
どの程度の減圧なのかは航空機関士が計器を見れば定量的にわかりますので、相当なゆっくりな減圧だったから、クルーが減圧に気が付かずに酸素マスクを付けなかったという理由も成り立ちません。
ゆるやかな減圧時のケースでは外気圧になるまでの時間は基準ケースと比較して15秒程度の違いしかありません。
圧力隔壁破損説ではどうやってもコックピット内が外気圧になることには変わりはないのですから、それに気が付かないなんてことはありえないのです。

ついでに細かい話をしますと、報告書には客室高度警報のセンサーについてかなりわかり難い記述があります。
基準ケースの説明で、「1.656秒でコックピット室内は、客室高度10,000フィートに相当する圧力まで減少」という記載があるのですが、
グラフをよく見ますと1.656秒というのはコックピットの丸印ではなく客室の気圧の四角印での時刻なのです。
グラフにはP1000(PS) AT 1.656 SECという記載もあります。PSの意味は四角印のPASSENGER ROOMとの記載があります。
解説書では、客室高度のセンサーは操縦室の航空機関士用計器盤の裏側に設置されていると記載がありますので、設置位置としてはコックピットなのです。

拡大して、よく見ますとコックピットの丸印で計測すると約1.84秒であることが分かります。
1.84秒ですと1.7秒を超えてしまっているのです。
シミュレーションとしては客室気圧のグラフをターゲットにして1.656秒をピックアップしているので、
客室気圧で客室高度警報がいつ鳴るかどうかを検証していて、
一方で、説明文章のほうではコックピット室内として、客室気圧での1.656秒を記載してます。
これはどういうことなのか?
「警報発生条件は、当然のことながら警報用(圧力)検出器の取付け位置の室の圧力で動く。客室高度10,000フィート警報用検出器は客室側圧力で作動すると考えた。
客室高度14,000フィート警報用検出器は、貨物室内にある。」
と報告書には記載があり、「当然のことながら取付け位置で動く」としているにも関わらず直後の文章では、「客室側圧力で動く」としていて、文章表現がわかりにくく、ちぐはぐです。
おそらく客室側圧力とは客室の気圧のことでしょう。
報告書では、「客室内気圧高度が10,000フィートになった場合、航空機関士パネルの後側下部に取付けてあるセンサが動いて同警報音が鳴り出す。」
と、「客室内気圧高度が」の記述があるので、客室気圧を検知するためのものなのでしょう。
設置位置がコックピット内なのでコックピット気圧で動作するのかと思いきや、事故調としては客室の気圧で動くとみなして検証しているのです。
ここは結構、分かりにくいので注意が必要です。シミュレーションの検証としてもコックピット気圧ではなく客室気圧で評価するのが事故調の方針なのです。
ちなみに、コックピットから、客室または貨物室への空気口の面積は報告書によりますと、それぞれ0.05平方メートルでして、かなり小さい想定になってます。(コックピットドアが開かない場合)
その小さい面積で、客室とほぼ同じ圧力カーブを描けるものなのか、いろいろと計算(後述の独自シミュレーション参照)してみたのですが、どうにも再現できなかったです。
報告書の、「客室側圧力で作動すると考えた」という表現からして、センサーが客室気圧を検知することが客観的事実なのかやや疑わしいのですが、好意的にとらえてどちらでも誤差の範囲としておきましょう。
なんだか少し煙にまかれて、ごまかされているような気がしなくもないのですが、大目にみてあげます。
こんなことは製造元のボーイング社に確認をとれば確定できることだと思うので、わざわざ不確定のままにしているのは、確定してしまうとシミュレーションとの矛盾が出てしまうからなのだと思うのです。
どちらにしても基準ケースというのは警報タイミングと辻褄の合うような気圧低下速度の想定で作られたものであって、条件に余裕がないので、
基準ケースという名称よりも、実態としては、これしかない限界ギリギリケースと名乗ったほうがいいくらいなのです。
基準ケースからほんの少し気圧低下速度が違っただけでも警報音や酸素マスク落下のタイミングと矛盾が出てしまうのです。

(天井裏だけ強風理論はアリなのかナシなのか?)
解説書によりますと、天井付近だけ強風が吹き、乗客付近には強い風は吹かなかったという趣旨の説明をしてます。
しかし、客室内気圧高度10,000フィート、貨物室内気圧高度14,000フィートとなる時刻が事故調の想定通りのタイミングでないといけないとしますと、客室や貨物室の気圧低下速度は、事故調の基準ケースの通りでなくては辻褄が合いません。
つまり、天井裏にいくら強風が吹こうとも、いくら客室後部に障害物があったとしても、そんなのは関係なく、客室や貨物室の気圧低下速度を緩めることは理論上出来ないのです。
仮に客室や貨物室の気圧低下速度が遅かったなら、事故調想定のタイミングで警報を鳴らすことも、酸素マスクを落下させることもできなくなり、CVR(ボイスレコーダー)の音声記録と矛盾が出るためです。
噴流の勢いを緩和させる障害物があったとしても、気圧低下速度を下げることは計算上できませんから、障害物があったから客室の気圧低下速度が遅く強い風も吹かなかったという話には出来ないのです。
障害物があったならどういう想定が正解かと言いますと、全体の気圧低下速度を大きくして、想定される客室の気圧低下速度が小さくなるぶんを補って、客室内気圧低下速度は結局計算値と一致するようにしないといけないことになります。
つまるところ、それは、隔壁開口面積を広げる、という話になりまして、障害物がないなら、開口面積は1.8平方メートルだけれども、障害物があったなら、隔壁開口はそれより大きい想定となる、という話に帰着します。
天井裏だけ強風理論は圧力隔壁破損説ではナシと言えます。

一応、シミュレーションで確認してみます。以下の動画では、3つの隔壁開口のシミュレーションを同時に表示してます。
青い丸の位置を客室高度センサーの設置位置とみなします。赤い部分が空気穴です。
・上から1番目 隔壁開口が天井裏と客室上部で、かつ天井裏と客室の空気口がある状態。この場合は開口からの流速を通常速度としてみます。
・上から2番目 隔壁開口が天井裏のみで、かつ天井裏と客室の空気口は少ない状態。この場合は開口からの流速は通常よりやや速くしてます。
・上から3番目 隔壁開口が天井裏のみで、かつ天井裏と客室の空気口は前方部のみの状態。この場合は開口からの流速は通常より速くしてます。
このシミュレーションではセンサーの位置での機内気圧が3つのシミュレーションでいずれも約7秒で外気圧となるように調整してます。
実際の噴流量の速度は開口面積に比例するものと思いますが、ここでは開口面積ではなく、流速を調整して合わせてます。

このように、客室高度センサー位置での気圧降下速度を同じにした場合には、どの想定であっても客室後部の気圧低下速度にあまり違いはなく、結構速くなっていることが分かります。
隔壁開口が天井裏のみの位置であっても、開口時の瞬間的で爆裂的な風は客室には吹かなくなるかもしれませんが、7秒間ではそれなりに強い風は吹きます。
つまり、解説書のような、障害物があったから、とか、天井付近での開口だったからとか、そのような条件には関係なく、客室後部の気圧低下は速いですし、(遅いなら、客室高度警報のタイミングが実際より遅くなる)
気圧低下速度が速いなら、体感できるような強い風も吹くと考えるのが妥当なのです。
報告書の客室と貨物室の気圧低下グラフにほとんど差がなかったことを思い出してみてください。
例えば、あのグラフにおいて客室と貨物室をそれぞれ天井裏と客室に見立てて思考実験をしますと、
天井裏だけに隔壁開口があった仮定となりますが、すると客室の気圧降下は天井裏の気圧降下に追随することが理解できると思います。
ついでに、圧力隔壁破損説において、隔壁開口部からの流量グラフから客席後部での風速を求めてみます。
計算を簡単にするために、下図の0.5秒から6.5秒までの緑色に示した範囲の6秒間で考えてみます。
この間のグラフはほぼ直線です。

0.5秒の時には240kg/secで6.5秒の時には10kg/secとしてみます。
単位をkg/secからm3/secにしたいので、空気密度の1.22を掛けます。
そうしますと、0.5秒で292.8m3/secで6.5秒で12.2m3/secとなります。
客室後部の胴体断面積を20平方メートルとしますと、客室後部での風速は20で割って、
0.5秒で14.6m/secで6.5秒で0.6m/secとなります。
この風速というのは1気圧相当での風速ですから、普段地上で感じる風速と体感としては同じという意味です。
14.6m/secというのは、例えば傘をさしても反対方向に曲がるくらいの風速です。
平均でも7.6m/secですので、風として体感するのに十分ですし、
さらに客室後部天井付近が破壊されていたとしますと、0.5秒までの区間では、上図のグラフから考えてみましても、かなり強い風が吹いた可能性が高いです。
しかし、実際にはそのような証言はありませんので、隔壁開口の前提が間違いなのです。


圧力隔壁破損説を支持しつつ、現実では基準ケースよりゆっくりな客室の減圧だったのではないかと想像している人も多いです。
それの科学的な説明が出来ているわけではないのに、なぜかそのようなことを信じているようです。事故調すらそんな説明はしていないのに勝手にゆっくりな減圧がありえると思い込んでいるのです。
おそらく客室が-40度になるのがありえないと心の中で思っていて、どうにかしてとりつくろう必要があるからだと思うのですが、科学的に矛盾していることに気が付いていないのです。
ゆっくりな減圧では客室高度警報のタイミングとずれる、垂直尾翼の破壊ができなくなる、という矛盾が起きます。事故調の計算すら無視していることに気が付きません。
事故調は-40度になったことを一切否定してませんし、-40度以下からの温度回復をシミュレーションしているくらいなので、実際に起きたこととして扱っているのです。
-40度になるのは単なる理論値で、実際は大きく異なっていたとするなら、もはやそれは事故調の圧力隔壁破損説ではありません。完全に別の説ですから反事故調派を自認したほうがいいでしょう。

例えば、理論値は乾燥空気での計算であるけれど、実際は湿潤空気で考えるから温度低下が半分程度だという理屈もその類です。
どうやら気象学の法則を持ち込んでいるようなのですが、機内には適用できません。
湿潤空気で温度低下が半分程度というのは大気中の雲と空気を分けて考えた場合の、空気だけの温度のことです。
しかし、機内では霧も空気も一緒に混合した空気として扱うべきです。水分だけ取り去ることはできません。
気象の場合は、(湿った大気)は熱エネルギー的に等価な、(乾燥した大気)+(雲や雨)と分けて考えることが可能なので、まるで違う条件なのです。
室内のような空間ではエネルギー保存則により空気+霧の持つ総熱量は、霧があっても無くても同じと考えたほうがいいのです。
霧として空気中の水分が凝結してもしなくても、室内の総熱量は同じだからです。
エネルギー保存則は事故調の与圧空気流出の数値シミュレーションの式に含まれてます。それを使わないなら事故調の計算は間違いという意味になってしまいます。
微視的に観察すれば厳密には水分の含まない空気の温度と、霧の水滴の温度は異なりますが、実際は混じっているので混合空気として平均で考えればいいのです。
霧の発生場所が局所的であるなら分けて考えられますが、特に圧力隔壁破損説では機内で一様に気圧低下があるため、一様に霧も発生する前提なのです。
気象学を無理やり室内に適用するような考え方をもっともらしいと思ってしまうと真実が見えなくなりますから注意が必要です。 仮に、霧発生時に空気中の熱量が増すのだとしたら、そのぶん霧がかなり濃くならないと辻褄は合いません。
それだと機内は水滴でびしょびしょになりますね。ここで水滴というのは大気でいうところの雨に相当します。
そして、肌に霧の水滴が接触すれば、風も吹いてますし、蒸発して気化熱により肌から熱が奪われて、体感温度はかなり低くなります。
しかし、実際は霧は薄かったのです。体感温度も低くないのです。
気象現象を室内の計算に使うことは不適切です。水分の温度は下がり、空気の温度は上がるとしても、別々に扱うことは出来ません。
圧力隔壁破損説では、室内で霧と空気を実際は分けられないという当然の事実を無視しないと成り立ちません。
計算上では、霧に変化する凝結のための最大熱量を考慮すれば、確かに温度低下は半分程度となりますが、しかし、それはあくまで乾燥した理想気体のみの話です。
-40度になるのは単なる理論値、という文脈なら、霧を含めた空気で説明しなければいけないのに、それを理想気体で語るのは間違いです。
結局、空気の温度低下が半分程度とするなら、温度との相関が高い機内気圧低下も半分程度という理屈になりますから、
そうしますと、開口からの流量が不足しますし、
機内の気圧低下が遅くなるということは、客室高度警報の鳴り出しタイミングに間に合わなくなるのです。
辻褄を合わせるには事故調の計算式を否定するしか無くなるのですが、つまりそれは圧力隔壁破損説の否定に他なりません。
ここで誤解ないようにお願いしたいのは、実際の状況で、急減圧があった場合に極端な温度低下が必ずある、というのが正しい、と言っているわけではないです。
圧力隔壁破損説が正しくないのなら、実際には極端な温度低下がない、としても矛盾はおきませんし、本当はそれが正解なのかもしれないです。
極端な温度低下があるのが、正しいのかそれとも間違いなのかは不明です。
しかし、事故調の圧力隔壁破損説が正しいという前提の場合は、必ず極端な温度低下が発生します。そういう計算モデルから導出された説だからです。
あくまで圧力隔壁破損説が正しいのなら、という条件の上での論理です。

このように報告書を支持しているのに、報告書と異なる理屈を主張する例は他にもありまして、例えば、解説書では、隔壁開口から噴流が出る空気の力だけで前向き外力12tの力が発生するといった事故調とは全く異なった主張をしている書籍を参考に引用してます。
事故調説との違いにも矛盾にも気が付かずに検証したつもりでいるので困ったものです。APU防火壁を破壊脱落させないと外力は発生しませんから、隔壁から空気が噴出しただけで外力が発生するわけがないのです。
他にも、11tの前向き異常外力の計算で、脱落した尾部の重量を実際とは数倍異なる数トンと見積もって妥当だという主張まであります。
脱落した重量は正しくは垂直尾翼を含めても1361kgですし、報告書ではBS2658以降の胴体部分の分離で11トンを記録したと記載しているので、
BS2658というのはAPU防火壁の位置でして、BS2658以降というのは垂直尾翼は含んでいないですから、そうしますと、せいぜい600kg程度ですから、全く違う重量を見積もっているのに妥当としているのです。

結局、検証をする前から、肯定することが決まっているので、どんな計算結果であろうと正解にしてしまうのです。
なぜこのような報告書と異なる理屈を、報告書を肯定する人達はほとんどもれなく主張しているのか?
不思議な逆転現象です。報告書が正しいのだったら、そのままの解釈でいいはずで、わざわざ別の理屈をつける必要がありません。
報告書そのままの解釈だと、矛盾が起きてしまうから、自己を正当化するために、小手先の理屈で納得しようとしているのです。
正しいと信じているのでしょうけれども、間違いですし、事故調の主張でもないのです。
科学的追求をする時に、組織や個々人の権威やプライドは邪魔でしかありません。根本が間違っているから矛盾が起きるということを認めることができる人が多く出てくれば再調査にも繋がると思います。

実際問題として、事故調の流量、圧力、気温の計算式は断熱膨張の理想気体を扱うものであって、外部との熱のやり取りもないし、破壊の仕事も考慮されてないし、障害物もない前提です。
計算式だけを見ますと実際とは乖離している可能性も高いわけですが、唯一、乖離を吸収するためのパラメータとしては縮流係数を使ってます。
もしも、縮流係数だけでは実際との乖離を吸収できないのであれば、断熱膨張を前提とした計算モデル全体が間違いという話になってしまいます。
本来は、このような数値シミュレーションというのは、実際の試験機を使って得られたデータと比較しながら、計算モデルを調整して構築検証すべきなのです。
予算や時間が無いから計算モデルの調整ができなかったとするなら、その計算結果は参考程度であって、覆されないほど正しいとする根拠はないのです。
そもそも論としては、客室高度警報は鳴り出してから約1秒で停止しているので、停止したのは機内が加圧された確固たる物証なので、
その証拠に従うなら、事故調の与圧空気流出の数値シミュレーションのすべては意味を為しません。
圧力隔壁破損説が破綻しない条件とは、風を感じていない、温度低下を感じていないという乗客証言を無視することに加えて、客室高度警報停止の証拠を無視すること、なのです。
急減圧はほんの一瞬だけあったとする説のほうが証拠、証言に基づいた科学的な解釈をしているのです。
例えば、仮に、急減圧や温度急低下や強風の証言があるのなら、警報停止が故障のせいである可能性もワンチャンあるかもしれませんが、
証言も考慮すると、急減圧は一瞬だけだったとしたほうが矛盾がないので、警報停止は故障のせいではないのです。警報はその後再び鳴り出しますが正常動作してます。
警報停止を証拠としないで、なにを証拠にするのでしょうか。ご都合主義と批判されても仕方ないのではないでしょうか。圧力隔壁の破断面よりもよっぽど強力な証拠です。
事故調説を擁護する意見として、圧力隔壁に開口があったことは間違いないから、警報停止は誤作動だ、という論理があります。
また、-40度になったという証拠も証言もないから、圧力隔壁破損説は正しいが実際は−40度にはなってない。と、理論を超越した主張まであります。
さらに、圧力隔壁開口しかありえないから、圧力隔壁破損説が正しいという論理もあります。こうなると、もはやこれはナントカ構文ですね。
これらは全て仮説が正しい前提からの、仮説と矛盾する証拠を否定する論理です。ナンセンス極まります。考え方が科学と逆になっているのです。仮説は証拠を説明できるものでなくてはいけません。
報告書では外気圧と客室との気圧差8.6psiの想定の他に実は4psiの想定もしていて客室温度は-15度までしか下がらないとしている、だから風も吹かない、とかいう何と何を混同して勘違いしているのかもよく分からない主張もあります。
垂直尾翼の破壊試験で4psi上昇で破壊可能という結論から4psiという数字を出しているのかわからないのですけど、4psiの差圧で隔壁が壊れるとかいう想定は事故調はしていないですし、圧力隔壁を挟んだ差圧というのは客室気圧と外気圧の差と決まっているわけだから、それ以外の想定をする理由もないです。
外気温が-15度なので、後部から空気が抜けた場合に客室内が外気温までしか下がらないという理屈なのか、垂直尾翼の耐圧を超える程度に客室から空気流出すれば、あとはアウトフローバルブが閉じれば客室気圧はある程度保たれる、というような話なのか、まったく事故調の圧力隔壁破損説とは違う主張です。
どうやら、減圧速度が2段階で、1段階目で垂直尾翼は破壊されて、2段階目で客室内での気圧低下はとてもゆっくりになるという理屈のようなのですが、開口面積が変化する事故調シミュレーションをもっと極端にしたような説ですから、そんな想定は報告書にはないのでやはり事故調とは別の説ですね。
どのような主張なのか事故調計算との矛盾が多くてわからないのですけれども、仮に4psiというのが客室気圧から減ずる気圧の大きさだとしても、4psi=28kpa下がると、70kpaくらいになったという話になりますが、ちょうど客室高度警報が鳴り出すくらいの気圧なので、酸素マスクは落下しません。
根本的に誤解がありそうなのは、客室気圧から減じた気圧と、垂直尾翼へかかる内圧上昇がイコールと考えてそうなところです。違いますからね。同じならシミュレーションいらないです。
酸素マスクが落ちるには5.4psi=37kpaくらいの減圧は必要でして、ちょうど60kpa時点くらいです。開口面積が1.8m2なら風は吹いてしまいますし、開口面積が0.4m2なら警報鳴り出しも酸素マスク落下も遅すぎます。結局4psi程度の減圧ではどうにも辻褄は合わないのです。
ですので、仮にAPU防火壁と垂直尾翼を破壊するまでだけが1段目の減圧速度だったという主張の場合でも、その時点は開口面積1.8m3の場合は0.3秒くらいということになり、開口が閉じるわけないのですが、それでも、それ以降がゆっくりな減圧だとしますと、やはり、酸素マスク落下が遅すぎます。
2段階の減圧速度になる根拠についても認識が間違っていて、そもそも、事故調解析でも2個のアウトフローバルブは常時閉じている設定でシミュレーション(実際の指示器は右が全閉で左が25%開)してます。アウトフローバルブが閉じたから気圧が保たれるというのは理屈も計算も成り立ちません。
それを知らないだけなのか、無視しているのか、ごまかしているのか分かりませんが、圧力隔壁破損派生説ということでしたら、せめて既存の計算式を修正する正しい計算式が示されないと事故調説未満でしかないので、説得力がないです。
話だけで根拠が薄いですし、2段階とは言っても途中で客室が加圧にふれることはないわけですから、客室高度警報は異常動作して停止したという苦しい前提もそのままのようですので、別にそれが本当に正解の可能性が高いと思っているのなら再調査でシミュレーションをやり直して報告書を刷新してほしいものです。
ややっこしいことに、事故調説との違いに気が付いているのか、いないのか分からないのですが、このような説を事故調査報告書を肯定する人たちが支持してます。
なんでもいいからとにかく原因を圧力隔壁破損にできればそれでいいという考えなのかもしれませんし、事故調説と矛盾するにも関わらず中身を評価しないで事故調説と勘違いしているだけかもしれません。
報告書に不信感を持つ多くの人たちも、このような説を事故調派の主張だと勘違いしているので、互いに勘違いの複雑な状況になってます。
個人的には事故調の説の間違いを指摘して再調査へもっていくのが本筋だと思っているので、本音を言いますとこのような事故調亜種の派生説へコメントすると議論がこんがらがって面倒になるだけなので、あまりやりたくないのです。
事故調査報告書とずれている意見に対して批判しても、タイムパフォーマンスが悪いというか、向かう方向が違うというか、的外れになってしまいます。
しかし、いかにも事故調査報告書準拠でそういう解釈も可能かのような誤解が広がるのも困ったものだなと思います。
このような事故調派生説を支持することは、もちろん個人の自由ですけれど、事故調査報告書と矛盾がありそれらを無視しないと成り立たないので、報告書の多くの部分を否定するのと同じことですから、それは理解しておいたほうがいいです。


話を戻します。
警報器が一時的な故障や誤動作する再現実験はされていないので、警報器が正常だったとすると、減圧が仮に一瞬であっても急減圧に相当する減圧速度が必要なのは確かです。
では、一瞬の急減圧だったとして、その時にも温度急低下や強風が発生するのではないかと疑問に思われるかもしれません。
圧力隔壁破損説の場合は、外気圧まで低下することが避けられないため、ほぼ一様に機内全体で気圧低下があるのですが、
一瞬の急減圧の場合、場所によって異なる圧力分布になります。低下した圧力が均一になる前に加圧が始まるからです。
極端な話、センサー付近だけに急激な気圧変化があったとしても成り立つ説です。
事故調想定の断熱膨張とは異なるので同じ計算式を使った結果にはなりません。従って、温度急低下や強風が発生しないこともありえますし、霧が発生することもありえます。

客室高度警報が鳴り出してから約1秒で機内が加圧されたとすると、酸素マスクが落ちて、緊急放送は開始されて、さらに客室高度警報が停止するのでしょうか?
酸素マスクは客室高度14000フィート相当に気圧が下がると落ちます。その時点で酸素マスクが落ちますし、同時に緊急放送の再生が開始されます。
客室高度14000フィートまで気圧が一瞬下がってから、気圧が上昇に転じて客室高度9000フィート程度まで回復すれば警報停止となります。
緊急放送の再生開始時刻というのはCVRに音が記録されていないので、報告書では音が記録された時点から逆算で推定していて、
緊急放送の再生開始時刻は18時24分38秒ごろと推定してます。
つまり18時24分38秒ごろに客室高度14000フィート相当に気圧が下がり、再生が開始されれば矛盾は起きません。
例えば、客室高度警報開始の0.5秒後の18時24分37.7秒に再生が開始されたとしてみましょう。
一瞬の急減圧後に加圧されたと考えてみます。
客室高度10000フィートから14000フィートまでの減圧に0.5秒、さらに
客室高度14000フィートから9000フィートまでの加圧に0.5秒かかった、つまり警報が鳴っている時間を1秒間と仮定しても辻褄は合うのです。

事故調の圧力隔壁の開口により外気圧に達するまで空気が流出するという圧力隔壁破損説は、はじめから警報音停止の物証を無視したゴリ押しということです。

以前の動画では、APU故障からの気化燃料爆発説で、非与圧領域で爆発により2段階の加圧と減圧があったと仮定した場合に辻褄が合うという検証をしました。
非与圧領域での気圧乱高下がエアコンダクトや隔壁の小さいクラックなどを通して与圧領域に影響をおよぼしたという前提です。
客室気圧がどのように変化するのが適切なのかというグラフを示します。手書きのスケッチです。

赤線のグラフは事故調の基準ケースです。
黒線のグラフが気化燃料爆発説から導き出した客室気圧の予想グラフです。以前の動画では1回目の爆発で客室気圧はまだ影響せずに負圧がかかった時に影響したという設定でしたが、今回の図は初めから影響したという設定です。
そのあたりはいろいろな設定がありえます。
非与圧領域での爆発と負圧による圧力変化はこれよりもかなり極端になっていたという想定です。
少し酸素マスク落下が時間的に早いのですが、実は警報音が1秒きっちりとは決まっていないので、もう少し長い設定であれば合いますし、曲線の曲率も途中で変化していた可能性もあります。
また、警報音と酸素マスク落下(プリレコーデットアナウンス)のセンサーは別々なので、圧力変化が局所的に異なるとすると、厳密にはグラフ自体を2つに分けるといいのかもしれません。ここでは分かりやすく1つにまとめてます。
そんな都合よく2か所のセンサー位置で同じような局所的変化をするかという指摘もあるかと思うのですが、実は、それほど変なことでもないのです。
報告書では警報音のセンサー位置はコックピットとしていて(客室側気圧を計測)、酸素マスク落下のセンサーは貨物室としてます。
貨物室のどこなのかは明記していないので、情報を探しましたら、どうやら機体前方部分の貨物室内右壁に酸素マスクと連動するフローコントローラなるものがあるようですので、それのことだとしますと、
どちらのセンサーも同じ機体前方ということで、位置的には近いことが分かりました。
局所的気圧変化だとすると、どちらのセンサーも前方位置ということは生存者のいた後方位置とは異なる気圧変化だったとしても矛盾はありませんし、
乗客証言からしますと、前方に霧が見えたということのようですから、前方だけ一時的急減圧だったという可能性もあります。一方で、圧力隔壁破損説ではほぼどこの位置でも一様に減圧しますからそんな想定はできないです。
爆発時に燃料のケロシンが燃焼して化学変化により水蒸気が生成されます(飛行機雲と原理は同じ)。その空気が混じれば霧の発生は事故調が予想する露点温度以下にならなくても発生しますし、2度目の加圧で数秒で消えます。
爆発時に負圧がかかるというのは一般的に知られた事実でして、以下で参考URLを示します。
簡単な圧力変化のグラフが掲載されてまして、爆発後に負圧になることがわかります。
Wikipedia 爆風

消防庁で、開口のある建物内でのガソリン爆発のシミュレーションの以下の資料があります。場所によって圧力変化がかなり異なるという結果でして、加圧も負圧も繰り返し出現してます。p37 Case7のグラフ参照(横軸が時間で、縦軸が圧力です。)
危険物保安に関する技術基準の性能規定導入・促進に係る調査検討報告書 2.2 放爆構造について

参考にガス爆発の動画リンクを貼っておきます。
2024年7月18日にマンションの一室でガス爆発があり、ベランダや壁が破壊されて、爆音とともに爆風が吹き出す映像があります。現場の映像では部屋内も破壊されていますが、火災の広がりはほとんどなさそうに見えます。
周囲を走行していたドライブレコーダーが捉えた映像です。運転手は窓を閉めていたが、耳がツーンとした、と語ってます。
TBS NEWS DIG Powered by JNN ガス爆発のニュース映像

「どかーーん」という音、「バゴーーン」という、「音の大きさ的にはすごかった」という証言があります。
日テレNEWS ガス爆発のニュース映像


今回考察しました計算方法を振り返ってみますと、
流量から温度を求めてその値を使って気圧を求めたので、結局のところ流量のグラフがあれば、機内の気温も気圧も求まるということです。
報告書に掲載されている式はかなり複雑な表記がされているのですが、やっていることは本質的に同じはずです。
圧力隔壁破損説では、隔壁からの流量が肝になってます。
APU防火壁や垂直尾翼を破壊できる流量を確保して、さらに客室高度警報や酸素マスク落下を想定時間内とするには、どうしてもグラフの流量変化が必要だったのです。
基準ケースというのは、警報音、酸素マスク落下のタイミングにピッタリ合うようにシミュレーションを行ってグラフが作られたというのは明らかです。
物的証拠から開口が2から3平方メートルとしたわけではなくて、開口の大きさは逆算して求めていると考えられます。
なぜなら、偶然ピッタリのタイミングでのグラフとなるシミュレーションができるわけがないからです。
試行錯誤して得られたうちの、都合の良さそうなグラフから、逆算したと考えるのが妥当です。
ですので、普通に考えれば、修理ミスのあった場所付近だけに開口があったとしたほうが現実的ではあるものの、それでは開口面積が足りないので、
まったく関係のない部分も連鎖破断したことにして開口面積を作ったということが想像できるのです。
開口部が修理ミス付近だと都合の悪いこともあります。修理ミス付近の高さは客室上部なので、その位置では客室に強風が吹いてしまうのです。
そのように修正した図は解説書に記載されてます。まるで修理ミスの位置には開口が無かったかのような図になってます。
なぜ印象操作だと断言できるのかと言いますと、解説書と構図の同じ図が解説書の参考図書に掲載されているからです。参考図書では客室上部にかかる穴の位置が描かれてます。
つまり、意識的に解説書では穴の位置をもっと上に移動させて描いたことは明白です。
真実は逆だと思います。APU防火壁のほうから爆風が発生して圧力隔壁に到達したのではないでしょうか?
そう仮定しますと、隔壁の上半分のほうに集中して破損があったことにも必然性がありますし、客室にも強風は吹きません。

隔壁の折れ曲がりと傷

隔壁には傷がありました。報告書p37「折れ曲がりの延長線とほぼ一致する浅い当たり傷がL12補強部からL16補強部にかけてウェブの表面にあった」、つまり何かが隔壁後方からぶつかったということではないかと思うのです。
隔壁図に、当たり傷を報告書の説明通りに赤線で描いてみました。

内部から空気が噴出して隔壁が折れ曲がった場合に、どんな想定だと折れ曲がりの延長線上にこの当たり傷が付くのでしょうか。何と当たったのでしょう?折れ曲がりの谷の部分の延長線上です。思いつかないのですけど。
この当たり傷というのは、本当は折れ曲がりと同時に発生したと考えるが自然だと思います。おそらく折れ曲がり自体の筋にも同じく何かが同時に当たったと見なすのが正しい。
もしくは、以前の動画でもやりましたが、後方から隔壁を押して凹んだ後で、元の形状へ戻ったら傷のような跡がつくのかもしれません。
事故調想定では折れ曲がりは非与圧側から見て山でなくて谷なのだから、その延長線上に当たり傷がつくということはどう考えてもありえなさそうに思えます。
折れ曲がった後に、傷が折れ曲がりの延長線上に生成されたとは考えにくいです。
また、折れ曲がりの円弧は2つの半径があり、小さい半径ほうの折れ曲がりの延長線上には、水平に伸びるL18接続部に直行する亀裂があります。しかも、それは下側半分の隔壁でも少し発生してます。(図の青丸で囲った部分)
丁度、修理ミスの端の部分の位置ですから、上半分の隔壁と下半分の隔壁のL18接続部の同じ位置から亀裂が上下方向に同時に発生したと考えなくてはいけません。
水平に伸びるL18接続部が破断してからですと、上下の隔壁は分離しているわけですから、同じ位置に亀裂が生成されるとは考えにくいからです。
事故調の想定では、その亀裂はL18接続部を上下方向へ引っ張って破断した結果ということだと思います。つまり折れ曲がりは亀裂生成よりも後で発生したことになります。
それなのに、なぜ、その上下の亀裂が折れ曲がり円弧の延長線上に位置しているのか?
本当はL18接続部が破断する以前に、先ほどの傷と同様に、上下の亀裂と折れ曲がり円弧が同時に生成されたからだと思うのです。事故調想定ではこの生成手順はありえないです。
なぜなら、事故調想定の場合は、L18接続部が破断していない段階で折れ曲がることは不可能だからです。L18接続部が隔壁中心のコレクタリングまで破断して、さらに破断が上方向に延伸してから、空気噴流で折れ曲がったとみなす必要があります。
事故調説に従った場合に、直線的に破断した部分というのが内圧で破壊したところで、直線的でない破断は墜落時のようなもっと強い力で破壊されたところ、という解釈をするという話があります。
しかし、例えば図の黄色の部分は直線的に見えますけれども。直線ではないのでしょうか。そんな単純な分け方が出来るものなのか疑問です。
事故調としても折れ曲がりがどのように生成されたのかは苦心の跡が見えます。

報告書p106を読み解きますと、隔壁中心からミカンの皮のように捲れたあがった部分が、天井であるBS2412の胴体のフレームに衝突して折れ曲がりが生じた、としているようです。
やはり、事故調は破断後に折れ曲がったとするしかないわけですが、空中を折れ曲がり支点にするわけにもいかないから、BS2412の胴体のフレームに衝突した位置を支点とみなすことにしたようです。
しかも、衝突したのは円弧の丁度鉛直方向へ捲れるほんの一部分だけ(120度の円弧の範囲のうちの扇形7度)という図解になってます。衝突した扇形7度より非与圧側からみて時計回り方向30度の折れ曲がりは一体化しているから扇形7度と一緒に捲れあがる必要があります。
半時計回り方向83度の円弧は断裂を隔てているので、断裂を越えて折れ曲がりが円弧として波及するというのは意味不明です。断裂後でなければ、折れ曲がるのは不可能だからです。
解説書の開口断面の図とも違ってます。で、さらにその天井に当たるほど折れ曲がった角度がなぜかほぼ元の形状に戻ったと。アクロバティックすぎます。
一応、補足しておきますと、報告書では天井とは書いてないです。だったらどこにぶつかったの?という答えはどこにも掲載されてないです。図から検証すると天井にぶつかったと解釈するしかなさそうです。
胴体断面は丸いのだから、扇形7度以外の部分は胴体フレームに当たらないのでしょうか。
仮に上図のように折れ曲がったとするなら、隔壁が胴体と接している根元から折れ曲がったことになり、根元付近から衝突しているわけだから潰れるだろうし、開口が大きくなりすぎてます。
そもそも開口面積が足りないから、120度の円弧で折れ曲がったという論理だったわけで、根元から折れ曲がるなんて前提は無かったのです(解説書の図)。根元から折れ曲がったのではないとすると、BS2412の胴体のフレームは、はじめから隔壁と接触していたという話になってしまいます。

根元から曲がるとこんな感じになりますけど?これでいいのでしょうか?まったく自信ないです。報告書が支離滅裂でよくわからないです。
報告書を信じる人の意見ではどうやら根元からは曲がらず、折れ曲がりの位置からのみ曲がるということなので、とりあえずそのように作図しますと、

となり、天井に当たるために曲げますと、とんでもない角度になりました。この角度が戻ったというものありえないし、そもそもBS2412に衝突したから折れ曲がりが生じたという話だったのが、曲がったから衝突したという謎の逆の話になってます。
しかも、解説書p9「図8 後部圧力隔壁の開口部の例(左から見た断面図)」とは曲がる角度が全く違います。矛盾だらけなのです。

報告書の計算結果から推定されるありえない機内状況を、どうにかしてありえそうな話になるように2011年発行の解説書で説明してますが、納得出来るものではないです。
乗客は気温低下も風も感じてませんが、事故調としては噴流の流量確保を第一に考えたので、
機内の温度低下や、圧力低下により吹き抜ける風については、二の次で、客室内がどんな結果になろうとも仕方がなかった、というのが本当のところでしょう。
隔壁開口の前提で凝り固まった事故調査というものが科学的とは思えません。

温度回復のシミュレーションが意味すること

話を解説書の温度回復のシミュレーションに戻します。
温度回復のシミュレーションにおいて、開口部からどの程度の外気流入が適切かは分かりませんが、少なくとも最後部付近の乗客には外気が降りかかったと考えるほうが無理がないでしょう。
それも感じず、温度の最大67度(=25+42)の振れ幅の低下も、上昇も感じないということは、
事故調のシミュレーションの前提である圧力隔壁開口が本当は無かった、もしくはかなり小さかったと考えるべきです。
少なくとも、事故調は温度回復において開口を無視してました。それは今回明らかにできたと思います。
解説書では「基準ケースにおける温度回復の簡単なシミュレーションを実施した」とあります。
ですので、開口を考慮した厳密なシミュレーションではなかったということでしょう。
しかし、その重要な条件を明示しない理由はなんだったのでしょうか。基準ケースにおける、と書かれていると、開口も考慮していると勘違いする人も多いでしょう。
解説書にグラフの計算方法を示さなかったのは、あえて勘違いされたかったからでしょうか。
それとも、あまりに単純すぎて、突っ込まれるのが目に見えていたからなのかもしれません。
hackしてしまえば、実に簡単な処理だったとわかるのです。流体や熱力学の専門知識など不要でした。
事故調査報告書を作成した時点では温度回復のシミュレーションは行っていないのです。それがはっきりしたと思います。
温度回復のシミュレーションは解説書による後付けの言い訳の材料でしかなく、事故調査では考慮されていなかったのです。
そう考えますと、なぜ-40度以下になるありえない圧力隔壁破損説が、まかり通ったのかというのも納得できます。
乗客証言との整合性をとっていないからです。
生存者4名の服装は救助時点で確認しましたところ全員が半袖です。そのうち未成年者2名は半ズボンのようなショートタイプのものをはいてました。
飛行中もおそらく同じような服装だったのだろうと思います。
そのような夏服の服装で-40度以下になっていたなら、当然ながら寒かったというような証言が出てこないと不自然です。圧力隔壁破損説では乗客証言との整合性がとれません。
整合性をとろうとしたのは解説書作成の時点です。ここをごまかしてはいけません。報告書作成の時点では整合性はとっていないのです。
報告書作成時点の事故調にとって、温度低下を感じられていない乗客証言というのは新事実だと言えます。
新事実が明らかになっているのだから再調査しないといけません。

霧発生の別のメカニズムを考えてみる

霧は機内の気圧低下により発生するというのが事故調の見方ですが、急減圧がなかったら、霧は発生しないのでしょうか。
実際の例で確認してみます。
東南アジア発の航空機ではたまにあることなのですが、湿度の高い地域から飛び立つ時に、霧がもうもうと発生することがあります。
機内が離陸前に高温多湿になっていて、エアコンの冷たい空気が流入すると、温度が下がって、空気中の水蒸気が凝結して霧になるのです。
要するに、なんらかの湿度が一時的に高くなる理屈(例えば、気化燃料爆発による水蒸気生成、ブリードエアの除湿機能の動作不良、外気流入、など)があれば、
事故調が主張する7秒で外気圧まで低下するような急減圧がなくても霧は発生しますし、事故調の想定する露点温度よりかなり高くてもいいのです。
それこそ、隔壁に大穴があいたなら、隔壁付近で外気と機内空気が混合して常に客室後部で霧が出ていたことでしょう。
機内の空気が外部に漏れていたのは確かです。2度目に鳴りだしていた客室高度警報は18:47:28秒に停止してます。これは高度計の9000フィートあたりのタイミングと一致してます。
また、客室高度警報の停止は少なくともその時点では正常動作していた証拠にもなってます。(一時的故障は確率的にきわめて低い)
2度目の警告停止の意味としては、その頃には外気圧と機内気圧が一致していたということです。
ですから機体に破損があって空気漏れしていたのは確かなのですが、破損が必ずしも隔壁開口である必要もなければ、大穴である必要もありません。
異常事態発生時に一時的な減圧後(場所によって圧力分布にはむらがあり、霧が部分的に発生)、ある程度回復し警報が停止して(霧が消える)、
その後、ゆっくりと再び減圧して外気圧まで低下したというストーリーが最も考えられることです。
その場合、どの時点で外気圧まで低下したのかは、はっきりとは分かりませんが、事故調の想定する24000フィート航行時ではなく、例えば12000フィート程度の航行時という可能性が出てきます。
機内気圧と外気圧との差が小さくなると空気の流出速度は小さくなるので、エアコンからの供給速度と釣り合って12000フィート程度で気圧低下が止まった可能性があります。
よく、機長や一部の乗客に減圧の低酸素症が出ていたとして、それは事故調の想定する急減圧の証拠かのような論調があるのですが、
それは、事故調説しかありえないとバイアスがかかっているから、そのような間違った思考になるのです。
1度目の一瞬だけの急減圧や2度目のゆっくりとした減圧であっても症状が出ることはあると思いますから、客室高度が24000フィートになったという話にはならないのです。
そもそも、低酸素症になっていたという事故調の推定にもかなり疑問があります。
報告書p88で低酸素症とみなしている理由が説明されてます「18時29分の後半から36分にかけての機長と副操縦士の間の会話が著しく少なく、18時40分から43分前半までの運航乗務員間の会話も極端に少なくなっていること。」
まず、18時29分の後半から36分についてですが、18時28分0秒に機長が「なにさわいでんの?」と言ってます。
この問い掛けに対応するために航空機関士が客室と連絡を取って状況を聞き出しているのが30分から33分です。
続けて、18時34分11秒では副操縦士は「カンパニーお願いします」と言って無線通信を航空機関士にお願いしていて、通信をしているのが34分から36分なんです。
ですから、航空機関士に順次問い合わせをお願いしていてその返事待ちだったから、会話が少なかったのだろうと思うのです。
そして、18時40分から43分前半というのは大月を旋回している時間帯なのです。おそらく操縦は副操縦士だけでなく機長も航空機関士も手伝っていた可能性が高いです。「運航乗務員間」の意味が誰と誰の意味なのかよく分かりませんが、旋回から復帰できて羽田方面へ機首が向いたのは機長の指示で操縦操作を行ったからです。
会話が少なかった時間帯であるのは確かですけれども、言葉を発するのが困難なほどの低酸素症ではなくて、せいぜいあるにしても軽い低酸素症の可能性でしょう。

こちらの図はコックピット内での発声タイミングを色で示したものです。赤が機長、青が副操縦士、緑が航空機関士、黄が不明です。
緑の楕円で囲った範囲が「18時29分の後半から36分にかけて」に相当する範囲です。緑の点が多いので、航空機関士の問い合わせ頻度が高いということが分かります。
少しくらいは減圧が影響していたかもしれませんが、大きく影響するほど会話が減っていたわけでもなさそうです。それよりも操縦が大変で筋力や集中力の疲れの影響のほうが大きいと思います。
客室高度が24000フィートになっていたなら、ほぼ全員体調に影響があるでしょうし、そんなことは実際はなかったのだから、事故調の減圧想定が間違っていることは確定です。
事故調の考えとは違いますが、これが証言、証拠を考慮した上で最も矛盾のないストーリーです。
また、霧の話で少し頭の片隅に置いておきたいのは、霧が水蒸気であると100%確定しているわけでもないです。
もちろん水蒸気である可能性は高いのですが、後述で実際の事例を説明しますけれどもオイルがドライミスト状になっても霧のようにはなるのです。


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前向き11tの異常外力は何秒継続したのか

報告書の異常外力の細かい話で重要なことがありますので説明します。
報告書では、前方加速度を発生させる異常外力の力の掛かった時間を何秒として考えているのかが明確ではありません。
前方加速度センサーは0.25秒ごとに計測されていて、1点だけ突出して0.047Gの加速度増分が記録されているということが事実です。
報告書では、速度増分の計算式として、まず矩形波として次の式を示してます。
0.047×9.8×(16/64)×2
という計算式です。速度増分は加速度増分と時間を掛ければ求まります。
9.8が重力加速度で、0.047×9.8が加速度増分です。16/64は、これは1秒間を64分割したうちの16分割ぶんという意味で、つまりそれは1/4秒=0.25秒のことでして、
最後に×2としているのは、おそらく最長で加速の継続時間を0.25秒の倍の0.5秒間としたのだと思います。

報告書では速度増分を上記の式で計算した値を三角波にするために半分にして、単位をノット/秒とするので、結果を0.25ノットとしてから、
そして、
「この程度のインパルスの存在は、他のチャネル、例えば真対気速度から積極的に裏付けることはできない。」
と結論づけてます。
「積極的に裏付けることはできない」とはなにを表現しているのでしょうか?
加速度増分から速度増分を算出したのだから、なにか速度のグラフにも突出した特徴くらいは出ている可能性はあります。
真対気速度(TAS)の詳細グラフは掲載されていないので、代わりに速度のデータである対気速度(CAS1)を見てみましょう。

前方加速度の突出は18:24:35.7付近ですが、その時刻では対気速度(CAS1)は緩やかに上昇を継続してます。
特に突出した点はなさそうです。
速度グラフの縦軸を見ますと、0.5ノットごとに目盛がついているので、0.25ノットの増分というのは小さくありませんから、突出が出ていたほうが整合性がとれると思ってしまうのですが、
グラフ全体を見渡しますと、前後方向加速度と対気速度のグラフにはあまり相関がありません。これはTASのほうも同じで、この区間以外の時間帯でも相関が強くないのです。
単純に加速度が増したから対気速度が増すという関係性にはなっていないようですから、突出値が記録されなくても不思議ではありません。
事故調の言う「積極的に裏付けることは出来ない」としている通りで、速度データからの傍証が見つからないのは確かなようです。
速度以外のグラフでは、ピッチ角(PCH1)のグラフは同時刻付近に少しだけ下向きの変化はありますので、僅かに影響はあったのだろうと解釈できます。
この検証で理解できる重要なことは、加速度の継続時間を0.5秒と仮定する、その妥当性は特にないということです。
0.5秒というのはあくまで理屈の上での最長時間ですから、実際はもっと短かった可能性のほうが高いです。 加速の継続時間が短かければ速度には影響が少ないということは物理を知らなくても直感的に理解できると思います。
ちなみに11トンの前向き外力というのは加速度と機体重量を掛け算した値なので、加速の継続時間とは関係がありませんから、外力の値とは矛盾が出ません。
厳密には11トンという数字は、前向き加速度から導きだされた計算結果であって計測値ではありません。重要なのは11トンを発生する原因の前向き加速度のほうです。
乗客証言によると、特に異常事態発生の爆発音発生時に、瞬間的な機体の揺れは感じていないので、なるべく機体の変化が少ないほうが実際の状況としては正しいです。
それはDFDRの前方加速度以外のデータには突出した変化はない、という事実とも符合します。
速度増分の計算式の数値で、0.047Gというのはグラフから読み取れるので事実です。9.8の重力加速度Gも事実です。
計算式で残った数値は、力の継続した時間です。
実際の加速の継続時間は0.5秒では長すぎるので、もっと短い時間を想定したほうが適切です。
DFDRのデータから言えることは、加速の継続時間をもっと短かい想定にして問題がないばかりか、むしろ、そのほうが証言や速度データとの整合性が高くなるということです。
では、仮に、力の継続時間を0.1秒としてみましょうか。
その場合の三角波での速度増分は、0.047×9.8×0.1/2=0.02303m/s=0.04477ノット/sです。
この速度の場合は、乗客が機体に対して瞬間的に2cmほど前方に移動することに相当しますので、実感できなくても不思議ではありません。

ところで、前述の、報告書記述「BS2658以降の胴体部分の分離で11トン」という記述に従いますと、BS2658というのはAPU防火壁の位置なので、
垂直尾翼の破壊脱落は前方加速度0.047Gの突出つまり11トンの前向き異常外力には含まれないと解釈していることが分かります。
仮に、もしも垂直尾翼の破壊脱落が11トンの前向き異常外力に影響していたとすると、波形はどのようになるかを考えてみます。
その場合は2つの三角波が重なるように連続した可能性が高いです。

(0.25秒ごとのグラフ上の点はどのように記録される?)

事故調シミュレーションの基準ケースでは2つの破壊開始の時間間隔は0.275秒ですから、(脱落の時間間隔は事故調は算出していないので)、波形の山の間隔を仮に0.3秒としてみます。

そうしますと、波形の形にもよりますが、突出値はグラフ上の1点ではなくおおよそ2点または3点になることが分かると思います。
つまり、加速の継続時間が0.3秒以上の場合は垂直尾翼の破壊脱落が11トンの前向き異常外力には含まれていない、としないと矛盾が出てしまうのです。

一方、飛行解析では、脱落した重量として、垂直尾翼も含めている重量しか記述がないため、上記前提のようなAPU防火壁以降と垂直尾翼と別々の破壊脱落の解析を行なった形跡はありません。
下の飛行解析のグラフはおそらく入力で使用した外力でして、35.7秒付近の突出は約26000ポンド(=11804kg)ですからこれが11トンの前向き外力に相当するものだと思いますが、0.5秒間の三角波としてます。


下の飛行解析の前後方向加速度グラフでは、おそらく棒グラフがDFDRの実際の値で、曲線グラフが飛行解析の出力だと思われますが、
0.047Gの突出が再現できてます。

この解析は、前述の「BS2658以降の胴体部分の分離で11トン」という記述に反して、むしろAPU防火壁以降と垂直尾翼の両方を発生源とするほうが正しいという証明になってます。
なぜなら、異常外力着力点は垂直尾翼の高さの位置として解析しているからです。

参考までにシーケンス図においては前向き加速度(LNGG)の突出は0.25秒以内に起きたとして事象範囲が図示されてます。

これはDFDRの解析に使っている図ですから、この図からは0.25秒以内で前向き加速度は発生したとしてます。
速度増分の計算式の最後に×2を付けて、0.5秒としている?のと矛盾します。もしかすると×2は0.5秒の意味ではなく、加速度の突出最大が0.047Gの最大2倍という意味なのかもしれません。
しかし、それなら最大を2倍と決め打ちする根拠もなく、説明ごとに矛盾があってよく分からないのです。
横方向加速度(LATG)の説明では、35.73秒以前に垂直尾翼の破壊が起きたと推定していて、前向き加速度の突出は35.70秒としているので、
垂直尾翼の破壊開始の時刻は、前向き加速度が発生している時間帯と重複しているとも解釈できる表現をしてます。このあたりはあいまいで、はっきりしません。
なぜ、「BS2658以降の胴体部分の分離で11トン」と明記したのかは謎です。DFDR解析よりも、0.275秒の破壊開始時間差という結果の与圧空気流出の数値シミュレーションを優先したのかもしれませんし、
VHF航法受信機(LOC2)のDFDR解析を信用しすぎで垂直尾翼の脱落は遅かったと解釈した可能性があります。LOC2の事故調解析では36.59秒までは垂直尾翼上端およびトルクボックスは決定的な破壊は生じていなかった、という判断だからです。
LOC2の話は動画でもしてますが、誤解釈だと思うので、DFDRの証拠を正しく判断するなら、両方の分離で11トンの前向き外力が発生したと解釈すべきです。

垂直尾翼の破壊脱落が11トンの前向き異常外力には含まれていない、という見立てが現実的とは思えません。
やはり、それよりも、BS2658以降の胴体部分と垂直尾翼の両方は、もっと短い、例えば0.1秒間以内の時間差で破壊脱落したという想定のほうが現実的ではないかと思えるのです。
事故調想定のBS2658以降の胴体部分だけを吹き飛ばした場合は、かなりの勢いで後方へ吹き飛ばしたという話になってしまいます。
なぜなら、吹き飛ばす重量が小さいので、吹き飛んでいくスピードが相当速くないと、発生する前方加速度と釣り合わなくなるからです。
垂直尾翼は含まず最長の0.5秒間でBS2658以降の胴体部分だけを吹き飛ばした計算を運動量保存則でしますと、
吹き飛ばした重量を600kgと仮定して、機体本体の残った重量を516000ポンド(=234264kg)としてみます。
600×V=234264×(0.047×9.8×0.5/2)
V=44.96[m/s]=162[km/h]
概算では時速162kmの後方への相対速度で吹き飛ばす必要があります。
加速の継続時間を0.3秒と仮定すると、27.0[m/s]=97.2[km/h]となります。
加速の継続時間を0.1秒と仮定すると、8.99[m/s]=32.4[km/h]となります。
報告書の「BS2658における胴体断面積を5,800平方インチ」との記述から、APU防火壁位置から外部へ空気の抜ける面積は3.74平方メートルと想定します。
それでは0.1秒間でどのくらいの空気が抜けるかを計算してみます。
抜ける空気の気圧を外気とほぼ同じの0.4気圧として、1気圧で1立方メートルの空気の重さを1.2kgとして、0.4気圧の場合はその0.4倍としてみます。
結局、抜ける空気の重さは、0.1秒間で3.74平方メートルを先ほど求めた速度で通過する空気体積の重さです。
先ほど求めた速度というのは時間経過後の最終の速度ですから、平均を使いたいので半分にします。
3.74×0.1×8.99/2×0.4×1.2=0.81kg
となります。
さて、一方で、報告書では防火壁が破壊されると154.8[kg/s]の速度で空気が外部へ流出するとしてます。

0.1秒間では154.8×0.1=15.48kgとなります。
0.81kgとは全く異なる数字になりました。
この結果で分かることは、0.1秒間で0.047Gを記録したと仮定すると、事故調の与圧空気流出の数値シミュレーションでの空気流の速度には到底達しないということです。
それではもっと長い時間で考えてみます。

0.3秒間の場合では、抜ける空気の速度から重さを求めた場合の結果は、
3.74×0.3×27.0/2×0.4×1.2=7.3kg
となり、一方で事故調推定の154.8[kg/s]の速度で抜けたとすると、154.8×0.3=46.4kgです。一致しないです。

0.5秒間の場合では、抜ける空気の速度から重さを求めた場合の結果は、
3.74×0.5×44.96/2×0.4×1.2=20.2kg
となり、一方で事故調推定の154.8[kg/s]の速度で抜けたとすると、154.8×0.5=77.4kgです。やはり、一致しないです。

では、1.94秒で考えてみます。速度増分は
600×V=234264×(0.047×9.8×1.94/2)
V=174.4[m/s]=628[km/h]
1.94秒間の場合では、抜ける空気の速度から重さを求めた場合の結果は、
3.74×1.94×174.4/2×0.4×1.2=304kg
となり、一方で事故調推定の154.8[kg/s]の速度で抜けたとすると、154.8×1.94=300kgです。ほぼ一致しました。
この計算結果からしますと、事故調のシミュレーション想定では1.94秒間が加速の継続時間となっているのだろうことが推定できました。
ところで、実は0.047Gというのはあくまで0.25秒ごとに切り取った時に記録された値なので、実際はもっと大きい値だった可能性があります。
念のため、仮に加速度が2倍だったとしてみますと以下の計算となりまして0.95秒となります。
600×V=234264×(0.047×2×9.8×0.95/2)
V=170.8[m/s]=615[km/h]
0.95秒間の場合では、抜ける空気の速度から重さを求めた場合の結果は、
3.74×0.95×170.8/2×0.4×1.2=145.6kg
となり、一方で事故調推定の154.8[kg/s]の速度で抜けたとすると、154.8×0.95=147kgでほぼ一致。

どちらにしても時間が長すぎまして、当然ながらグラフの突出点を1点だけにすることは無理でした。
分かりやすく例で説明します。ペットボトルロケットというものがありますね。ペットボトルに水を3割くらい入れて、ゴム栓をしたペットボトルを逆さまにして空気を入れて空気を圧縮するとゴム栓が取れて、
ペットボトルは水を吐き出しながらロケットのように打ち上がります。水を吐き出している間に推力を得て加速しているわけです。
同様に圧力隔壁開口からの空気力で前方加速度が発生すると仮定するのなら、7秒間空気が吐き出されている間は推力が増すわけですが、初めの1秒間だけでも前方加速度のグラフの突出を1点にすることはできないのです。
圧力隔壁破損説で整合性のある計算は不可能でした。
なぜ、このような矛盾が起きるかと考えますと、それは、事故調が異常外力がどのように発生したかという計算をしていないからに他なりません。
与圧空気流出の数値シミュレーションはいかにAPU防火壁と垂直尾翼を破壊するかに終始しているだけなので、
異常外力はそのシミュレーションには組み込まれてませんから、整合性はとっていないのです。
事故調が解析したことは、異常外力があったと仮定した場合の機体の動きです。
異常外力を発生させる原因の、前向き加速度はどのように発生したのかという計算はしていません。
なぜやらなかったのでしょうか?矛盾が表面化するからだろうと想像します。
与圧空気流出の数値シミュレーションが正しいのであれば、その結果は、必然的に異常外力を説明できるものになっている筈です。
しかし、全く説明できるものではなかった。ということは、隔壁開口という前提モデルが間違い?と疑ってみる必要があります。
圧力隔壁破損説では最も重要な異常事態発生時の前向き加速度を説明出来ません。過去に説明できた人も知りません。
それでも、圧力隔壁破損説が正しいと信じる理由がありますか?信じていた根拠は根本から崩しました、一度フラットな視点になって本当の真実を見つけませんか?
報告書の異常外力着力点の図の位置はAPU防火壁よりかなり上の垂直尾翼の真ん中の高さですから、垂直尾翼も前向き外力の計算にいれたほうが飛行解析としては整合性がとれることは、事故調も認識しているのです。
ピッチが僅かに下向きに変化したグラフとも辻褄が合います。
ピッチはグラフから読み取りますと、0.7度ほど変化してますので、機体の回転中心から後部座性までの距離を25mとしますと、0.7度の回転では、
計算しますと、前方に0.2cm、上方に30cm移動したことになります。30cmの突き上げというのは体感できそうな気がしますが、体感できなかったとしますと、
ピッチ角は1秒ごとに記録されるので、ピッチ角の変動は瞬間的な突出ではなくて、1秒から2秒程度の間に変化したのではないでしょうか。
また、プレッシャリリーフドアが開いていれば、そこから下方向へ抜ける空気流が影響して機首下げの要因になっている可能性もあるのですが、どの程度ピッチ角に影響するのかは不明です。

最も妥当な破壊プロセスは、事故調の想定するような隔壁開口ではなく、非与圧領域内でなんらかの爆発現象があり、APU防火壁以降最後部と垂直尾翼を時間差0.1秒以内程度のほぼ同時に破壊脱落させた、というストーリーです。
脱落部分の合計の重量を1361kgとしますと、速度増分は
1361×V=234264×(0.047×9.8×0.1/2)
V=3.96[m/s]=14.3[km/h]
となり、時速14.3kmで吹き飛ばしたという結果となります。事故調の圧力隔壁破損説よりも現実的です。

細かい話になりますが、
前方加速度の突出した増分が0.047Gというのは、0.047Gピッタリではなく、0.047G以上の値と見なすほうがどうやら正しいようなので、前述のように2倍で見積もって考えてみることも大事です。
2倍というのもあまり根拠はなく、もしかすると1.5倍かもしれませんし、3倍かもしれません。
例えば2倍とするなら、その場合は前向きの外力は22トンとなりまして、報告書の11トンと相違が出ますが、前述のように外力というのは加速度からの単なる計算結果なので矛盾しません。
しかし、事故調は前向き外力を11トンとして扱って飛行解析で妥当性を検証しているので、それはそれで、そんな単純な想定でいいのか?という疑問はあります。
なぜ、0.047G以上と考えられるのかと言いますと、0.25秒ごとに計測しているからでして、0.25秒境界を跨がない時間帯の波形の上下のデータは記録されないので捨てられるためです。
なぜ、捨てられることが分かるのかと言いますと、報告書にそれらしい説明があったからです。
横方向加速度の説明で「Aliasing(離散値化に伴う信号の歪み)のため正確には読み取れない」という記述があります。
このAliasingという単語記載がなければ、今回の考察はかなり不確定なものになり、難しかったです。
アナログ波形をデジタルデータとしてサンプリングする時に、サンプリング周波数が小さい(読み取る時間間隔が長い)ために波形を正確に表現できないという意味です。
つまり、データが捨てられる場合があるということが説明されているのです。この説明は横方向加速度についての説明ですが、他の加速度についてもおそらく同じサンプリング方法だろうと推測します。
加速度以外のデータについてはどのようなサンプリング方法なのかは不明です。サンプリング方法というのは様々な方法がありますから、例えば、一定時間の区間平均の場合だってあります。DFDRのサンプリング方法の詳細説明はないので、よく分からないのです。
ついでに言いますと、横方向加速度は振動している箇所がありまして、それを報告書では1ヘルツないし2ヘルツの周波数と推定していて、それが横向きの異常外力によって励起された自由振動と推定してますが、
厳密には、もしかすると、3ヘルツ以上だった可能性もあります。波形を切り取る位置によって波形の形が変わるので、正確には分からないというのが本当のところだと思います。
しかし、横方向加速度の振動している時間は4秒間くらいあり、割と規則的な振動の波形ですから、1ヘルツないし2ヘルツの周波数と推定する妥当性はあると思います。


他の事故例から仮説を振り返る

1993年5月2日 着陸後地上走行中の全日空B747-400型機にて客室に白煙が充満しました。緊急脱出時に乗客9名が重傷を負いました。
事故調査報告書のリンクはこちらです。
APUはON状態でした。事故の原因はAPUのギア破損でAPUオイル漏れが発生、オイルがドライミスト状となりAPUブリードダクトを通り、エアコンシステムを経由して客室に充満しました。
この事故で珍しいことは、白煙の実態が、オイルが燃えた煙というわけではなく、オイルのドライミストであったということです。ちなみに、警報は作動していないです。
オイルのドライミストが霧に見えることがありえるということは参考となりますし、APUから客室空気に影響を与える経路も図示されていて参考になります。

2006年11月20日 エアーニッポンのB737-500型機にて離陸時の地上走行時にAPU から火災が発生、原因はAPU燃焼室取付金具の破断でした。
この事故では、火災警報装置のベルが作動してますが、少なくとも異常が起きたのはその11秒以上前(これはAPU起動約1分後)と考えられます。APUの"LOW OIL PRESSURE"の警告灯が点灯していたためです。
ちなみにAPUが運転される際の燃焼室に入る圧縮空気の最高温度は231度という記載がありますから、仮にAPUをOFFにしてもしばらくはAPUは高温を保つということが想像できます。
警告表示は燃料の圧力低下で検知されるので、燃料漏れがあれば、警告が出ることが分かります。
もしもAPUの燃料漏れが原因で爆発に至るとすると、センサーが検知できない部分からの漏れ、もしくは瞬間的に大量の気化燃料の漏れ、もしくは警告表示があった状態での爆発、という話になりますが、それがありえるかどうかは議論が分かれるところだと思います。

2020年12月4日、JALのB777-200型機にて飛行中にエンジン破損がありました。
事故調査報告書のリンクはこちらです。
この事故では水平尾翼の前部にも28㎝の穴が開いてます。穴から発見された金属板は57×17cmですから、穴から破損は広がってはいません。
日航123便では隔壁開口からの空気流入で垂直尾翼破損後、さらに外気の流入で破壊が進行して垂直尾翼が脱落したとされてますが、本当にそんな連鎖破壊が起きるのか疑問です。
上記事故例からしますと、エンジンカバーが捲れた状態で着陸してますし、水平尾翼の破損部は空気抵抗を真っ向から受けてますが破損は進んでません。
123便の垂直尾翼破壊では空気抵抗を過大評価し過ぎではないでしょうか。評価以前に、空気抵抗がどのくらいか検証をしている箇所もないですし、単に信じているだけの報告書になってます。
時速550km(対気速度)で垂直尾翼の破壊痕が拡張して脱落に至らしめることが可能なのかは、かなり疑問です。
参考に最大風圧を概算してみます。真対気速度450ノット/h=833km/hを使ってみます。24000feetでは約0.4気圧なので、空気密度を標準空気密度1.225kg/m3の0.4倍として0.49kg/m3とします。速度は833km/h=833000/3600=231.4m/sとして、その2乗は53541で、0.49×53541/2=13118Paが最大風圧です。1Pa=0.000145psiなので13118×0.000145=1.9psiです。(0.13気圧の差圧相当)
破壊箇所にかかる空気抵抗は形状によりますが、風圧の半分としても0.95psiですから、空気抵抗での破壊はやはり過大評価ではないでしょうか。
隔壁の破断実験も、小さな長方形のアルミ合金板を単体で引っ張って断裂させているだけです。隔壁は各所の構成部分が互いに支えあって強度を高くしているので、局所的にしか適用できない実験結果はあまりあてになりません。
そんな実験をする時間や予算があるのだったら、隔壁のミニチュアを製作して圧縮空気で破壊する実験をしたほうがよっぽど良かったと思います。それならついでに与圧空気流出の数値シミュレーションを検証できる空気流量のデータもとれたことでしょう。

2024年1月2日、羽田滑走路でJAL機と海保機が衝突、炎上した事故が起こりました。
大地震の起こった元旦の翌日です。海保機はその地震被害救援で向かう予定でしたから、
大地震の翌日で、かつ正月の混雑期というのは偶然ではなく関連していることになります。
123便のことを言いますと、123便も盆休みという混雑期に事故が起こりましたが、それに必然性があるだろうという推測を以前の動画でも述べてます。
隔壁破損が原因なら、混雑期に事故が起きる必然性はありませんし、24000フィートという中途半端な高度で事故が起きる必然性もありません。

羽田の衝突事故では、衝突の瞬間に爆発が起こり、炎と煙の塊がJAL機後部上方へ立ち上ることが確認できます。
その後、JAL機の火災は消火活動があったにも関わらず8時間ほど継続して、胴体のほとんどは原型が無くなってます。
衝突の瞬間にJAL機の後部から中央までと海保機は、ジェット燃料への引火、爆発で炎に包まれてます。
海保機の搭載していた燃料というのはjetAという日航123便が搭載していた燃料と同じ種類です。
海保機とJAL機のブラックボックスも回収済ですから調査されることだと思います。
燃料の爆発に関しての調査にも注目してます。


2024年5月24日に電気的火花からの燃料爆発の危険性についての次のニュースがありました。
米連邦航空局(FAA)は今年初め、ボーイング社の777型機の欠陥に対処しなければ「火災や爆発」を引き起こす可能性があると警告する指令を出した。
FAAによると、777型機の主翼にある燃料タンクの通気口に取り付けられた金属板は、電気的な結合がないまま取り付けられていたため、静電気が蓄積し、ジェット機の燃料タンク内で「火災や爆発」を引き起こす可能性があったという。
米国で登録されている292機の777型機が危険にさらされる可能性があると、同司令は警告している。



金属腐食と金属疲労の事故例

金属腐食の事故例としては1971年10月2日の英国欧州航空706便墜落事故(ヴァンガード951型機)で、
圧力隔壁と胴体を接合していた金属板が48センチも腐食していて、それが原因で空中分解してます。
ちなみに123便の場合は、圧力隔壁の化学検査で金属腐食は発見されてませんから、123便の場合は金属腐食を原因とすることは出来ません。

金属疲労の事故例として、2002年5月25日のチャイナエアライン611便事故(B747-209B型)があります。
こちらは機体後部下部外板の金属疲労が原因で空中分解が起こりました。
実は、この機体も1980年に尻もち事故を起こしていて、その時の修理ミスが金属疲労の原因となってます。
補修の継ぎ板の当て方にミスがあったという点も123便と酷似してます。チャイナエアライン側で修理はされてますので、ボーイング社が修理にどれほど直接的に関わっていたのかはわかりませんが、123便機体の尻もち事故は1978年ですから同時期の修理ということです。
金属疲労の亀裂からは機内から漏れ出したたばこのヤニが検出されてます。
金属疲労の亀裂は最終的には93インチ(236cm)になっていたとのことです。
この611便の事故調査報告書ではボイスレコーダー(CVR)の解析がされてまして123便の圧力隔壁破損説を覆す証明に使えますので、これについては後述します。

1979年9月17日エアカナダ680便(機種はDC9)の事故では圧力隔壁の金属疲労が原因で圧力隔壁に大きな穴が開き、尾部が破壊脱落、急減圧しました。
当時の機内の様子は1985年12月15日放送のNHK特集「墜落」で客室乗務員へのインタビューで明らかになってます。
「機内の空気が抜け 物が吸い出されました」
「もし乗客が私をつかまえてくれなかったら私も吸い出されていたでしょう」
と語ってます。番組では破壊された圧力隔壁の様子も紹介していて、「大人二人が通れるほどの穴があいていた」と説明があります。
機体の大きさはB747にくらべて小さいのですが、パッと見では穴は横1.2m縦2.5m(=3m2)くらいでしょうか。そうしますと123便の2から3平方メートルと近い大きさです。
やはりもしも隔壁に大穴が開いていたなら、客室には突風が吹くということです。しかし、客室気温の話は出てきませんので、断熱膨張での気温低下があったのかは不明です。



解説書にあるサウスウエスト航空2294便について検証してみましょう。
解説書では2294便の減圧事故例を出して、風もそれほど吹かず寒さもあまり感じないという説明をしてます。
解説書の比較表によりますと、胴体容量は2294便は280m3で123便は1700m3、穴の面積は2294便は0.135m2で123便は1.8m2としてます。
解説書の表では客室高度警報が鳴ったとされる時間としては2294便が2.9秒で123便は1.7秒ですから、その差は1.2秒となってます。
2294便のNTSBの報告書から数字を確認してみます。
2294便の高度は35000feetで(123便は24000feet)でした。
開口面積は17.4インチ×8.6から11.5インチでした。単位をmにして面積を計算しますと、0.44196×0.21844から0.2921 =0.0965から0.1291m2です。
平均では0.1128m2です。
解説書での0.135m2という数字はどこからの情報なのでしょうか。分かりませんでした。
しかも、123便の開口面積の1.8m2というのは理論値です。2294便の開口面積は理論値ではなく実測値です。
2294便の開口面積を実測値から理論値相当にするには123便での縮流係数0.7を使って、
開口面積を0.1128×0.7=0.07896m2とします。
つまり、事故調の使っている開口面積0.135m2よりも0.07896m2のほうが適切であると言えます。
さて、しかし、客室高度警報の鳴るまでの時刻のほうが開口面積よりも重要です。開口面積よりもそれが減圧の速度と比例するので、指標として使えるからです。
ですから、開口面積が多少違っても誤差のうちと思うかもしれません。
ところがこの2294便での警報が鳴る時間というのは事故調の推定値なのです。
「表には、本事故の基準値としている穴の面積と時間及び前述の急減圧の事例に出てきたB737-3H4もその大きさから比例配分して追加しました。」 と記載されてます。B737-3H4というのは2294便の機体のことなので、つまり、推定値ということです。
ちなみに解説書での非番機長2名の話は、以下の書籍で同様の内容がありました。
google bookサイトの閲覧可能ページ
この本では737-300との記載がありますので、737-3H4という機種は737-300系統のようです。
737−300で胴体容量280m3というのは少し見積もりが小さい気もしますがそんなものでしょうか。
では、改めて独自に計算してみます。
2294便が123便並みの機体の大きさだったとして、その場合の開口面積は、容量比を掛けて
0.07896×1600/280=0.4512m2です。
123便の容量は解説書に注意書きあり、1700ではなく1600のほうが報告書で使用されている値との記載がありますのでそちらの値を使いました.
これを後述の独自のシミュレーションにパラメータとして設定して計測しますと、
2294便の警報の鳴る時間は4.47秒となりました。(客室気圧で計測)
この結果は、事故調の「ゆっくりな減圧」開口面積0.4m2での5秒に近いので、妥当かと思います。
2294便の35000feetでの外気圧は3.46psiで123便の24000feetでの外気圧は5.696psiです。
一般的な国内便の35000feet時の客室気圧を3.46+6.7=11.2psiとします。2294便は国内便ですので外気圧の差は6.7psiです。
123便での外気圧との差は事故調の数値シミュレーションから値をとりますと14.355-5.696=8.66psiです。
6.7/8.66=0.77倍ですから、2294便の方が同じ開口面積で同じ容量なら気圧低下速度は遅くなるはずです。
参考図書では客室気圧と外気圧の割合から計算しているにもかかわらず、事故調は気圧差の違いを考慮しないで計算しているようです。
気圧差が小さい場合でも客室気圧の初期値が低いと気圧低下速度は遅くても客室高度警報の鳴る時間は逆に早かったりしますから、複雑な考察を避けたのかもしれません。
飛行高度の低い123便のほうが客室と外気圧との差がなぜか大きいので、気圧差を考慮して単純計算しますと、4.47/0.77=5.8秒相当という話になります。
これは客室気圧の初期値を123便の初期値にシフトした場合の計算です。
本当は警報までの秒数よりも気圧低下速度で比較したほうが良いのですけれど、だいたいの目安としてはこんなところです。
結局、多少細かく計算した結果が5.8秒ですから、基準ケースの1.7秒と比べても、かなり減圧速度が遅い例という話になります。
事故調推定の2.9秒と違ってしまいましたけれども、5.8秒が正解ならそれこそゆっくりな減圧だったのではないでしょうか。
ところで、解説書での2294便で2.9秒というのはどのような計算で出てきた数値なのかということは、「大きさから比例配分」という記載から推測しますと、
123便(B747)での開口1.0m2では2.4秒と表に記載があります、2294便で開口1.0m2では容量比(1700/280)からその6倍早い減圧速度なので、0.4秒
そうすると、0.135m2では0.4/0.135=2.96秒という計算なのだと思います。
計算の元になっているB747での1.0m2の時に2.4秒というのはどこから出てきたものかというと、
これは参考図書からの引用でして、空気の流体の方程式から計算によってこの値を算出してます。
参考までに独自シミュレーションで1.0m2で実行しますと、2.8秒になりました。
また、報告書にグラフ(付録4 付図-5 隔壁開口面積の影響 (b)警報発生時間に対する影響)がありますから、それによりますと、
1.0m2の開口時には客室高度警報は約2.2秒となってますので、解説書の1.0m2で2.4秒という推定は事故調の数値シミュレーションに近い値です。
結局、解説書では、0.134m2で2.9秒相当だから、123便の基準ケースより少し遅い程度で、ゆっくりな減圧よりも時間的に短いとしてます。
なおかつ証言から、123便でも客室に強風が吹いていなくても乗客が寒さを感じてなくても、そういう場合もあるんだよ、という結論のようです。
しかし、警報の時間まで5秒という、実際にはありえない、「ゆっくりな減圧」より早いことを主張してもあまり意味がないと思いますし、
強風は吹かないという主張で比較するなら、基準ケースより遅い例ではなくて、速い減圧例だと分かり易くて良かったのですが、遅い減圧ではあまり結論は出ないです。
解説書の内容を鵜呑みにして正しいと信じてしまう人が多いので困ったことです。検証してみますと正しいとは言えなくなります。
仮に、急減圧でも寒さを感じないのが正しいとしますと、それは感じないのではなく、実際に温度低下があまりないという可能性があると思います。
そうしますと、123便の数値シミュレーションの断熱膨張の計算モデルは実際とは乖離していて全く使えないという話になり、圧力隔壁破損説は成り立たなくなるのです。
また、そもそもの話、2294便の減圧時間を計算で推定しようとする試み自体が適切ではないと思うのです。
あの表を見た人のどのくらいが正しく理解できているでしょうか。なにが計測値でなにが推定値なのかの説明が分かりにくいです。意図的に下手なのかは知りません。
容量も開口面積もかなり異なる例なので「大きさから比例配分」で推定しても簡易計算なので誤差が大きく比較対象として適切ではないです。
2294便での開口部分の写真を見ますと、アルミ板が捲れてはいるものの、
少なくともその大部分は脱落してはいないです。空気抵抗があったとしても簡単には脱落はしないようです。
捲れて内部の断熱材のようなものが飛び出ているのですが、開口部の面積はとても小さく、
くっきりと矩形で穴が空いているわけでもないですから、面積を小さく計測すると、容量比の計算値は大きく変化してしまいます。
瞬間的に開口したのか、段階的に開口したのかも分からないので、もしも、ゆっくりと開口面積が広がったのだとしたら、全く異なる計算結果になります。
参考図書には減圧時間は空気の抜けていく穴の角度を変えることで調整できるとの解説があり、つまりは、開口部のめくれ上がり方によって変わってしまうのです。
事実としては、NTSBの報告書には客室高度警報が減圧後何秒で鳴ったかという記載はないのです。
詳細が不明なので、評価も出来ないとするのが正しい姿勢ではないでしょうか。
計測した開口面積で急減圧したと思い込んだ前提からの、推定した計算値から123便に近い急減圧だったと言っているのであって、
123便の基準ケースでは瞬時に理論値1.8m2の穴が空いた前提です。
2294便では一番肝心な、計測した開口面積での急減圧があったのかどうかが不明なのです。事故調はそのように思い込んでいるようなのですが、
はじめは小さな切れ込みが、飛行中に次第に外気との空気抵抗によってゆっくりと捲れ上がった、というストーリーだって考えられるのです。
比較していたのは、思い込み前提での推定値です。推定からの推定値を計算して比較しているので、推定の確度が低く比較する意味がないです。
事故調の悪い癖ですね。思い込みからの断定手法は報告書にいくつか見ることができます。
元になっている数値も理論的な推定値なので、現実的な値なのかも不明です。それが旅客機に適用できるのかまでの検証はされていないのに、
いつしか、前提が物的証拠アリかのように錯覚させられてしまいます。
もしも、CVRなどの証拠から、破壊音と警報音や酸素マスク落下までの時間を計測しているなら妥当性の評価はできます。
しかし、そんなデータは示されていないですし、NTSBの報告書にも記載はありません。
ともかく、この事故に関しては考察に使える実測されたデータが乏しいです。
それとも、開口位置が重要で、天井裏で穴が空いた場合は客室には強風が吹かないと言いたいのでしたら、そのような想定での計算を示してほしいものです。
それとも、B747は客室の容量が大きいから客室には強い風が吹かない、と言いたいのでしたら、誤解を与える説明方法です。
なぜなら、123便での爆発音からの客室高度警報や酸素マスク落下後のプリレコーデットアナウンスのタイミングはCVR解析によってほぼ判明しているので、
客室の減圧速度はそこからほぼ決まってきます。つまり圧力グラフの傾きが決まるのです。
容量や開口面積がなんであれ、減圧速度は変更できないのです。
つまるところ、減圧速度が判明しているのだったら、客室の気圧変化を議論する目的においては容量や開口面積はどうでもいいのです。
おそらく、解説書の説明から、客室と非圧力領域との容量差が大きいから客室には強い風が吹かない、という誤解が生じているのかと思ってます。
この事故よりも、次のアラスカ航空1282便の事例のほうは2294便と同じB737系統の機体で、開口面積が1m2と大きいです。このくらいの開口面積でしたら減圧速度の誤差は少ないでしょう。
また、容量と風の関係については後述の「風の感じやすさ」で詳しく検証します。


羽田衝突事故から3日後の2024年1月5日アラスカ航空1282便(ボーイング737-9 MAX)が17時6分47秒に離陸、
約6分後の高度約15000feet飛行中に客室のドアが脱落、
急減圧が発生、酸素マスクが落下、緊急降下しました。
事故直後のNTSBの会見によりますと、ボイスレコーダーは2時間の繰り返し録音となっており、
電源をOFFにしなかったため、上書きされて事故の状況はボイスレコーダーには記録されていないとのことです。
フライトレコーダーは回収されて解析されてます。
ドア脱落時には2つの携帯電話の脱落、および近くの少年のシャツが脱げ落ちる状況であったことが
報告されてます。落下したドアは発見されてます。
ちなみに落下した携帯電話の1つは発見されており、動作したということです。
2024年現在、中間レポートがNTSB(アメリカ国家運輸安全委員会)により公開されてます。
レポートによりますと、事故原因として暫定的ながらドアを固定するボルトの不具合によりドアが破損脱落したとのことです。
写真から判断しますと、客席すぐ横の緊急脱出ドアが脱落してます。
場所としては、機体左側の、主翼と尾翼の中間あたりです。
コックピットの状況がレポートに記載されてます。

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高度16,000フィートで大きな音がした。フライトクルーは耳がポンと抜けたと言い、機長はこう言った。
彼の頭はヘッドアップディスプレイ(HUD)に押し込まれ、ヘッドセットは押し上げられた。頭から落ちた。
副操縦士によると、客室への急激な空気流出によって彼女のヘッドホンは完全に外れたという。
両フライトクルーはすぐに酸素マスクを着用したという。
フライトデッキドアは吹き飛ばされるように開いて、会話が難しいほど非常にうるさかった。
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フライトレコーダーからの、急減圧の状況
17時12分33秒,速度271ノット,14830feet航行中、客室は14.09psiから11.64psiまで減圧
     客室高度警報が鳴り、さらに数秒で外気との差圧が5.7psiから0psiになりました。
17時12分34秒にマスターコーション(警告灯)がactivated。9.08psiです。
17時12分52秒にマスターコーション(警告灯)がdeactivated
17時17分0秒には機体は高度10000feet以下に降下
17時18分5秒に客室高度警報が停止。10.48psiです。

ドアは横29インチ(0.74m)縦56インチ(1.4m)ですので、面積は1.0平方メートルです。
それではこの事故と123便を比較してみます。
外気との差圧は1282便では5.7psi、123便では8.65psiですから、123便のほうが1.5倍大きいです。
開口面積は、1282便では1.0平方メートル、123便では理論値1.8m2で縮流係数0.7を考慮して実測値換算で1.8/0.7=2.57m2です。
機体の大きさに関しましては1282便は全長42.1m、客室幅3.54mです。前述の737-300は客室幅は同じで全長33.4mですから、容量としては42.1/33.4=1.26倍として考えてみます。
単純計算しますと、胴体の容量は、280m3の1.26倍で353m3としておきます。
123便は1700m3としますと、123便のほうが容量は約4.8倍大きいということになります。
もしも1282便が123便相当の容量であったなら、開口面積1.0m2の4.8倍は4.8m2なので、これは123便の開口面積の2.57m2と比較して1.87倍大きいです。
外気圧の違いを考慮して1.87/1.5=1.25倍です。つまり、1282便の気圧低下速度は123便と比べて1.25倍相当です。結構近い条件ということが分かります。
1282便のレポートでは数秒で外気との差圧が5.7psiから0psiになったとあります。これを123便報告書の気圧のグラフにあてはめますと、
5.7psiというのは39kpaなので、その気圧降下時間は約2.5秒間に相当します。酸素マスクが落下するタイミングに近いです。
1282便での風については、開口よりかなり前方に位置するコックピット内の機長のヘッドセットが落ち、副操縦士のヘッドホンが外れたくらいですから、かなり強かったことが分かります。
客室にも相当な風が吹いたことをうかがわせる内容です。寒さについては中間報告には記載がありません。
同型機の緊急一斉点検で複数の機体でドアプラグの緩みが発見されました。
この事故から理解できることは、設計上はありえないとされる緊急脱出ドアの破壊脱落で穴が開くことがありえるということです。
123便においても、なんらかの衝撃でR5ドア付近に穴が開いた可能性があります。ありえないということはありえません。
R5ドアが墜落現場では無傷で見つかったという話があったりしますが、無傷というのは言い過ぎです。事実としては、窓ガラスは無くなってますし、上部も側面も歪んでますし、
下部は次の通り損傷が大きいです。報告書p29「後部胴体は、右側面及び下面の構造に損傷が大きかった。特にR-5ドア下方の構造及びBS2360(後部圧力隔壁の取付部)とBS2484の間の損傷が著しく、残骸の復元位置を特定できない小片が多かった。」
ちなみにB737-9 MAXは事故当時最新鋭機に分類されるものですが、ボイスレコーダー(CVR)は2時間しか記録できないものだったというのは驚きです。
日航123便では30分余りしか記録できないものだったので、38年経過しているのにほとんど進歩していなかったことになります。
123便では異常発生直前からしか記録がありませんので、長時間記録の重要性というのが認識されていなかったのか、
NTSBにおいても会見で25時間記録できるものが望ましい、と調査できない悔しさを吐露してましたから、ボーイング社の認識の甘さなのか、長時間録音の要求がなかったのか、なんなのだろうと不思議です。
過去の他の例では2014年12月15日のローガンエアー6780便事故でもボイスレコーダーが上書きされていて、事故時の記録が残りませんでした。
NTSBは2024年2月13日、全ての航空機に25時間録音を求めると声明を出していて、2018年から数えると14件も録音不足での事故調査の経験をしていることを表にまとめてます。NTSBも危機感を感じるのが遅すぎです。
日航123便の事故経験でCVRの長時間録音は必要と分かっているのだから、日本の事故調や日航からNTSBや航空機メーカーへ要求し続けるべきだったと思います。

以前の動画でも取り上げてますが、1986年10月26日タイ航空620便(エアバスA300-600型機)での後部爆発事件について動画で触れてない部分について調べてみます。
乗客がテレビ取材に答えている映像があります。4人へのインタビューの返答は以下です。
「耳がね、もう、聞こえんのですわ。全然聞こえんのです、今ねえ。」(耳を手で押さえながら返答)
「ドーンという音がして、空気がバーっと入ってくるのが見えたからね。」(前方から頭越しに後方へ空気が移動する仕草をしながら)
「煙みたいなのが出て、風がプーっときてね」
「今、耳がすごいちょっと聞こえない。」
耳への影響が着陸後にも残って症状が出ているのが特徴的かなと思います。
また、シートベルトをしていなかった乗客は、体が浮き上がったという証言も複数ありますし、怪我をした乗客もいます。
左後部のトイレ内に持ち込まれた手榴弾が爆発したのが原因で、後部圧力隔壁に穴が開いてますので、参考になります。
A300-600型機は全長54mで胴体幅5.64mです。B747-100型機は全長70.6mで胴体幅6.49mですから、円筒形とみなした胴体容量の比率としては、(54×5.64/2×5.64/2)/(70.6×6.49/2×6.49/2)=0.58なので、
A300-600型機は123便の約58%の小ささだったことになります。
この事件の事故調査報告書のリンクはこちらです。
圧力隔壁が破壊されている写真が掲載されてます。隔壁は大きく開口して、中心部分に大きな丸い穴が開いてますが、円周の3/4が破断していて、後方へ折れ曲がっているということです。
この報告書では、乗客中88名が航空性中耳炎となったのは、「急減圧後の急降下の際の急激な気圧上昇のため」と推定してますが、
急減圧時ではないとした根拠の詳細は掲載されていないので不明です。
爆発が起きたのは高度33000feetの時です。後部のエウイップメント・コンパートメント・アクセス・ドアから空気が噴き出したことが判明してますので、
乗客が浮き上がったのは、報告書ではそのドアから「空気噴き出しに伴って機体の上下運動を生じ」としてますから、噴流のせいなのかもしれません。
開口面積は報告書に具体的な記載がないのですが、事故調としては123便より開口面積は大きかったという解釈のようです。ざっくりと3m2としましょうか。
123便の胴体容量と合わせると3/0.58=5.2m2です。飛行高度が違いますが、差圧は123便が8.9psiで、
620便は外気圧3.8psi、機内気圧は12.5psiくらいと思いますので(推定方法は後述の0.977気圧の考察参照)、差圧は8.7psiでしてほとんど123便と違いはないので無視します。
5.2m2の開口面積に相当するとした場合、やはり123便でもその半分程度の面積の開口があったなら、乗客は風を感じただろうと思います。(容量が大きいほうが風を感じやすい説明は後述)
大阪府警察本部の科学捜査研究所によって化粧室内の黒色の付着物が火薬による燃焼と分析されてます。
少なくとも報告書ではこの証拠以外で火薬の化学分析の証拠は示されてません。
火薬の証拠というのは、他の部分からは見つからないものなのでしょうか。報告書に記載されていないだけなのか。
黒色の付着物以外で、爆発の化学的な証拠がどの程度簡単に発見できるものなのかというのが気になるところです。
事件として扱われているので、警察の化学調査が入ってます。123便のほうで警察が化学調査したかどうかは報告書に記載がないのでわかりません。
もしも、煤の付着などの発見が警察の化学捜査でも難しいのなら、事故調の調査では見逃しだってありえると思ってしまいます。
ところで、このタイ航空620便の事件ではAPU防火壁も垂直尾翼も破壊脱落はしてないです。なぜかと言いますと、APU防火壁上部に開口部があり、また尾翼下にドア開口があり、そこから空気が抜けたからです。
ということは、圧力隔壁の開口が123便よりも大きかったとしても、空気が噴出する抜けが悪いということになり、客室内の風が弱まる要因になるものの、乗客はしっかりと風を感じてます。
逆に考えますと、123便ではAPU防火壁全体が破壊脱落しているわけなので、そのうえで垂直尾翼まで脱落するというのは、かなり難しいということが分かります。
また、タイ航空620便では機内気温が下がったような記載もありませんし、乗客のインタビューでも見つけることはできませんでした。
どの程度の急減圧なのかはよくわからないのですが、機内気温が下がっていないとすると、
123便の圧力隔壁破損説の数値シミュレーションに使われている断熱膨張の計算はこの事故には適用できそうもありません。
適用できる事故例も他にあるのか知らないので、あの8区画の数値モデルはやっぱりどこか大きく間違っているんじゃないですかね。
断熱膨張が起きるという発想自体が間違いの可能性すらありそうです。
なぜ断熱膨張を前提としたのかをコンピュータプログラマ目線で想像しますと、それはおそらく断熱膨張が起きた可能性が高いとみなしたというよりも、
断熱膨張を前提としないとなると、複雑すぎて数値モデルも作れないし、計算量も多すぎて解析できないから、という消極的な事情があったからなのかもしれません。
しかし、仮にそうだとしても、断熱膨張の計算式で圧力隔壁破損説を構築していいという論理にはならないです。



新聞記事の客室内気圧低下の報告は誤報なのか?

1985年8月13日 朝日新聞
4版トップ 墜落機の機長が十二日午後六時半ごろ、日航の羽田オペレーションセンターに伝えた「R5ドア、ブロークン」「キャビン・プレッシャー、ドロップ(客室内の与圧低下)」という交信内容
14版トップ 六時三十九分、日航のオペレーションセンターに「機体の右最後部のドア(R5)が壊れた。気圧が下がっている」と交信
14版社会面 「後部ドアが破損した」「気圧が下がっている」「操縦がむずかしい」。埼玉県所沢市の東京航空交通管制部への緊急通信で、十二日夕、機長が叫んだ。


1985年8月13日 中日新聞12版トップおよび上毛新聞トップ
同四十一分には羽田の日航オペレーションセンターにパイロットから「機体右側の最後部ドア(R5)が壊れた。客室内の気圧が下がっているので、緊急降下を実施中。緊急着陸空港を検討中」と連絡が入った


1985年8月13日 読売新聞4版(5)
「キャビンプレッシャー・ドロップ(客室内の気圧低下)、エマージェンシー・ディセント(緊急降下)」緊急事態を告げる日航ジャンボ機パイロット

事故の原因らしい最初の通報は、午後六時三十三分、会社との専用無線による日航東京空港支店航務課への連絡。
「SQコンファーム(故障が判明した)。R5ドア、ブロークン(破損)。キャビンプレッシャー・ドロップ。
エマージェンシー・ディセント。インテンション(今後の行動方針)は後ほど連絡する」と答えた。


この4誌で共通しているのはR5ドアの破損の報告と一緒に、客室内の気圧低下の報告があったということ。しかしながら客室内の気圧低下の報告の音声はCVR(ボイスレコーダー)では確認できないですし、報告書の書き起こしにもありません。
新聞記事によりますと、交信先が日航の羽田オペレーションセンターと埼玉県所沢市の東京航空交通管制部の2つあるようです。
客室内は酸素マスクが落ちていたわけですし、コックピットでも客室高度警報は鳴っていたことを考えますと、客室気圧の報告をしていたとしても不自然ではないですし、ありえる会話内容だとは思います。
日本語の会話文になっている記事が多いですので、それはもしかすると、記者へのR5ドアブロークンの言葉の意味するところの減圧の解説を機長の言葉と誤解した可能性もあるかもしれませんが、
13日の時点で「R5ドア、ブロークン」という英語の言葉はCVRの音声と一致してますから、「キャビン・プレッシャー、ドロップ」という言葉も誤報でこの英語が出てくるのかというと、誤報ではない可能性が結構あるのかなとも思います。
特に読売新聞の専門用語の多い報告内容はリアリティが高いようにも思えてしまいます。
もしも本当に「キャビン・プレッシャー、ドロップ」と伝えていたとしたなら、123便の航空機関士は客室気圧を計器で確認していたと考えるのが自然ですし、
新聞記事内容が正しいとしますと、機長が伝えたことになってますから、機長も客室気圧を認識していたということになります。
それなら、どうしてコックピット内では酸素マスクを付けなかったのか?という疑問が出てくるのですが、その答えとして、急減圧は一瞬だけの一時的なもので、機内気圧は深刻な状況には無かったということであれば納得感は出ます。
酸素マスクを付けなくても操縦に支障のない程度の減圧に留まっていたという理屈が考えられます。
事故調の解説書によりますと、酸素マスクを付けなかったのは操縦に専念していた、或いは機長が低酸素症になっていて判断能力が落ちていた、可能性を説明してますが、
事故調の想定するような急減圧であったなら、操縦よりも優先して酸素マスクを即時装着したはずなので、低酸素症になったからマスク装着をしないストーリーには説得力が無いです。
外気圧と同じになっているのにマスク装着を迷うとは到底考えられません。
一瞬は客室高度13000feetに達して警報音が鳴り酸素マスクが落ちたものの、27秒間は客室高度が9000feet以下になり警報音が停止して、再び客室高度11000feetになって警報音が鳴り出したけれど、そのあたりの気圧で落ち着いていたら酸素マスクはあまり必要ないです。
やはり、マスクを付けるか付けないか迷う程度の軽い減圧状態が続いていたと見なしたほうが正解だと思います。その結果として低酸素症が出始めていた可能性はあるかもしれませんが、少なくとも24000フィートで客室は外気圧と同じにはなっていないです。
機長は18時25分21秒に高度22000feetへの降下を要求してます。この時点では再び警報が既に鳴りだしているので、機内気圧に異常があることは警報音からも認識しているはずですから、機内が外気圧になっていたのなら、もっと飛行高度を下げる要求をしていただろうと思います。
報告書では安全高度の13000feetではなく22000feetへ降下しようとした理由を不明としてます。不明としなければならないのは圧力隔壁破損説を前提とした見立てが間違っているからです。
客室高度が13000feetより低いのなら13000feetに緊急降下する必要性はあまりありません。降下よりも機体を安定させることを優先したと考えられます。
18時32分18秒に航空機関士は「荷物の収納スペースのところがおっこってますね。これは降りたほうがいいと思いますぅ」と言ってます。
それ以前の18時30分28秒時点で客室に酸素マスクが落ちていることは客室乗務員に確認済です。ということは、その間に客室気圧が理由での緊急降下の必要性はあまり感じていないということです。
航空機関士は「マスクは一応みんな被っておりますから」とも言ってます。そうですね、この言葉通りの解釈でいいのです。「一応」ということです。客室気圧は危機的状況ではないから酸素マスクは無くてもいいが、一応念のためマスクを被っているという意味です。
副操縦士も(マスクかけますか?の問いに対して)「かけたほうがいいです」と言ってます。これも言葉通りのニュアンスで正しく、あくまで「ほうがいい」程度のかけなくても操縦できるけど、かけたほうがいいんじゃないか、という状況ということです。
航空機関士は酸素マスク落下確認のさらにそれ以前にも降下を進言してますが、その時は油圧ロスの理由で降下を進言してますから、やはり客室気圧を心配して降下を進言していたわけではないのです。
航空機関士は客室気圧を計器で確認していて気圧の数値は知っていたけれども、客室気圧に関しては、それほど飛行高度降下に緊急性はないという判断だったのだろうと思うのです。しかし、荷物の収納スペースに破損脱落があることが確認できたから、それまで何度か降下を進言したけれども念押しで降下を進言したわけです。
破損部分からの空気漏れによるさらなる客室気圧低下の心配が出てきたのだろうと思います。マスク確認の時点では客室高度警報は鳴り続けているので客室気圧を確認しないことは考えられません。
圧力隔壁破損説を前提に解釈すると客室気圧が外気圧になっているのにその理由で緊急降下を進言しないのは意味不明ですが、圧力隔壁破損説を前提としないなら、合理的解釈が成立するのです。
圧力隔壁破損説を前提にすると、機長が22000feetへ降下しようとした判断も間違いだったということになるので、それではまるでクルーに過失があったかのような話になってしまうため、その理由を不明としてあいまいな結論にせざるえなかったのです。
人間でしたら時としてミスすることもありますし、判断時間が短いほど単純ミスをする確率は高くなるでしょう。緊急事態ならなおさらです。
しかし、機長の22000feetへ降下する判断は瞬間的なものではなく状況をある程度考慮する時間(緊急事態発生から50秒後)があったのでミスではありませんし、減圧症状で判断が鈍っていたせいでもありません。
航空機関士はあとでさらに降下を何度も進言しているので、22000feetへの降下が最適解だったのかどうかは結果論になってしまいますのでわかりませんが、その時点ではベターな選択だったのです。
※フゴイド運動最中は高度を下げたくても下げられないという理屈は22000feetへ降下する宣言とは無関係です。宣言の18時25分21秒時点ではフゴイド運動は発生していないです。
客室気圧報告の新聞報道が正しいのか、それとも誤報なのか、一部分だけ正しいのか、複数の新聞が報じたことであっても、情報ソースが同じなら同じ誤報になることはありえます。実際、中日新聞と上毛新聞の文言は同じなので、情報ソースが同じということを意味します。
大手新聞社の報道と言えどもむやみに信じるのはよくないです。基本的に誰かがなにか言っていたといった情報ソースが事実かどうか確認できないことを根拠に仮説は作るべきではないと思いますから、
ここでも仮に新聞報道が正しいとすると、という条件付きで考えますと、そうすると、なぜ交信内容がCVRの書き起こしとして掲載されていないのかという謎がでてきてしまいます。
事故調査報告書のCVR書き起こしでは、無線でR5ドアの報告をしているのは18時35分34秒からです。18時35分52秒では「インテンション(今後の行動方針)」について質問されてます。
この内容は、読売新聞記事の18時33分の時刻の話に近いです。
新聞報道が正しいのならやはり「キャビンプレッシャー・ドロップ」が報告書でのCVR書き起こしやリークされたCVR音声には無いので抜けがあるのかという疑問は出るでしょう。
事故調としては書き起こしやリークされたCVR音声は生のCVR内容と同じという主張ですから、事故調を信じるなら気圧が下がっているという報告内容の記事は誤報ということなのか。
専門用語であることを考慮しますと、各新聞社のほうでこしらえた言葉ではなく、情報ソース側から発せられた言葉という可能性が高い。
例えば8月12日20:36に日航オペレーションセンターで記者会見が開かれたと朝日新聞に記載があります。記者会見で「キャビンプレッシャー・ドロップ」の言葉があったということなのかもしれませんので、
それであれば各社が13日の新聞で報じたことと辻褄が合います。
記者会見はテレビ中継されてました。その様子は「NHKスペシャル 日航ジャンボ機事故 空白の16時間」の番組で会見の冒頭映像で確認できます。「日航オペレーションセンターから中継」という字幕で、日航の広報が説明してます。
そこで、紙で貼り出していた概要説明の箇条書きがあります。
「18:39 最後右部の客室ドアが破損したとの連絡あり。客室の気圧が下がっている為 緊急降下をすると連絡。」
時刻がなぜ18:39になっているのかはよくわかりませんが、なるほど、確かに会見で客室気圧低下の報告を説明していたようです。
TBS系列のJNNニュースでも紙の内容を読み上げている映像は確認しました。
NHKでは数回に渡って会見内容を放送してました。当日のニュース番組内容の概要は次のリンクから知ることができます。
1985年08月12日(月) 午後07:50 日航ジャンボ機墜落事故関連ニュース
そうしますと、会見で日航広報が「キャビンプレッシャー・ドロップ」という言葉を出した可能性が高そうです。
記者会見のほとんどの映像は確認できておりません。それが、123便からの通信内容だったのか、それともただ記者会見での説明で使うために補足で追加した言葉なのか。
記者会見は断続的に行われてまして、その間に記者が広報へ詰め寄って個別に質問することもあったようです。その中で出た言葉だった可能性もあります。
そうしますと、各社で言葉が少し違うのもありえることだと思います。
その言葉があったかどうかはともかくとして、とりあえず日航広報が客室気圧低下の報告を受けたと認識していたことは確定しました。
そうなりますと、日航の広報発信の情報に誤報が混じっていたということになりますが、果たして誤報なのでしょうかね?
CVRに「キャビンプレッシャー・ドロップ」が記録されていないのであれば、日航広報は誤情報を流したことになり、日航広報が正しいのならば、事故調がその言葉を隠したというふうに解釈されかねません。
羽田オペレーションセンターに、もし現在でも通信記録が残っているのだったら調べれば事実を確定できて事故原因の解明につながりそうなものです。
この日航広報の記者会見というのは事故調としては勝手にやらないように注意していたようなんですね。日航が独断でやることを決めたという話があるのですけど、
ということは事故調は日航広報がなにを記者会見で言うのかを事前には細かいところは把握していなかった可能性が高い。

客室気圧低下の報告があったのか無かったのかというのは事故調査に影響を与えるとても重要な部分ですので、深堀りしてみます。
CVR音声の18時31分08秒航空機関士の「オキシジェンマスクがドロップしてます」というのが報告書に書き起こされている言葉です。この時、同時に機長が管制と会話中でしたから、この航空機関士の言葉も管制のほうに伝わっていた可能性があります。
実はこの部分は1985年8月27日の第一次中間報告(CVR書き起こし詳細は後述)では「キャビンプレッシャはドロップしてます」と解析されてます。
キャビンプレッシャドロップという言葉はそこから出てきた可能性が高いです。
本当はオキシジェンマスクが正しいのにキャビンプレッシャと誤解釈した言葉を当時のメインストリームはそれが正しいとしていた。
事故調が客室気圧について気にしていた時に、123便から機内気圧低下の報告があったという話が出てきたら、まだCVR解析前ですし、それを事故調(ボーイングやNTSBも)は信じてしまった可能性もあるのではないでしょうか。
少なくとも多くのマスコミはそう思ったわけなので、そうしますと、その誤解が圧力隔壁破損説を後押ししたとしても不思議ではないです。
生存者の客室内空気は「流れていない」証言(1985年8月27日NTSBが聞き取り)と123便からの機内気圧低下の相反する言葉を比較して、機内気圧低下報告のほうをより真実に近いと捉えたということもありえそうです。
証言では「耳が痛くなって機内が白くなった」とあります。一瞬だけの減圧でも説明できることなのですが、事故調は間違った事実認識であるキャビンプレッシャドロップのほうを信じたため、報告時に減圧状態が継続していたものと解釈した。
その結果、間違った仮説を推し進めたということでしょう。
あとあと「キャビンプレッシャー・ドロップ」が誤解釈だったとわかったときに何を考えたでしょうか。白紙撤回できるような雰囲気でもない。世間では機内気圧低下報告の空想がまるで事実かのように刷り込まれている。
真相追求よりも波風立てないことを優先する。その時はもう圧力隔壁破損説から後戻りできなかった。これがおそらく真相ではないでしょうか。
誤解してほしくないのは、中間報告で間違いが出てしまうことやその間違いかもしれないことを報道することを非難しているのではないです。
間違いがあるかもしれない前提で中間報告を出すことには賛成です。
大事なことは、間違いと分かった時点で振り出しに戻って考えることができるかどうかです。
圧力隔壁破損説というのは急減圧があったかどうかが一番の鍵なのだから、減圧の報告があったと誤認して作られた仮説というのは一度白紙に戻すべきなんです。それはできていないと思います。
あとから事故調がCVR音声を詳細に分析したら「キャビンプレッシャドロップ」なんて言っていない。それが事実です。
少なくとも、その会話音声の誤解釈と客室高度警報が1秒で鳴りやんだ証拠が揃った時点で事故調説は白紙撤回しないといけないです。
事故調も日航もボーイングもNTSBもマスコミも全員勘違いしてたんです。そんな勘違いから発案された仮説が結果的にたまたま正解である確率は低いとみるべきです。
勘違いしていたから、急減圧の証言を生存者から言葉を誘導してでも取ろうとしたけれど、事故調の想定するような証言にはなっていないのです。「キャビンプレッシャドロップ」の報告を事実だと思っていたから、証言の都合の悪い部分は無視して急減圧(※7秒で外気圧に達するような減圧)ありきで事故調は動いた。初動から完全な間違いです。
「デコンプがあったんです」という証言があったとされる報道も後々出てきました。その証言が実際あったのかどうかはよくわかりませんけど、酸素マスクが落ちた状況からデコンプがあったと解釈しても不思議ではないですし、その言葉でもって事故調の想定するような継続した減圧が起きたことにはならないです。

よく、都市伝説などで、123便の事案はタブー視されている、とかいう話がありますけど、仮にタブーになっているとしたら、当時全員間違っていた事実があるから、それを掘り起こされるのが都合悪いということなのかもしれません。
タブーがあるのかどうかは知らないですけど、それよりも興味が薄れているのが大きいと思いますし、なにが正しい情報なのかが分からないから、とりあえず公式情報に類したものしか扱いたくないということだろうと思います。
年々そんな傾向はマスコミ全体どころか、SNSでも強まっているように思えます。
仮にタブーがあったとしても、科学的に納得できるような証拠や説明があれば打ち破れるんじゃないでしょうか。甘いかもしれないですけど、個人的にはそう信じて考察してますよ。

それと、海外新聞の報道で123便は横田基地着陸を試みた、という話があったりしますけど、123便クルーがそう言った、会話はCVR記録には残っていないです。
日航や管制側がそう思った、という推測の話の内容を記事にしているのかもしれません。また、少し誤訳もありそうです。
例えば、「(略)crashed(略)after reporting it had a broken door and would try for an emergency landing at a US air base」というのが、
「ドアが壊れたことと、米空軍基地への緊急着陸を試みることを報告したあと、墜落した」と訳すのは少し違うのではないかと思います。
主語をThe planeにしてgoogle翻訳にかけますと、
「飛行機はドアが壊れていると報告した後、米空軍基地に緊急着陸しようとして墜落した。」
になります。つまり、reportingしたのはbroken doorだけで、その後にan emergency landingしようとした、と読むほうが正しいのだろうと思うのです。
an emergency landingしようとしたのは未確認情報だろうと思うのです。なぜならreportingした内容のみしか伝えることができないからです。
似たような英文で、
「U.S. officials(略)said the pilot asked and received permission to make an emergency landing.」というのもあります。
パイロットが着陸許可を求めて許可されたという意味であるのは確かです。U.S. officialsの主語は横田基地の管制官のことですから横田への緊急着陸を求めたという意味です。
許可されていたのは事実ですから、パイロットが要求したかどうかが問題で、横田へ要求した事実は確認できないですから、誤報なのか、CVRに抜けがあるのかどちらかでしょう。
他には、
「(略)said he was attempting an emergency landing at the US base at Yokota」や
「(略)said he was diverting to attempt an emergency landing at the nearby U.S. Air Force base at Yokota.」などがありますけど、
このsaidの主語が機長になってまして、機長が横田基地着陸を試みると言った、という意味になってます。
前の文ではAccording to JALやJAL officials saidとなってたりしますから、JALが伝えた話ということです。
U.S. officialsやJALが言ったことが本当なのか、記事が間違いなのか、JALが勘違いしていたのか、そのあたりは分からないです。
実際に、海外記事では「trouble with a left rear door 」という明らかに左右間違いで報じている記事もありますから、誤報ということもありえると思います。
特に日本語というのは主語を省略して会話しますから、会見で主語が無かったなら、翻訳で主語をあてはめる時に間違いは起こりやすそうです。
英語を母国語とするような日本語非ネイティブの人にとって日本語の主語の無い会話の解釈は難しいと聞きます。伝言による文章の変化や、言語の違いによる翻訳間違いの可能性もあるのではないでしょうか。
直接話法ではなく間接話法の文章ということは、音声記録をそのまま言っているわけでもないので、だれかがそう思ったという推測の話なのかもしれないです。
この程度の表現のゆれというのは伝聞ではありえそうですし、報道内容をそのまま受け取るのも注意は必要です。
個人的にはクルーから横田着陸の希望は伝えてない、とみてます。それが100%正しい解釈かどうかはわかりませんが、そう思う根拠は、
123便が横田と反対へ向かっている頃に、横田から、「JAPAN AIR AIR ONE TWENTY THREE YOKOTA APPROACH on guard.If you hear me」(JAL123便、こちらは横田管制です。もし聞こえたら)と何度も訊かれていて、それには一切答えていないです。
さらに日本の管制からは「横田と調整して横田ランディングもアベイラブルになっております」と言われてますので、もしも横田着陸希望があったならなにか答えるだろうと思うからです。CVRの記録通りになにも答えていないことと矛盾は特にないです。
CVRが改ざんされているのでしたら、このような横田と関係する会話だって消しておくような気もします。
また、CVRの書き起こしは第一次中間報告で公開されてますけれども、それ以前では日航の羽田オペレーションセンターや東京航空交通管制部とどんな会話していたかという情報しか出せないはずです。
しかし、横田着陸を希望したという話はその時期の日本の報道では出てないです。
日本の管制から横田へ連絡を入れている可能性が高いので、その際のやり取りとしては、123便の横田着陸希望がありえるから準備しておいて、という内容でしょうから、それを横田関係者が123便が希望したと、マスコミに語っていても不思議はないですね。
また、リークされた音声にも123便から希望した会話がないのは、やはりなかった可能性が高いわけです。そんなのは編集済の音声だからだ、という解釈もできますが、それはそれで一つハードルが上がるので、確率として、言っていない可能性のほうが高くなると思うのです。
横田というのは周辺道路も渋滞だらけの市街地の中にありますので、もしもそのような市街地へ不時着を試みて着陸が失敗したなら、二次被害は甚大なものになった可能性もあるかと思います。
しかし、そもそも滑走路へ着陸できるコントロールが無いことはクルーは自覚していたでしょうから、羽田希望から切り替えてどこかの空港へ着陸希望を出す以前の問題で、それどころではなく機体を安定させるので精一杯だったとみるべきでしょう。
だから返事をする余裕もない、というかどこか着陸空港を指定してもそこへ行くコントロールがないのだから、コントロールが回復するまでは肯定も否定もできず返事もしてないということだろうと思ってます。
それと、横田へ返事をしていないのは、もしかすると、英語圏ネイティブとの英語のやり取りは避けたい意識がどこかにあったからなのかもしれません。異常事態ということは航空管制で使う定型文以外の英語力が必要になります。
細かいコミュニケーションを取るには日本語の通じる日本の空港のほうがいいでしょう。実際、日本の管制とは途中から日本語でやりとりしてます。途中までは日本の管制官とも当然英語でやりとりしてました。
日本の管制官の英語を聞きますと、英語圏ネイティブと遜色ないくらいの流暢な発音ですから、管制官のほうが日本語会話を希望する理由はおそらくなくて、123便側クルー側の負担が少ないように「日本語で話していただいて結構ですから」と日本語への切り替えを提案したものと考えられます。
それと、最終的に有視界飛行で不時着を目指すなら羽田などの土地勘のある飛行場のほうが成功確率が高いと判断しても間違いではないと思います。
異常事態発生後まもなくの18:25:16「ライトターン」指示の時はまだ油圧があったので、舵は多少きいていたものと思われますから、海へ向かうためにレフトターンすべきだったという意見は結果論です。それでも、海へ向かったほうがいいと思ったなら、
途中で左旋回してUターンするか、もしくはもっと右旋回して海へ向かえばいいのですが、そんなことはやってないし、やれなかったとみるべきです。
もしも横田着陸を阻止したような事実があるのなら、例えばですけど、二次災害を防ぐために山越えでの別空港方向へ誘導した、とかそんな言い訳だって可能なので、ばれるリスクを犯してまで隠蔽するくらいなら、なにか正当そうな理由を付けて主張したほうが賢い方法です。
隠蔽があったとするほうがむしろ矛盾が多くなってしまうので、ひとまず隠蔽という前提は使わない考察から出発してなにか合理的に解釈できる方法はないかを考えてみることが事故調査の基本線だと思います。隠蔽や陰謀が絶対ないとまでは言わないですけど、ほとんどないです。
誤解してほしくないのは、もしも本当は横田を目指した事実があるのなら、それはそれで真実が判明すればいい、と思ってます。なので、横田着陸を目指していたとしても、そうでなかろうと、個人的にはどちらでもいいのです。(以前も圧力隔壁破損説に対して同じことを言いましたが同じ姿勢です)
なにがありえそうか、ありえなさそうかを考えて、確率的にどちらが高いかを推測しているだけであって、個人的な損得勘定やなにかの忖度で推測しているわけではないです。
少し話が外れますが、よく、墜落現場が長時間分からなかったというのは不可解という意見がありますけど、空から墜落現場の火災を見てるから位置が分かるというものではないですね。地図上のどこの位置かが特定できないということです。
ヘリが現場近くに着陸して住民に現在地を聞き取りすれば話が早かったのかもしれません(強行着陸を検討していた証拠はあります)が、それも結果論ですし、いろいろな都合で難しかったらしいので情報に混乱があったということでしょう。
123便にも言えることですが、混乱する中でだれもがベストな選択ができるものでもないです。

日本の報道では例えば、「操縦がむずかしい」、「マヌーバー(操縦性)が悪い」、「コントロール不能」という言葉がありますけれども、この文字通りの言葉をクルーが報告したのではなくて、
これは読者向けへ分かりやすく編集した、のちにアンコントロールという発声と判明する単語の日本語訳または解説だろうと思うのです。
同様に「羽田に引き返したい」は[request back to haneda」の日本語訳だろうと思います。
実はアンコントロールという言葉は第一次中間報告のCVR書き起こしには記載がありませんので、おそらく無線交信で聞こえた言葉なのでしょう。
参考までに当時の報道を見ますと、アンコントロール(uncontrol)としている報道の他に、アネイブルコントロール(unable control)としていた報道もあり、報道のゆれがあります。
アンコントロールという言葉が操縦不能を意味するということを、当時の記者がその言葉だけで意味が分かるとは思えませんので、なんらかの言葉の解説があったはずです。
おそらく日航の羽田オペレーションセンターか東京航空交通管制部の記者会見で出てきた解説なのだろうと思います。
同様に「機体右側の最後部ドアが壊れた。」「機体の調子がおかしく」というのは「R5のドアがbrokenしました」やアンコントロールの解説ですし、
「a seal had burst in a rear cabin door」の海外新聞報道もR5ドア破損の解説だろうと思います。
「緊急着陸空港を検討中」というのは、「羽田に戻ってこられますか?」の問いに対して、YESNOをすぐには言わなかったやり取りを、簡潔にした文章、になってます。
例えば、読売新聞の「SQコンファーム(故障が判明した)」という言葉について考えてみますと、調べてもこんな専門用語が存在するのかも分からないのですが、
SQというのはSquawkコードのことでしょうか。スコーク77の再確認という意味でしょうか。それが、故障が判明した、という意味になるのかどうか。違和感はあります。カッコ内は想像での補足と思いますのであてにしないほうがいいでしょう。
confirmというのは聞き取れなかった時などに、聞き返して再確認する場合に使う単語です。羽田側からconfirmするというならわかるのですけれど(実際に確認するシーンがいくつかありました)、123便側からconfirmした?となるとちょっと違うような気もします。
CVRの書き起こしでcomfirmという単語が登場する場面を確認してみます。
18:27:02「(ACC)JAPAN AIR 123 confirm you are declare emergency?」「(CAP)that's right That's affirmative.」
となってますね。(スコーク77の)緊急事態を肯定しますか?はい、肯定します。というやり取りを簡略化してSQコンファームなのかもしれないですね。
「客室内の気圧が下がっている」の報道も「オキシジェンマスクがドロップしてます」という言葉の聞き間違いである「キャビンプレッシャはドロップしてます」の英単語部分を日本語にしたものだろうと思います。
これらの解釈が全部正しいかどうかは分かりませんけれど、CVR記録にない単語の報道があったからと言って、CVRが改ざん隠ぺいされているという話に飛びつくのは慎重さに欠けると思いますので、
それよりは、それらの言葉の多くは日航広報からの説明や報道機関が行った言葉の言い換えだったのではないか、という視点で見た方がよさそうです。
よく、この事件は闇が深くCVRを公開しないのは、聞かれてはいけない言葉を隠すためにカットしていて、それがばれてしまうのを恐れているからだ、というような憶測話があったりしますけれども、
本考察のように事実ベースで話を詰めていきますと、まったく逆の側面が見えてきます。聞かれてはいけない言葉を隠すためではなくて、実際には無かった言葉がまるであったかのように報道され、事故調査が行われていったことが明らかになってしまうことを恐れているのではないでしょうか。
これを指摘している意見は見たことがないので、つまり、それは事故調やマスコミが「客室内の気圧が下がっている」報告の誤報道があったことをいまだに訂正していないという意味でしょうし、マスコミにおいては間違いに気が付いてもいない、ということなのだろうと思うのです。
下手をすると、ボーイングやNTSBすらその間違いの事実をいまだ知らないままということもありえます。間違いの事実を知らないまま圧力隔壁や垂直尾翼の破壊解析や調査をやっていたとしたら?それこそ大問題です。
実際に、事故調はNTSBに情報提供をしてましたし、NTSBは独自に生存者へ聞き取りもしてますが、報道も参考にしていたという事実があります。「デコンプがあった」という言葉を間違った報道と混ぜて解釈していて、継続した減圧状態があったものと誤解して調査を進めていた可能性が高いです。
一般的に未解決事件にありがちなこととして、初動捜査が間違っていた、ということがあります。この日航123便の調査も同じです。初動の間違いがあったから、あとあといろいろな矛盾点がでてきているのです。
問題視するマスコミもないのなら事故調側からあえて訂正を言い出すこともないでしょう。事故調査の根幹に係る重要なことなのに残念でなりません。

さて、余談になりますけれど、日航機墜落事故を題材にして新聞社の内幕を描いた小説「クライマーズ・ハイ」でも、
(六時四十一分、パイロットから羽田の日航オペレーションセンターに無線連絡が入った。「機体右側の最後部ドアが壊れた。客室内の気圧が下がっているので、緊急降下を実施中」)という上毛新聞の文言とほぼ全く同じ一文が掲載されてます。
2003年週刊文春傑作ミステリーベストテン第1位になっているベストセラー本であり、同名ドラマ、映画の原作本でもあります。
小説とはいえ著者が元上毛新聞記者(上毛新聞は群馬県の新聞です。御巣鷹は群馬県)ということで、実際の新聞報道記事を引用したと思われます。
もしも、123便からの「客室内の気圧が下がっている」報告が事実でないのなら、その誤った情報はメディアを通して、どこの責任かは置いておくにしても、結果としては日本中に広がってしまったということになります。
※客室で減圧があったこと、が事実かどうかをここでは議論してないです。報告があった、が事実かどうかを言ってますので、誤解のないようにしてください。
参考になったのが、新聞記事を作るときにテレビ報道を書き写して叱られるシーンがあるのですけれども、そういうことが実際にあるのなら間違った情報ソースがチェックもされないまま伝達されることもあるのだろうなと思いました。
かなり時間に追われて忙しそうなので、全部をチェックしている暇なんてなかなかないとは思いますが、
なにが真実なのか?報道したマスコミ自身が率先してこの謎の真相を解明すべくダブルチェックしてほしい。

余談をもう一つ、翻訳間違いが歴史上の分岐点になった例として新潮社, 2001.5 鳥飼玖美子著「歴史をかえた誤訳―原爆投下を招いた誤訳とは!」という本が興味深かったです。中曽根総理関連では世間を騒がせたあの「不沈空母」発言についての解説もありまして、
ちなみにこの本には例の「墓まで」発言が中曽根総理と関係ないところで、佐藤-ニクソン会談での通訳の人の気持ちを代弁したシーンとしてその言葉が登場してます。ざっと調べた限りでは、「墓まで」発言と中曽根総理を結び付けているのは2009年のネット上でのブログが最古で、総理発言のソースは確認できませんでした。(もっと古いのがあるかもしれませんが見つけられなかったです)。2013年あたりのネット書き込みではいくつか見られます。
中曽根総理は「墓まで」発言はしていないというのが現在主流の説だと思いますが、個人的にもまったく確証はありませんけどそうだろうな程度に思ってます。国鉄民営化とかAERA取材時での発言の話とか、テレビの対談でとか、証拠が出ていないのでガセっぽいです。
まあ、何かの話の中でその言葉を使うこと自体は不自然ではないので、仮に言っていたとしても、123便と関係ない話なら豆知識にしかならないです。
ついでに中曽根総理に関連したところでの発言はないかと探しますと、こんな記事があります。
2007年9月6日 朝日新聞夕刊 (2)
「日本の現代史の大きな謎を彼は自己正当化のために墓場まで持っていってしまった」
この記事は、中曽根総理の行政改革を陰で支えたとされる瀬島龍三氏死去の記事なのですが、ここでの「墓場」発言は瀬島氏を評してまた別の人の言葉として登場してます。(単なる憶測記事かもしれないです)
記事では中曽根総理と瀬島氏の関係を紹介する内容もありますので、例えばこのような記事を読んだ読者が、記事の詳細はうろ覚えで、あとあと中曽根総理と「墓場」発言を頭の中でつなげてしまった、ということはありえそうです。

話を戻しまして、東京航空交通管制部と123便との会話記録の新聞記事を見てみます。
1985年8月14日 朝日新聞東京朝刊 20頁
「東京航空交通管制部の管制官との交信」
「運輸省が交信記録を調べ直してわかった」
「テープに、この声が残っていた」
「パイロットからの「操縦不能」という緊急連絡。午後6時28分に最初にこのことばを発してから、同53分までの25分間に5回も言っている。特に最後は「アンコントロール、JL12…アンコントロール」と2回も繰り返していた。」
この記事でのテープというのは記事の日付を考えますと、ボイスレコーダーのことではなくて、東京航空交通管制部の録音テープのことなのだろうと思うのですけど、(記録のテープあるなら出してくださいね。)
記事内容から分かることは、「操縦不能」を5回言っている、という新聞記事表現です。実際は「操縦不能」という発声ではなくて「アンコントロール」または「アンコントローラブル」という発声です。
つまり、新聞記事では読者に分かりやすくするために言葉の置き換えをしていたことが分かります。
それは記者独自の置き換えかもしれませんし、記者会見での説明の言葉を使ったのかもしれませんし、各社それぞれの表現方法のぶれがありえます。
ですので、言葉は違うけれどもだいたいの意味は同じという言葉は、単なる報道による表現のぶれの可能性が高いだろうということなんです。
1985年8月30日毎日新聞14版(23)では、「バンクそんなにとんな」直後に「バカヤロー」の声があったとしてますが、CVR書き起こしにはないですね。
リーク音声のほうは、「バンクそんなにとんなってんのに」の語尾の「ってん」あたりが「バカ」と聞こえなくもないです。これも聞き間違えか、事故調の解釈のほうが間違いなのか、私的会話としてカットされたかのどれかだと思います。
一部の地方新聞報道によりますと「お前、いい男だなあ」という言葉もあったとされるようです。
この言葉もなにかの聞き間違えなのかもしれないのですが、該当しそうな書き起こしや音は見つけられませんでした。しかし、出所不明な直接話法の言葉はこの言葉くらいしかありませんので、誤報道なのか、それともやはり聞き間違えなのか、私的会話としてカットされたのか。
ところで、私的な会話部分が意図的にカットされているという話は、実際そのような新聞報道もあったようですから、幾つかの言葉はカットされているのかもしれません。
もしかすると、その私的な会話部分がカットされているという報道自体が間違いかもしれません。どちらなのかははっきりしませんが、カットされているという報道が出た時点というのは第一次中間報告の時です。
ですから、第一次中間報告ではカットされているという意味に違いないです。
「これはだめかもわからんね」や「がんばれ」の私的と思われる会話も第一次中間報告で入っているので、「バカヤロー」や「お前、いい男だなあ」がカットされているというのもどうなのかな、と思ってしまいます。
なにかの聞き間違いの言葉の情報が非公式でリークしていただけとも思えなくもないです。
どちらにしても、最終的な事故調査報告書の書き起こしでは声の部分のほとんどが掲載されていると考えたほうがよさそうなのです。
これを言うと、多くの反事故調派からは反発されそうですけれども、自分は反事故調派と公言してますし、事故調を擁護しているわけではないのは今までの考察から明らかです。
最も可能性が高そうな話をしているだけです。
事故調の音声解析には間違いが多いことは動画でも明らかにしましたので、事故調が事故調査に不要と判断してカットした部分が仮に存在するのだとすると、実は事故調が気が付いていないだけで、重要な会話や音が入っている可能性もなくはないでしょう。
結局のところ報告書のCVR書き起こしやリークされた音声で抜けは無いかと言われれば、数個の私的会話以外では、声と判別できる部分のほとんどは言葉の言い換えや聞き間違いにしか過ぎないことは本考察でだいぶ明らかにできたと思います。(アンバーライトオンについては後述)

それと、墜落時の衝突音の説明が報告書にない、と誤解している話もあるようなのですが、報告書p82で説明がありまして、一本から松へでの接触音と、U字溝への接触音の2つとしているようです。最後のスゲノ沢への墜落音は録音されていないのか、2つ目の音と一体化しているのか分かりませんが説明はありません。
また、墜落時の地面への衝撃に関しては報告書p98に記載がありまして、東京大学地震研究所信越地震観測所の短周期地震計が記録してます。

個人的にはボイスレコーダー(CVR)もフライトレコーダー(DFDR)も公開してほしいと思ってますし、原則公開はだめという話であっても、総理大臣がICAOを説得すれば可能だろうとも思ってます。
ICAOのルールは事故原因を明らかにするためにあるのであって、ルールを守ることを目的としているわけではないからです。ルールを守ること自体を目的化するのは本末転倒です。
レコーダー公開は国会議員のやる気次第です。CVRやDFDRが改ざんされているかどうかを確認したいという人も多いと思うのですけど、
そこは注目していなくて、現代の音声解析の技術でしたら不明だった音が解明できて真相が分かるのではないかという思いのほうが強いです。
たとえば破壊の前兆音はなんなのか、R5ドアのどこが壊れたと言ったのか、フライトレコーダーについてはOAT(外気温度)のエラーはなんだったのかなどです。
基本線として、CVRやDFDRのデータは改ざんされていないけれども事故調のデータの解釈方法が間違っているという見立てをしてみますと、いろいろ見えなかった真相が見えてくるのです。
改ざんという概念を用いなくてもかなりの部分を説明できる根拠は示しましたし、事故調の解釈の間違いも明らかにしてます。



ハイドロプレッシャみませんか?他

動画では紹介していない部分で、ここも違うんじゃないかと思うところがあります。
それは爆発音直後の例のオレンジエアの会話に出てくる部分です。
違うと思ったところは以下です。
(副操縦士)スコーク77
(航空機関士)オールエンジン
(副操縦士)これみてくださいよ
(航空機関士)えっ
(航空機関士)オールエンジン
(副操縦士)ハイドロプレッシャみませんか?
(機長)なんか爆発したよ
となってます。
実際の音声はです。
正しくは以下のように聞こえます。
(副操縦士)スコーク77
(航空機関士)オレンジエア
(副操縦士)ハイドロフルイッドみませんか?
(航空機関士)えっ
(航空機関士)オレンジエア
(副操縦士)ハイドロフルイッドみませんか?
(機長)なんか爆発したよ
です。
あらためてよくよく聞いてみますと、「これみてくださいよ」には聞こえません。また、よく聞きますと「ハイドロプレッシャ」とも聞こえません。
航空機関士が、えっ、と言って聞き取れていないので、同じ言葉を繰り返したように聞こえます。
1回目は音が消えていてほとんど聞き取れませんが、2回目は1回目と同じ「ハイドロフルイッド(hydro fluid)」と言っていたように聞こえます。
機長と副操縦士はこれ以前の会話ではギアを疑っていて、その関連としてhydro fluid(油圧の作動油)をチェックしたほうがいいと進言しているように聞こえます。
ギアは通常は油圧制御で出したり格納したりしますので、ギアと疑うと同時に油圧異常も疑ったのだと思います。
オレンジエアは、all range air modeの略ではないかという仮説を過去動画で解説しました。
すべてのギアはエアモードつまり飛行中の通常状態であり下りていない。正常に格納されたままでギアに異常はなし、という意味の言葉だったのだろうという仮説です。
参考にオールエンジンというのはチェックリストの時にも使う言葉だったようです。B747ではないのですがJALのDC10での動画内でオールエンジンと聞こえる場面があります。
こちらのDC10動画の22:28にてContinuous Ignitionのチェック項目でall engineと答えているように聞こえます。
文字通りにすべてのエンジンという意味でall engineまたはall enginesと表現する場合があります。B747関連の文書にもそのような表記が出てきますので、
オールエンジンという言葉が普通にありえると事故調は考えたのでしょう。例えば、Check all engine fire switchesと言ったりします。
オレンジギアではない(瞬間に鳴ったのは離陸警報ではない。鳴る条件を満たせない)と考えている理由は以前から述べている通りです。
航空機関士の右前のパネルのギア関連の警告ランプの色を言ったという仮説のようなのですけれども、警告ランプの色はアンバー(Amber)であって、オレンジではないです。
オレンジ色の警告ランプというのは調べた限りでは他でも存在しなかったです。咄嗟にオレンジという言葉を使った可能性も低いです。
アンバーという用語は日本語の日常会話ではほとんど使われない単語ですが、コックピット計器の色としてはランプ点灯の色として頻出する単語ですからクルーとしては言いなれているのです。コックピット内の用語として言いなれていないオレンジという単語を使うとは思えないです。
ちなみに、オレンジでもアンバーでもなく、redもしくはgreenが正しいという話もあるようなのですが、情報を整理しますと、航空機関士の右前のパネルのギア関連の警告ランプの色ではgreenとなるランプはありますが、redになるランプはありません。
redもしくはgreenの色になるのは、機長と副操縦士の間の前パネルの、ギアのレバー上にある警告ランプの色のことです。

航空機関士の前のパネルの中央少し右上(4つの丸い油圧計の下)に4つのHYD QTYという丸いメーターがあります。
航空機関士前のパネルの写真
これはHydraulic Fluid Quantity(作動油量)を示すメーターです。
航空機関士は18時26分0秒に「ハイドロプレッシャがおっこちていますハイドロが」と言ったとされてますが、プレッシャではなくfluidだろうと動画では解説しました。
航空機関士は18時46分16秒に「ハイドロクオンティがオールロスしてきちゃったですからなあ」と言ってます。
確認していたのはこのメーターなのだろうと思います。FluidおよびQuantityの単語が入ってます。
アナログメーターなので次第に作動油量が下がっていくのを目にしたということでしょう。
また、客室気圧についても、客室高度を表示するメーターが航空機関士の目の前(中央少し上。油圧計の30cmほど左にある白い縦長長方形の右上。横並び3つの丸メータの真ん中)にありますし、外気圧との差圧を確認できるDIFF PRESSと書かれたアナログメーターがその右横にありますから、
客室が外気圧まで下がっていたなら、クルーが酸素マスクをつけるかどうか迷う会話というのはありえないと思います。
その場合は迷わず付けるでしょう。圧力隔壁破損説が間違いである状況証拠です。
ついでに、どうでもいい話かもしれないのですが、音声波形を見ていて不思議な点がありました。
「これみてくださいよ(ハイドロフルイッドみませんか?)」の言葉の途中で、波形が収束していて、明らかに周りの雑音も一緒に音全体が一瞬だけしぼんでいるのです。

結構珍しい部分です。完全に音が切れているわけでもないので、なんらかの原因で音が一時的に収束した可能性があります。
リークされた音声はいろいろと編集が入ってますけれど、発声途中で編集が入っているとは考えにくいですから、
なんらかの原因があって音声記録に影響が出たのではないかと思うのです。例えばなにか電圧に影響すること。
後述でポンプの話が出てますので、その例を出しますと、エアドリブンポンプ作動時に電力への影響があったとしたら?そのようなタイミングで音声記録に影響が出たとか、そんな原因なのかなと思ってます。
参考までに、R5ドア関連の参考情報としては、事故以前の整備で、R5およびL5ドアからの空気漏れ修理がされてます。ドアシールの劣化によるものということです。事故調としては事故とは無関係としてます。
ところで、4つの油圧計直下にそれぞれあるENG PUMP、AIR PUMPと書かれた2種類のスイッチがあります。
油圧というのはエンジンドリブンポンプで制御されるのが通常ですが、油圧が落ちてくると、エアドリブンポンプで補助する仕組みがありまして、それらのスイッチはポンプを切り替えるためにあります。
正式名称はエンジン・ドリブン・ハイドロリック・ポンプ・スイッチとエア・ドリブン・ハイドロリック・ポンプ・スイッチです。
動画で紹介した、なんとか「スイッチですやはり」と聞こえる部分。音だけですとリボンスイッチとも聞こえるという話もしました。
音として少し似ているdriven switchの可能性もなくはないので追加しておきたいと思います。

最後の「なんか爆発したよ」というのは後述の第一次中間報告の書き起こしにはないのですが、
その代わりに第一次中間報告に記載されている言葉が実は「アンバーライトオン」です。
この「アンバーライトオン」は、しばしば123便関連で話題になる言葉です。警告灯点灯(アンバーは点灯の色)と解釈できる言葉です。
おそらく、「なんか爆発したよ」を「アンバーライトオン」と聞き間違えていたのだろうと思います。
一見まったく異なる言葉のように思うかもしれませんが、音としてはこの2つは似ている部分もあります。
母音を意識してみてください。「なんかば」と「アンバ」は近い音ですし、「したよ」と「イトオ」も近い音です。
記録された生音声はかなり雑音まみれのはずですし、全体的にかなり早口ですから聞き間違いは十分にありえます。
「アンバーライトオン」というのは、いかにも異常事態にありそうな言葉なので、部分的に聞き取れた音から推測したのでしょう。
本当は爆発音についての確認の言葉だった。アンバーライトオンとは言っていない、というのが真相だろうと思います。
つまり最終的に報告書にこの言葉が無かったというのはそれで正しく、修正されて言葉が変わっただけで、
前述の「キャビンプレッシャードロップ」と同じく単なる聞き間違いの可能性が高いです。
「キャビンプレッシャードロップ」の場合はこの言葉が管制に伝わっていたとしても、「アンバーライトオン」の場合は日航の羽田オペレーションセンターまたは東京航空交通管制部とは交信前の時刻ですから伝わってないはずです。
ということは、本考察の見立てが正しいのなら「アンバーライトオン」に関してはCVR解析後に出てきた言葉ということになります。
新聞記事を調べきれていないので100%の確認はできていないのですけど、CVR解析前の新聞記事にこの言葉がないのなら本考察が正解の可能性が高いということです。


さて、油圧と関連ありそうな会話でもう一つこの言葉はどうなのかなというものを挙げますと
18時27分47秒からの以下の会話です。
(航空機関士)ハイドロプレッシャオールロス
(副操縦士)オールロスですか?
(機長)いや ロック
(航空機関士)オールロス
ここで機長の「いやロック」というのが違うんじゃないかと思ってます。ロックというのはそのように聞こえます。
ロックというのはなにがロックなのでしょうか。意味がわかりませんし、いや、と否定するのも意味がわからないです。
これは違うんじゃないでしょうか。
候補は2つありまして、音としては「インターロック」もしくは「センターロック」と聞こえます。
インターロックの場合は、その言葉を使うとしたら、着陸時の逆噴射の時に使うリバーススラスト・レバー操作での安全機構をインターロックと呼ぶことがあるようなのですが、
着陸時に必要なことなのであの時点でなにか確認や操作することなのかはよくわかりません。
一応、緊急事態の時はブレーキを準備しておく手順はあるので、ブレーキの一種である逆噴射を操作するということであっても、あながち的外れではないのかもしれません。
特に油圧が期待できないとなるとブレーキも使えないわけなので、逆噴射を準備するのは蓋然性が高いです。
また、一般用語としてインターロックとは安全装置の意味なので、なんらかの安全装置を操作したという意味なのかもしれません。
センターロックの場合は、この言葉が出てくる場面を探すことはできなかったのでよく分かりませんが、候補としまして以下を挙げておきます。
ギアのステアリングの角度がセンター固定という意味かもしれませんし、
ラダー(垂直尾翼の方向舵)もしくはエルロン(補助翼)のトリム(バランス調整)をセンターの位置に固定した、という意味なのかもしれません。
インターロックでもセンターロックでもどちらも油圧制御不能が関連することなのだろうと思います。

動画のほうでは18時49分46秒の(機長)「はいこうどがおちた」は正しくは「ハイドロが落ちた」ではないかと推測しました。
機長は右座席でしたが、その前面パネル左下には"HYD BRAKE PRESS"と記載のあるブレーキ油圧計があります。
通常油圧は3000psiですのでフライト中も3000psiを示すようになってます。
つまり、油圧がどの程度落ちているかどうかを機長はこの計器で確認できたわけですね。ちなみに左座席にはこの計器はありません。
操縦の操作感覚(重さ)が油圧が落ちている時に通常となにか変化があるのかどうかは、調べてもはっきり分かりませんでした。
事故調としては機長の「おもたい」という言葉を操縦操作が重いという意味とは捉えていないようで、その言葉の意味するところは不明としてます。
その解釈を信用しますと操作が重くなることもないのかなと思ってましたが、操作感覚の説明は報告書にはなかったので、よく分からず、副操縦士が操縦をしていたから機長の言葉の意味を不明とした可能性もあります。
以前の動画では、操作が重くなるかどうかは関係なく解析できる方法として、DFDRのデータから操縦輪のエルロン操作と飛行姿勢に因果関係があるのかを探りました。
そして、操作と飛行姿勢にわずかに相関関係が見られ、かつ、操作と飛行姿勢に時間差があったので、因果関係あり(あくまでゆるい因果関係)として結論付けてます。
ちなみにB737には油圧の他に人力バックアップシステム(油圧が無くなっても人の力でなんとか動かす)があるそうで、B747には人力バックアップはないそうです。
B737は機体が小さいので搭載されていて、B747は機体が大きいので人力では操作できないため、油圧のみになっているという話です。
B737とB747とで違うことは、確かにそのような記述の資料が調べますといくつか出てきます。
B747で本来油圧で動作する舵が人力で動くというような記載の文献は発見できませんので、油圧なしの状況ですと人力では動かないと解釈するのが正しいようです。
一方でB737の文献では油圧を失ったら人力で動かせると解釈できるような説明はあります。B747の文献にはそのような説明はありません。
123便の事故調報告書にも人力バックアップの話は出てきませんから油圧のみで、人力バックアップは搭載されていないとみなしているようです。
こちらの文献が参考になります。最近の航空機の制御方式 p42
B747の説明で「B-727とかDC-9のような人力操縦系統をバックアップとしてもっていない。その理由は,手動で操縦するにはあまりにも大きな操舵力を必要とするため」と記載がある通りです。
参考にB737NG(ネクストジェネレーション)では、油圧が無くなると操縦輪でのエルロン(補助翼)操作は重くなるという説明をしているYoutube動画がありましたので、こちらの機種ではおそらく人力バックアップが搭載されているのだろうと思います。リンクを貼っておきます。
33.Boeing 737NG - Primary Flight Control
6:20あたりでイラスト付きで油圧が無くなって操縦輪操作が重くなる説明があります。B737NGは1997年から製造開始されていて、123便のB747-100と同様に近年のフライバイワイヤではないのは同じです。
人力バックアップのない123便においては操縦輪のエルロン操作に関して油圧が落ちると操作が重くなるのかどうなのか、分からないのですが、
仮に重くなるとすると疑問点も出てくるのです。なぜ大きく操縦輪を動かすことが出来たのか?ということです。重いなら少ししか動かせないはずですが、DFDRのデータでは操縦輪は大きく動かせているのです。
事故調としても、あて舵をしていたと解釈しているので、操縦輪を動かしていた、こと自体は認めているのです。極端に重くはならないから力いっぱい操作すれば動くのか?
それとも極端に重くはならない程度に油圧が残っていたということなのか?それとも「おもたい」は、操作の重さとは関係なくて、機体動作が期待通りに動かないという意味だったのか?謎は残ります。
「おもたい」可能性が一番ありそうなのは、機長がエンジン推力のスラストレバーを操作していて、スラストレバーはサーボモーターで反力が制御されてますから、その力に抗って操作するのが重かったというところでしょうか。これは油圧とは関係ない操作です。
まあ、しかし、そこはどういう解釈であっても、どのような機械的機構があったにせよ、どっちみち機体の一部が欠損しているわけだから設計通りの動作をするとも限りません。
つまるところ、DFDRのデータで操縦操作と飛行姿勢の因果関係を証明できるかできないかで判断するしか方法がありません。
因果関係があるのなら、油圧はわずかに残っていた可能性がでてくるのです。
事故調としてもDFDRのデータで油圧が無くなった時点を推測していて、やはり操縦操作と機体姿勢の因果関係で判断してます。異常発生から1分くらいで油圧がなくなったと解釈しているようです。
比較するデータの取り扱い方が自説とは違って少し浅いものの、基本的な証明の手順や方法論としては正しいと思います。
「ハイドロオールロス」の言葉で油圧ゼロと判断するのは早計です。この言葉だけではどの程度ロスしているのか分かりません。
ところで、油漏れは墜落現場で確認されてます。
1985年8月19日 朝日新聞 東京夕刊(11)「調査官ら一行6人は同日午前9時、上野村役場近くの仮設ヘリポートから警視庁ヘリで山頂の現場に向かった。事故発生翌日の13日から7回連続の調査行。18日までに、垂直尾翼の付け根や圧力隔壁部分の大部分について現場での視認作業を終えた。
また、方向舵(ラダー)などの油圧系統のパイプから、油が一部漏れていたことも確認したが、油漏れが飛行中に起きたのか、墜落時の衝撃によるものかは今後の調査を待たなければわからない、という。」
ということで、一部しか漏れは確認できていないようですので、作動油ゼロは確認されていないということが事実です。
それでもなぜ事故調は異常事態発生後1分から2分で油圧が失われたという推定をしたかと言いますと、前述のように操縦操作と飛行姿勢のDFDRデータから推定しているだけです。油圧配管の証拠から油圧ゼロが確定しているわけではないです。
その推定は大筋では正しいものの、動画では90秒の遅延でわずかに因果関係があることを示しましたので、仮にそちらの推定のほうが厳密に正しいのなら油圧は少しは残っていたことになるわけです。
他にハイドロが多少残っていた証拠はあるでしょうか?
前述のとおり、油圧が不足となれば、エンジンドリブンポンプからバックアップのエアドリブンポンプに切り替わります。
すべての作動油が完全に無くなっていた場合はポンプとしてはドライな空運転となるはずです。
報告書p51でポンプの状況一覧(エンジン駆動ポンプ2個及び空気駆動ポンプ4個)がありますが、エンジン駆動ポンプ(油圧No4)とエア駆動ポンプ(油圧No1)に限っては「ドライ運転の徴候はない」としてます。他のポンプではドライ運転の徴候があります。
これは、油圧が十分に残っていたわけではないにしても、完全に無くなっていたわけでもないという証拠です。

以前DFDRの機首方位HDG(磁方位)と真対気速度TASから解析した航跡の図に機長の方向指示の言葉を重ねてみます。
機長の方向指示の言葉は以下です。左右指示に加えて、参考に「やまいくぞ」と「はいこうどおちた」も入れてます
18:25:16 ライトターン
18:25:17 ライトターン
18:26:46 ライトターン
18:28:48 ライトターン
18:47:41 ターンライト
18:47:45 ターンライト
18:47:55 ターンライト
18:48:05 レフトターン
18:48:08 レフトターン
18:48:10 レフトターン
18:48:12 レフトターン
18:48:40 やまいくぞ
18:49:13 ライトターン
18:49:46 はいこうどおちた
18:54:04 レフトターン
18:54:07 レフトターン

全部の言葉を図示してしまうと文字が重なってしまうので、時間間隔の短いところは省略してピックアップして表示してみました。

方向指示と直後の進行方向というのはあまり関係ないことが分かりますし、「やまいくぞ」というタイミングというのはすでに山へ向かっていた後の言葉というのが分かりますね。
「アンコントロール」の状態であったと解釈するのは正しいでしょう。

さて、以前の考察では60秒から90秒程度の遅延で操作と進行方向の因果関係がわずかにありそうという解析結果でしたので、どういう意味かというのを図示します。
この図では言葉の表示を90秒遅れた航跡上の点に移動させて左右指示の言葉を描画してます。ただし、一番初めのライトターンはまだ油圧がある時でしたので、除外してます。
また、最後のレフトターンも墜落直前で完全にコントロールを失っている時点ですから除外します。「やまいくぞ」と「はいこうどおちた」も除外します。

なんとなく指示通りに方向が変わっているように見えます。言葉の数が少ないのでこれだけでは分かりにくいですが、以前の動画では操縦輪のデータと比較したわけです。


18時49分46秒の言葉が本当は「ハイドロが落ちた」だったという仮定で、以前の動画で90秒遅延を説明した図を振り返ってみます。

上のグラフが操縦輪の操作で、下のグラフは機体のロール角なんですけれども、ロール角のほうの赤丸の位置というのが49分46秒「ハイドロが落ちた」の時刻に重なってます。その時点で機長の席の前のブレーキ油圧計の値がハイドロが落ちた状態になったとしたら、
逆算して上のグラフの赤丸の部分が90秒ほど前で、操縦輪のハイドロが落ちる現象が起きていたと仮定しても矛盾はないような気もします。
ということは、その赤丸の極端に大きい操作というのは、操作が利くかどうか試して大きい操作をしたわけではなくて、操縦輪のハイドロが急に抜けたから、フィードバックなどに一時的に異常が出て意図せず大きく動いた結果だったのではないか、とも思えるのです。
そのような視点で見たときに、ダッチロールに対してのあて舵の操作が赤丸以前は規則的なスムーズな上下の振幅波形であるのに対して、赤丸以降は乱れている波形になっていることに気が付きます。
なにかハイドロの有無が関係しているのではないでしょうか。

もう一つ、動画では紹介していない部分で、違うんじゃないかという部分があります。
実際の音声はです。
18:55:35です。これは報告書では「ずっとまえからささえてます」としてますが、そのようには聞こえません。
音だけを拾いますと「リクエストワイドはされてます」と聞こえます。
しかしこんな用語はなさそうです。ワイドの部分はこれでは意味が通らないので違う言葉だろうと思います。リクエストなんたら、とはよくある航空管制用語です。航空機側からrequestする場合もあります。
「されてます」の部分も音だけですと「さんそます」のほうに近い音です。酸素マスク、ではなさそうなので、されてます、なのかなと思ってます。
この言葉の20秒ほど前に、APC(東京進入管制所)から横田が着陸受け入れ状態にあること及び、「インテンション(なにがしたいかという意味)聞かせてください」という問いかけがあります。
それに返事をしていないのですがそれについて、リクエストされてます、という機長へのインテンション確認なのかとも思えます。
それとも、ワイドではなく、weatherでしょうか?「リクエストウェザーされてます」にも聞こえなくはないです。
まあ、request weatherという言葉はあるにはあるのですけど、あの切羽詰まった状況で天候の話が出るものかと考えると、どうなのかなとも思うのですが、
どこかに不時着を目指していたわけなので、天候は重要な要素に違いありません。当日の埼玉県秩父市では17時から18時の1時間で58mmの大雨を記録していることが報告書に記載されてます。
コックピットの座席脇に機体に搭載されている気象レーダーの表示画面がありますが、表示範囲が限られてますから管制のほうへリクエストしたというのもありえるのですが、
されてます?というのが機長への質問とすると実際の音声では語尾が下がっているので疑問文には聞こえないです。
そうしますと、管制のほうからリクエストされているという意味なら、そんな要求をする必要性がないだろうな、とも思うので、よく分かりません。



風の感じやすさ

ここまでの他の航空機事故との比較考察では胴体容量を123便相当に見立てた場合に開口面積がどの程度になるかというのを比較してました。
それはつまり減圧速度を比較していたわけです。123便での事故調推定の減圧速度と比べてどの程度の減圧速度だったか?速かったのか、遅かったのか?です。
解説書のサウスウエスト2294の例では減圧速度が123便よりすこしだけ遅い程度にも関わらず、風は感じないという証言を出して説明してます。
乗客が風を感じるかどうかというのが減圧速度に比例するだろうことはなんとなく予想できることだと思います。
乗客の体の周りを通過する単位時間あたりの空気の量に比例します。減圧速度が速いということは単位時間あたりの流れる空気の量も多いわけですから風は強く感じます。
では、2つの航空機があったとして、胴体容量がそれぞれ100m3と1000m3だったとします。減圧速度が同じだった場合、乗客はどちらの航空機のほうが風を感じるでしょうか?
仮に1秒間で客室内の半分の空気が外に抜けるとしましょうか。これで減圧速度は同じです。
客室内に流れる空気の量は小さい航空機では50m3です。大きいほうの航空機では500m3です。つまり、大きいほうの航空機のほうが10倍強く風が吹いたことになります。
(厳密には胴体断面積の差もありますから、容量差の比がそのまま乗客付近を通過する空気量差の比にはならないですが、議論を簡単にするため考慮しません。)
この思考実験でわかることは、減圧速度が同じ場合、大きい機体のほうが流れる空気量が多いために風は強く感じるということです。
解説書では減圧速度を2294便と比較して、それで風は吹かなかったとしてもありえる、と結論付けてますが、風を感じたかどうか、を評価する上では足りない計算があるということに気が付きます。
減圧速度の比較計算と、風の比較計算とでは容量比の掛け割るの演算は逆になり、容量が大きいほうが風は強くなります。
例えば、前述のタイ航空620便では123便よりも胴体容量が小さいにも関わらず乗客は風は感じてます。開口面積がタイ航空620便のほうが大きいだけなのか、それとも容量が大きい123便のほうが風を感じやすいとしますと、123便でも同程度の風を感じただろうと予想できるのです。
解説書ではこの視点が欠けてます。
もっとわかりやすい例を出しますと、例えばプールに腰までの水が満たされてて自分は排水溝から少し離れて立っていたとします。排水開始からわずか10秒でプールの水が半分になるとしますと、まるで海の引き波のように周囲の水の流速で体は流されるでしょう。
それに対して、お風呂に腰までのお湯が満たされていたとしまして、排水開始から10秒でお湯が半分になったとします。しかし流速で体がもっていかれるなんてことにはならないでしょう。
このように容量が大きいということはそれだけ体にかかってくる風の勢いも大きくなるということです。
123便のB747は容量が大きいから客室内に強い風は吹かなくて当然と考える人が多いのは、解説書のミスリードのせいだと思います。
むしろ、容量が大きいからこそ強い風は吹くのです。前述の繰り返しになりますけれど、開口面積と比べて客室容量が大きいから、非与圧領域の容量と比べて客室容量は大きいから、などというのは意味がないのです。減圧速度は決まってます。
減圧速度が決まっているのだったら、小さい機体よりも大きい機体のほうが風は強くなるのです。
実際、解説書では2294便の風速を1.8m/secと計算していて、123便では10m/secとしてますので、2294便では風がほとんど吹かず、123便では強い風が吹いたと認めてしまっている数字なのです。
結局、2294便の開口は、123便での圧力隔壁破損説での開口より小さかったために減圧速度も遅く胴体容量も小さいので、風もほとんど吹かなかったということが事実なのですが、
解説書の結論としては「報告書の基準のケースと緩やかな減圧時のケースとの間の範囲に入っています。つまり、事故機で発生した機内の現象は、この急減圧事例と似通った状況にあったと考えるのが妥当です」
としてます。風速の数字の差と矛盾するので、まったく理解ができないです。
減圧速度と風速は無関係という話なのでしょうか。
解説書の主張としては要するに、計算した風速差がどうであれ、123便は胴体容量が大きいから開口から離れると風が吹かずに、天井裏だけ強風が吹いたという話にしたいのだろうと想像しますが、
いやいや、胴体容量を考慮した上で計算された平均風速が10m2と出ているわけですよ。(数値シミュレーションでは客室容量を考慮してます)
しかも、生存者が位置していたのは客室後部ですから、開口からの距離で感じ方が変わるなら、客室前方では風速は遅く、後部ではむしろ平均風速よりも早い速度を感じていたという話になるのです。
与圧領域が一様に減圧する圧力隔壁破損説においては天井裏だけ強風理論がありえないことは前述で示したアニメーションの通りです。
さて、解説書の2294便の風速計算方法で123便も計算してみたいと思います。条件を同じにしたいので2m開口から離れているとします。
半径2mの半球の表面積は25m2で開口面積を実測値換算の2.57m2として、25/2.57=9.7で、音速をそれで割って、340/9.7=35m/secです。強風ですね。
解説書ではなぜか2294便と123便の風速計算は異なる計算方法で比較していて違和感を感じていたのですが、思ったとおり、同じ計算方法ですと差が顕著でした。
(参考までに4m離れた位置として計算した結果は8.7m/secで、さらに開口面積を1.8m2にすると6m/secとなります。半球表面積での計算方法で、開口から4mとすると球の断面積が胴体断面積を超えるので、あまり離れた位置で計算するのは誤差が大きく不適切です。)
それでも、123便は2294便と減圧速度はたいして変わらず、123便のほうが胴体容量が大きいにも関わらず、風を感じないこともある、と主張するのでしょうか?
また、風は平均速度よりも最大速度のほうで体感するものです。10m/secというのは平均速度なので、最大速度はその倍以上です。それを感じないとか天井裏だけ吹いたとかありえないですよ。


尻もち事故の影響による燃料漏れの可能性


これまでの動画で日航123便の真の事故原因は、APU故障により漏れた気化燃料が爆発した、ということだろうという独自仮説を証拠を提示して説明してきました。
反対意見もありました。
ジェット燃料への引火など不可能。燃料漏れはセンサーで検知される。爆発の熱で金属が溶解した痕はない。火災の痕はない。爆発の痕はない。水平尾翼内の断熱材が説明できない。
客室で発生した霧が説明できない。客室の減圧が説明できない。などです。
疑問のいくつかについては、これまでの動画でも説明してきましたので、ここでは主なところを説明しますと、
断熱材については、何グラムの存在が確認できていたのかの定量的な報告すらなく、どこの部分の断熱材なのかも不明ですし、電子顕微鏡調査でも隔壁開口部からは発見されてませんので、
異常事態発生時に隔壁が開口したという証拠としては、弱いということを認識してほしいです。
また、爆発痕が発見されていないことが否定的な意見の中心のようです。
逆に考えますと、爆発痕が発見されていない、という一点をとりあえず将来の再調査の課題として先送りすれば、だいぶ仮説に納得感が出るのだろうと思います。
例えばTWA800便の事故調査においても、機体残骸を調査し終えた中間段階では気化燃料爆発の証拠は見つかってませんでした。気化燃料爆発を想定した調査を行わないとその証拠を発見することが難しいという証左です。

爆発という言葉の定義が人によって違うので、誤解なく解説するのが難しいのですが、
ここでは爆発というのは、なんらかの気体が急激に膨張する現象、と定義して説明します。
そうしますと、隔壁開口による空気の噴流も爆発の一種ですし、気化燃料爆発も爆発です。
気体が急激に膨張した作用で機体の破壊が起きる点では同じなので、事故調が隔壁開口の空気噴流によって破壊されたとする証拠は、気化燃料爆発の証拠にもなります。
違いは、爆発の方向、威力、継続時間、気体成分、ということになると思います。気化燃料爆発を否定するには成分の痕跡が無いことを確認する必要があるかと思いますが、それは事故調は確認してません。
目視では確認しているのでしょうけれど、爆発が瞬間的であれば目視では分からないレベルの成分の痕しかなかった可能性もあります。事故調が詳しく調査したのは、爆弾の爆発についての科学分析です。
こちらの消防防災博物館のシュレッダー爆発の実験が参考になります。
消防防災博物館のシュレッダー爆発の実験
爆発の威力はシュレッダー本体を吹っ飛ぶほどであっても、燃えやすいペラペラの紙片がほとんど燃えていないことが分かります。
羽田の衝突事故の瞬間的な爆発に包まれてもJALの機体胴体が燃えていないのと同じで、瞬間的であれば、燃えないのです。
爆発の方向については、気化燃料爆発の場合は、隔壁開口からの主に直進的な空気噴流とは異なり、全方向へ空気が膨張し、すぐに収縮します。爆発の余波もあるので、膨張と収縮は定常に向かって小さく繰り返されます。
順方向への噴流だけでなく、逆方向の噴流も発生しますから、どのような向きの折れ曲がり痕でも否定材料にはなりません。
全方向へ瞬間的に膨張するため、APU防火壁と垂直尾翼をほぼ同時に破壊脱落させることが可能となります。
同時に機体後部が破損し小さい空気穴が多数出来て、客室高度警報や酸素マスク落下については、爆発の収縮による減圧が一瞬だけ起きたものだと考えてます。
客室高度警報のスイッチは操縦室にありますから、天井裏やエアコンダクトを中継して減圧が伝わったと考えられます。客室内の気圧変化は局所的だったと考えられます。そのため霧も局所的に出現したと考えます。
以前の動画で独自の機内気圧変化シミュレーションも行って検証もしましたが、圧力隔壁破損説では局所的な気圧変化は難しく、天井裏も客室もほぼ同様に急減圧します。
ところで、機内気圧変化のシミュレーション動画で使用した機体モデル図は、モデル図なので、実寸とは異なります。あのモデル図で実寸の機内を再現するように調整したものです。
モデル図が簡略的なのは意図したもので、空気の大まかな流れを直感的に把握するためと、もともと大雑把な計算ですから、その誤差を少なくするためです。
事故調与圧空気流出の数値シミュレーションのように多くの小部屋に分割すると、それぞれの小部屋ごとにカオス的な挙動が出て、最終的には大きな誤差になることがあります。
単純なモデルのほうが大まかな空気の流れを確認することには適してますし、パラメータ調整で挙動が大きく変わるということもありません。
簡略化した部分の解釈方法は色々あります。事故調与圧空気流出の数値シミュレーションのモデル図が飛行機形状ではないのと同じで、実寸の配置とは全く異なる場合もあります。
ですから、実機と配置や面積比が違うから間違いという批判は、適切ではないのです。2次元で3次元を正確に表現できる方法はそもそもありませんから、実寸同様に出来ないのは自明なのです。
ちなみに、事故調与圧空気流出の数値シミュレーションでは主に各小部屋の接続点での計算しか行っていないという、極めて数学的なモデルになってます。実際の空気流はあらゆる3次元の点で移動するので、大きい誤差はありえます。
機内気圧変化のシミュレーションでは2次元のすべての点で計算してますから、計算量は全く事故調とは違います。どちらが優れているかは実機での実験データと比較しないことにはなんとも言えません。実機のデータはないので、比較できないです。
事故調の基準ケースのグラフと比較して挙動の大まかな正しさは確認しました。実寸よりも大きい開口面積のモデル図になってますが、あの図はあの図で間違いではないです。
例えば、モデル図の隔壁開口面積は実寸の比率と一致させているわけではないです。一致していなくても結果はなるべく正しい動きになるようにしてます。
圧力隔壁破損説と比較して仮説の確度が高いか低いかの相対的な評価をすべきだろうと考えてます。

爆発つながりで、いままで考えていなかった他の可能性も考えてみます。
機体後部で爆発しそうなものといえば、ひとつあるのは、油圧の作動油の配管です。
難燃性の作動油が発火して爆発したということではなくて、作動油自体の圧力で爆発する可能性があるかもしれません。
客室気圧は14psi程度ですけれど、作動油というのは3000psiにも達します。空気とは比較にならないほど、とてつもない高圧なのです。
作動油配管の破損によって、作動油が吹き出したら、かなりの勢いということが想像できます。
もしも、それが垂直尾翼の付け根を直撃したらどうでしょうか。破壊の痕としては作動油しか残りません。
参考までに金属を切断するウォータージェットの超高圧水は低い圧力のものでも300MPa(43500psi)はあり、マッハ2くらいで放出するらしいです。
運動エネルギーは速度の2乗に比例しますから、とてつもない高速流であれば、破壊力が大きくなる可能性がある一方で、
作動油の配管は細いので、単位時間あたりの噴出する作動油の質量は小さいとしますと、質量と運動エネルギーは比例するので、破壊のための瞬間的なエネルギーは小さいのかもしれません。
ウォータージェットと質量や速度を比較していないので、なんとも言えませんが、3000psiですと金属を切断するには圧力不足だろうと思います。
変形させるくらいは出来るかもしれません。
高圧といえば、エンジンからのブリードエアも高圧ですし、APUからの空気も高圧です。
垂直尾翼を破壊できる可能性のあるものは隔壁破損からの空気だけではないので、すこし、頭の片隅においておきましょう。
例えば、APUで生成される空気の圧力は30から40psiくらいはあります。客室気圧14psiと比べても圧力が大きいことが分かります。
報告書p60ではプレッシャリリーフドアの説明で「非与圧区域である後部圧力隔壁より後方の後部胴体内が何らかの原因(* 1)で加圧され、一定の圧力に達すると開いて加圧空気を機外に放出し、構造部材の破壊を防ぐ機能も有している。
(* 1) 加圧の原因としては、APU高圧空気ダクト及び後部圧力隔壁の破損等が考えられる。」
としていて、隔壁破損と併記してAPU高圧空気漏れでもプレッシャリリーフドア耐圧を超えることを語ってます。
APUが稼働していた可能性については後述します。


ところで、ラジオライフという雑誌の1986年2月号(電子書籍で2024年現在購入可能)にて123便事故原因考察の記事がありました。
その執筆時点は事故調査報告書が出る前ということもあり、外部飛翔体説や爆弾説などの話を出していて、それらは可能性が低いと見ていたようで、APU燃料の爆発説が記事のメインとなってます。
主翼内の燃料タンクからAPUへ供給されるジェット燃料の管が、尻もち事故の影響で最後部付近で疲労き裂が起こり、燃料漏れをし、高温の空気が作用することで気化、それが垂直尾翼に滞留し、爆発したという仮説です。
後方装備センターから水平尾翼を操舵する時に火花が飛び、引火した可能性が高い、という推測のようです。
他にもR5ドア下に油圧管が通っているなどの説明もあり、記事内容からして航空機に詳しい知識からの考察であることが分かります。
この記事の存在は最近知ったのですが、仮説の内容が自説と近いので、やはり気化燃料爆発は有力な原因の候補だなと感じます。

報告書p250には尻もち事故で機体後部の下側の破損部分が図示されてまして、APU周辺も破損がありましたので、APU本体もなんらかの影響が残った可能性もありますし、
APUへの燃料供給配管は主翼のほうから機体後部下側に引き入れられてますから、そのあたりの破損も多かったことは確認できます。配管になんらかの不具合を抱えたままだった可能性はあるかと思います。
報告書に記載されているAPU周辺の故障箇所を挙げておきます。APUドアフレームの亀裂、テールコーン後方下側フレームおよび外板の破損、B2658隔壁下側の破損、後方ドレインマストの破損、APUバッテリ室ドアーの変形、などです。
ここでAPUバッテリ室というのはAPU防火壁下部に設置されているのですけれど、もしもバッテリや配線に不具合を抱えたままだったとすると、そこから電気的火花が発生した可能性もあると考えてます。
実際にAPUバッテリの不具合で火災になった事故例というものもあります。
このように燃料の配管は後部を通っているにも関わらず、報告書としては爆発の痕跡は無いという主張です。
その意味するところを考えてみますと、燃料配管が異常事態発生時や墜落時に無事であったはずもなく、少なくとも配管内の燃料は飛び散ったと思われるのですが、燃料がこびりついていたという話は報告書にはありません。
つまり、報告書での爆発の痕跡がないという意味は爆弾に類するものに限った化学的な痕跡がないということですので、燃料の痕跡の有無とは関係ないということなのです。
また、爆風での破壊の痕跡がないという意味でもないです。なぜなら隔壁破損でも金属を破壊するほどの噴流があったとしているわけですから、破壊の痕跡がなかったというのは意味が通りません。
燃料の飛び散りは化学的に検出できなかったのか、それとも存在したけれども事故とは無関係として無視されたのかは、おそらく後者だと思いますけれど、
事故調やNTSBは爆弾以外の内部爆発としては、APU本体の爆発しか想定できていないので、
APU本体の破片が後部から見つからないものだから、そのシンプルな理由だけで早々にAPUやその燃料は事故原因ではないという短絡的結論にしたものと思われます。



窓に写っていた黒い点の写真について

以前の動画で、テントウムシではないかという推測を、窓に写っていた滴る体液の痕と解釈できそうな縦筋の証拠を示して考察しました。
こちらのリンクで縦筋の写真は確認できます。
朝日新聞デジタル(2枚目の窓の右下に縦筋)
例えばナナホシテントウを手の上でひっくり返すと黄色い汁が出たりします。
テントウムシは身を守るために足の関節から黄色の汁を出します。手に乗せるとひっくり返って死んだマネをして汁を出すこともあります。
また、テントウムシはガラス面を移動することもできます。
外部飛翔体説では、窓に写っていた写真の黒い点はいわゆる「オレンジエア」の飛翔体だという話があります。

あの縦筋については、ほとんど話題になることはないものの、外部飛翔体と解釈する説もあるようです。
写真を撮る際に窓に付いていたテントウムシを手で退けようとしたら体液が出てそれが窓に付着したという可能性があると考えます。
テントウムシは色々な種類がありますけれど、例えばナナホシテントウの大きさは5から6ミリで色は赤に黒斑ですし、
ナミテントウは大きさ5から8ミリで色は黒にオレンジ色の斑点ですからオレンジ色に写った可能性もありますし、また黒い色が夕日に反射した可能性もあります。
写真の時刻は富士山以外のランドマークがほとんど映っていないため、正確にはわかりませんが異常事態発生以前であることは確かです。
僅かに、富士山の左側稜線の少し上に白い山肌らしきものが見えます。山肌なのか、雲なのかは今一つ判然としませんが、これをたよりに撮影地点を探すと、
南房総沖の右旋回をするあたりで同じような白い山肌らしきものが同じ位置に見えることが分かりました。
白い山肌らしきものは、航空写真で確認しますと山梨県南巨摩郡の七面山であることが分かりました。単に雲や窓の反射が山肌に見えているだけの可能性もありますが、他の雲とは色が少し違います。
確かに七面山の山肌は片側が大きく崩落していて抉れているので白くみえるのです。形としては写真の白い部分と似てます。「七面山大崩れ」と呼ばれ、1854年の安政東海地震による崩壊という話です。
時刻は18時19分30秒付近です。高度は約14000feet(=4267m)です。丁度、千葉県房総半島の南で右旋回したあたりの地点です。
北緯35.02819078610152, 東経139.7515634539327 あたりです。
google earthで14000feetからの表示
※google earthのメニューでは「ツール」-「設定」の表示設定 レンダリング品質は最高設定がおすすめです。
google earthで14000feetからの拡大
ここから富士山を見た図



白い部分の拡大。扇型のような山肌の形

この画像を重ねた場合、富士山の右稜線に雲がかかっているようにも見えます。
また、写真の空と思われる範囲にはグラデーションがあるのですが、その傾きは地平線の傾きと一致してます。
単に雲の模様というだけかもしれません。はっきりしないので気のせいかもしれないです。
機首のピッチ角はDFDRから読み取りますと上向き5度程度で、仮に場所予想が違っていても、どちらにしても異常発生地点まで5度から3度程度のピッチ角です。
窓枠に対して、上記の図は約5度傾いているので、ピッチ角5度とすると、窓から見える景色の傾きとしては一致するので矛盾はありません。
一方で写真の直線状の縦筋の角度は窓枠に対して機首とは逆向きの約2度でした。
要するに、重力方向と約7度の差があるのです。これを重力方向に沿っていると言ってもいいのかどうか微妙なところですが、許容範囲かと思います。
そうしますと、体液が滴った可能性が高いです。黄色の汁だとしますと、背景の青色と重なって黄緑に見えるはずです。写真の筋の色もそんな色です。
また、滴った一番下のあたりで、固形っぽい溜まりとなっている黒い部分があり、その溜まりの先にも少し滴りが見えます。
固形っぽい部分を外部飛翔体だと解釈する場合、機首より前方に筋が発生していることになり、
そうであれば、123便に向かうように方向転換した直後で、後方の煙などの筋が重なって見えたとするしかないように思うのですが、
しかし、煙はもっと広がるはずですからやはり無理がありそうです。したがって、外部飛翔体ではないだろうという見立てをしてます。
黒い点の大きさを写真から計測したところ、窓の縦幅と比べて約1/54でした。
窓サイズ(123便の窓サイズが分からなかったので、B747の一般的なサイズ)は10x14インチ(35.6cm)なので、黒い点は6.6mmになります。
テントウムシのサイズと一致しました。
黒い点に関しての動画を出したあとで気が付いたのですけど、黒い点の3cmくらい右上にも細い縦筋があるようにも見えます。同じテントウムシからの体液かもしれません。
高解像度の写真でないと縦筋が見えないくらいわずかな線ですからはっきりとはしないのですが、縦筋とすると、外部飛翔体ではないという話になります。黒い点から離れてますからね。
黒い点は完全な円ではないので、少し羽を広げかけたテントウムシのようにも見えます。
輪郭がぼけているので正確には分からないのですけれども、ぼけ具合に方向性がなく全体的に輪郭がぼけているので、窓にムシが付いていて静止しているとして矛盾はないです。
確実な証拠とまではいかないのであくまで現実的にありえそうな最も高い可能性の話です。

撮影方向の正面に富士山があるとしても、窓枠を見ますと、少し斜めになってますから、どちらかと言いますと、真横よりは少し前方に富士山は位置してます。
そこで、窓枠の角度から、機首方向とどのくらいの角度のずれがあるのかを3Dモデリングしてみて簡易的に計測しましたところ約10度でした。写真の見た目でもそのくらいだと思います。

つまり、機種方向を80度時計回転した方向に富士山があると考えられます。
機種方向を進行方向と見立てますと、前述の撮影予想地点とほぼ一致します。

赤線が富士山と撮影予想地点とを結ぶ線です。それに直行する線が緑線です。青線が進行方向でそれは赤線と80度の角度差があります。赤線と青線の交差点が事故調予想航跡上での撮影予想地点です。
伊豆河津駅前からの目撃証言があてにならないとするなら、事故調航跡上を飛行したとすればいいので、この地点でいいと思います。
伊豆河津駅前からの目撃証言を考慮しますと河津付近では4kmほど北にずれていた、としたほうがいいので、この地点でもすでにずれていたとしたほうがいいのかもしれません。
この赤線上で、もう少し北西にずれていた可能性はあります。(黒い点の位置も同じ理屈で少しずれている可能性はあります。)
赤線上でしたら、多少富士山との距離が違っていても撮影方位としては同じですから、見た目に変化はあまりないので矛盾しません。
2kmほど富士山に寄った位置
google earthで14000feetからの表示(2kmほど富士山に寄った位置)

※伊豆河津駅前からの目撃証言がどの程度あてになるのかは、報道のぶれが大きいのでよくわかりません。

黒い点のほうの写真の撮影位置は地形がはっきり写っているので次のあたりで確定です。時刻は18時17分20秒あたりだと思います。高度が11000feet(=3353m)くらいです。
google map 黒い点の撮影位置
google earth 黒い点の撮影位置
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外部飛翔体とするなら、この位置から、異常事態発生地点まで追いかけた?という話になり、現実性が極めて薄くなります。
試しにこの位置をもう2kmほど西へ移動して富士山寄りにしてみます。似たような構図ですからこのくらいの誤差があったとしても矛盾は出ないかと思います。
google map 黒い点の撮影位置 2km西に移動
google earth 黒い点の撮影位置 2km西に移動
近い場所に地形が写ってますと差異が分かりやすいのですが、そうでない構図の場合はあまり違いは出ないです。

コンビナートが写っている写真はこのあたりの位置からの構図です。羽田離陸からまもなくの位置です。写真中央に富士山が写る構図ということが分かります。
google map コンビナート
google earth コンビナート

ところで、機内で酸素マスクが落ちている様子を写した写真はどの時点で撮影されたものでしょうか。窓からの景色は写っていないですし、フラッシュ撮影なので、太陽光の向きもよくわかりません。
ヒントとなりそうなポイントを挙げておきます。
・乗客は酸素マスクを装着していること。酸素マスクに手を伸ばしている人はいないこと。
・客室乗務員が半袖で酸素マスクのようなマスクを片手で押さえながら真っすぐ立っていること。
・乗客は救命胴衣を着ていないこと。安全姿勢はとっていないこと。
・装着していない酸素マスクの垂れている角度、天井の酸素マスク落下のために開いたパネルの角度は、機体が揺れているような乱れがないこと。
・機内に物が散乱していないこと。
・立ち上がっている乗客がいないこと。肘掛を利用していること。
・霧が写っていないこと。カメラのレンズに水滴や曇りがないこと。大きな手振れはないこと。
また、酸素マスク落下は異常事態発生後3秒程度のほぼ同時です。酸素マスクから酸素が出るのは15分間程度です。
救命胴衣は酸素が切れる頃に着始めたという生存者証言がありますし、酸素マスクは落下してすぐに乗客は付け始めた様子も語られているので、
ある程度はマスクが付け終わって、酸素が切れる前までの時間帯であることはおそらく間違いないでしょう。
客室乗務員が装着しているのは携帯用酸素ボトルだろうと思うのですが、ボトルが見えないのでよく分からないです。
紐で肩にかけていてボトルは体の右側にあるのかもしれません。手でマスクを押さえる必要があるものなのかもよく分からないです。
両手が自由にならないと業務に支障が出るような気はしますので、あえて、マスクの付け方を乗客に見せているのかもしれないです。
ということは客室乗務員が酸素マスクの装着指導をしている可能性があります。
装着指導用のダミーの酸素マスクという可能性もあるのですが、どうでしょうか。しかし、酸素を吸わないで歩くという選択はしないでしょう。
乗客が装着している酸素マスクは、頭にゴム紐で装着するタイプですから、手で押さえる必要はないです。マスクを引っ張ると酸素は出始めます。
写真右側手前の酸素マスクチューブは、すぐ下の席ではなくて、少し前の席で使用してますね。
他にもチューブが斜めに張っているようなところがあります。
近すぎてひっぱらないで酸素が出なかったから別の場所から取ったのかもしれません。
これだけの情報では撮影時点は特定できないのですけれども、異常事態発生から1分程度経過したあたりなのかなと個人的には思ってます。
異常事態発生から1分程度はまだ、ダッチロールが激しくなく、機体の角度が比較的安定していたからです。
とりあえず、客室が氷点下には見えないです。
ちょっと気になったのは、左上の天井の収納スペースの扉の取っ手になにか垂れ下がっているのはなんでしょうかね。取っ手の一部?中からはみ出てるの?


異常事態発生時にAPUが動作していた証拠?

報告書p56の一覧表ではAPU回転計は32%と掲載されてまして、これが異常事態発生時のAPU(補助動力装置)の状態を示している可能性があります。
APU回転計とはRPMと描かれた補助動力の回転数、いわゆる自動車やバイクで言うところのタコメーターのことです。航空機関士の前のパネルの一番左上(前述リンクのコックピット写真ですと見切れている位置で映ってない)にありまして、単位は%と描かれたタイプもありますので、123便でもそのタイプの計器だったようです。
空港でのエンジンスタートに使用可能なAPU回転数は95%以上ですから100%近くの値で使っていたはずです。
回転数32%の表示になっていたということは、異常事態発生時点でAPUは動いていたとも解釈できるのです。
APUのスイッチというのはSTOP(OFF),ON,STARTに切り替え可能となってまして、APU自体を起動する時に一時的にSTARTにしますが、すぐにONに戻ります。
そしてAPUをシャットダウンする場合にSTOP(またはOFFの表記)にしますが、OFFにしてから2分程度でゆっくりと回転数を落としてAPUが停止します。
APUが通常通りシャットダウンされていたならAPU回転数は0%になっていたはずです。ですから、32%になっているのはAPUが起動途中またはシャットダウン途中しか普通はありえないわけです。
APUのスイッチをOFFにするのは手動操作ですからOFFにするのを忘れたのか、それともOFFにしたけれども不具合で停止するまでに時間がかかったのか。
100%ではなく32%というのも、ゆっくりと回転数が落ちる途中だったのか、それとも不具合で一気に燃料が漏れたから回転数が落ちたのか。ということが考えられます。
APUの状態を確認するのはAPU回転計よりも、EGT(exhaust gas temperature)つまり排気ガス温度のほうで確認するほうが一般的のようです。
B747 classic機ではどちらも航空機関士の左上の遠いところに位置しています。
123便でAPUのスイッチは確認していたとしても、これらの計器を見ていなかった可能性もあるかと思いますし、特にAPUが起動したままだからといって、なにか飛行に問題が出るわけでもないです(燃料は少し余計に消費しますけど)から、
仮にシャットダウン操作はしていたとして、その後に回転数が落ちるのが異様に遅い不具合があったとしても気が付かなかったことがありえるのかもしれません。
または、シャットダウン操作をしていなくて、異常事態発生の1分前あたりで行った可能性もあるかと思います。
副操縦士の機長昇格試験中でしたから、いつもとは雰囲気が違っていて、いつもとは多少違う手順になることもありえそうです。
ところで、航空機の知識がある人でしたら、APUはエンジンスタート後にシャットダウンするものという常識があると思いますし、未確認情報ですけど、1985年当時も日航では飛行中にAPUは使用しない規定があったという話もあります。
規定通りでないことも許容されていたかもしれませんし、運用ミスの可能性もあります。
特に事故というのは全部がいつも通りであれば発生しないわけなので、なにかがいつもとは違うから発生するのです。いつもと違うのがAPUと疑ってみることは必要でしょう。
実際はどうだったのでしょうか。
例えばB747-400の誘導路滑走前(Before TAXI)のチェックリストではAPUのOFFを確認するという手順がありますし、
B747-200のフライトシミュレーターで、誘導路(TAXI)のチェックリストでOFFを確認しているものもあります。
B737-700のチェックリストでも誘導路滑走前(Before TAXI)でAPU OFFとなってます。
1990年代のB747のチェックリストではTAXI&TAKEOFFにAPU OFFがあります。ここでのTAKEOFFというのはAFTER TAKEOFFの前の項目なので離陸前を意味してます。
なるほどそうしますと、離陸後のフライト中にAPUがONになっていることはありえなさそうに思えるのですが、
念のためもう少し情報を探してみますと少し事情が違ってきました。B747-200のチェックリストで離陸前までにはAPU OFFの確認がないものがありました。代わりにAFTER TAKEOFF(離陸後)でAPU SHUTDOWNを確認してます。
1960年代のボーイングの資料では、B747-151のチェックリストで同じく離陸前までにはAPU OFFの確認がなく、AFTER TAKEOFFでAPU SHUTDOWNの記載があります。
123便ではどうだったのか微妙になってきました。どうやら昔の運用は今の常識とは異なるようです。しかし、これ以上情報を探すことができませんでした。
仮に123便でAFTER TAKEOFFでAPUのSHUTDOWNを確認していたとしても、OFF操作をするタイミングは離陸前ということもありえるかとは思うのですが、
しかし、APU回転計の値を信じるならAPUは稼働していたということで、結論としましては異常事態発生時(離陸12分後)にAPUが稼働していた可能性が少しはありそうなのです。
離陸後(AFTER TAKEOFF)というのが離陸後何分後までにやることなのかはよく分からないのですけれども、機長昇格試験中という特殊な日であれば、いつもより遅いタイミングになったこともあるかもしれません。
APUが正常であればOFF操作から2分で回転数はゼロになりますから、圧力隔壁破損説に沿って考えますと、たまたま圧力隔壁に異常が発生する前の2分間の間にOFF操作をしたという時間的な偶然の確率というのはかなり低いです。
(APUで生成されるエア温度の状況によりますが、初めの1分間がエア冷却時間で回転数を落とさない動作があります。エンジンスタート直後にAPUをOFFする場合はそのような動作となります。そうでない場合は待ち時間なしで1分間でシャットダウンします。)
それよりむしろ、何らかの不具合でAPUから燃料が抜けたから回転数が下がったと考えたほうがタイミング的には必然性があるので可能性が高いかと思います。
APU回転計の値はAPUがON状態だった物証になりえます。APU故障からの気化燃料爆発説を後押しする状況証拠です。
一応、冷静に考える必要があって、墜落時のショックでメーターが壊れて針の角度が適当に変わっただけな可能性もあります。一般的にタコメーターには機械式と電気式があり、ゼロ位置に戻るばねが実装されているタイプが多いです。
そのタイプの場合は入力が無くなったら自動的にゼロに戻るのが普通です。ただし、例えば電気式でステッピングモーターで制御されている場合はバネが無いことがありえますので、入力が無くなった時点の角度を保持している可能性があります。
航空機のメーターは電気式です。自動車やバイクのステッピングモーター式タコメーターが一般化したのは1990年代かららしいので、1985年当時に航空機で使用されていたのかも分かりません。
ただ、墜落時にバネが壊れたということなら、針(ポインタ)はプラプラして計器を傾けただけでも値が変わりそうです。
他の計器で「不明」と記載しているものは多いですから、計器自体が破壊されて針の位置が定まらない状態なら不明と記載したはずです。
また、ポインタだけ変形していたとすると、他の計器で、「ポインタ変形」と記載されているものがあるので、そのように記載したはずです。
他の計器で値が示されているものも多く、値が示されている計器というのはフライト中の値だった可能性もあるのです。
このように、いろいろな可能性がありえるのですけれども、異常事態発生時の値である可能性はやはり残ります。
加えて、APUのバッテリはAPU稼働時にはONにすることが規定されてますので、APUが起動中だったということであれば、バッテリも起動していたとみていいです。
APUのシャットダウン途中にたまたま圧力隔壁が破損したなんて偶然はありそうにないので、やはり事故原因にAPUが関係していたかもしれないと疑って徹底的に再調査すべきです。

さて、表内ではAPU油量計が0.3USgalと記載されてまして、この計器も同じくパネル左上にあります。APUがOFF時(おそらく通電があれば)でもON時でも同じ値を示す計器です。
OIL QTYと描かれたメーターで、単位はUS QTSです。
これはAPUが使用するオイル量(oil quantity)を表してます。最大が4US QTSで、4quart=1gallon=3.78リットルです。
オイルというのは燃料(fuel)とは異なるものです。APUの使用する燃料は主翼のほうのタンクから燃料配管(APU fuel line)で引き入れてます。(主エンジンと燃料は共用)
このメーターでは1.0US QTSまでの目盛りは赤色でして、つまり通常運用であればそれ以上の値となっていたはずです。0.3USgal=1.2US QTSなので、1以上ですけれどもギリギリですね。
APUがOFF時でも表示できるメーターということは、オイルタンク残量を表示しているだけです。異常事態発生時の値が残ったのか、それとも異常事態発生後にメーターの針が動いたのか。
オイルタンクはAPU本体に付属してますし、APU油量計はAPU本体に付属するギアボックスにあるオイルポンプあたりから値をとってきてます。
そうしますと、そのあたりは異常事態発生時に瞬時に吹き飛んでいるのだから、APU油量計はその時の値のまま固定されたという可能性が高いんじゃないかなと思うのです。
もしも異常事態発生時の値だとすると、1.2US QTSというのは値としては低いので、APUに異常があったから低いのかもしれません。
APU回転計とAPU油量計の値の低さはなにか重要なメッセージとも思えます。
APU燃料がどこかで漏れがあれば回転数が落ちる可能性はあると思いますし、オイル漏れがあったとしたらAPU本体にクラックがあって内部から気化した燃料が漏れた可能性も出てきます。
瞬間的に異常が起きたとすれば、警報が作動する時間的余裕も無かったということも考えられます。

※(訂正)別件で、以前の動画で「APUの空気取り入れ口はR5ドアの近く」と言ってしまいましたが間違いです。正しくは垂直尾翼付け根後部の胴体右上あたりです。該当動画のコメント欄に同様の訂正を記載しました。

あとは、他の事故例を見てみますと、APUの配管で火災があっても火災警報が鳴らない事例というのもあります。機種がエアバスA320なので違うのですけれども、参考にリンクを示します。
火災警報が鳴らない事故例
「because the fire was located in the APU tailpipe, it did not activate the APU fire detection system and consequently there was no fire warning.」
と記載があります。
それと、こちらは123便とはAPUの型は違うのですが、B747でAPUの火災の事例もあります。
B747でAPUの火災
p7ではAPU本体にひび割れがあり破断した図が掲載されてます。

APU回転計の値が墜落時の衝撃で適当に変わったのではない根拠として、報告書の同じ表のN2回転計の値を見てみましょう。
エンジン4つに対応しているものです。回転計としてAPU回転計と設計が同じかどうかは知らないのですけど参考にはなります。
航空機関士前のパネルの左に計器が密集している場所がありまして、左の列から第1,2,3,4エンジンと並んでいて、一番上の行がN2回転計です。
N2回転計はエンジン推力に近い指標ですから、DFDR(フライトデータ)のエンジン推力(EPR)が墜落時にどうなっていたかを報告書から探してみたいところですが、
DFDRのグラフでは詳細が掲載されていないので、代わりに報告書付録の事故調の解説を抜粋します。
p110「18時56分23.4秒ごろ、前後Gの加速度計に横向き約0.14Gの衝撃が記録され、それを期にいまだかつてないほど急激に右バンクが増え始めるとともに、
ようやく上向いた機首が再び急激に下向き始め、このとき以降右側第3、第4エンジンのEPRが異常な速さで低下、特に第4エンジンはとどまることなく出力零を示すEPR=0.5まで下った。ただし、左側第1,2エンジンのEPRは正常であり、第3エンジンはEPR=0.86ぐらいに踏みとどまった。」 「18時56分26.5秒ごろついに左側第1,第2エンジンのEPRが一本から松との接触における第4エンジンと全く同様に異常な低下を示し始め、続いて第3エンジンのそれも低下する。」
となってます。EPRとはエンジン推力のことです。
この解説で分かることは、第4エンジンは0になり、第3エンジンもかなり下がった。1秒遅れて第1、第2エンジンは低下し始めた。第3エンジンもさらに下がった。ということです。
ということは、値が低い順に並べますと、第4、第3、(第1または第2)となるはずです。
それでは先ほどの表でN2回転計のポインタ値をみてみましょう。
No.1が6%で、No.2が47%で、No.3が3%で、No.4が0%です。DFDRのEPRの状況と合ってます。墜落現場に回転計の正しい値が残った証拠です。
予想順番と偶然一致する確率は1/12(=8.3%)です。加えてNo.4が0%というのが完全一致としますと、確率的には偶然の一致ではないでしょう。
そして4つのうちの3つの回転計がゼロではないということは、バネでゼロに戻るタイプではない可能性が高いということも分かります。
このように、回転計という計器が示す値が間違っているという結論は出ないので、そうしますとAPU回転計の値も信用してもいいのかもしれません。
そもそもAPUが動作していなかったというのは、普通の運用ならOFFにしてたでしょ、という証拠の伴わない思い込みにしか過ぎないので、なにかの証拠でもって否定されたことではないです。
本来はもっと調査の対象になるべきことなのに、思い込みで事故調査のまだはじまりの段階でその可能性は完全に排除されてしまいました。
仮にAPU本体の爆発がありえないとしても、APUの動作不良やAPUに供給する燃料やAPUから出力される圧縮空気が関係している可能性もあるわけですし、
OFFスイッチの動作不良でOFF操作をしたがシャットダウンされていない可能性だってありえると思うのですけれども、その単純な可能性すら想像できていないのです。
APU回転計の値というのはおそらく事故現場で確認できていたわけですから、APU関連の可能性を早々に排除した調査方針が正しかったとは思えません。

APUの残熱の可能性として以前の動画で他の事故調査報告書で15000feetまでAPU使用が制限されていないという記述を紹介しました。
以下の参考リンクは、これがどれほど信頼できる情報なのかはわからないのですがその15000feetという数字も出てきたりしますし、かなり航空機に詳しい人の情報だろうと思います。
In what conditions is the APU used in midair?
「離陸時には、APUブリードエアを使用して客室空気圧システムに供給し、エンジンへの負荷を軽減できます。」と回答されてます。 他の人の回答では、「電力要件が高い場合 (高温で高温の条件など)、メインエンジンの負荷を軽減するために使用することもできます。」となってます。
以前の動画でもTWA800便事故と同じく、夏という季節、離陸後12分での爆発、は偶然の一致ではない、という趣旨の話をしました。8月12日は特に負荷が高い日であったことは想像に難くありません。
回答では「25000feetを超えると操作が許可されない」との話です。123便の異常事態発生が24000feetですから、なにか切り替えが働いたタイミングだったとか?わかりませんが、APUが動作していたことは、ありえなくはないかもしれませんね。

別件で動画で言葉不明と説明した「ぎぼんスイッチですやはり」と聞こえるというのが、APUモード切替スイッチがONのままだったのがやはり原因だったという意味と仮定した場合、「KEEP ONスイッチですやはり」だったら?と考えました。
それっぽい一般的な英熟語を無理やり当てはめてみましたが、音としては近いですし意味も通りますので、それが正しい可能性が高いと思っているわけでもないのですが、一つの候補として加えておきます。
そういえば、第一次中間報告でのCVR解析では「スイッチを押している方がいらっしゃるんですがよろしいでしょうか」となってましたね。スイッチがなにかこの事故に関係している?「ぎぼんスイッチ」ではなく「基盤スイッチ」?可能性としては残しておいてもいいですね。
スイッチの電気信号がきっかけで電気的ショートが起こり燃料に引火して爆発というストーリーもありえます。
なぜ中間報告が「スイッチを押している方」としていたのかというのは謎です。言葉の長さが長すぎですし、どういうシチュエーションなのか分からない不思議な文章ですよね。どこか他の時点の声で「スイッチ」という単語が聞こえたからこそそれをあてはめたのかもしれませんね。

以前の動画でも要点は説明しましたが、航空燃料JetAが爆発する条件というのがありますのでご紹介します。カリフォルニア工科大学でのTWA800便の研究資料です。
Explosion Research at Caltech and TWA Flight 800
このページの図によりますと、爆発するための領域というのが赤色のexplosiveと記載されている部分でして、
横軸が温度で、縦軸が高度となってます。123便にあてはめますと縦軸は24の位置(24000feet)になります。
そうしますと、爆発可能な横軸の位置は約20度ということになります。
つまり、外気温(123便の24000feetではDFDRによると約-15度でした)のままですとsafeなのですけれども、なんらかの熱源があって温まっているとexplosiveになります。
興味深いのは温度が高すぎてもsafeになるようなので、温度条件に上限と下限があり、そのようなexplosiveになりえる条件が揃う環境が必要ということです。
地上では下限温度が高く、上空のほうが低いので、上空のほうが温まると危険度が増すということも分かります。
おそらく、その熱源や気圧や気温の条件が揃うのが、TWA800便や123便の事故が起きた夏場の離陸後12分なのだろうと個人的には思っているわけです。
灯油がミスト状になった場合には常温でも火花で着火できるという参考動画のリンクを示します。ミストは文字通り霧のように見えます。爆発で燃え煤も見えません。
高引火点引火性液体ミストの静電気放電による着火実験

また、通常、地上での酸素濃度というのは20%程度ですけれども、酸素濃度によって火災の燃焼持続の限界がありまして、材質にもよるのですが、だいたい15%です。
こちらに参考リンクを貼っておきます。
消防科学研究所報 密閉室内の燃焼性状に関する研究
つまり、酸素濃度15%以下では自動的に火災は鎮火するので、仮に24000feet上空で火災が発生したとしても自動的に鎮火した可能性が高いです。


アウトフローバルブ

報告書p54の一覧表についてですが表にあるアウトフローバルブ位置指示器(メーター)は前述で少し触れてますけど右が全閉で左が25%開、となってます。
これは少し違和感があります。アウトフローバルブとは与圧領域の余分な気圧を下げるために外部に空気を逃すバルブです。
ですから、圧力隔壁に大穴が空いて与圧が下がりきっているとすると、アウトフローバルブなんて開く必要など無いですし、機内気圧をなるべく逃さないようにアウトフローバルブは左右どちらも閉じているはずです。
なのに、なぜ左が25%開だったのでしょうか。事故調がやっていたシミュレーションでは左右どちらも初めから最後まで全閉として行ってます。
一つの理屈を考えてみました。アウトフローバルブ制御が自動モード(AUTO)で、アウトフローバルブ位置指示器が墜落時での値を示しているのなら、墜落時は、機内が地上気圧とほぼ同じで客室高度警報は鳴っていないので、エアコンから客室に入った空気を排出するために自動的に左が25%開になっていた、という理屈です。
普通は、自動モード(AUTO)のままでの設定(変更が必要であれば航空機関士が操作します)で運用しますが、
しかし、事故調の想定するような7秒で外気圧まで下がるような減圧を航空機関士が認識していたなら、緊急時の手順としてはアウトフローバルブ制御は手動(MAN:Manual)にして全閉します。この場合はどこかの時点でわざわざ25%開にするか、途中で自動モードに切り替える必要があります。
つまり、25%開いていたというのは、いや、そうはならないだろうなと思うのです。
隔壁に大穴が空いていたなら、いくらエアコンからの空気流入があろうとも与圧領域の気圧が上がりすぎるなんてことにはならないので、自動モードであっても開くことなんてありそうにないです。
スイッチ類の状態は損傷が大きかったため、報告書にはその状態は記載されていませんから、実際はどのモードだったのかは不明です。
隔壁に大穴は空いていなくて、減圧の緊急性を航空機関士が認識していない状態で、アウトフローバルブ制御は自動のままだった、という条件でないと辻褄が合わないのではないかと思うのです。
一応、アウトフローバルブは機体後部の下部にありますから、そこが異常事態発生時に破損していれば、値は信用できない、もしくは異常事態発生時の状態が残ったということはあるのかもしれませんし、墜落の衝撃で値が適当に変わっただけかもしれませんから、
確実な証拠というほどではないものの、圧力隔壁破損説にとっては不利な状況証拠に違いありません。報告書ではそういうのはスルーで説明もしてないですからつい見過ごしてしまいがちです。


オートパイロット解除のサイレンが鳴らなかった件


123便ではオートパイロットが異常事態発生後すぐに解除(ディスエンゲージ)になってますけれども、
その時に解除のサイレンが鳴った形跡がCVRには記録されておりません。このことから、約1秒程度で鳴りやんだ警報音が客室高度警報ではなくオートパイロットの解除のサイレンだったのではないか、という説があるようです。
事故調としては解除のサイレンが鳴らなかったのを原因不明としているのですが、以前の動画でも解説してますけれども、スイッチの素早く2度押しでサイレンが鳴らない操作があるようですので、機長がそのような操作をしたのだろうと推測してます。
2002年10月21日 ボーイング式747-400D型の事故調査報告書
こちらのリンクでその詳細が確認できます。以下は抜粋です。

「オートパイロットは、私がオフにしたのか、あるいは、オフとなったのかははっきりしない 機体がコントロールできている状態だと確認したときはオフであった」
「オートパイロットがオフとなった時のウォーニングは何も確認していない。」
オートパイロットは、エンゲージと記録されていたが、DFDR及びACMS記録ではオートパイロットのエンゲージ、ディスエンゲージの記録レートが1秒に1回であること、
また、ディスエンゲージとなってから記録されるまでに時間の遅れが最大で1秒以上あることから、ほぼ同時刻にディスエンゲージされ、その後、機首下げ操作がされたものと考えられる。
同57分42秒、オートパイロットはオフとなっているが、2.11.5に記述したように、オートパイロットに不具合があったという記録がないこと、
また、CVR記録にオートパイロットが切れた場合に発生するオーラル・ウォーニング サイレンが記録されていないことから、
操縦士が、通常、オートパイロットをディスエンゲージする際に行う、ディスエンゲージ・スイッチを素速く連続して2回押す操作により、オートパイロットをディスエンゲージしたものと考えられる。
この時のオートパイロットのディスエンゲージ操作については、PFであった副操縦士が、機長が意図的に行ったのか分からないが自らは行ってはいない旨を口述していること、
また、機長は、はっきりしないが自ら行ったか、あるいは、オートパイロット自身がオフとなってしまったと口述していることから、スティック・シェーカーが作動したことに素早く対応するため、機長が行ったことが考えられる。
運航乗務員は、事故時の飛行においてオートパイロットがディスエンゲージとなったことに関し、オートパイロットの不具合を示す事象又は計器への表示があったという口述はしなかった。
(2) エンゲージ、ディスエンゲージ機能の点検
同機に電源及び油圧を投入し、オートパイロットのエンゲージ、ディスエンゲージ機能の点検を実施した。
オートパイロットをエンゲージしてから、操縦輪のディスエンゲージ・スイッチを1回押すと、オートパイロットがディスエンゲージし、マスター・ウォーニング・ライトが点灯し、オーラル・ウォーニング(サイレン)が作動した。
また、ディスエンゲージ・スイッチの1回目に続く2回目の押し操作で、マスター・ウォーニング・ライトが消灯し、オーラル・ウォーニング(サイレン)が鳴り止んだ。
この作動の状況は AOMに記載されているとおりであり 正常であった
なお、CVR記録には、オートパイロットがオフになった時刻にオーラル・ウォーニング(サイレン)は記録されていなかった。
CVR記録というのは事故時のCVRの意味ですから、事故時にはサイレンは鳴っていないということです。
素早く2度押しの可能性が高いのだろうと思うのです。


8室分割シミュレーションについての検証


以前の動画で、機内気圧変化の独自の2次元シミュレーションを解説してまして、それによると、垂直尾翼はかなり破壊が難しいという結果でした。
そのシミュレーションの機内の区画分けは大雑把なものでしたので、今回、新たに事故調査報告書別冊付録掲載の8室分割シミュレーションに近い形の数値シミュレーションソフトウェアを作成しました。
計算方法は簡易なものなので事故調とは異なる(独自の2次元シミュレーションとも異なる)のですが、おおよその気圧変化が予想できるはずです。
この簡易計算が事故調計算と比べて現実の現象からの違いが大きいかと言われれば、必ずしも大きいとは限りません。どちらが現実に近いかは実機での実験データと比較しない限りは不明です。
実機での実験データはありませんから、本来はどの計算でも仮説を補完する参考程度の精度と考えるべきであって、絶対的に信用できるものではないということは知っておいてほしいです。
本シミュレーションはブラウザで動作しますので、下記リンクからだれでも使うことができます。各区画での圧力変化をグラフで確認できます。
隔壁開口面積や垂直尾翼耐圧など、多くの主要パラメータは変更できるようにしました。
ブラウザ内で計算しているためページ更新に10秒程度かかりますが、その程度の時間で全部の計算ができますから、様々な想定を実験できます。
例えば、数秒後に隔壁開口が閉じたらどうなるか、プレッシャリリーフドアが開かなかったらどうなるか、R5ドアから空気漏れがあったとしたらどうなるのか、
垂直尾翼への空気口の面積を大きくしたらどうなるか、APU防火壁耐圧が高かったらどうなるか、アウトフローバルブ(初期設定ですと常時閉じたまま)が開いていたらどうなるか、などを実験できます。
出力データもコピペで取得できます。
独自の8室分割シミュレーション
※アニメーションで確認する場合は上記で実行後にこちら独自の8室分割シミュレーションのアニメーション表示で確認できます。各室の色が変化します。

このシミュレーション結果を確認しましたところ、大筋で以前の動画の2次元シミュレーションとも結果が一致しました。
やはり同じように事故調の標準的な設定値では垂直尾翼は脱落しないという結果です。垂直尾翼内の気圧(room3黄色線)は耐圧(黄色の破線)まで上がりきらないうちに低下します。
room3黄色線の最高気圧は0.23秒時の9.361psi(外気5.696psiとの差圧は3.665psi)という結果でして耐圧(差圧)の4.75psiを下回りました。
気圧の上昇カーブの傾向は計算方法が違っていても似ていると想像できます。グラフの通り垂直尾翼内の気圧上昇は0.5秒程度しか継続しないわけなので、
事故調の計算では垂直尾翼は破壊できるとしているものの、この結果から推測しますと、耐圧をわずかに超える程度で破壊できた計算なのだと思います。
複数の条件が整う偶然が重ならないと破壊は出来ないと考えられますし、出来たとしても一部分の損壊にとどまる可能性が高いです。
いくつか波形のスケールを調整するパラメータを設定できるようにしてますが、それらをいろいろ変更してみてもなかなか垂直尾翼を破壊できないことがわかりました。
一応、room3(垂直尾翼中央部)からroom4(垂直尾翼前方部、水色線)へ空気が流れ込み、ドーサルフィンの耐圧を越えているのは確認できます。
しかし、垂直尾翼の耐圧をかなり低くしないとroom3での破壊は難しいです。以前の動画の2次元シミュレーションと同じです。
後述の垂直尾翼部分構造内圧破壊試験では外部空気力0.5psiなどを考慮すると4.0psiの上昇で垂直尾翼は破壊可能としてます。
報告書付録p75にはAPU防火壁と垂直尾翼の横軸が時間で縦軸が圧力のグラフが掲載されてます。

APU FW LIMIT 4.00 PSI と書かれた横線がAPUの耐圧4psi(=27.59KPA)ですから縦軸の27.59KPAの位置に描かれていることが分かります。
VF LIMIT (UNDER CP=-0.21) 4.75 PSI と書かれた横線が垂直尾翼の耐圧4.75psi(=32.76KPA)ですから縦軸の32.76KPAの位置に描かれている?いや、違いますね。
描かれているのは約30KPAの位置ですね。この説明としては報告書付録p57
「垂直尾翼の耐圧限界線は、翼面上の圧力の影響(圧力係数で-0.21、圧力で-2.83キロ・パスカル(-0.41psi) )を考慮してある。」
ということです。4.75-0.41=4.34psi=29.92KPAなので確かにその縦軸の位置のようです。
ということは、独自のシミュレーションでも垂直尾翼の耐圧として4.75psiではなくて4.34psiを設定したほうが事故調のシミュレーションにやっていることが近くなると思います。
試してみますと垂直尾翼の耐圧を4.75psiから4.0psiと変更しても破壊はできませんでしたが、3.6psiに下げると次のように破壊されました。事故調のシミュレーションに近い結果ではないでしょうか。

縮小グラフも示します。

room1のオレンジの客室グラフは約8秒で外気圧に近くなってます。やはり客室気圧変化からしますと、乗客が気圧変化や風をほとんど感じていないのはありえないです。

コックピット(room8黒線)と客室(room1オレンジ線)の気圧差も事故調推定と比べて大きいものになってます。
報告書によりますと、コックピットドアはコックピット側圧力が0.22psiより高くなった場合に開く設計だそうですが、実際に開いたのかが不明なので、
事故調のシミュレーションでは開いていない設定にしているようです。
事故調と同様にコックピットドアが開かない初期設定としてますが、もしも開いた場合は客室とコックピットの開口面積は1.21平方メートルの増加となります。
(そのシミュレーションを行う場合はコックピットドア面積に1.21を設定してください。)
コックピットドアが開く設定なら、客室気圧と違いは少なくなるのですが、閉じたままではどうしても差があります。
貨物室の容量は298.78m3で客室との空気口面積は1.35m2ですからその割合は1.35/298.78=0.00452です。
コックピットの容量は31.15m3で客室との空気口面積は0.05m2ですからその割合は0.05/31.15=0.00160ですが、事故調はコックピット内は発熱が大きいとして特別ルールで2倍で処理しているようですので0.00320です。
この2つの割合を比較しますと、やはり貨物室よりもコックピットの気圧低下が少し遅かったのは確かなようです。
しかし、客室と貨物室またはコックピットとの差が事故調解析ではほとんどないのは再現できてません。謎です。
仮に途中でドアが空いた処理が入っているとしたら、それ以降は貨物室の差よりも小さくなるはずで、グラフの線が交差するはずですがそんなグラフにもなってません。
room1(客室)とroom8(コックピット)の関係は、room2(後部圧力隔壁直下流部)とroom3(垂直尾翼中央部)の関係に似てます。(容積はroom8が31.15m3、room3が20.48m3と、近いです。)
room2-room3の開口面積は0.208m2と小さいので、room3の圧力グラフはroom2の圧力グラフには追随できてません。時間差があります。
一方でroom1-room8の開口面積は0.1m2(報告書では0.05m2ですが前述の理由で2倍としてます)とさらに小さいのですが、事故調のシミュレーションの場合はroom1の圧力グラフにroom8の圧力グラフは追随できているのです。
もしも、小さい開口でも追随できるのだとすると、room3の圧力変化もroom2とほぼ同じにならないと理屈が合わないような気がするのです。
しかし、事故調のシミュレーションでは垂直尾翼の破壊は約0.3秒後ですから、ピークに時間差がある、つまりroom3はroom2に追随していない、と考えられるのです。
例えば、room2-room3の開口面積を0.6m2として実験してみますと、だいぶ追随することが分かります。しかしそれではroom3のピークが0.3秒になるわけがないですし、
事故調の客室とコックピットの開口面積もかなり大きくしないと、グラフにほとんど差がないというのが再現できないのです。
計算式が事故調とは違うので、はっきりとは断言できないのですが、事故調の処理に矛盾があるような気がしてなりません。
ちなみに、コックピットドアのシヤーピンが切れて開くはずだか実際は開いていなかった、というような話があったりするのですけれど、実際にコックピットドアが開いていたという記載は報告書にはないので、情報ソースが不明です。
ドアを挟んだ差圧が小さければ閉じたままなので、減圧があったとしてもコックピットと客室前方の減圧速度がほぼ同じであれば開かないですし、事故調のグラフを見ますと、それが正しいかどうかは置いておいて、ほぼ同じ減圧速度になってますからコックピットドアが閉じていたとしても事故調説とは矛盾しないかと思います。
しかし考えてみると不思議ですよね。事故調のシミュレーションではドアは開かないほど差圧が小さい。ドアが閉じたままで差圧が小さいのなら、逆に言いますと差圧でドアが開く設計なんていらないってことになってしまいそうです。
他の急減圧事故例ではドアは開いた例がありまして、何が違うの?って疑問はでてきます。事故調のシミュレーションが間違っているような気もします。
CVR音声からはドアが開いてそうな雰囲気はないので、おそらく閉じたままだったんじゃないかと個人的には思ってますけれど、閉じたままだとすると、4通りの理由が考えられます。
不具合で開かなかった。減圧が無かった。減圧はあったが差圧が小さかった。減圧はあり差圧も大きかったが一瞬だけだった。の4つです。

ついでの話で、事故原因として常日頃から飛行の度に垂直尾翼内に空気が溜まって内外気圧差で垂直尾翼を内部から押し広げたり縮めたりするために垂直尾翼の強度が落ちていた、とかいう仮説もあるようなのですけど、
シミュレーションの8部屋分割の図に赤い線(ドア状ではなくて、ただの線)がありますけど、それが常に空いている空気口の意味です。
その外気への空気口はroom2,room4,room5,room6に存在します。room2とroom4はどちらも設定としては0.006m2程度(縦横8cmの四角くらい)の小さい穴ですが、ゆっくりと空気の出し入れは可能です。room2-room3-room4と空気移動可能なことも分かります。
通常の飛行で垂直尾翼内と外気との気圧差は生じるのかどうか。
基本的には空気が溜まらない設計にはなっているのだろうと想像しますが、それでも少しくらいは気圧差ができるとしても不思議ではないですね。
しかし、逆に、空気が溜まらない設計だとするなら、事故調の設定のほうが正しいのかどうかもあやしくなってきます。縦横8cmの四角って小さいですけど、この程度で大丈夫なのでしょうか。
普通に考えて垂直尾翼を客室からの空気で破壊するのは難しそうです。その一番ネックとなりそうなroom3のところだけ外気への空気穴が無い設定。非与圧領域ではroom3だけ無いのですがそれでいいものなのか少々疑問ではあります。
よく分かりませんが、解説書p17「なお、垂直尾翼には軽減孔が設けられており、内外の気圧差が生じないように工夫されております」というのと矛盾しないのでしょうか。空気穴が小さすぎませんかね。
それと、123便事故の後にはroom2-room3間の空気口には蓋がついたということですが、そのままの設計で蓋だけつけてしまうとroom2は密閉度が高くなって内外気圧差が大きくなり影響が出てしまいそうです。

せっかくなので、離陸して機体が上昇する場合のシミュレーションをしてみました。プログラムを修正して外気の初期値を地上気圧として徐々に外気圧を低くしていきます。
機体が上昇する場合のシミュレーション(表示まで1分ほどかかります)
1秒で0.01psi下げていきます。5分間(=360秒)で機体上昇を終了するようにしました。つまり5分間で3.6psi下がります。圧力隔壁は開口しない設定です。
3.6psiというのはだいたい高度差7600feetに相当します。これは123便の離陸時の上昇ペースと近いです。
結果を見てみましょう。

黒の線が外気圧で、グレーの線がroom2ですが、room3,room4,room5,room6もグレーの線に重なってます。
360秒以降では上昇が終わって、20秒くらい経過すると、黒とグレーの線の差が無くなっていることを確認できると思います。
黒とグレーの差は上昇中では、同時刻で0.13psiの差がありました。
上昇中は常に非与圧領域全体に一定の差圧が発生しているということになってしまいます。事故調の設定が現実と合っているのか疑問です。
参考までに、room2-room3の空気口に蓋をしたと仮定して実験しましたところ、黒(外気圧room0)とグレー(room2)の差は同時刻で0.34psiの差と増えました。逆にroom3(黄色)と外気圧の差は減りました。

前述のように、例えばコックピットドアは差圧0.22psiでシヤーピンが壊れて開くように設計されてます。同程度の差圧が飛行の度に長時間機体尾部全体に発生していることになるのですが、そんなことがあっていいのでしょうか。
事故調のシミュレーションの設定は外気へ抜ける穴の面積が小さすぎるようです。
穴が大きいと不都合があるのかもしれないですね。

事故調のシミュレーションで一番不可解なのは、垂直尾翼の容量の設定です。垂直尾翼のモデルというのは4つのバリエーションがありまして、モード1から4まであります。
このモードについての詳細な説明はありません。
こういうのはあやしいと思ってしまうんですよね。話を簡単にするために垂直尾翼前方部はあまり触れずに、垂直尾翼中央部について調べてみます。
まず、シミュレーションで使用している容量というのがVという記号なのですけれども、
付録4 付表-2では垂直尾翼中央部のV m3は20.28m3となってます。この容量がどこに相当するのかというと、
下図になります。

赤線の範囲というのは今回の考察で追加したものです。なぜこの範囲だと分かるのかと言いますと、
4つのモード図の下にV(3)の数値がそれぞれ記載されていて、V(3)の数値は異なっているのです。
つまり、room3の区画割りというのが各モードで異なることを意味していて、図示されている区画の範囲もそれぞれ確かに異なってます。
そして、モード1というのが赤線範囲からほぼてっぺん付近ほんの少しを除いた区画になっていて、図の下にはV(3)=715ft3と記載されてます。単位をm3にしますと、20.25m3です。
さきほどの20.28m3よりほんの少し小さいということは赤線範囲が20.28m3ということは確定できます。
では実際のところ、シミュレーションではどの容量を使って計算していたのかというのが重要です。
例えば、モード3が主に使われているのですけれども、モード3のV(3)というのは385ft3(=10.9m3)なのです。ちなみにモード4のV(3)なんてゼロですよ。
独自のシミュレーションでもモード3の数字を使ってますが、それでもroom3は耐圧には届いていなかったわけです。
それで、事故調は20.28m3を使ったのか、10.9m3を使ったのかは説明を読んでもよく分からないのです。
この説明不足はなにを意味しているのでしょうか。
付録4 付表-5ではシミュレーション結果として垂直尾翼耐圧限界の時間が記載されてまして、
不思議なことに4つのモード全部が0.326秒で同じになってます。なぜこんなことになっているのか?もしもroom3の容量が各モードで異なるのであれば、異なる時間になっているはずです。
それが同じ時間ということは、同じ容量を使っているということを意味しているように見えます。
しかし、だとするとなぜ各モードでV(3)の値が違うのか?
room3とroom4以外はVと記載された設定値を使っていることは確定です。とすると、やはりroom3はV(3)でroom4はV(4)の各モードの値を使って計算していると考えるほうが無理がないです。
使っていないのなら、わざわざ記載する必要もないです。
一応、独自のシミュレーションでコードを変更して実験してみました。
独自の8室分割シミュレーション。room3とroom4の容量変更
モード3の容量を使わずに付表-2のほうの容量を使います。
room3の容量として20.48m3でroom4の容量として11.47m3として、垂直尾翼耐圧をさきほど破壊できた3.6psiとしてみます。

このように今度は破壊できなくなりました。容量が増えたので内圧が上がりにくくなったのです。
事故調は4psiの内圧上昇で破壊できるモードのV(3)を使っていながら、どのモードでも同じように垂直尾翼が破壊できるという結論を出しているのではないでしょうか。
なにか垂直尾翼の容量の扱いをごまかしているのではないか?そんな疑念が払拭できません。
各モードでの容量を使っているのなら、垂直尾翼上端まで空気が流れていないシミュレーションとなってまして不適切です。

ちなみに与圧領域の容量は1128.27+298.78+31.15=1458.2m3で、非与圧領域の容量は35.97+20.48+11.47+20.25+8.78=96.95m3です。
この容量の違いでもって、客室の気圧変化が小さく風も大して吹かないという主張は間違いです。
垂直尾翼やAPU防火壁などから外気に抜ける開口を考慮する必要があります。もしも客室の気圧変化が小さいのなら7秒で-40度に達するような客室温度低下の計算値は出てこないです。


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垂直尾翼部分構造内圧破壊試験および写真解析の問題点

引き続き垂直尾翼について考察してみます。事故調は実物試験としまして垂直尾翼部分構造内圧破壊試験を行ってます。
垂直尾翼の上のほうの翼端(供試体No.1)と下の方の翼根(供試体No.2)の2つの部分に空気を注入していって、どのくらいの差圧で破壊されるのかを確かめてます。

その結果として前述の8室シミュレーションで使用している垂直尾翼耐圧として4.75psiという数字が出てます。
ですから、この実物試験の結果が仮に間違いの場合は、8室シミュレーションの結果も間違いという話になります。
前述のように垂直尾翼の差圧というのは高まりの山があり、その短い時間を逃すと破壊できなくなるので、事故調としてはなるべく耐圧は小さいほうが都合がいいのです。
報告書付録p24 1.2 試験結果を端的にまとめますと以下の2つになります。
・供試体No.1は、ストリンガとリブ・コード取付部が4.75psiで破壊した。
・供試体No.2では、5.5psiの差圧でも破壊されなかった。
この結果を単純に解釈しますと4.75psiでは上端は破壊できるけれど、付け根付近は破壊できそうにありません。
実際の破壊状況を、写真に映っていた垂直尾翼の状況と照らし合わせてみたのですけど、No.2の上部2割くらいが破壊されるくらいが近いのかなと思いました。
基本的なところで報告書が難解で、事故調としてはNo.2が破壊できたほうが一致していると考えているのか、破壊できないほうが一致していると考えているのかが、読み解けませんでした。
事故調の検討結果としましては報告書付録p26
「計算結果及び試験結果に加えて、垂直尾翼の左右外板には約0.5psiの外部空気力が作用することを考慮し、
更に構造寸法の図面との相違、構造の遊び(ガタ)、解析及び試験の精度等も考慮に入れると、
ストリンガとリブ・コード取付部は内圧が4psi上昇すれば破壊し得ると考えられる。」
No.2は破壊できなくていいと思っているのかが分からないのですけど、そういう解釈でないと4psiになりそうもありません。
いきなり登場した外部空気力とはなんなのかよく分かりませんが外板が捲れからの空気抵抗とは別物です。
詳しく見てみます。
「18時24分35秒付近にて発生した異常事態の直前の飛行状態おいて、垂直尾翼に作用していた外部空気力を計算により求めると、
アフト・トルクボックス外板の内外には最大約0.5psiの差圧が内側より外側の方向に作用していた」
ということなので、どうやら「差圧」のことらしいです。
よくよく注意深く報告書を読み返しますと、4psiが差圧とは記載されてません。「4psi上昇」という表現なのです。
つまり、外部空気力なる0.5psiにプラスして4psiが外気との差圧という解釈をしているらしいことが分かります。
「内圧が4psi上昇すれば」というのは誤解を生む表現で、4psiが外気との差圧と思ってしまうのですが、そんなことは記載されていないのです。
この外部空気力なるものは「異常事態の直前の飛行状態おいて」という前提があるので、つまりは正常状態でも存在する力であって事故機特有のものではないです。
外部空気力はなんなのかというのは、どうやら空気力学的な意味での尾翼周囲の空気流によって発生する力らしいです。それが機体内部との差圧を生む。
おそらく揚力と同じで、空気流が速い場所のほうが気圧は低くなるという原理で飛行中は垂直尾翼が左右に膨らむ方向で常に力がかかっているということだろうと思います。
事故調の8室分割シミュレーションのグラフでは4.75psiから-0.41psiしていたことは前述の通りで、おそらくこれが外部空気力のことです。
0.5psiというのは最大値という説明でしたので、0.41psiを採用しているのは以下の理由と思われます。報告書付録p55
「垂直尾翼周りは、翼面上の流れの影響で翼面上圧力は機体から離れたところの圧力と異なる。しかも翼面上でも場所によって違ってくる。
ここでは、計算で求めたマッハ数0.7のときの翼面上圧力分布の値から、翼弦位置で前縁から1/4翼弦長、翼幅位置では中心部から0.9翼幅長付近の値を採用することにした。」
報告書付録p45の付録2 付図-13「フロント・スパー及びリア・スパー位置での外部空気力」にグラフが掲載されているのですけれど、それから算出しているようです。
しかし、グラフの数値も説明の記載がないですがあれはたぶん事故調の考え出した理論値だと思いますよ。
例えば対気速度550km/hで最大0.5psiの差圧として、揚力と同じように対気速度の二乗に比例した力が発生すると仮定しますと、3倍速度の対気速度1650km/h(=対地速度で2590km/h=マッハ2.1)で差圧が4.5psiになるので爆発します。
垂直尾翼よりも水平尾翼や主翼のほうが水平飛行時にもっと大きな差圧が発生して破壊の恐れが出そうですけど大丈夫なんでしょうかね。
-0.41psiに加えてさらに-0.09psiをどこかからもってきて-0.5psiとしているわけですが、少し盛りすぎではないでしょうか。
耐圧4.75psi-0.5psi=4.25psiなので、これからさらに0.25psi下げないといけないのですけど、なんとなくどこかからもってきて4psiとしてます。


また、前述の4psiとした理由の「計算結果」というのはNASTRAN SOL-24の有限要素法での解析のことなのですけれども、そちらの結果では
・翼端のストリンガとリブ・コード取付部は約4.8から5.4psiで破壊
・翼根のストリンガとリブ・コード取付部は約7psiでも破壊されない
でして、事故調としては困ったことに実物試験よりもさらに耐圧が高いという結果になってしまってますが、なぜかNo.1の結果より低い値とする結論ですので意味が分からないです。
誤差があるのは理解できますけれど、下がるほうの誤差しか考えていないようです。
実物試験では、ゆっくりと圧力を加えてますから、
事故時の数秒間という短時間での力のかかり方よりも、破壊するには力が小さくてもじりじりと破壊を進行させることが可能なので、
どちらかと言いますと、耐圧を評価する時には計測値より大きい値を見積もったほうが事故時の力として適切だろうと思うのですが、
事故調としては逆に小さい値を見積もってしまってます。これは不適切だと思いますね。
事実としては翼根のほうの強度は高いので、試験装置の空気供給能力限界8.6psiでも破壊できていないという結果なのです。
個人的には、事故調の計算結果や試験結果の事実からは、8.6psi以上のパワーがかからなければ垂直尾翼を破壊できる可能性は低い、と見てます。
しかし、圧力隔壁破損説を立証する前提ですと、どうしても耐圧を低めに評価しないといけない縛りがあるのだろうと思います。
事故調自身の実物試験の自己評価というのは以下です。
「破壊の進行に関しては、事故機の破壊をよく模擬したとは言い難い」
試験がいかに事故機を再現できていないかを強調する自虐的発想で、試験結果そのままを信用しないでよ、ってことらしいです。
諸刃の剣の逆転の発想で、翼根の強度が高くて試験では破壊できなかったけど実際とは違うし連鎖破壊したっていいじゃない、という結構アバウトな結論になってます。
突っ込みどころはまだありまして、垂直尾翼というのは胴体と接続される根元のほうから空気が注入されるので、先端よりも根元のほうが外気との差圧がやや高くなるのですけれども、事故調解析ではだいたい3.46psi/3.37psi=1.027倍なんですね。
このデータのどこにも4psiというのが登場しないのが不思議です。実はこれは開口面積1.2m2を想定した解析結果なので、8室シミュレーションの基準ケース1.8m2であったならおそらくこれより倍率は高くなります。なぜなら気圧差が大きくなるからです。
例えば、控えめに1.2倍としてみましょうか。そうしますと、No.1の位置で4psi上昇というのは実際には根元のほうでは4.8psiの上昇が必要ということになるわけですが、事故調としては、なぜか3.46psiやら3.37psiやら3.58psiなどの低い差圧の解析結果から根元と先端の圧力差は無視できるとして無視してます。
しかし、この差を無視するくらいなら、前述の外部空気力云々の-0.5psiも無視したほうが話の客観性があるというものです。下がるほうだけ計算に取り込むというのは違うかなと。試験結果の評価が結論ありきなのかなという印象です。
試験方法を考えてみますと、かなり不思議なやり方で試験してます。
実は1回の試験途中にリベット抜けなどが発生して、穴をテープで塞いで試験を継続してます。
こういうことは何度もやっていたようです。報告書付録p31 付録2付表-1 垂直尾翼部分構造内圧破壊試験結果に掲載されてます。
このリベット抜けの現象というのは部分的破壊が加圧途中ですでに進行していたことを物語ってます。
つまり、4.75psiに達するまでの長い時間の過程で破壊が進んだのか、数秒間の短時間の内圧上昇でも4.75psiになったら破壊できるのかがこの試験方法では分からないです。というより、リベット抜けの証拠によって前者の可能性のほうが高いです。
この実験の不思議な点というのは2回目以降の実験でさらに顕著になります。4.75psiである程度破壊できた実験の後で、同じ供試体で再度実験していて、今度は違う部分が4.5psiで破壊できたとしてます。
いやいや、そんな壊れかかったのを使って再度実験したらそれは簡単に壊れるでしょ。
壊れかかったものだった証拠としては、付録2付表-1 でたった0.8psiでボーンという音が発生してますし、その後も何度も音が発生してます。この事実も表に記載があります。
そして、この実験で得られた4.5psiという値を使って、フロント・スパー・コードの破壊可能性を検討しているのです。
つまり破壊試験を同じ供試体で複数回やって得られたデータから連鎖破壊というストーリーを作ってます。
複数回差圧がかかるなんてことは圧力隔壁破損説ではありえないのだから不適切な検討方法です。
No.2のほうも同じ供試体で何度も繰り返し実験していて、当然ながら回数を重ねるごとに部分的な破壊箇所は多くなり、最後の6回目ではほとんどすべてのストリンガとリブ・コード取付部が破壊されますが、最終破壊には至らないです。
6回もやってたらそれは壊れるでしょ。これはなんのための実験なのでしょうか。壊れないことの確認なのか、壊れることの確認なのか分からないです。
回数を重ねた破壊実験から連鎖破壊を導き出せるという話なら、鉄筋コンクリートのビルでも小さい力で破壊できてしまいます。
回数を重ねる破壊実験は疲労破壊についての実験になっているので、数秒という短時間の破壊にそのまま適用すべきではないのです。
本当に事故機を模擬したかったなら、高速で内圧を上げるような試験をしたほうが適切だったと思いますよ。
空気供給用タンクに貯めておく空気量は同じでいいので、バルブの開く速度調整だけで出来たと思いますけどね。
たぶんそれだとNo.1さえ4.75psiでも破壊できないって結果になりそうですけど。
おまけに空気の抜ける穴である軽減孔を閉じて実験していたという話じゃないですか。それでいいのですかね。
実際に近い状況で試験できるのにわざわざ違う状況で試験するというのは他の試験でも見られる傾向ですけど、予算と時間の無駄遣いです。
No.1供試体の4.75psiというのは部分破壊後の数値なのだから、これを正常状態から短時間で加圧した場合の耐圧と解釈することは不適切です。
耐圧は試験結果の4.75psiよりもっと大きい値だとして解釈すべきだと思います。
事故調の主張では破壊が1箇所から拡大すると言ってます。つまり、リベット抜けのような部分破壊での強度低下を事故調は重視しているわけなので、無視することはできないのです。
※後述しますが圧力隔壁の疲労亀裂の解析では、リベット打ちが乱れていれば強度が極端に低下するとみなしてます。

ところで、試験途中で穴にテープを張るってかなりの危険を伴いませんか。作業中に破裂する危険はなかったのでしょうか。
もしも、作業の時に内圧を低くしていたなら、何回も負荷を掛けなおしたことになります。

123便の真相を調べていく人が必ず疑問に思うのは、どうして相模湾に沈んでいる垂直尾翼の残りやAPUを引き上げようとしないのか?ということだろうと思います。
報告書では「垂直尾翼の回収が部分的であるので、垂直尾翼の破壊順序の詳細を特定することは困難」との記述がありますから、つまり垂直尾翼の残骸不足で不十分な検証になっていることを認めてます。
調査は十分に出来ているから引き上げは必要ない、と考える人も多いのですが、やはり残骸引き上げは事故調が正しい検証を行うために必要なのです。
事故調としては回収済残骸と試験や数値解析によって仮説を検証してはいるものの、それが正しいかどうかが証拠不十分で分からないのです。
だから、今からでも回収して破壊順序の詳細を特定してみてくれませんか、って思うわけです。
少なくとも垂直尾翼の翼根を破壊するには、芋づる式に破壊が進行しないといけませんから、事故調の想定する連鎖的な破壊順序が正しいことを証明する証拠の有無は重要です。
むしろ「垂直尾翼の回収が部分的」であったからこそ事故調の想定する無理なストーリーが通ったのではないでしょうか。
どんな説が正しいかどうかは関係なく、今からでも残骸を引き上げて、再調査で詳しく調べたほうが引き上げにかかるコストよりもいろいろな意味で得るものが多いに違いありません。
だったら自分で引き上げろ、とか言う人も出てきそうですけど、航空機事故調査を正しく行うことは国が主導でやるべきことだと思います。

ここからもっと深い考察に入ります。123便の事故再現CGで垂直尾翼が破損する場面ってあるじゃないですか。圧力隔壁もそうなんですが、垂直尾翼の破損のCGも間違いが多く、多くの人が誤解してます。
前述の通り垂直尾翼の報告書の説明は難解で読み解けないです。それは専門知識を持たないから難解というよりも何を言おうとしているかがはっきりしていないので結論があいまいになっているからなんです。
報告書の文章が分かりにくいせいで間違った知識が広まってしまってます。多くのテレビや書籍や動画で紹介されている異常事態発生時の垂直尾翼の破損箇所が報告書内容と違ってます。
さて、異常事態発生時の正しい図はどちらでしょうか?尾部の斜線部が脱落したとしている部分です。

はい、多くのテレビ映像や書籍のイラストはVT03になってますので、そちらかと思う人が多いと思います。しかし、報告書に従いますとそれは正解ではないのです。
ではなぜVT03の形状でCGやイラストが作成されているかと言いますと、VT05とVT03の差分のところ(垂直尾翼の付け根のほう)が残骸として発見されていないからです。

つまり、墜落現場で発見された残骸を組み合わせた状況の図がほぼVT03と同じになっていて、だから異常事態発生時にVT05とVT03の差分のところが海に落ちたものと誤解しているのです。
ああ、それは知ってた、正解はVT05だよ。と思った人も実は正解じゃないです。実は両方正解ではないのです。
確かに事故調の飛行解析ではVT05を正解としてます。しかし、飛行中の写真の解析ではVT05の形状にはなっていないのです。かといってVT03ほど欠損もしていない。写真がぼけているのではっきり形状は分からないです。

事故調としましては、輪郭抽出した線の範囲のうち、A,B,E部分が残存部分と解析してます。輪郭線がAの近くで後方斜め上へ細く伸びてますが(ここはAの範囲ではないです)、水平尾翼と見た目が重なっているために輪郭線の位置が少しずれているだけです。
つまり、VT05とVT03の中間あたりが正解の可能性が高く、事故調の写真解析の結果としてはVT05のほうに近い形になってます。では、差分の垂直尾翼の付け根のあたり(図のAとBの部分)はどこへいったのかと言いますと、
事故調の解釈では、それは写真が撮られた時に存在していた可能性が高いので、そうしますと、御巣鷹まで存在していたことになるのですが、未発見なのです。
なぜ未発見なのか?個人的には主に4つの可能性があると考えていて、
・別Webページで以前解析したように水平尾翼が分離した場所の推定が事故調は間違っていて、水平尾翼に近い垂直尾翼の未発見部分も一緒に、一本から松に激突した際に分離した。捜索想定外の方向の山の中に飛んで行って未発見。
・本当はVT03に近い形状が正解で、写真というのは片側だけから写した形状ですから、片側の外板ペラだけが残っていてほとんどの中身は海に落ちている。
・VT05に近い形状が正解だが、異常事態発生からまもなくして破壊が進みVT03になったが、片側の外板ペラだけが残っていてほとんどの中身は海に落ちている。
・写真解析が間違い
です。
VT03が正解の場合は事故調の飛行解析は間違いということになります。おそらく事故調としてはその可能性もありそうと見こんでいるので破壊実験の説明としてはNo.2が破壊できなかったことが正解ともはっきりとは言えないのです。(後から海中捜索されて差分部分が見つかったら都合が悪くなるので)
片側の外板ペラだけが残っていただけだとしても、その部分の面積は大きいですから未発見というのも不自然です。
事故調の写真解析が間違いという可能性もあります。なぜかと言いますと、形状の輪郭がぼやけているので、画像を二値化処理(白黒にする処理)をしてから輪郭を決めているのですが、
その処理をコンピュータでやったからといっても必ずしも正確にはならないからです。二値化処理をする時の許容量次第で結構形状は変わります。
特に航空機は移動してますし、カメラのぶれもありますし、航空機の外板の光の反射などもあるので、正しく解析できていない可能性も結構あるのです。それは現代のコンピュータ処理であってもAIを使っても同じで、元のデータがぼけていると正確にはわからないのですが、少なくとも事故調の写真解析はうまくはいってないです。
つまり、写真解析間違いの可能性が一番高いです。事故調の損壊図に供試体を重ねてみました。

独自解析では少なくとも図の緑線の位置を境界とするほうが適切という結論です。つまり、事故調解析よりも少しVT03に近いほうが適切です。
この緑線の境界というのは、かなりこれでも事故調寄りの判定にしたつもりです。後述しますが実際はほとんど残骸の図に近い形状でも不思議はないです。
この緑線の位置よりもVT03寄りが正解としますと、VT03とVT05の差分の(AとBの)未発見の大部分は海中に落ちたことになり、未発見の謎が大方解けますから、事故調解析よりも可能性が高いと考えてます。
では、そのような結論に至った検証方法としては以下です。
B747の3Dモデルにテクスチャとして垂直尾翼に上で示しました図を貼り付けます。モデリングソフトで写真の構図に合うように回転させて画像を取得します。
使用した3Dモデルに関しては今回の考察にあたり独自に新規で作成したもので、報告書のB747の図とほぼ一致した形状であることを確認してます。水平尾翼の前後方向位置は図によって少し違うので平均位置にしました。
※余談ですが、飛行機に疎い人にとってエンジンは翼の直下にがっちり付いているものと錯覚しがちですけど、どちらかと言うと下というよりも翼の前にぶら下げるように付いてます。これですと木に接触してエンジンが外れても不思議ではないと分かります。

Bの上端から右上に黒の細い直線が伸びてますが、その線が事故調解析では水平尾翼と重なる境界ですから、独自解析とは少し機体の角度も違ってます。
Bの左側から上にちょこんと上に延びている残存部分が特徴的なので、その位置を目印にして実際の写真を見比べますと、Aの大部分が存在していないと仮定しても言い過ぎではないということが分かるのです。
独自解析ではこちらの構図が写真構図に一番近いと判断しました。機体のモデルを適当に回転させて合うような角度を目分量で決めました。

これでも実際の写真とは少し違うのですが、おそらく写真の像にゆがみがあるためと考えられますので、参考までにそれを補正した図は以下となります。こちらですと写真とかなり近くなります。以後の考察では上の図を使用します。


事故調の写真解析が間違っている根拠は、青線のNo.2右端から後方(画面では右上)に線が伸びてますけど、先ほど説明しましたBの上端から右上に伸びる黒の細い直線が水平尾翼との境界なので、
その黒線より下側というのが事故調の写真解析では水平尾翼で隠れて垂直尾翼根元の見えない部分です。それでなぜ事故調のコンピュータ画像解析では青い線を境界としているかと言うと、二値化処理で背景の白色部分まで少し拡張して黒色判定しているからなんです。
そうなっている理由は、二値化処理の許容値が黒の量を多めの設定になっている。要するに残存部分を実際よりも大きく判定しているということなんです。
そうしますと、特にV字型の切り込みのような形状はグレースケールですとぼやけて灰色になっていて、二値化処理はそこが全般的に黒判定になる傾向が強いので、青線のV字の部分というのは実際はもっと抉れているのほうが正しいのです。なので、緑線のほうが正しいという理屈です。
許容値が白の量を多めの設定の場合は、垂直尾翼の最前面がもっと消えるのですけれども、それは後述の太陽光の反射で説明できます。
緑線の境界というのもかなり控えめに引いたのです。画像の解釈次第ではもっと機首方向へ胴体近くまで抉れていても矛盾は出ません。

左の図で黒い塗りつぶし部分が垂直尾翼の発見された残骸部分と水平尾翼および胴体です。胴体最後部のテールコーン部分と垂直尾翼前方の上端は海上へ落ちたものとして除いてます。
中央の図は黒の塗りつぶし部分だけを抜き出したものです。
その黒の塗りつぶし部分にぼかしをいれたものが右図です。ぼかしの入れ方としては黒の周囲にぼかしを入れるというよりも黒の部分を含めてガンマ値を調整してぼかしを入れることで、黒の領域を狭くする処理となってます。
これは実際よりも背景色が黒の領域内境界付近に彩色される処理で、写真のピンボケを再現してます。
実際の123便のカラー写真と見比べますと(上記の図を少し横長にゆがませたほうが写真と構図が一致します。)、写真のほうは、胴体と接続している垂直尾翼付け根の一番前の部分が写真には写っていないように見えます。
写真では、もう少し垂直尾翼の前部分の傾斜が緩いほうが実際の形状に合いますね。写真のほうが立ち上がりが急角度なんですよ。その写っていない部分の残骸は墜落現場で回収されてますから存在していたはずです。右主翼も実際より細く映っているので光のせいなのか。
撮影時の123便の飛行方向は報告書付録によりますと「北西(北から西へ41度)方向に飛行」つまり方位としては360-41=319度。撮影時刻での太陽の位置を調べますと約290度でしたので、ということは機体前方が太陽で照らされていたということになり、垂直尾翼の最前面が写っていないように見えたことと辻褄が合いました。
独自解析としては先ほど正解ではないとしたVT03のほうが一周回って正解に近いということになりました。
前述の緑色の境界線位置で塗りつぶしたのではないにも関わらず、残骸部分だけでもかなり近い形状になってます。
つまり、事故調の写真解析は明らかに残存部分の面積が必要以上に大きくなっていることがわかりますし、少なくともVT05よりもVT03に近い形状ということは確定です。

残存部分の事故調の解析はいろいろぶれているようです。下の2つを比べてください。はじめの画像解析で得られたのは左図で、修正されたのが右図です。
一応、どちらでも大して変わらないからどちらでもありえるでしょ、というのが事故調のスタンスです。

左のAとBの残存部分の合計は41.78%です。右のAとBとEの合計は41.61%です。左図のほうが大きいですが、なぜか右図ではAとBの右端の境界位置がそれとは逆に右へずれてます。奇妙ですね。
左の図のほうが画像解析からの境界としてはまだ正しいほうですよ。そうしますと、白多め設定の場合には、V字型に切れ込んでいる部分という一番下の位置はかなり胴体位置に近いところまできているということです。
はじめの画像解析結果でさえ残存多め境界なのに、それをさらに修正してでも残存を大きく見せているのはいただけないですね。このサイレント修正に気が付くのはかなり難しいです。指摘されないと分からないと思います。
事故調推定を検証しておきましょうか。先ほどの独自の3Dモデルの構図で上の右図のAとBとEの部分を塗りつぶしてぼかしを入れてみました。これはやはり黒の面積が大きすぎると思いますよ。


緑線を境界としますと以下です。こちらのほうが写真には近いと思いますが、まだこれでも黒い部分が大きいように見えますから、
残骸部分だけの図のほうがむしろ正解に近いのかなとも思います。


事故調解析の境界を塗りつぶした面積がやたら大きくなっているのは、前述の通りで黒多め設定だからという理由もあるのですが、
それに加えて影響が大きいのが元の形状が間違っているからということがあります。
事故調は航空機の模型を斜め下から写真を撮って3次元的な構図を確認してます。

本来隠れている線も表示されているのですけれども、隠れている線が表示されている違和感は想定内として差し引いて考えてみても違和感が残ります。
垂直尾翼の付け根に注目しますと、かなり胴体に隠れてしまっている奇妙な構図です。模型の胴体半径が太すぎるのかなとも思う一方で、仮に胴体が太いのなら垂直尾翼付け根が胴体にめり込んでいなければこの構図にはならないです。
ところで、TBSで2005年8月12日に放送された「ボイスレコーダー〜残された声の記録〜ジャンボ機墜落20年目の真実」のオープニングあたりで離陸するB747の映像があるのですけれども、その映像を切り取って左右反転、回転、ゆがみ変形させると、
123便の写真の構図にほぼ一致させることができて検証に使うことができました。やはり事故調の図よりも独自解析のCGのほうの構図に近かったです。
また参考までに、その番組のオープニングでワイヤーフレームのCGと写真を合成するシーンもあるのですが、CGのほうはVT03に近い図になってましたね。番組としてもそのほうが写真と形状が合うと思ったのかもしれませんが、
合成する時にわざわざ写真をぼかしているので、やはり写真のほうにゆがみがあってそのままでは一致しないことが目立つから、そのような映像表現にしたのかなと思います。
1985年12月15日のNHK特集「墜落」での写真検証でも事故調の想定する機体方向よりもっとカメラに向かう方向に機首は向いてます。
2015年8月15日のTBS「8.12日航ジャンボ機 墜落事故30年の真相」でも写真解析をしてますが、もっとカメラに向かう方向に機首は向いてます。
いずれにしましても、少しカメラ方向へ向かって飛行する角度になってます。
先ほどまでの独自解析時の3D画像はモデルをぐるぐる回して見た目で角度を合わせていたので、DFDRのデータと矛盾がないかどうか検証してみます。
撮影時刻はレーダー航跡と撮影地点の報告書の地図から判断して18時49分45秒あたりです。
詳細のDFDRのグラフが無いので誤差は結構ありますし、時刻の推定も例えば10秒違うと機体はダッチロールしているのでかなり違ってきます。
墜落7分前の18時49分45秒というのはDFDRの高度のグラフでは次のようにフゴイド運動で上下しながら飛行していて、上昇から下降へ向かう時点だったことになります。

東京都奥多摩町にて撮影された方のインタビューでは「この上あたり来た時にあのう飛行機はあの上昇がもう終わって水平飛行のようなかんじでのろくなりました」とされていて
DFDRの高度データのその時刻の様子と一致します。フゴイド運動では高度が上がった時に速度が落ちるのです。
では同時刻の機体角度を見てみましょう。

機首方位角305度(北西方向へ進行)、ロール角-4度(左翼が下で右翼が上の右旋回の角度)、ピッチ角10度(機首上がりの角度)と読み取れます。
ここで機首方位(磁方位)を地図上の方位(真方位)にするために、だいたいマイナス6度のずれと見積もって、地図上では299度の方位とします。
高度が9400feet(=2865m)とDFDRからは読み取れましたが撮影地点の標高は調べますと610mくらいのようですから、2255mの高度差となります。
カメラの見上げる角度(仰角)を事故調想定と同じく45度としますと、水平距離で2255m離れていたことになります。
さて、これらの角度をモデリングソフトに直接入力して得られた図がこちらです。

以前の構図よりも機首がカメラ方向を向いていないですが、近い構図となりました。DFDRからの値と大筋で矛盾しないことを確認しました。
それでは、事故調のほうも同じ方法で検証してみましょう。
カメラから模型を見上げる角度は同じです。地図上ではカメラの仰角は45度としているものの、模型の角度を変更しないでカメラの角度で調整して41度としてます。つまりロール角-4度を想定しているようです。
飛行経路としては、ほぼ直線区間でして、20秒後の経路が斜め左方向になってますから、やや左旋回なのかもしれません。ロール角に関してはダッチロールの影響のほうが大きいですが、どちらにしても-4度というのは妥当です。
事故調ではカメラの水平方向が72度としてますから、その直角方向は72+270=342度です。
機体の方位はカメラと直行する角度から23度のずれとしてますから、つまり342-23=319度が地図上の進行方向の方位角としていて機首方位も同じとみなしてます。
この条件でモデリングしてみた図と比較のための合成図はこちらです。

事故調の図にやや近くなりましたが、違いも結構ありますね。右の合成図はこれでもずれがなるべく小さいようにして重ねてます。当然ながら左の図のほうが3次元の構図として不自然なところはないですから、やはり事故調の斜め下からの図は変です。
カメラのほうに機首が向く角度として浅すぎると思います。実は事故調査報告書には斜め下から見た機体全体図の掲載がありません。尾翼部分だけ写真と合うように作られた図です。
報告書付録p192「幾つかの撮影条件の違いから、尾翼以外は対象としなかった。」となってます。
そして、どうやら、報告書付録を読む限りではピッチが考慮されていないのです。
構図として不正確な上に、ピッチが考慮されていないので、さらに不正確になってます。機首方位も進行方向と同じとみなしているのが雑ですし、DFDRとの整合性も検証していないようです。
そして事故調は斜め下からの図を正射影(真横から見た図)に変換して前述のABCD区分けの図が出来ているのですが、胴体と水平尾翼に垂直尾翼が重なりすぎているためにくねくねとしたPHOTOの境界線は垂直尾翼の中央付近より下へは描かれることがありません。
そのせいで、残存範囲が余計に大きくなってます。いろいろな誤差がすべて残存部分が大きくなる方向だけにいくように解釈されているようです。
誤差というのはプラスマイナスがあるじゃないですか。平均すればプラスマイナスが相殺される中央くらいを狙うのが丁度いい塩梅だと思いますけれども、事故調の報告書では一方向へのご都合主義的な偏りが随所に見られます。客観的ではないんですよね。
目標値が予めあってそれに向かって調整していってるような、そんな流れを感じるのです。
この偏った誤差での結果を利用して、別の検証を行うときにそこではプラスマイナスの両方の誤差が考慮されるのです。いやいや、マイナス誤差の限界で出てきた数字を、さらにマイナス誤差を考慮していいのならいくらでも下げられますよってなるわけです。
模型を反対方向からも撮影すれば正しい位置関係が簡単に確定できそうなものですけれども、そういう必要な解析はしてないようです。
もしも模型に穴を空けるなり素材が半透明かワイヤー製だったらもっと現実的な絵になっていたかもしれません。少し工夫すれば確実に修正できた話です。
報告書付録の正射影に変換する計算式を見ますと、疑似アフィン変換というものが使用されてますが、元の入力パラメータが2次元なので、あくまで2次元座標変換でしかありません。
画像を変形させることで斜め下からの図を正射影にしているので、3次元での投影で2次元座標を求めているわけではないです。
3次元の構図として正しいかどうかを気にする必要のない方法でした。当時の技術でもワイヤーフレームでの3次元グラフィックは可能でしたので検証方法として3次元を扱わないのは不適切だと思います。
グラフィック表示をしなくても、座標計算だけするという手だってあります。
3次元を扱うのが苦手だったとしても、あの構図に違和感を覚えなかったのが理解できないです。どう見ても絵として不自然でしょう。
胴体が太すぎて垂直尾翼が小さすぎる原因の一つとして考えられるのは、遠近法が強すぎなのだと思います。1/100模型を使った撮影では2.25m離れた位置から撮影しているのですが、
事故調の想定した実際の距離というのは4200m(=水平距離2900mの仰角45度なのでその1.414倍)ほど離れてますので、機体の大きさに対しての距離の遠さの比率が全く異なるのです。手前の水平尾翼(左翼)が大きく、奥の水平尾翼(右翼)が小さいのもそのせいだろうと思います。
実際はカメラから機体までの距離に対して機体の手前か奥かの距離の違いなど相対的に小さくて誤差のうちなのだがら遠近法が無いくらいでいいのです。
縮尺が全く違うのに過度に遠近が強調されているのが分からなかったとしたら、それは技術力不足なのか、それとも分かっていてやっていたのかどちらなのでしょうか。難しい話ではなくて少し考えれば分かると思うのですけどね。
遠近補正を斜め下からの図を作成する段階で考慮しなければ、その後の正射影変換は2次元から2次元への変換なわけなのでもう補正はできないのです。
また事故調想定では2900mの高度差、水平距離2900mとしてましてレーダー航跡より北東に600mほどずれているのが誤差と解釈したとしても、
高度はDFDRと整合性が取れないです。フゴイド運動で高度が最大になったあたりでも高度2865mなわけですから、標高610mを考慮しますと高度差2900mには届きそうにありません。
ちなみにレーダー航跡上を飛行したと仮定しますと、高度差2300mと記載されてますので、本考察の2255mとほぼ一致してます。
あの不思議図を元にして垂直尾翼の破壊部分を小さく推定して、それで破壊実験して低い耐圧を推定して、シミュレーションもしている。全部はじめから間違ってます。


ということで、話を戻して、なぜ報告書の垂直尾翼破壊実験の説明が難解かといいますと、VT03とVT05の中間が正解とすると、どちらが正解とも言えないし、不正解とも言えない。
供試体No.2が中途半端な位置にあるために、飛行解析によると破壊できなくて正しいが、写真解析だと2割くらい破壊できないといけないという、実験でNo.2の破壊ができてもできなくてもどちらでも正解にできる微妙な位置になってます。

だから、なんのためにNo.2の試験をしているのか、No.2の結果をどのように評価しているのかが、はっきりしていなくてその結果わけのわからない難解な文章構成になってます。
奥歯に物が挟まったような説明は、前述の8室シミュレーションでの垂直尾翼の容積の取り扱いも関係しているのだろうと思います。
100歩譲って事故調の写真解析が正しいとしましてもNo.2の部分が未発見という事実に変わりないわけなので、せいぜいペラペラした細分化できる板くらいだけが残っていただけとみなすべきであって、
No.2のほとんどは海に落ちたと解釈するのが正しいです。事故調想定ではNo.1の破壊後に連鎖的な破壊プロセスが必要となるのですけれども、4psiの増加で破壊可能というのは低すぎかと思います。
飛行解析でVT05を正解としているということは、No.2の大半は破壊できなくていい前提で事故調は解析しているのではないかと思われますが、矛盾だらけなので再考してほしいところです。

独自の写真解析ではやはりNo.2の大部分は異常事態発生時に破壊されたことになりますので、VT03に近い形を想定したほうが適切だと考えてます。
No.2の位置どころかもっと胴体近くの垂直尾翼付け根付近の破壊すら必要かもしれません。事故調想定よりも耐圧はかなり高く見積もるべきです。一瞬の圧力を前提としますと、垂直尾翼の耐圧を8.6psi以上と見積もったほうがいいのかもしれません。
耐圧が高いとなれば、事故調の8室シミュレーションも成り立たなくなります。圧力隔壁破損説は瓦解します。
当時、事故調内部には報告書の写真解析に疑問を持つ人はいなかったのでしょうか。例えば、1985年8月18日放送のNHK特集「尾翼に何が起きたか~検証・日航機墜落事故~」番組において写真一緒の構図として航空機のイラストが示されているのですが、
水平尾翼はほとんど垂直尾翼とは見た目重なっていないイラストになってます。正確な図ではないにしても、事故調査報告書の写真解析と矛盾するわけなので、疑問を持たなかったのか不思議です。
事故調としては御巣鷹にあるべき残骸がどこにも無いわけなので、本心としては海底に落ちていると思っているのではないでしょうか。

はっきり言って、1985年当時にわざわざ予算をかけて画像の専門機関に発注してコンピュータ画像解析をやる必要はないです。
なぜかと言いますと、そもそも写真がぼやけているので、コンピュータで2値化処理をすると間違いが多くなるからです。
普通は2値化処理というのはカラー画像をグレースケール画像に変換してから行います。(報告書にはグレースケール変換の記載がないので画像処理の一般論です)
コンピュータで境界判定をしやすくするためにアナログ写真をデジタル化してさらに画像変換している時点で情報落ちするので、はっきり言って、元のカラー写真を拡大して人間の目で見て境界を決めたほうが確実です。
専門機関でコンピュータを使って難しい処理をしているからさぞかし間違いないものが出来上がっているのだろうと思うかもしれませんが、そうとも限らないです。
実際、コンピュータ解析では水平尾翼の境界線を垂直尾翼の残存部分と間違って判定してます。人間の目であれば、そんな間違いはしないです。
人間の目で判断するという単純な方法で、コストも時間もかけないで、もっと精度のいい解析ができたりもします。
また、正しい3次元形状の推測が出来ていないから、垂直尾翼が胴体に突き刺さっているような無茶な図でも平気なのです。
事故調査の大元になっているデータがこの程度ということは、圧力隔壁破損説の仮説の確度は低いと考えるべきです。

事故調の結論としては4psi上昇で垂直尾翼は破壊可能ということ。この4psiという数字。どこかで見たことがあると思ったら、そうですこれはAPU防火壁の耐圧と同じです。
APU防火壁耐圧と垂直尾翼破壊可能差圧が一致してます。これはなにを意味しているのでしょうか?
この一致は偶然ではないです。一致しているからこそ両方破壊可能という結論を得ることができているということなんです。
まったく異なる構造物であるはずのAPU防火壁と垂直尾翼から出てくる数字が一致しているというのは本来であれば偶然でしかありません。
しかし、一致させないと両方を破壊することは不可能になる。
APU防火壁の耐圧を超えるとそこで開口して空気が抜けるので、他の場所ではその耐圧以上に差圧が増すことは困難。
これを回避するには瞬間的に同時に高い圧力がかかるようにするか、もしくは垂直尾翼破壊可能差圧をAPU防火壁耐圧を超えない程度に抑えるしかない。
このことは当然ながら事故調も気が付いていた。少し考えれば想像できることです。
しかし、高い圧力を客室からの空気流で発生させることは不可能なので、残った方法しかありません。
おそらく、事故調が4psiという数字に寄せていく方向で調整したということを意味しているのではないでしょうか。

NHK特集「墜落」での写真検証というのは、おそらくNHK独自の検証なのだろうと思いますが、報告書内容と比較しますと色々おかしな点があるのです。
まず、番組で写真から解析できたとされる図形は以下のようなものです。(掲載しているのは今回スケッチした絵です。)

左の図が斜め下から模型を撮影した写真の垂直尾翼を解析して出てきたものとなってます。模型の写真も登場しますが、おそらくNHK独自のものと思います。模型の機体角度が報告書と違うということは前述の通りです。
模型の角度が違うので当然それを解析した図も報告書とは異なるのですが、それはNHK独自のものだとするなら仕方ないとして、一応、左の図の赤い丸部分に注意して報告書の図を重ねてみますと右の図になってます。そのままでは構図が違うのでゆがみ変換させてます。
赤い丸の部分というのが、水平尾翼を垂直尾翼と誤認識していることは前述の説明の通りです。つまり、間違っているのです。
そういう間違いがあるのはそれはそれで問題なのですけど、そこはひとまず置いておいて、この残存部分の面積の説明として、41.6%とモニタ画面に出ている数値を読み上げてます。これはピクセル数と併記されてますから、コンピュータによって集計した数字だと思われます。
いや、ちょっと待ってくださいね。この41.6%って報告書の数値と小数点以下までピッタリ同じなのですけれどもこれは偶然?
先ほどの赤い丸の部分というのは、事故調では最終的には除外して計算して41.6%なのですよ(水平尾翼で隠れている付け根の一部分はプラスさせてます)。図形の形が違うのに最終結果の数値が完全に一致している。
それとも、この番組はドキュメンタリー風の再現ドラマでしかないのでしょうか。ドラマ風の演出っぽいところもありますが、副題が「~日航機事故調査報告~」ですからね。
なぜ数値が一致しているのか。この番組は1985年12月放送だから、報告書発行よりも前に放送してます。
しかし、画像解析の手順としては報告書と同じやり方をしてますし、これ以外の部分の話も報告書と内容的には同じですから、時系列としますと、1985年12月時点で事故調は写真解析を終えていて、
そのやり方を真似て検証風番組として製作されているのだろうと思います。そうしますと事故調側から41.6%の数字が出ていたと考えるのが無理が無さそうではあります。
参考にさきほどのスケッチを正射影にしてみました。事故調解析と比べますと水平尾翼の重なり位置が違います。赤丸の部分が誤認だとしますと、独自解析の緑線にかなり近いことも確認できます。

ということは、どういうことですかね。数字が一致するように番組の指示で画像を調整した?いや、それはどうか。画像はいじらずにコンピュータプログラムをいじった?
一応、それも検証してみました。コンピュータ画面上の画像を2値化してヒストグラムでピクセル数の割合を算出すると約42%でした。41.6というのは実際にカウントした正確な値っぽいです。おそらくプログラムはいじってない。
番組では2値化する工程も見せていたのでそこもある程度は自動になっているから不正は入りにくい。そうすると画像もいじってはない。あるいは閾値を調整して小数点以下まで一致させることが可能だろうか?無理とは言えないけどかなり難しそう。閾値付近のピクセル数は多いので、ピッタリの値を出す調整は難しいのです。
事故調のほうの41.6%の図も計測してみますと約42%となりましたので、そちらの数値も間違ってはいないようです。単なる偶然なのか、違いがある部分の面積が小さくて一致しやすかったのか。しかし、事故調の斜め下からの図で正射影の41.6%の範囲を計測しますと約46%となりましてやはり違いは出ます。模型は残存範囲のほうが手前で大きく写っていて破損範囲のほうが奥で小さく写っているのでそうなりますね。
例えば5%の範囲で自由に値を指定できたとして、小数点以下まで偶然に一致する確率は1/50=2%です。となりますと偶然の一致というのも無理があるようにも思えますし、前述の4psiの一致もそうですけれど、このような偶然が重なるのはさらにありえないかなと思います。
偶然がありえないとしますと、真相は逆なのかもしれません。この番組の模型写真や解析図形と同じものが実は事故調内にマスターとして存在していて、事故調は意図的にマスターから形を変更したものを最終的に使った?それもありそうなんですよね。機体角度はこの番組の模型の角度のほうが正しいわけですし、報告書には模型全体の写真は掲載されていない。斜め下からの図での残存割合も掲載されていない。
例えば、この番組内では飛行解析も行っていてDFDRのグラフも登場してます。そういう調査資料が中間報告段階でマスコミにどの程度出されていたのか、例えば公式ルートでは第一次中間報告では以下のような資料があったようです。
1985年8月28日毎日新聞トップ
「中間報告はわらばん紙大で六五ページ。事故の概要や現場の機体散乱状況、新たに解読されたフライトレコーダーの記録及びその見方、ボイスレコーダーのほぼ全記録を入れている」
このように、既にフライトレコーダーの記録は公開されていたようですから、この日以降かつ報告書公開日以前に制作された番組や出版物で利用されているフライトレコーダーのグラフというものは第一次中間報告で配られた資料を元にしているということです。
ちなみにこの新聞記事には垂直尾翼損壊図が掲載されてますが、ほぼVT05のような図になってましたので、おそらくその時の事故調の見立てなのだと思います。
中間報告というのは確か4回はありましたからもっと他のデータが入手できていたと思います。非公式にその他のデータを入手できたのかどうかは個人的には知らないのですけれども、なんらかの入手経路があったとすると、報告書非掲載の模型の写真であったり、写真の解析結果も入手していたこともありえるし、その本物の写真を番組は使った可能性もあるかと思います。
そうすると、実は番組の解析は当時の事故調とまったく同じで、数字がぴったりなのは必然の結果なのか。当時の事故調は斜め下から見た図の残存割合で41.6%としてたとか?それを番組は踏襲しただけ?もしかすると事故調は後で正射影に変形させた図の割合に置き換えて最終的に報告書に掲載した可能性が出てくるのです。変形後の図形でも数値が変形前と同じなのであれば、変形後に引き続き数値と合うように帳尻合わせしたということになってしまいます。
番組の図というのは斜め下から見た構図のままで計測したピクセル割合ですからその割合で語るのは本来なら間違っているのです。報告書では正射影での割合ですから計測するならこちらのほうがましです。構図によって面積比は違って当然なのですが、結果としては一致しているという矛盾。
この番組での他の検証では隔壁開口の面積を1.4m2と推定していたり、ボーイング社から事故調に伝えられたとする「垂直尾翼は1平方メートルあたり2.5トン」で壊れるという情報を紹介していたりします。
それらは最終的な報告書より甘めの数字になってますので、事故調説を後押しする意図のある番組内容だったわけです。
しかし、よくよく調べてみますと、あの番組の少なくとも写真解析については結論ありきの検証だったことが分かりました。
もしかして、報告書のあのサイレント修正は辻褄合わせの調整だったのかもしれませんし、真相がなんなのかははっきりしませんが、NHKか事故調かどちらかが確実にやらかしてます。事故以来まともな検証がほとんどされてこなかったのだと理解しました。
ちなみに、同じ番組内の相模湾を飛行するCG映像ではVT03とVT05の中間の形状(VT05からNo.2供試体を除いたような形)になってまして、写真解析の図とも違うのです。

ところで、前述の事故調の損壊図の残存部分Bの左にあるちょこっと細く上に飛び出ているところというのは、実は偶然にも撮影場所に近い奥多摩日原の山林で発見された部分でして、報告書にも写真があります。
下図の緑部分です。赤が未発見部分で、黒が海で発見された部分です。薄い黒でAとかBとかの領域は写真解析での残存予想領域です。

図の緑部分の発見はNHKニュースでも報じられてます。
1986年1月7日 NHKニュース
「破片がみつかったのは東京・奥多摩町日原(ニッパラ)の山林内で、去年の12月28日、近くの会社員が狩猟中長さ2メートル、幅70センチほどのアルミ合金製の破片をみつけ、警察に届け出ました。」
「破片には裏側に縦4本と横1本の補強材がリベットで打ちつけてあって、表には白、裏には緑色のサビ止め塗料が塗ってあり、事故調査委員会では垂直尾翼左側の付け根に近い部分の破片とみています。」
 また事故当日、奥多摩町日原付近で撮影された事故機の写真では垂直尾翼の40%前後が残っていることから、垂直尾翼は事故機が30分以上も迷走飛行を続けている間に次々と破壊していったとする見方が強まっていました。
「事故調査委員会ではこれを手がかりに事故機の垂直尾翼が相模湾上空でどこまでこわれ、その後どのように破壊されていったのか、その過程を明らかにしたいとしています。」
いかがでしょうか。これの意味するところがわかりますかね?大事なところなんですけど。
奥多摩町日原あたりを飛行していたのは18時49分45秒あたりです。つまり、墜落約6分40秒前です。
写真にこの部分が写っているのかどうかはわかりませんが、撮影した時刻あたりで脱落したということは確実です。ということは、その部分より上部というのは既に脱落していた可能性が高いということになります。
経路上の地上で発見されている他の垂直尾翼の残骸というのは、これよりかなり小さいものばかりですから、これより上部というのは海に落ちているとみなすべきなんです。
図の緑色部分のすぐ右横の黒い部分は海に落ちた部分なので、その周辺は相模湾上空で破壊脱落した可能性は高いでしょう。
黒い海に落ちた部分がAやBの残存予想領域と重なっているのは、写真解析では左右から機体を見た場合の片側だけ残っていても写真には映るだろうという意味で残存を解析しているためなのですが、
少なくとも片側は海に落ちている事実があるので、写真解析が間違いの可能性が高いです。
赤の領域とAおよびBの残存予想の領域が重なっている部分というのは、事故調としては写真撮影時には残存していたと推定しているわけです。つまり、少なくとも左右片側は相模湾には落ちていないとしているのです。
そんな残骸は地上からは発見できていないので矛盾があるのです。単なる写真解析結果だから誤差があるのでは?と思われるかもしれませんが、事故調の写真解析というのは左右から機体を見た残骸の残存部分との論理和で解析していて、
脱落部分は左右の論理積でなるべく脱落済の領域から除外して解析されてます。要するに残骸の残存部分や海に落ちた部分は考慮された結果なのです。しかし、論理積で判断している手法が間違いの元です。それで必要以上に残存可能な領域が広くなってます。
分かりやすく言い換えますと、機体を左右どちらかから見て、片側に脱落していた部分があったところでも、反対側では残存していてもいいだろう、というのが事故調の間違った考え方です。そうではなくて、片側に脱落していた部分があったところは、反対側でも同じく脱落しているだろうと考えた方が確率的には正しいです。
事故調の間違った写真解析から、間違った垂直尾翼の残存領域が推定されて、間違った垂直尾翼の耐圧が推定されて、間違った仮説が正しいとされてしまってます。
「垂直尾翼は事故機が30分以上も迷走飛行を続けている間に次々と破壊していった」証拠は発見されていないのですが、なぜか事故調は異常事態発生時に海に落ちたとは思わないようです。
せっかく異常事態発生時での破損部分の境界となる証拠が見つかったというのに台無しにする方向へと事故調査は進んでいたことが分かります。
事故調査は、米国NTSBの結論と一致させる方向を目指すわけですが、米国NTSBの結論というのが、実はこの発見以前の結論なので、新事実が判明したにも関わらずそれを考慮していないのです。
1985年12月7日 朝日新聞 東京朝刊 (3)
「米国国家運輸安全委員会(NTSB)が6日、米国連邦航空局(FAA)に出した5項目からなる安全勧告」
「事故の原因を、ボーイング社による隔壁の修理ミスとほぼ断定」
「ボーイング社から独自に入手した実験データで判断したもので機体製造国の事故調査機関としての強みを発揮した」
となっていて、日本の事故調が最終結論を出す前に、事故原因が決定済のような扱いになってしまってます。
疑わしいところを一応修正しておくという姿勢ならいいとは思いますけれども、垂直尾翼残骸の新発見が考慮されていない古い調査結果に対して、日本側が迎合しては本末転倒です。
ますますミスリードされてしまう日本側の弱さが浮き彫りになっていくのですが、ミスリードされている自覚もないし、古い調査結果が修正不要で正しいと信じているのです。

NHK番組で紹介されている数字で独自に検証してみます。
番組内でのボーイング社からの情報という1m2で2.5トンという数字は1kg/m2=0.001422psiとして、2500kg/m2=3.56psiの差圧のことです。
※前述の垂直尾翼の先端と付け根の差圧の差の1.2m2を開口面積とした解析では、このボーイングからの情報を利用したとすると数字としては合います。そうすると事故調が4psiで解析しなかったのは当初はNHK検証結果と同じく差圧3.56psi、開口面積1.4m2を目標値にしていた?ということなのかもしれません。ただ、実際はそれでは壊れそうにない、だから開口面積を1.8m2にした。という流れがありえます。
このあたりの数値を独自の8室シミュレーションで調べてみました。例えば、垂直尾翼耐圧を3.3psiとしてみますと、垂直尾翼破壊は0.8m2の開口で可能となります。
しかし、それですと今度はAPU防火壁が破壊不可能となるので、開口面積を1.2m2で実験しますと、両方破壊は可能となりました。
垂直尾翼耐圧3.56psiの場合ですと、0.95m2で垂直尾翼は破壊できましたが、APU防火壁は破壊できませんでした。
1.4m2では逆にAPU防火壁は破壊できて、垂直尾翼は破壊できませんでした。
1.7m2で両方破壊可能となりました。
このように、圧力隔壁破損を事故原因としますと、かなり微妙なバランスでしか両方破壊に至らないのです。
おそらく事故調としては、いろいろと調整してある程度安定して破壊可能となったのが開口1.8m2で垂直尾翼耐圧4.75psi(4psi上昇),APU防火壁耐圧4psiという数字だったのだろうと思います。
こういう最適パラメータを探っている作業中に客室内の風速がどうとか、考えている余裕はなさそうです。

さて、以前の動画では後部で爆発が起きた場合の気圧変化の2次元シミュレーションを行いましたが、今回は独自の8室シミュレーションでやってみます。
想定としては、room5で爆発が起きたとします。APU防火壁と垂直尾翼の耐圧をボーイングや事故調の想定よりかなり高めな現実的な数値にしてみます。それぞれ6.0psiと9.0psiの耐圧とします。
独自の8室分割シミュレーション。room5で爆発(表示に30秒くらいかかります)
爆発をどうやって実装するかは難しいのですけれども、room5の気圧をプログラム制御することで模擬することにしました。
爆発の波が2回ある形です(room5の緑線グラフ)。爆発の影響で客室内気圧も変化させたいので、一時的に圧力隔壁が大きく開口したことにして、数秒後にとても小さくしました。
想定したいのは圧力隔壁が破壊されたということではなくて、エアコンダクトの弁を一時的に通して非与圧領域から与圧領域へ圧力変化が影響したことを想定したいのですけれども、その代替案として使ってます。
(APUからの圧縮空気をエアコンへ送る管は圧力隔壁下部を通ってますので、隔壁の壁に破壊がなくても管の弁が異常動作すれば客室気圧に影響するだろうという想定です。あくまで仮説です。)
パラメータとして動的に変化させているのはroom5の気圧と圧力隔壁の開口面積だけです。その他は変更しておりません。
結果のグラフは次の通りです。濃いピンクの点線が客室高度10000feetのラインなので、一時的に客室高度警報が鳴り、すぐに鳴り止み、30秒後くらいには再び鳴ることも確認できます。

APU防火壁の破壊が0.022秒で、垂直尾翼の破壊は0.112秒となり、本考察で仮説として可能性が高いとした時間差0.1秒以内での同時破壊となってます。
本来はおそらく爆発によるroom5の気圧変動はもっと大きく時間的に短いのかもしれません。今回の最大圧力は47psiにしました。
場所としてもroom5よりroom6での爆発の可能性のほうが高そうと考えてますが、そこで爆発させてしまうとAPU防火壁が破壊される状況が分かりにくくなるのであえて場所をずらして試してます。
アルゴリズムとして客室の局所的気圧変化というものがこのプログラム実装では実現できないので、そこは割り引いて考える必要はありますが、
ほとんどプログラムを変えないで、爆発を想定したシミュレーションができていることが確認できます。
もしも当時、事故調が爆弾以外のなんらかの後部爆発の可能性を模索して同じようなシミュレーションを行っていたなら、それで全く異なる報告書を仕上げて、世間は納得していたという世界線がもしかしたらあったのではないかと想像してしまいます。
事故調説と本考察を比べて本考察のほうが納得できると考える人がいてもいいと思いますし、国土交通省運輸安全委員会にも読んでほしいし、一考の価値があると思ってもらえるくらいの科学的検証をしているつもりです。
運輸安全委員会は建前上は独立組織だから国土交通大臣とて指示権限がない難しさがあるのは知ってますが、やる気のある国会議員なら、そこをこじ開けられるかもしれません。
例えば、報告書未掲載の詳細な調査記録なら事故調単独でもすぐに公開できます。できることはいろいろあるはずです。
これがもしもTWA800便の事故原因と酷似するという話に繋がっていくのであれば、一個人の考察としては途方もない話なのですが最終到達点は日本-アメリカの国家間レベルということになります。

ところでNHK番組で紹介されているボーイングからの情報というのはNHKニュースでも報じられてます。
1985年11月10日 NHKニュース
「ボーイング社はこのほど垂直尾翼は1平方メートルあたりおよそ2.5トン、また補助動力装置は2.8トンといずれも客室内の半分以下の圧力でも破壊が起きると分析結果を報告してきました。
さらにボーイング社の分析では、こうした破壊は圧力隔壁に1.5平方メートル以上の穴があいた場合に発生することが明らかになりました。」
「このように圧力隔壁の破壊に続いて起きたと見られる垂直尾翼と補助動力装置の破壊が、どの程度の内側からの圧力で起きるものか数字で特定されたのは初めてで、事故調査委員会では破壊のメカニズム解明の重要なカギと見て今後独自に実験を行い確認を急ぐことにしています。」
前述のとおり2.5トン=3.56psiで、補助動力装置というのはおそらくAPU防火壁耐圧(差圧)のことだろうと思いますが、2.8トン=2800×0.001422=3.98psiです。
事故調のAPU防火壁の耐圧は4psiですから、事故調が独自に確認したとは思えないくらいぴったり一致してますので、おそらくそのまま鵜呑みにして使ったのではないでしょうか。
製造メーカー当事者の思惑の通りに事故調が動かされたとしますと、APU防火壁の耐圧さえ、あやしくなってきます。
おそらくボーイング社の数字というのは設計上の最低保証耐圧に近いものなのではないでしょうか、もしくは破壊の始まりの数字とか。結果的には事故調の実物実験での垂直尾翼の破壊の始まりは供試体No.1の音発生の3.88psiですから、近い数字になってます。
そうしますと、APU防火壁についても、実物はもっと耐圧が高かったと見た方がいいのかもしれません。
ボーイング社の数字が設計値であったことを示唆する参考となる新聞記事を紹介します。 1986年12月19日 読売新聞 東京朝刊トップ
「十八日までに事故発生以来一年五か月近くにわたった調査を実質的に完了させ」
「コンピューターによる破壊過程のシミュレーション(模擬実験)などによる分析を進めた。」(これは事故調の話です。)
「破壊実験の結果、APUの直前にある防火壁の取り付け部分は、ボ社の設計強度通り約四PSI(〇・二八気圧)の圧力までしか耐えられなかったのに対し、垂直尾翼のアルミ外板は最も弱い先端に近い部分でも約五PSI(〇・三五気圧)の内圧まで耐えられることがわかった。」
と報道されてます。なお、ここでの破壊実験(事故調の話です)というのは、APU防火壁に関しては数値解析の模擬実験の意味と思われます。実物試験はされていないからです。
「ボ社の設計強度通り」とありますので、4psiというのが設計強度であったことが分かります。この報道の通りとしますと、実物はやはりマージンを考慮してそれ以上の耐圧強度があると考えた方がいいです。
APU防火壁の事故調推定耐圧というのもあくまで有限要素法での数値解析結果から出しただけですので、もしもボーイングと同じような計算方法なら、同じ値が出るのは当たり前です。
当時の事故調が独自に解析できる技術や予算がなかったのだとしたらボーイングの情報そのまま使っても非難すべきではないのかもしれませんが、それであるならどこかの時点で実物試験を行う再調査をすべきだったと思います。
独自の8室シミュレーションで確認してみます。APU防火壁耐圧3.98psi、垂直尾翼耐圧3.56psi、隔壁開口面積1.5m2ですと、APU防火壁は破壊されますが、垂直尾翼は破壊されません。
しかし垂直尾翼耐圧を3.4psiに変更すれば、両方破壊脱落するという結果で、客室高度警報鳴り出しが1.666秒で、プリレコーデッドアナウンス+酸素マスク落下が3.112秒でしたので、ボーイングの示した耐圧は圧力隔壁破損説としての耐圧としてはかなりいい線いっていたと思います。

独自の8室シミュレーションからの解析とほぼドンピシャな数字です。ついでに分かることは、独自の8室シミュレーションはボーイング社の数値解析にかなり近いということだろうと思います。(実機と近いという意味ではなくて数値解析と近いという意味です)
このボーイングからの情報での垂直尾翼耐圧3.56psiは事故調推定耐圧4.75psiと比べてもかなり低いものです。垂直尾翼に関しては実物実験を事故調は行ったので同じにはできなかったということでしょう。それでもかなり寄せたと思います。寄せないと破壊は不可能だからです。
数値解析よりも実物試験を重視すべきという話は動画でも何度か言いましたが、理由としては、本来、数値解析というのは実物試験のデータを利用してパラメータを設定調整して、実物の挙動に数値モデルの挙動を近づけていくからです。
一般的な数値モデルをそのまま適用できる材質や形状でしたら数値解析だけでも信頼性は高いですけど、圧力隔壁や垂直尾翼というのはかなり特殊ですから実物試験のデータがないままでは正しい推定は不可能です。
結局このNHKニュースから約1か月後に放送されたNHK特集「墜落」によって、視聴者は垂直尾翼は簡単に破壊できるものなんだなという印象をもたされたと思います。
垂直尾翼は先端と付け根では耐圧にかなりの差があるというのが実物の実験結果なので、どこが残存部分かによって値は変わってしまいます。
ボーイングの垂直尾翼耐圧の値は応力解析から出ている数字のはずなのですが、隔壁開口での内圧上昇の数値解析である8室シミュレーションでの破壊下限値とほぼ一致しているのは本来であれば偶然でしかありません。しかし、そんな偶然は考えにくいです。
事故調の8室シミュレーション結果のような内圧上昇がどの程度になるのかという数字はボーイングも知っていたと考えられます。
そうでなければ、「ボーイング社の分析では、こうした破壊は圧力隔壁に1.5平方メートル以上の穴があいた場合に発生する」とは言えないからです。
応力の計算だけで耐圧を解析したのであれば、隔壁開口の面積などどうでもいい話のはずですが、きっちりドンピシャの面積が出てます。内圧上昇も計算していたと見るべきです。
(ちなみに事故調の垂直尾翼の実物実験はこのニュースより後の時期に行われてます。8室シミュレーションというのはさらに後に行われてます。)
ボーイングはその内圧上昇の数字に合わせて破壊できる数字として耐圧を出した可能性がありそうです。シミュレーションの下限値と耐圧が一致するのは、まあその数字にしたのだろうなと思うのです。
このNHKニュースにその根拠があります。
「事故調査委員会ではボーイング社に対して隔壁が壊れて客室内の圧力が機体後部に加わった場合、垂直尾翼と機体最後部の補助動力装置が「どの程度」の圧力に耐えられるか問い合わせていました。」
要するに、事故調から隔壁開口を前提として回答を依頼しているわけなので、そりゃあそういう回答が出るだろうね、って感じです。どう考えても、隔壁開口で破壊不可能な数値が出てくるわけがないです。
客観的な調査をするつもりなら、隔壁開口なんて前提は出さずに耐圧を聞きますよ。そうじゃないのだから、調整された数字が出てきても不思議ではないです。
事実としては、このニュースの約2か月後に、奥多摩町日原で垂直尾翼の破片が見つかったため、ボーイングの垂直尾翼推定耐圧はそれ以前に推定していた数値ですから、全くあてにならないものだったわけです。
その全くあてにならない数値を目標に事故調は寄せていったのだろうと想像してしまいます。それしか圧力隔壁破損説を成立させられる方法がないからです。だから断熱膨張でマイナス40度以下に下がるというような他の航空機急減圧事故に適用できる例が無い計算モデルを使った。その目標の数字が真実ではないにも関わらず。
事故調は前述新聞記事にあるように1986年12月18日には事故調査は実質完了してます。報告書が公開されたのが1987年6月19日ですから、事故調はその間に米国NTSBへ報告書内容についてお伺いをたててました。
NTSBの筋書き通りの事故調査報告書を日本の事故調は仕上げることができたようです。

1987年6月20日 読売新聞 東京朝刊(9)
「「私も目を通したが、素晴らしかった」。運輸省航空事故調査委員会が、さる三月に送った最終調査報告書の原案について、米国家運輸安全委員会(NTSB)航空事故調査部チーフ (※中略)は本社記者のインタビューに、こう感想を語った。」
「初の勧告に加え、「疑問には答える」との姿勢から、従来の報告書とは比較にならないほどのデータを別冊付録まで作って公表したことは、今回の調査がこれまでになく前向きに取り組まれたことを強く印象付けた。」

1987年6月20日 読売新聞 東京朝刊(23)
「事務局員に「まだ来てませんか」としきりに尋ねるようになったのは、四月末だった。」
「五月二日、七階運用課にある国際航空固定通信網の端末プリンターが一通のメッセージを打ち出した。発信者は、ワシントンの米国家運輸安全委員会(NTSB)。委員長が待ちあぐねていた報告書案に対する意見回答だった。」
「英文はわずか十行。その中から「NO COMMENT(異議なし)」という語句を素早く読み取った調査委スタッフの顔はみるまに紅潮した。「NTSBと考え方が食い違う部分があれば、両論併記も考えねば」と覚悟はしていた。最終報告書は原案通りボ社の修理ミス、そして、えん曲な表現をとりながらも、日航の整備、運航に厳しい指摘を加えることになった。」


話が戻りまして余談なんですけど、日航の安全啓発センターに123便を横から見た図が壁にパネル展示されてまして、垂直尾翼がVT03の図の通りに色分けされて描かれてます。(垂直尾翼脱落部分がオレンジ色)
ビデオ説明で相模湾上空の話で「この時、尾翼の55%以上が脱落したものと推定される」とナレーションが流れます。ビデオ中の図はどうだったか記憶にないのですけど、
説明員からは、尾翼の8割くらいが脱落したようなパネルの図に見えるけれども、垂直尾翼というのは方向舵を含まないから方向舵を含まないうちの55%という意味、というような説明がされましたので同じような図だったのだろうと思います。
だれもそんな細かい質問をしそうにないのにわざわざ言い訳のようなその説明いるのかな?と思いましたけど、今、考えますと、なんだか違和感のある説明です。
相模湾上空の話でしたらVT03ではなくVT05のほうが事故調方針とは合ってますので、
VT05の残存部分は方向舵を除外すると画像ヒストグラムで調べますと約44%なので、方向舵を除外すると100-44=56%が脱落したという話になり、ビデオ説明とは矛盾しないのですが、パネルの図とは違います。
ついでに最終的な残存部分というのは方向舵を除外すると約43%なので、最終的には100-43=57%が脱落したという話になります。
壁のパネルの図は最終的な残存の概略図という意味で描かれているのだとしても、ビデオナレーションとは違う説明をしているように思えます。
この55%という数字はどこから出てきたのかと探してみますと、報告書(および付録)にあります。
報告書付録p194「写真撮影時(奥多摩上空通過時)において、事故機の垂直尾翼は、少なくとも55パーセント以上欠損していたと推定できる。」
ですので、ビデオで説明のあった相模湾上空の話ではないのです。写真撮影時の話です。
この報告書の55%というのは写真解析から残存を41.6%と推定してさらに残存は3%上乗せがありえると、説明されているので、
100-(41.6+3)=55.4%という計算から来てます。そして残存の41.6%というのは方向舵を含んでますので(方向舵を除外して調べますと脱落部分は約39%)、安全啓発センターの、方向舵を含まないという説明には矛盾があるのです。
実は事故調査報告書発表時の新聞にも似たような言い回しがあります。
1987年6月20 毎日新聞 東京朝刊トップ
「与圧空気で尾部胴体の内圧が上昇し、APU(補助動力装置)、垂直尾翼、方向舵などが数秒間で連鎖的に損壊、脱落した。垂直尾翼の脱落部は全体の五五%以上に達した。」
この記事の文章では相模湾上空という意味にもとれますし、最終的な脱落の意味にもとれます。しかし、事故調査報告書での55%というのは写真撮影時の話です。
方向舵を含まない、という話は日航が作った話ですかね。安全啓発センターは報告書と違うことを説明しているように思えてならないです。
パネルのVT03の図が相模湾上空での形状だと思っているのであれば、事故調の写真解析を否定していることになりますし、垂直尾翼の耐圧も間違いと言っているようなものなのです。
55%という写真解析での形状と、VT03の形状は違うでしょ。厳密かどうかの話ではないのですよ。NHK番組で感じた矛盾と同じです。違う形状で辻褄の合うように数字を無理やり一致させてませんか?
反事故調派である自分のほうが安全啓発センターよりも事故調説の正しい説明ができそうに思えてきて、ジレンマを感じます。
もしかすると、安全啓発センターに詳しい人なら矛盾なく説明できるのかもしれませんが、自分には無理でした。


客室気圧は0.977気圧でいいのか?

事故調の数値シミュレーションでは客室気圧の初期値が14.355psi(0.977気圧)になってます。
旅客機の客室というのは0.8気圧で運用されているというのがなんとなく広く一般的に知られた知識です。
また、なんとなく離陸から徐々に客室気圧が下がるものという認識もあります。
0.8気圧というのは6500feet(2000m)くらいの外気圧に相当します。
123便ではそれより高めの設定だったという話もよく聞くことですが、
それにしましても、異常発生時の24000feetで0.977気圧というのは高すぎのように思えます。
なぜこの機内気圧でシミュレーションをしているのでしょうか?
それとも123便の機内は実際に0.977気圧だったのでしょうか?この疑問はあまりにも素朴です。
事故調査報告書を見てみましょう。
「日航では、常にセレクタ・スイッチを8.9psiとして運行してきた。この場合、
運行中の差圧は高度35,000フィートで8.74psi、高度18,000フィートで7.36psiとなる。」
との記載があります。
地上気温を15度として計算しますと、
高度18000feet(5486m)で7.36psiの差圧とはつまり、何気圧なのか?
高度18000feet(5486m)での外気圧は約7.34psi(0.50気圧)ですから、客室気圧は7.34+7.36=14.7psi(1.0気圧)です。
高度35000feet(10668m)で8.74psiの差圧とはつまり、何気圧なのか?
高度35000feet(10668m)での外気圧は約3.46psi(0.24気圧)ですから、客室気圧は3.46+8.74=12.2psi(0.83気圧)です。
異常発生時の24000feet(7315m)では?
これは分かりません。どの時点から1気圧から下がるのかが不明なので計算できないのです。
一応、18000feet時点から気圧低下が始まると仮定して単純計算しますと、
18000feetと35000feetの17000feet間で客室気圧は2.5psiの差なので、100feetで0.0147psiの低下になってますから、
24000feetですと、18000feetから客室気圧は0.8823psiの低下となり、14.7-0.8823=13.82psi(0.94気圧)という計算です。
これですと数字が合いません。
では仮に22200feetまで1気圧で、そこから気圧低下が開始されるとしてみます。
22200feetと35000feetの12800feet間で客室気圧は2.5psiの差なので、100feetで0.01953psiの低下になってますから、
24000feetですと、22200feetから客室気圧は0.3515psiの低下となり、14.7-0.3515=14.34psi(0.976気圧)という計算です。
この計算ですと、22200feet(6766m)まで客室気圧は1気圧で、それまでは気圧低下はしていないことになってしまいます。
そんな運用があるのでしょうか。
どうやって、0.977気圧という数字を出したかは報告書の「3.1.1.2 残留強度の評価」に記載がありました。
「DFDR記録等より18時24分35秒付近の異常事態発生時における客室高度は、次のようにして算出した。
飛行高度 24,000フィート 標準大気圧力 5.70psi
客室(与圧)高度 650フィート 標準大気圧力 14.36psi
客室差圧 14.36-5.70=8.66psi
なお、客室高度は、航空機運用規程に定められた手順に従って航空機関士が与圧装置のフライト・スケールを設定した場合の推定高度である。」
この記述からわかるのは、14.36psi(0.977気圧)というのは客室高度の推定高度650feet(198m)から計算していることが分かります。
確かに高度650feet(198m)の気圧は14.36psi(0.977気圧)です。
その推定高度というのは「与圧装置のフライト・スケール」から推定したということなのですが、
要するにそれは、前述の「セレクタ・スイッチを8.9psiとして運行」のことだと思うのです。
そうしますと、前述の計算の通りとなるのです。
参考に機種が違いますけれどB737のコックピットでは、航空機関士のパネルにMAX PRESS SCHEDULEという表示板がある機種があります。
表示版には飛行高度と客室高度の数列が記載されてまして、
LAND ALT - [FL160] - 2000 - [FL220] - 4000 - [FL260] - 6000 - [FL320] - 8000 - [FL410]
のような関係が示されてます。FL160というのが飛行高度16000feetの意味で、それまでの客室気圧は地上気圧です。
22000feetから26000feetまでは客室高度4000feet(12.64psi)となってます。
41000feetでの客室高度は8000feet(10.9psi)です。
セレクタスイッチは123便では高い設定のほうの8.9psiで、低い設定のほうは6.9psiです。
24000feetで外気圧が5.70psiで、B737表示板ではその時の客室気圧は12.64psiだから、12.64-5.70=6.94psiなので、低い設定のほうの6.9psi運用での最大が記載されているようです。
運用方法の違いの差は8.9-6.9=2psiです。
22200feetの外気圧は6.15psiでそれより2psi高い8.15psi相当の飛行高度は15432feetです。
つまり2psiの違いというのは飛行高度22200feetと15432feetの違いに相当します。
ということは、B737の表示板での飛行高度16000feetまで客室は地上気圧でいいということは、123便の場合は22200feetまで地上気圧でいいという話になります。

客室気圧は離陸から徐々に0.8気圧まで下がるというふんわりとした認識とはだいぶ違います。
報告書の数字を見ますと地上気温15度で計算した数値とほぼ一致してます。地上気温を25度としても0.2psi程度の違いにしかなりませんので、気温の影響は少ないです。
セレクタ・スイッチを8.9psiとして運行をした場合の高度と客室気圧の例が調べても出てこなかったので厳密な検証までは至りませんでしたが、
計算上は22200feetあたりまでが1気圧だとしてもいいような気がします。
24000feetで0.977気圧というのが間違いとも言えないので、なにか新たな情報が出てくるまでは正しいとみなしておくことにします。
「セレクタ・スイッチを8.9psiとして運行」がそもそも適切か不適切かは別の議論になるかと思いますので、ここでは議論しません。


フゴイド運動はエンジン推力調整でおさまったのか?

DFDRの飛行高度(ALT1)のグラフをみますと、上下に振動しているのが分かるかと思います。それがいわゆるフゴイド運動です。
フゴイド運動の最中では高度と速度(CAS1)は反対の動きになっていることも分かります。(赤色のグラフ。上がCAS1で下がALT1)
これはつまり、高度が下がると、そのぶんの位置エネルギーが運動エネルギーになるから速度が増すという動きです。
逆に高度が上がると、運動エネルギーが位置エネルギーになるので、速度は低下します。

このグラフを見ますと、フゴイド運動が緩和されているのが、18:41から18:48と、18:51から18:55の区間のようです。
18:39:32ごろに主脚が下げられているので、その影響で緩和されているのだろうと思いますが、その前からやや収束し始めてます。
黒いグラフEPR4というのがエンジン推力(第4エンジン)です。※特にどのエンジンでもよかったのですが、一番初めに掲載されていたのでそれを使っただけです。
他のエンジンもほぼ同じ動きです。
18:41のやや前から収束し始めているときはエンジン推力はあまり動かしてないようです。
また、18:51の前には逆に大きくエンジン推力は動かしているのがわかります。
つまり、エンジン推力を動かしているとフゴイドはおさまらず、エンジン推力をあまり動かさないほうがフゴイドは収束するということのようです。
厳密にはそれが結果としてそうなっているのか、それが原因の操作なのかは判断が難しいのですが、18:51での時間差で影響している部分には因果関係を感じます。
高度(ALT1)とエンジン推力を比較しますと、フゴイド運動で高度が高い時にはエンジン推力を増して、高度が低い時にはエンジン推力を低下させている傾向が見られます。
ただ、エンジン推力に関してはかなり乱れている時もありますから、きっちりとした相関ではないようです。
少なくとも事実としては、エンジン推力の積極的な調整でフゴイド運動が収束したということはなさそうです。
しかし、クルーとしてはエンジン推力の調整でフゴイド運動を収束させようと努力していたのだろうと思います。
なんとなく18:35分以降では高度の変化よりもエンジン推力の制御のほうに時間的な遅れがあり、18:37あたりで、あまり大きくエンジン推力は動かさないようにしているので、
一見するとフゴイド運動をエンジン推力でなにか収束させるコツを掴んで、意図的に時間的遅れを作って抑えぎみに制御したのかと思えるのですが、
18:51から18:55の区間では再び大きく推力調整をして、フゴイド運動が発生しているので、やはりコツが最後まで掴めていなかった可能性が高いかと思います。
ただ、18:51:06からフラップを下げ始めているので、フゴイド運動の収束よりも全体的な機体の安定を優先させた可能性もあります。
ところで、飛行理論的には、高度が下がり始めるときにエンジン推力を下げて、高度が上がり始めるときにエンジン推力を上げたほうがフゴイド運動は収束するとされてます。
しかし18:37あたりから収束に向かうデータで判断しますと、むしろなにもしないほうが収束が速かったのではとも思える結果なのです。
また、18:37までのエンジン推力は特にフゴイド運動を助長させるような操作はしていないにも関わらず収束しなかった。
どちらも飛行理論通りにはなっていないように見えます。どうしてそうなっているのか理由は分かりません。
18:35分以降の遅れがある抑えぎみなエンジン推力調整が良かったのかもしれません。それとも、エンジン推力以外がなにか影響しているのかどうか。分からないです。

TBS系列でのJNN報道特集で2000年頃の放送で日航123便のフゴイド運動についての解説がありました。
ボーイング747現役機長との字幕があります。飛行機の模型を持ちながら説明されているのですが、
「こういう上下を不規則にしているわけですね。で、やっぱりパイロットというのはですね。飛行機がこんな不規則な動きをしているとですね、できるだけそれを止めようとしますから、
飛行機が上がろうとした時にエンジンの出力を絞る、下がろうとした時に上げる。その操作を最初ずっとやってますね。」
ん?違くないですか?DFDRを見る限りそんな操作はやってないです。
エンジン推力のグラフではこの解説とは逆の操作で、前述の通りですけど、高度が高い時にはエンジン推力を増して、高度が低い時にはエンジン推力を低下させている傾向が見られます。
もしかして、エンジン推力ではなくて、速度のグラフで判断してませんか?
仮に解説通りに飛行機が上がろうとした時にエンジンの出力を絞ったら失速する恐れが出てきそうな気はします。
いやしかし、現役機長がそんな素人的な間違いをするとも思えないので、そのように操作したと考える合理的理由があるのか、単なる思い込みなのか、とにかくDFDRのデータからはまったく分かりませんでした。

話は変わりますが、このような状況のなかで、左右のエンジン推力差で左右旋回を試みるような余裕があったとも思えないです。
以前の動画でも左右のエンジン推力差と進行方向の相関は発見できなかったことを述べました。
もしも、左右のエンジン推力差に限らず他の操作などで進行方向を変えられるという仮説をもっている人がいるのなら、ぜひDFDRでの因果関係を見つけてほしいです。
個人的には左右のエンジン推力差に関しては相関は見つけられませんでしたが、自分が見逃しているだけという可能性もあります。
仮説を主張するなら機械機構的な可能性や誰それがそう言っていたとかの議論よりも、飛行データで証明してくれれば納得もできるので、ぜひDFDRのデータを使って証明してほしいです。
動画ではエンジン推力そのものと進行方向の相関はありそうだとしました。ただし因果関係は不明ですから、その相関が結果なのか、原因なのかは不明です。
相関があったとしても、因果関係を証明できなければ、制御できるということにはならないので注意が必要です。
同様に、機体にゆがみがあってまっすぐ進まなかったという噂もありますけど、DFDRの異常事態発生前でそのような機体異常の証拠は見つけられません。
以前に別のWebページのほうの考察でもそれを調べた時には風の影響ではないことの証明はできなかったです。



垂直尾翼はいつ脱落したのか?

異常事態発生後の飛行中に垂直尾翼の大部分と機体最後部のテールコーンが無かったことは、地上から撮影された写真の解析で判明してます。
証拠となる写真は1枚だけなので、厳密にはそれ以前の状態がどうだったのかまでは推測となりますが、
写真の解析では、撮影位置、方向、写っていた機体の大きさなどの情報から、その時の123便の位置を事故調は推定してまして、600メートルほどの誤差はあるものの、おおよそレーダー航跡と一致してます。
※水平尾翼がいつ脱落したのかについては、事故調と異なる意見を別のWebページ「大月旋回などの航跡に関する考察」で説明してます。

さて、垂直尾翼が脱落したのは相模湾上空の緊急事態発生時としまして、くわしく考察してみます。
加速度のDFDRを見てみましょう。

前方加速度の突出0.047Gのあとで、横方向加速度が振動してます。具体的には36秒から40秒あたりの区間です。
横方向加速度の縦軸上方向が右への加速度で、縦軸下方向が左への加速度です。
事故調としては横方向加速度は異常外力によって引き起こされたとしてます。
おそらく機体全体がゆがんで、そのゆがみが解放されたことによる振動とみて間違いないと思います。
さてそれはそれとしまして、事故調の主張という説明に従って縦線を引いてみました。垂直加速度の縦軸上方向が上への加速度で下方向が下への加速度です。
赤線の時点でAPU防火壁が脱落したと仮定してみます。前方加速度の突出0.047Gの時点です。
赤線の0.2秒後の青線を垂直尾翼が破壊脱落開始した時点と仮定してみます。一説には、どうやら圧力隔壁破損説ではそのように解釈するのが正しいらしいです。
8室分割の数値シミュレーションの結果と一致しているという話なのです。
いかがでしょうか。ずいぶんと赤線と違って青線の付近では加速度の変化がほとんど無いですね。
青線の時点のあたりで垂直尾翼の破壊がされていると言われても、納得できるデータが出てないです。
事故調の主張という説明では垂直加速度が緑線の36.3秒あたりで下に振れているのは、垂直尾翼上部へ空気が噴き出したからということらしいです。
緑線の36.3秒というのは青線から0.5秒くらい経過してますし、赤線からは0.7秒ほど経過してます。
赤線のAPU防火壁の破壊時点と垂直尾翼の破壊の時間差は数値シミュレーションでは0.275秒差でしたので、青線を0.075秒ほどのほんの少し過ぎたあたりが計算上の垂直尾翼破壊時刻のはずです。
しかし、よく見ますとその時点では僅かに上加速度になっているのです。
これでは空気が尾部から上方へ噴き出したから下加速度になったという理屈がどうやったら成り立つのか不明です。
垂直加速度が下加速度に変位した時点つまり、赤線から0.5秒ほど経過した36.1秒あたりで急激に空気が噴出したと仮定してみましょうか。
ぱっと見ですと、なんとなく辻褄が合うような気もします。しかし、0.5秒間というのは長すぎるのです。
前述の独自の8室分割シミュレーションのグラフを見ていただくとわかるのですが、垂直尾翼内の内圧上昇の山というのはピークがすぐにおわってしまうのです。
なぜなら、その間にもAPU防火壁の欠落部分から絶え間なく空気が出て行ってしまうからです。内圧上昇の山のピークが耐圧を超えるのは事故調贔屓の見方をしてもせいぜい0.2秒間もないでしょう。
ですから0.5秒間も空気が抜けずに溜まっていくなんてことは考えにくいですし、溜まっていくくらいならそれまでに破壊開始もできないです。一部分でも破壊されたならそこから空気が噴出してさらに内圧が下がってしまうからです。
事故調の主張という説明は、結局よく分りませんでした。
そもそも、加速度の3つのセンサーは機体胴体の前後上下中心あたりに位置してますから、
前後方向加速度はいいとしても、機体尾部が上下または左右に加速したからといってセンサーの位置が上下または左右に加速するとも限りません。
ですから、尾部の上下移動を、垂直加速度で証明することは単純な話ではないのです。

むしろ垂直加速度よりもピッチ角が急激に変わると思うのですが、ピッチ角の突出的な上昇は記録されていないので、尾部から空気が上方へ噴出したという仮定に無理がありそうです。
しかも、空気の噴出が後方斜め上だったら前方加速度が記録されてしまいますから、それは記録されてませんので、たまたまきっちり真上へ噴出したとしないといけません。
そんなうまいこと真上へ噴出するものでしょうか。かなり疑問です。
ありえそうな他の可能性としては、
空気が尾部から上へ噴出したというよりも、0.047Gの前方加速度の突出または横方向加速度の振動の始まりによって昇降舵などに乱れが出た影響とみてもいいような気もしますし、
垂直尾翼の一部の残骸が下へ落ちていくときに一緒に機体が下方向へ引っ張られたとしてもいいような気がします。
その場合は必然的に重力方向に力がかかるので、真上へ空気が噴出する仮定よりは角度的にありえそうですし、突出的なピッチ上昇も必要ないです。
または、オートパイロットの動きで姿勢回復が過敏に出たのかもしれません。
いずれにしましても、緑線の36.3秒あたりではピッチ角はわずかに機首が上向き(異常発生前と同じ程度)なので、機体全体が下方向へ移動したのだと考えられます。
ということは、空気が尾部から上へ噴出して機体が急にピッチ回転したわけではないのでしょう。
36.3秒あたりの下加速度は異常発生前と比べて約0.25Gの差があります。前方加速度の突出が0.047Gだったことと比較してもかなり大きいです。
空気が尾部から上へ噴出して機体がピッチ回転しないで機体全体が下方向へ加速するのか?やはり、難しいのではないでしょうか。
それと、青線でも緑線でも、その時点ではすでにAPU防火壁は脱落していて、そこから空気は漏れ続けているわけですよね。
空気の噴出が加速度を作るのだとしたら、なぜ前方加速度の突出が一瞬で終わっているのでしょうか。空気が漏れ続けていないということになってしまいます。
圧力隔壁破損説では7秒間のうちの初めの0.5秒以降くらいは線形の右肩下がりグラフで空気が噴出し続けるはずでした。一瞬の噴出で終わってしまうのだったら、それは客室の空気が噴出したのではなくて、
非与圧領域で爆発が一瞬だけあったからではないのでしょうか?その仮定だと説明がつくのです。

ところで、報告書では「1箇所でピール破壊を起こすと、外部の空気流による力も加わり、外板は相当の範囲にわたってはく離する」としてます。
過去の事故例を見ますと、外板はく離は必ずしも起こるわけでもないようですし、外板はペラペラなので骨組みの破壊のほうが問題です。
内圧のほうが高く空気が数秒間は吹き出ている最中なので、内部に外気が入り込む余地なんてなさそうですから外板が剥離したからといっても骨組みまで破壊が波及するとも思えないです。
さてそれはともかく、外部の空気流が垂直尾翼の破壊に必要ということは分かりました。これはつまり内部からの空気流だけでは破壊の力としては不足ということです。
そんなぎりぎりの破壊しかできないということは少なくとも垂直尾翼を勢いよく上方へ吹き飛ばすことなど到底不可能です。
つまり、垂直尾翼はせいぜい空気抵抗や重力で崩れ落ちるだけということです。
そんな状況でも垂直尾翼上部へ空気が噴き出したから下向き加速度が出たと主張するのでしょうか。かなり無理があると思います。
とりあえず、11トンの前向き異常外力に垂直尾翼破壊が関与していないと考えていることだけは分かりました。


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外部飛翔体が垂直尾翼上部に衝突した場合の予想アニメーション

外部飛翔体説というのも根強くありまして一定の支持もあるようです。個人的には0.047Gの前方加速度の突出が説明できないんじゃないかと思ってまして、
なぜそう思うのかというのをアニメーションで説明したいと思います。
外部飛翔体説にも、どの角度から衝突したのかというのはいろいろなバリエーションがあるようなのですが、ここでは前方から垂直尾翼上端に衝突したと仮定してみます。
その際に垂直尾翼やAPU防火壁以降は分離するわけですけれど、分離に必要な力をゼロとすると一瞬の前方加速度は発生すると思いますが、
現実的には胴体に接続しているものを分離するにはそれなりの力が必要なので、どうしても一瞬の後方加速度は発生するように思えるのです。
次のリンクで分離に必要な力のパラメータを入力して[アニメーションスタート]ボタンを押してみてください。10秒程度のアニメーションで分かりやすく動きを確認できます。

垂直尾翼の上部に前方から飛翔体が追突した場合の動き

分離後に前方への速度が増しているのは、胴体が軽くなったぶん、同じエンジン推力ですとスピードが増すという理屈です。
アニメーションでは分かりやすいようにかなり極端に表現してますので、実際の変化は僅かだと思います。
また、DFDRによりますと前方加速度発生時点での機体姿勢角度はほとんど変化はありませんし、分離直後では、短い時間わずかに機首が下向きになるのも、なかなか説明は難しいと思います。
分離後であれば、尾部が軽くなったぶん後部が上がり、機首が下を向くということはありえるにしても、垂直尾翼上端を前方から押した時点では後部は下がり機首は上に向きます。
フラッター説でも同様に0.047Gの前方加速度の突出と機首の下向きを発生させるのは難しいです。垂直尾翼は空気抵抗によって分離したとして、やはり、その時の一瞬は後方加速度になってしまいます。
力の掛け方や角度がかなり特殊であれば可能なのでしょうか。
たとえ話をしますと、馬に乗っている騎手が、馬が走っている途中で騎手の頭が木の枝にぶつかって騎手だけ後方へ落ちて、馬だけが走るようなものです。
その時に、もしも手綱と騎手ががっちりと結ばれていたら、馬は後方へのけ反るでしょうし、手綱を持っていなければ、馬は重しが無くなったぶん加速します。
飛翔体が後方からぶつかって機体を前方へ押したという話ならまだ加速度的には合ってると思いますけど、個人的にはそんなピンポイントで狙える飛翔体があったとも思えないです。
一応、後方からぶつかるアニメーションは値を-100のようにマイナス値を入力しますと表示できます。
飛翔体が後方からぶつかった場合の機体の動きというのはDFDRと一致してます。これはつまり事故調が異常外力という言葉で表しているのと同じで、
垂直尾翼の異常外力着力点に、後方から前方へ力が働いた。力の向きとしては正しいです。
やはり、外部飛翔体が原因とするなら、後方から前方へピンポイントで垂直尾翼あたりに当てる必要があります。
それがテクニカル的に可能なのは誘導が可能な物体に限られてきますが、そのような物体の発射や衝突の証拠を隠蔽することはほぼ不可能です。
だから可能性としてはかなり低いという結論を以前の動画でも述べました。DFDRが改ざんされている可能性や0.047Gがエラーである可能性もかなり低いと考えてます。
事故調説と後方から前方へ外部飛翔体が当たる説というのは、異常外力というのがどのように発生したかの違いがあるだけで、力の方向としては正しいのだろうと思います。
一方で、前方から後方へ外部飛翔体が当たる説やフラッター説では飛行姿勢の説明がやはり難しいらしく、前方加速度の突出がDFDR上のエラーだ、と解釈することで矛盾を回避する説明もあるようです。
しかし、事故調説のように内部からの噴出であっても垂直尾翼の脱落がAPU防火壁以降後部の脱落より時間的に後、としますと、APU防火壁以降後部を吹き飛ばすだけでは前方加速度の突出0.047Gを作り出すことは難しいです。
既存の主たる説ではなかなかすべてを説明できない難しさがあります。
個人的には内部からの瞬間的な爆発で、0.1秒以内に垂直尾翼の脱落とAPU防火壁以降の脱落は同時に起きた可能性が高いと考えてます。
内部からの噴流で吹き飛ばした場合の予想アニメーションは次のリンクから表示できます。

内部からの噴流で吹き飛ばした場合の動き

DFDRの実際の動き(飛行姿勢)を3次元CGで確認するには次のリンクです。
DFDRの実際の動き(異常事態発生時の飛行姿勢) 上から2番目のバーをスライドすると、異常事態発生時の飛行姿勢を確認できます。
姿勢の変化を分かりやすくするには一番上のバーのdegree scaleを最大にします。
18:24:35.7あたりが前方加速度の突出0.047Gの直後くらいで、機首がほんのわずかに下向きになっていることを確認できますが、
実際上は機体角度はほとんど変化しないほどの僅かな動きであることが分かります。
画面機体右横にある"enable ALT"のチェックを入れると高度変化が有効になります。この設定で、degree scaleを最大にすると動きが分かりやすいです。
18:24:37.6あたりからなにか尾部がヒッチしてバウンドしているような特徴的な動きになってます。
VHF航法受信機(LOC2)のデータから事故調解析では36.59秒までは垂直尾翼上端およびトルクボックスは決定的な破壊は生じていなかった、としてますが、
確かに、なにかが尾部から脱落しているような動きにはなってます。
しかし、垂直尾翼上端というのは垂直尾翼の中でも最初に破壊されるはずの場所なので、この時まで垂直尾翼上端が破壊されていないというのも無理があります。
垂直尾翼の大半は既に吹き飛んでいて、破壊はされていたけれども落ちてなかった部分が、尾部が下向きになって角度的に落ちやすくなったから落ちたと考えた方がいいのだろうと思います。



圧力隔壁の破壊解析は何を意味するのか

報告書付録に、「付録1 後部圧力隔壁破壊の解析のための試験研究」の説明があります。
圧力隔壁は外側からベイ1、ベイ2、ベイ3、ベイ4、ベイ5と区画分けされていて中心のコレクタリングと接続してます。
L18と呼ばれている接合部分の直線が水平に外側からコレクタリングまでありまして、ベイ2,ベイ3のL18直線部分が修理ミスの部分なわけです。
L18の接合部分が直線的に破断して、コレクタリングまで破断が達して、さらに、コレクタリングを周って角度を変えて、別の接合部分まで連鎖破断したとされてます。
破断する条件としては、事故以前に、保守検査では発見できなかった疲労亀裂が存在していた、ということのようです。
その前提がないと、修理ミスの部分の強度が低かった事実があっても、事故調の想定したL18の連鎖破断にはならないからです。
疲労亀裂がどのくらい存在したのかは、電子顕微鏡で調べたということで、
疲労亀裂伸長を計算式で1万回繰り返して計算すると123便の疲労亀裂の状況になるとのことです。
もしかすると、事故機の疲労亀裂に1万回で達するようにパラメータを調整した、ということなのかもしれません。
事故調としては1回の飛行が1回の計算に相当するとしています。
木の年輪のような疲労亀裂の証拠であるストライエーションと呼ばれる溝の数の最大が13615個だった、として回数の妥当性評価に使われてます。
ただし、1万個を超えるのは全体の中の4つだけです。
表に掲載されているストライエーションの最低の個数は3246ですから、最大個数とはだいぶ違うのです。
表に掲載されいるリベット孔は損傷が多いものをピックアップしたもののようですから、場所によってかなり様相は異なるということです。
疲労亀裂のほとんどは1cm未満で、2mm以下というのも多いです。それらが繋がってL18の全面破断になるというのは、結論が飛躍しているかなと思います。
ストライエーションの間隔が疲労亀裂の先のほうになるごとに長くなっていて、それは、疲労亀裂の伸長スピードが加速していることを意味するわけなのですが、
それで、事故時には複数の疲労亀裂が統合されて破断になったという話です。
例えば墜落時の衝撃のような全体の強度を一度に凌駕するような強いインパクトがあればL18全面破断は可能ですが、圧力隔壁にかかる空気の最大差圧は毎回だいたい同じなので、特別に強いインパクトは無理です。
そうしますと、疲労亀裂が限界まで進んでいて、最後の一押しで全面破断というストーリーしかありません。
一番亀裂の伸長スピードが速いところから破断が開始された、つまり一番弱い部分からそこを破壊するギリギリの力が働き破断したとすると、多くの疲労亀裂というのはリベット頭に隠れる程度の短い亀裂なわけなので、
そのような亀裂間に距離がある状態で、破壊の力が衰えることなく亀裂が伸長し続けるのはなかなか難しいことです。
事故調の実験は修理ミス部分ではリベット無しで行っているので(後述)、そこまで考慮されていないのです。
また、統合される途中で空気の噴流が出る穴があく必要もあるでしょう。しかし、事故調の解析でその穴が開く処理が組み込まれている節がないのです。
報告書には疲労損傷の分布状況という表にL18に沿った疲労亀裂の長さとリベット間の長さとの割合(疲労損傷率)がまとめられてます。

疲労亀裂の長さの合計はベイ1では4.88mm,ベイ2では205.55mm,ベイ3では53.78mm,ベイ4では13.80mm,ベイ5では1.46mmです。
損傷率は、ベイ1では1%,ベイ2では56%,ベイ3では14%,ベイ4では4%,ベイ5では0.5%です。
これでわかるのは、疲労亀裂はベイ2にかなり集中していて、次にベイ3にあり、それ以外では4%以下なのでベイ2,3以外は強度にさほど影響なさそうということです。
事故時に仮にベイ2、ベイ3のL18が破断したとしても、ほぼ無傷のベイ5まで破断が進むというのは疑問です。
ところが事故調の応力のグラフは少し違います。書き写したグラフをオレンジ色で示します。

どこに力がかかっているのかを示すものと考えてください。応力が高いほど隔壁の強度が低い部分と考えていいです。横軸の要素番号は4つずつベイの番号に対応してます。
つまり、ベイ1が1,2,3,4で、ベイ2が5,6,7,8で、ベイ3が9,10,11,12で、ベイ4が13,14,15,16で、ベイ5が17,18,19,20です。
普通に考えますと、疲労亀裂の合計長さが長い部分がグラフでも高い値になりそうなものです。
つまり、ベイ2が突出して高い値になりそうなものですが、ベイ2とベイ3の応力はさほど違いがないとしてます。
疲労亀裂の実測データでの疲労損傷率では56%と14%でかなり違っていたのに、このグラフではほぼ同じのようです。理由はよく分からないのですが、
疲労損傷率で重視している指標が違うのかもしれません。事故調は疲労損傷率として、疲労亀裂の長さだけでなく、リベット数と比較した疲労亀裂の個数の比率も計算してます。
ベイ1が21%、ベイ2が84%、ベイ3が40%、ベイ4が64%、ベイ5が17%です。
一応、これでもベイ2とベイ3はだいぶ違うのですが、ベイ4が長さの損傷率が4%の割にはやたら個数が多いです。
亀裂個数のほうが重要なのでしょうか。長さのほうが適切なデータだと思います。
わざわざ亀裂個数の比率を出しているところをみると、個数を重要視しているのでしょう。しかし、個数の指標を使うと長い亀裂と短い亀裂とで同じ1個ですから、情報落ちがあります。
長さの合計のほうに個数の情報が含まれているのですから、個数の比率を解析に使うのは不適切です。
上記グラフは亀裂が全くない状態での応力なので、破断が進むとまた違ってくるのですが、そのグラフは掲載されてないです。
それにしても、ベイ5付近の応力はかなり低い。ベイ4まで破断が進んだとしても、ベイ5まで進むのは難しそうです。
亀裂個数を重要視していると考えてもなお、疲労亀裂の実際の状況(後述のグラフ)と一致しないので、この応力のグラフ自体にも少々疑問は残ります。
一応、補足しておきますと、異常が起きている部分の比率を知るには、亀裂の長さの比率のほうの、分母になっているのが、リベット孔を除外した長さなので、リベット孔も含めた正常な長さと亀裂の長さを比較したほうが分かりやすいです。
計算式は疲労亀裂に関してのものしか掲載されてません。計算式は静的なものなので、例えば力のかかる時間のような動的なパラメータはないのです。
その計算式で、計算できるのは、亀裂が伸長することだけですから、計算を繰り返せば、疲労亀裂は伸長します。
このあたりの報告書の文章構成も分かりにくいです。疲労亀裂の伸長の計算と、123便の事故の瞬間にどのようなプロセスで破損したか、という別々の解析がごちゃついていて読み解くのが難しいです。
なんのためにこの疲労亀裂伸長の計算をしているのかというと、全面破断のタイミングを知ることと、あとは、1978年の尻もち事故から疲労亀裂が発生し、直前の1984年のNo.11C整備時の発見確率を知るためだろうと思います。
尻もち事故から事故時までの飛行回数は12319回で、No.11C整備時の疲労亀裂の長さを事故時の70%としていて、発見確率は14%から60%としてます。
ちなみに、この発見確率はNo.11C整備の時点での1回の整備における発見確率のようです。確率結果の表を見る限りではそれ以前の整備も含めたという確率ではなさそうなのです。
なぜ直前の1回の整備しか考慮しないのか?累積の確率で評価しないとだめだと思いますね。
No.11C整備より以前の2回、No.9CとNo.10Cの整備での発見確率をNo.11C整備での発見確率のそれぞれざっくりと0.2倍,0.4倍として仮定しますと、(それより以前は確率が低く誤差のうちなので無視)
1-(1-0.14×0.2)×(1-0.14×0.4)×(1-0.14)=0.21と1-(1-0.6×0.2)×(1-0.6×0.4)×(1-0.6)=0.73なので、累積の発見確率としては21%から73%程度になります。
どちらにしても 確率の範囲が大きすぎるのでなんとも言えません。21%でもまだ低いと考えるのかどうかですけれど、加えて事故調が考えてもいない確率というのがあるのを理解したほうがいいです。
整備に含まれない確率も現実にはあるのです。例えば、亀裂があったなら飛行中にそこからシューという異音をだして空気が吹き出ていたとしてもおかしくありません。
そうしますと、飛行中に誰も気が付いていないということは、偶然にもそのような異音が出るくらいの亀裂でもなかった、もしくは異音があったが誰にも気が付かれなかった、ということです。
そういう整備以外での偶然の確率も考慮しますと、発見確率よりさらにプラスした確率が正しい確率だろうと思うのです。しかし、事実としては発見できていない。
ということは、発見できたはずと考える、よりも、元々の発見確率の計算結果が高すぎるのではないか?と考えた方がいいのだろうと思うのです。これについては後でまた考察します。
報告書の疲労損傷比のグラフを見てみます。ベイごとに色分けしてみました。

これは、どうやら、疲労損傷率の個数のほうの比率ではなくて、長さのほうの比率のグラフのようです。
ベイ2の長さの疲労損傷率は56%で縦軸が%ですとほとんど破断してそうなグラフに見えますが、実際はリベットが打たれているので、ベイ2全体の長さのうちの43%が疲労亀裂の長さです。
ベイ3は実際はベイ3全体の長さのうちの11%ですからベイ2と比べると大したことはないので、まだかなり強度が保たれている状態です。
リベット孔間の孔を除外した距離はだいたい360mmくらいなので、その間のリベット数はだいたい25個くらいなので、つまり2つの孔間の距離は360/25=14.4mm程度です。
これが縦軸の100%に相当するとして、10%ですと1.4mmですね。
2mm以下ですとリベット頭(直径8mm)-リベット軸(直径4mm)=4mmなのでその片側(半分)の2mmに隠れる程度ですからリベットががっちりとウエブのアルミ合金板を挟んでいるわけなので、強度にあまり影響しないとみたほうがいいと思います。その短さでは飛行ごとに疲労亀裂が伸長しているとは言い難いです。
リベットがない状態で2㎜の切れ目があれば、それは破断のしやすさに大きく影響するのですが、実際はリベット自体が補強になっているのです。
では、このグラフで10%のライン下の短い亀裂を無視してみますと、ベイ1、ベイ5は無傷で、ベイ4が僅か4本くらい亀裂がある程度です。ほぼこの範囲の強度には影響ないでしょう。
赤のベイ2で破断したとしても、よく見ると、黄色のベイ3の右側でほぼ無傷の範囲が長く存在します。
破断の連鎖がここで止まって、ベイ4には破断が伸長しないと見たほうがいいでしょう。
確かにベイ2の疲労亀裂はひどいものと言えますが、事故調の推定のように瞬間的に全破断したというよりは、じりじりと疲労亀裂が進むストーリーのほうが現実性は高そうです。
なぜなら、隣のリベット孔につながった時点で亀裂の伸長は一度止まるからです。じりじりと亀裂が長くなり、いくらか少量の空気が漏れて、その時点で気が付く。
そして、修理をして元通りというストーリーが現実的かなと思います。あと一押しで全破断するかなり前の段階で、空気が漏れると考えるほうが無理がないと思います。
タバコのヤニはL18のベイ2、ベイ3のリベットに散在して付着はしているのですが、非与圧側へ噴き出していたのはNo41とNo50の2か所の付近だけです。
この2か所は上記グラフを見ますと、一番長い亀裂の部分のようですから、他の部分の疲労亀裂からはほとんど空気は漏れていない程度だったとも言えるのです。
実際、グラフ上端100%にならないと隣のリベット孔まで届いていないという意味なので、隣のリベット孔まで繋がっている疲労亀裂の数は3個程度しかありません。
つまり、実際の状況というのは、まだまだじりじりと疲労亀裂が伸長する段階であって、あと一押しで全破断するような危機的状況ではなかったと考えたほうが適切だと思います。
なぜ、ベイ2で疲労亀裂が進んでいたのに、空気やタバコのヤニがあまり非与圧側へ出ていないかと推測しますと、それは亀裂によって上下に分離していないからです。
亀裂が存在している状態ではあるものの、上下はピタリとくっついたままと言えます。
事故調は補強となる継板(スプライスプレート)がリベットでがっちり固定されている現実を無視して(後述)実験してますから、亀裂が入っている時点で上下に分離しているという間違った前提で解析してます。
(スプライスプレートが修理ミスで2つに裁断されていた縦位置と、疲労亀裂のあるリベット孔の縦位置は異なります。)
ですから、疲労亀裂が進んでいた箇所でも、実際はあまり強度が落ちていないにも関わらず、必要以上に強度が落ちていたとして解析しているというわけです。

ところで、一方で、事故の瞬間は、4つの段階で静解析されてます。わかりやすくまとめますと以下です。
1.ベイ2のL18接続部が破断してベイ3のL18接続部が破断。(L18に水平に伸びるスティフナの補強もベイ1とベイ2の境界およびベイ3とベイ4の境界で切断されてます)
2.ベイ2とベイ3のウエブ(面の部分)が破断して、その間の第2ストラップ(L18と垂直に交差する補強)が破断
3.ベイ4とベイ1の2列リベットの上側が疲労亀裂に沿って破断
4.ベイ3とベイ4の間の第3ストラップが破断し、L18接続部が全部破断
※括弧内に注釈を入れてます。
この結果からまずはっきりしていることは、隔壁中央のコレクタリングまでのほぼ直線破断までしか解析されていないということです。
これ以降の計算はしていないことがわかります。
コレクタリングを周って角度を変えて、別の接合部分まで連鎖破断して隔壁がミカンの皮をむくように捲れあがって開口したというのは、想像だけで作っているストーリーということは確定です。
以前の動画でも嘆きましたけれど、どこが開口して空気が噴出したのかという事故調の話には計算の根拠がないのでよく分からないのです。
やっているのは静解析です。一般的に静解析というのは力を一定に加える解析手法であって、時間によって変化するような動的解析はできません。
静解析を繰り返し計算して、上記4つの状態変化の結果を得たのだろうと思います。
例えばL18破断途中でウエブ等に穴が開いて噴流が吹き出したような計算はやってない可能性が高いです。
隔壁の構造解析用メッシュ図が報告書付録には掲載されてますが、解析で使用しているNASTRAN SOL24の詳細情報が探せなかったのでどのような解析が可能なのかは不明です。一番重要な解析結果の図は報告書には掲載されてません。
例えば、2001年11月12日のアメリカン航空587便墜落事故の垂直尾翼の解析でもNASTRANは使われてますが解析結果の3次元メッシュ図が掲載されてますので、結果の図はやはりあったほうが説得力が増すと思います。
3次元で計算していれば、3次元的に捲れて開口した図がほしいところですが、そのような図が123便の報告書にないということは座標は3次元でも応力は隔壁平面上の2次元計算なのかなとも思ってます。
もしも、途中で空気が噴き出すような局所的な穴が開いたとすると、そこでエネルギーが消費されるので、破断が他の部分へ波及する力としては逆に減る可能性が高いのですが、
おそらくそんな計算はしてないです。そんな結果も計算式も示されていないですし、
穴の開いたようなメッシュが示されてないのはもちろん、破断したメッシュすら掲載されてないです。
なぜ一番見た目でわかりやすいはずの結果の図が掲載されていないのか。説得力のある図にならなかったからでしょうか。
使っているデータはアルミ合金片の引張試験のデータだけですから、噴流が吹き出ることを想定したデータは持っていないはずなので、
3次元的に開口する解析はやりたくてもできないとは思います。
普通に考えると、ベイ2のL18接続部が破断した時点で空気が噴き出すので、そこを中心とした穴になりそうなものです。
せめて、L18接続部が曲がって隙間ができるくらいの結果が示されて当然ではないかと思うのですが、それもない。
実際の状況では、L18接続部に水平に走っている補強材のスティフナは、ベイ1とベイ2の境界およびベイ3とベイ4の境界で切断されてますが、
その計算が正しくできているのかはかなり疑問です。スティフナはアルミ合金片の引張試験では考慮されていないからです。
前述の応力のオレンジ線のグラフを見ますとスティフナが切断された位置の4番と13番は低くなってます。
事故調の応力のグラフには"T/S:ストラップ"というマークが記載されているので、ストラップの強度を考慮してなのか?どうなのでしょう。
しかし、報告書p42 "表2 機械的性質"では、アルミ合金片の引張強さのデータは記載されているものの、ストラップやスティフナの項目では空欄です。つまり実際の試験データはないのです。
ベイのウエブの板厚は0.82mmでストラップの板厚は1.03mmでスティフナの板厚は2.50mmですから、厚さだけ比較してもストラップやスティフナ強度は比較的高いということが分かります。
図-7の孔縁間疲労損傷比の分布と、応力のオレンジ線のグラフがだいぶ違うのは事故調流塩梅で応力を推定したからなのかもしれません。
例えば応力のオレンジ線のグラフの第2ストラップ(8番から9番あたり)と第4ストラップ(17番あたり)は特に低くはなっていないです。ここにはストラップがあるはずなのですが、その強度は考慮されてはいないように見えます。
そうしますと、先ほどの4番と13番が低くなっていたのはなんなのかという話になり、やはりストラップは考慮されてなくてあくまで疲労亀裂の伸長で応力を決めている可能性もありそうです。
例えば第3ストラップを境とする12番と14番の応力がほとんど同じというのも不思議ですし、14番以降がなめらかに右肩下がりになっているのは
連鎖破断をするシナリオに沿った値を設定しているような気がしてなりません。
また、孔縁間疲労損傷比のグラフを見ますと、黄色のベイ3の右側半分は空白地帯です。これが応力のオレンジ色のグラフには反映されてません。事故調の応力の設定ですと、おそらくベイ2とベイ3はほぼ一様に亀裂が伸長するはずです。
それは実際の疲労亀裂の伸長具合と違ってます。
このように孔縁間疲労損傷比のグラフと応力のグラフは一致してませんから、かなり圧力隔壁破損説に都合のよい推定が入っているのではないかと思います。
事故調としては推定破断圧力なるものを計算条件で使っているのですが、データを取っていないストラップやスティフナの強度を正しく推定できるかは疑問です。あくまで事故調流塩梅での推定なのです。
空気の差圧ではスティフナ切断は実際には出来ないことがありえます。

なぜL18の破断が疲労亀裂のほぼないベイ5以降まで進まなければいけなかったかというと、それは途中で空気が噴き出したような跡が、実際の隔壁にないからかもしれません。
それは事故調の計算通りということではなくて、穴が開くのを計算していなかっただけ、なのだろうと思ってます。
もしかすると、疲労亀裂の伸長の解析と同じく単に上下に力を加えていくとどうなるかを判断しているだけなのかもしれません。
前述のNASTRAN SOL24の解析はおそらく荷重がどこにどれだけかかったかという結果を出しただけです。
事故時の連鎖していく破断をシミュレーションしている記述は見つかりません。報告書では
「ベイ2が破断した後の各部の破断順序を特定することは困難であるが、最も可能性が高い破壊順序を以下に述べる。」と記載があるので、
その文章の通りで、L18の全面破断プロセスというのは事故調が考えたアイデアなのでしょう。ソフトウェアでシミュレーションした結果というわけでもないのです。
修理ミスと修理ミスがない境界の部分、つまりベイ1とベイ2の境界およびベイ3とベイ4の境界では応力にかなり差がありますから、その境界位置で縦に破断するはずなので、
空気が噴き出す勢いでウエブが捲れてベイ2またはベイ3付近が開口して、逆にL18破断の連鎖は止まるというのが一番ありえるかなとは思います。
ベイ5の強度が高いのは修理ミスの場所から遠いためです。それだけではなく、円の中心に近いほどスティフナやストラップの補強材が密集しているからです。中心のコレクタリングあたりはさらに補強材が密集しているので強度はかなりありそうです。
そのあたりの中心に向かうほど補強材が密集していることについて考慮されて解析されているのかは不明です。破断がコレクタリングに到達してもなお方向を変えて破断が進むという結論から推測しますと、考慮されていないんじゃないかと心配になります。
円弧状の折れ曲がりが空気の差圧による開口のせいという前提もあるので、どうしても無理のある破断プロセスが必要だったのだと思います。
その割には折れ曲がりの角度はとても浅く、空気が音速近いスピードで吹き出した跡には見えませんし、それぞれのみかんの皮がほぼ同じ位置で折れ曲がる必然性もありません。
折れ曲がりの端の位置はベイ4側のベイ3の端のあたりです。L18接続部の直線部分のスティフナ自体ベイ3とベイ4の境界で切断されているので、その切断位置と折れ曲がりの終端が近い位置です。
折れ曲がりがスティフナの切断位置から開始されたと仮定した場合、その時点ではまだ隔壁中心のコレクタリングまで破断は進んでいないのだから、L18接続部以外は破断が無い状況です。
そうしますと、折れ曲がりの円弧が伸びるにしたがって円の中心に近づいていくと考えるのが自然かと思います。ところが実際はL18接続部から離れた円弧のほうが半径が大きいのです。
では円弧の逆の端からL18接続部へ向かって折れ曲がりが伸びてきたと仮定した場合は、折れ曲がる以前にすでにL18接続部は全面破断していたはずなのだから、円弧の端はもっとベイ1あたりの外側円周近くになると思えるのですが、
実際は逆で2重円弧の半径が小さいほうの端がベイ3とベイ4の境界位置のL18接続部に達しているのです。
どちらにしましてもL18接続部の全面破断が修理ミスの部分から始まったことを前提とすると、力学的に不自然なのです。
先ほどの図-7の赤縦線を見てください。折れ曲がりの位置はベイ3とベイ4の境界付近の位置です。
丁度、疲労亀裂が無い範囲の境界に位置してます。第3ストラップが切断されている位置とも言えますし、ちょうど疲労亀裂が無い区間の境界とも言えます。
事故調によると、L18接続部が全面破断したあとで折れ曲がりが発生しているわけなので、ベイ2、ベイ3が他のベイとは(例えば補強のタブラ部の有無など)性質が違うのは確かなのですけれど、
それにしても、どのみちすでに直線的に全部切れているのだから、疲労亀裂がある部分とない部分の境界とかそんなのは無関係で、その途中の位置で折れ曲がりが発生する必然性がないです。
その位置は言わば宙に浮いている状態なのだから、そこを支点として折れ曲がるとは考えにくいのです。
ところで、123便の隔壁破壊を再現するようなCG映像はいくつか世の中にありますけれど、事故調想定の破壊プロセスを正しく表現しているものがあるのでしょうか。個人的には記憶にないです。
例えばナショナルジオグラフィックの123便の回(Mayday S3 EP3)での隔壁破損の様子はミカンの皮剥きのようにはなっていないのでまるで違いますし、
日航の安全啓発センターで流されていたCGも折れ曲がり角度が急角度すぎて違和感があります。CGですら再現困難な不自然な折れ曲がりということなのでしょう。
多くの人たちは事故調想定の破壊プロセスとは違ったCG映像を見てそれで圧力隔壁破損説に納得しているようです。事故調想定とは異なるCGのほうが説得力があるというのも皮肉なものです。
圧力隔壁破損説に肯定的な映像番組でも隔壁破損プロセスは理解されていないわけです。というよりふんわりとした理解だからこそ、疑問も出てこないから、なんとなく肯定できているのかもしれません。
報告書に開口に至るまでの段階的な図が掲載されていないのが原因だと思います。段階的な図どころか開口した図すらないですからね。
できれば事故調派の人たちが報告書で語られている隔壁破損プロセスを正しくCG映像化して事故調の主張を広めて世に信を問うことをしてほしいところですが、難しいですかね。
客室がマイナス40度以下になったという事故調の主張もあまり世間には広まっていないようなので、漏れなく説明されたほうが親切かと思います。
亀裂の進行方向をどのように判定するかはタイ航空620便の事故調査報告書にも記載があります。
おそらく圧力隔壁の破断面をもっと詳しく調べれば、各破断箇所がどちらの方向から破断したかが分かると思いますから、もし再調査の機会がありましたら解明してほしいところです。
事故調説ではありえないですが、L18接続部が破断してない状態で折れ曲がりが発生したとしたら?ちょうど強度が異なる境界で折れ曲がりが発生したと解釈すればいいわけですし、
もしくはコレクタリングから外向きに破断が進行して、ベイ5、ベイ4のL18接続部が破断していて、ベイ3,ベイ2、ベイ1のL18接続部がまだ破断していない状態から折れ曲がりが発生したと解釈することも可能です。
このように証拠から破断プロセスを推定したほうが正しい説になると思います。数値計算はいろいろ考慮すべきことが技術的に計算に組み込めない漏れがどうしてもでるので、信用し過ぎるのはよくないです。

事故調の考えの根拠となるのが、実際の隔壁では上下に力がかかって破断した跡があるという事実なのですが、それが空気の差圧によるものという前提で解析しているので、
本来でしたら、圧力隔壁破損説を検証するために解析する必要があるのに、圧力隔壁破損説が正しい前提で解析してます。
その前提が正しいのか間違いなのかという視点が不足しています。ですので、差圧によるものなのに、なぜか上下に引っ張る力で試験しているのです。
上下に引っ張る力が最もありそうなのは、空気の差圧ではなく墜落時の衝撃です。
疲労亀裂が隔壁の一部分にあったにせよ、差圧で隔壁破損が起きて穴が開いたなどということは無かったとみたほうがいいと思います。
墜落時の強い衝撃によるものと仮定しますと、L18接続部やその他の接続部で空気が噴出したような局所的な跡が見つからない事実とも符合します。
上下に引き裂いた跡しか発見できていないから、空気の差圧で上下に力がかかって全面破断したという事故調の見立ては見当違いも甚だしいです。
差圧の場合は面に対して直角の法線方向に力がかかりますから、隔壁面上では全方向に分散して力がかかります。
最後の一押しで全面破断するのが上下の力の跡しかない事実から推測するのであれば、その原因は差圧ではなく単純に上下に力がかかったのです。
空気の差圧が作用して破断した痕跡はなかったとみなしても隔壁の証拠と矛盾はありません。(疲労亀裂は作業ミスと差圧によるものだとしても)
現代の動的な3次元構造解析でやってみてほしいですね。報告書の当時の解析ではおそらくメッシュサイズも大きく誤差も大きいと思いますからあまりあてにはならないです。
事故調は残留強度試験として次のアルミ合金片を上下に引っ張る実験をしてます。その実験データが破断の解析に使われています。
「平板に1列リベット孔を開けたもの及び2枚の板を2列のリベットで結合したものの2種類」
いろいろつっこみどころがありすぎるのですけど、
この部分的な小さい板の実験データが、周囲の補強材から支えあって構成されている隔壁に適用できるとは思えないですし、
力をかける方向も実際の差圧とは違いますし、
それと、最も基本的なところで、
通常のリベット2列結合のところは2枚重ねで、修理ミスのところは1枚のみで、実験しているじゃないですか。
なぜ実際と同じ、両方ともリベット打ちがされてある3枚重ねの板で実験しなかったのでしょうか?

左が通常の結合で、右が修理ミスの結合
(注)左上の2枚結合の図は報告書からの引用です。右上の1枚の図は(報告書に掲載がないので)想像図です

通常のリベット2列結合のところは、スティフナ(L18接続部の補強)はどうして無視なのですか?
リベットでスティフナを固定しているのだから、疲労亀裂がウエブに発生してもスティフナの板厚で支える構造にはなっていたはずなのです。
修理ミスのところはリベットと継板(スプライスプレート)と下側隔壁はどうして無視なのですか?
スプライスプレートが修理ミスで2つに裁断されて1列結合だったからといって
リベットでスプライスプレートと下側隔壁を固定しているのだから、疲労亀裂がウエブに発生してもリベット頭やスプライスプレートの板厚や下側隔壁の板厚で支える構造にはなっていたはずなのです。
スプライスプレートの分割部分にはシール剤(接着剤)が充填されていたわけなので、その接着強度だってプラスされていたはずです。実際、そのシール剤があったから修理ミスが見えなかったと言っていたわけですしね。
テレビ映像の墜落現場で撮影された圧力隔壁の写真を確認しますと、リベット頭の円周に沿って切れている部分をいくつも見つけることができます。つまりリベット頭が補強の役目を果たしていたという証拠です。
スプライスプレートは破断も疲労亀裂もなく、上側隔壁の疲労亀裂をスプライスプレートが支えてます。実際は上側隔壁の一部分がリベットにくっついて残ってます。
なぜくっついて残っているかと言いますと、それはリベットによって上側隔壁をスプライスプレートにがっちり押し付けているからです。これは、スプライスプレートが補強の役目を果たしていたという証拠です。
2列結合のほうの実験ではリベットで結合させているのに、修理ミスのほうの実験ではリベットすら使っていない。わざわざ実際の状況と違うセッティングで実験しているようです。
事故調の実験を例えるならミシン目のある紙を何度も上下に引っ張っているようなもので、
しかも、実験ではリベット孔にはあらかじめ放電加工で人工欠陥を作っておいてからのスタートです。それなら一度に破断するでしょうね。
リベット間の孔の中心から隣の孔の中心までの距離の平均が19.2mmで、リベットの孔の端から隣の孔の端までの距離の平均は14.5mm。
19.2-14.5=4.7mmが孔の直径となります。4.7/19.2=0.245なので全体の24.5%の部分を欠陥のある孔として扱うのか、リベットで固定されているとして扱うのかの条件の違いは大きいですね。
実際は、周りが支えあって構成されているわけなので、一部に破断が生じても全体まで波及するとは考えにくいですし、
疲労亀裂が伸長している段階で空気が漏れだすので気が付く可能性が高いと思います。
実験では空気が漏れだすことも、周りが支えあうことも考慮されてませんから、引張りでぐらつき出ていてもそのまま実験は継続されて破断に至ります。

ちなみに、NTSB事故調査官の修理ミス部分のメモの絵と上記右図は一致していない部分がありまして、メモの絵では真ん中に挟まっているのが上側隔壁のように見えるのですが、
正しくは上記右図のように真ん中に挟まっているのがスプライスプレートで、上側隔壁はメモ図では一番下に描かれるべきです。
修理ミスがあったかどうかはスプライスプレートが事故以前から2分割されていたかどうかで判別できることだと思いますが、
墜落現場で100%確定することは難しいと思いますから、MAYBEとメモした通りの可能性としての指摘なのでしょう。
後で調べたら修理ミスが確定できたということなのだろうと思います。
「8.12 日航ジャンボ機墜落事故30年の真相」というテレビ番組において、隔壁修理の指示書とされる写真と修理担当者のインタビューがありますが、
指示書のほうの図は上記右図を左右反転している図になっていてスティフナは省略されているものの、スプライスプレートが切断していない状態の図になってます。
そして、修理担当者は上側のスプライスプレートは追加で挿入したという話をしているので、つまり担当者が修理する時点では切断されている2枚のスプライスプレートを渡されていたことになります。
なぜ指示書と異なる状態で修理をしたのは謎ですが、誰もそれ以上追及できないので真相は闇の中です。

もう一つ重要なところで、報告書にはさらっとなにげなく記載があるのですが、見逃せない文章があります。
報告書p39「全般にリベットの打ち方は乱れていた。」とあります。これはL18接続部全般についての記載なのですが、これを読んだときに違和感しかなかったです。
なにを意図して書いたものなのでしょうか?乱れていた?なぜ?全般に?それがどうかした?
こういう文章は嫌な予感しかしません。
おそらくこれは、打ち方が乱れていたことを前提として検証する、という宣言なのだろうと思うのです。
打ち方が多少乱れていたからなんなんだろうと思いますけれども、
実は、リベットの打ち方次第で耐久性が変わるというデータがあるのです。どのくらい変わるか?
せいぜい1割とか誤差程度だろう、と思いきや、どうやら最大5倍以上変わるらしいです。いくらなんでも変わりすぎだろうと突っ込みたくなります。
宣言しているということは、おそらく事故調はそのような打ち方が乱れている場合のデータを使って検証してます。
そうでなければ、わざわざ宣言する必要がありません。
しかし、リベットの打ち方が乱れているという認識は正しいのでしょうか?個人的にはかなり怪しいと思ってます。
そもそも乱れているという定義がどんな状態なのかがよくわかりません。事故調は果たして定量的な判断ができているのでしょうか。主観的な塩梅で判断してそうな気がします。
きちんと整列していないという意味なのか、斜めに打たれているという意味なのか、緩んでいるという意味なのか、なんなのでしょう。
全般に乱れているということは、なにも修理ミスの部分だけでなく、L18接続部だけでもなく、123便だけでもなく、
最終的にはボーイング社の機体全部で乱れていることになりませんか?
100歩譲って修理ミスの部分だけだったとするなら、それも変です。スプライスプレート修理のミスとリベット打ちのミスは無関係です。独立したミスが偶然重なったことになってしまいます。
ですから、全般、と記載があるので全般なんでしょうね。L18接続部に関しての記述なので、少なくともL18接続部全体という意味なのでしょう。
しかし、そうしたらやっぱりボーイング社の機体全部ってことになりませんか?乱れている部分をL18接続部だけに限定できる理由がないです。
リベットの打ち方なんてどこでも似たり寄ったりでしょう。L18接続部だけリベット打ちが乱れていたなんて偶然があるわけないです。
どこでも同程度に打ち方が乱れていて5倍以上強度が変わるのだったら大問題です。強度計算なんて成り立たないですよ。
つまり、乱れているという定義は本来はおそらくかなり緩んでいるとか、金属腐食があるだとか、かなりひどい状況の場合を表しているのだろうと思うのです。(締めすぎもよくないです)
そうでなければ、全部の場所で強度が著しく落ちているという話になってしまいます。
少なくともL18接続部でそんなひどいリベット打ちはされてないです。前述のようにリベットはガッチリと板を挟んでいた証拠があります。
しかし、事故調としてはL18接続部のリベット打ちが全般に乱れていたとしているわけで、そうなりますと、
L18接続部の強度が実際より低く見積もられて計算されている懸念が出てきます。
「全般にリベットの打ち方は乱れていた。」宣言は、事故調がリベット結合部で事前に欠陥がある状態で検証することへの理由付けになっているのだと思います。
確かにリベットの位置は等間隔の綺麗な整列ではなく乱れてましたので、見た目で乱れていたという印象を持つかもしれませんが、それは孔の位置のことだけであって、強度に関係する緩んでいたかどうかとは無関係なのです。
間違ったデータで検証しているなら、もはや計算なんてどうにでもなってしまいます。
報告書p105では次のような記述があります。
「後部圧力隔壁に関するC整備時の点検方法は、当該C整備の時点では疲労亀裂がこの部位に多数発生するとは考えられないので、妥当な点検方法であると考えられる。
今回の場合、不適切な修理作業の結果ではあるが後部圧力隔壁の損壊に至るような疲労亀裂が発見されなかったことは、点検方法に十分とはいえない点があったためと考えられる。」
毎度のことですけれど、文章がしどろもどろで分かりにくいです。「妥当な点検方法」と言っている直後で「点検方法に十分とはいえない点があった」としていてよくわかりませんが、
話を整理しますと、直前のC整備(1984年)の時点で疲労亀裂は存在したけれども見つけらなかったのは結果的に点検方法が不適切だった、ということでしょう。
日航によりますと、そもそも腐食を見つける点検なので、亀裂は見つけられないということらしく、事故調と発見確率の解釈に食い違いがあります。

三角印5番が尻もち事故での修理の時点で、三角印11番が直前のC整備です。
時系列を整理しますと、尻もち事故の修理が1978年で、直前のC整備が1984年で、墜落事故が1985年。尻もち事故以降から疲労亀裂が発生したとみられてます。
各亀裂のグラフの開始位置が1978年というわけでもないのは、それでいいのかは少々疑問はあります。

さて、ここまでの考察を土台としまして、本筋の考察に入ります。
2005年のTBS番組「ボイスレコーダー 残された声の記録 ジャンボ機墜落20年目の真実 生存者がいま語る事故の全容」でアメリカの調査チーム(FAAもしくはNTSBもしくはボーイング)の計算として、
隔壁破壊までの推定回数として1列リベット部分が13000回としていて、これが尻もち事故の修理(1978年)から事故(1985年)までの飛行回数12184回と近かった、としてます。
もっともらしい数字なので納得してしまいそうになるのですが、実は、これはかなり大雑把で不正確な計算なのです。逆算して求めればもっともらしい数字は出せます。
事故調の報告書付録p5で「1列リベット結合の場合には、事故機の状態になるまで疲労亀裂が進展するのに要する負荷回数は、1万回強である。」と記載がある通り、
これはアメリカ側の計算値13000回にも近い値ですから、いかにも正しそうな数値です。
しかし、実は2列リベットのほうの回数がアメリカと日本の事故調とで全く異なってます。
アメリカ側の試算では2列リベットでは215000回です。日本の事故調は1列リベットに比べて疲労亀裂の進展期間を2倍程度と見積もっているので、つまり回数にすると1万強の2倍の約2万回ということです。
もちろん同じ8.9psi差圧での運用を前提として計算してますが、10倍違います。なぜでしょうか?
日本側の2列リベットが2万回というのは少なすぎますね。
2列リベットが10倍違うのに、なぜ1列リベットが近い値なのでしょうか?計算がかなり大雑把で不正確だからです。
アメリカと日本とどちらが正しいかというと、おそらくどちらも間違っているのです。
どちらも圧力隔壁破損説を成り立たせるために結果から逆算しているから、1列リベットの計算値は似ている結果となっていて、
正常な2列リベットのほうは大きく計算が違っているのです。
事故調は事前にリベット孔に欠陥がない状態からの計算もしてまして、その場合は2列リベットで10万回、1列リベットで2万回としてますが、これでもアメリカ側とは結構違います。
もしかすると、この数字は近いのではと感じる人もいるかもしれませんが、事故調の最終結論としてはリベット欠陥がある状態の1万回強の回数を採用してます。
また、実はアメリカ側の回数というのは欠陥がそこそこある状態を想定して計算されてます。(※この根拠については後述します。)
つまり、アメリカ側の欠陥がそこそこある状態の2列リベット215000回よりも、日本側の欠陥が全く無い状態の2列リベット10万回のほうが少ないという矛盾があります。
日本側の2列リベット回数が極端に小さいということは、リベットの打ち方に乱れがある、としている間違った解釈も影響していると思われます。
アメリカ側の1列リベットと2列リベットの回数差が大きい理由は、1列リベットの応力の見積もりが間違っている、というか値を回数に合わせただけです。
過剰に疲労している設定にならざるえないので、2列リベット215000回に対して1列リベット13000回というような極端な差になってます。明らかに不自然です。
アメリカ側の2列リベット215000回というのは、計算方法が正しいかどうかはともかく、最低保証の回数としては結果的にはある程度根拠のあるまともな値に近いのだろうと思います。
設計時に計算されている値から大きくずれている可能性は低いと思いますので、そこは合わせた可能性が高いです。
1列リベットの回数が飛行回数と一致したと日米双方がそれぞれ主張しているので、つまり一万回強で隔壁破壊が起きたという主張なわけですから事故時点での破断規模の想定は同程度なのだと思います。
そうしますと、
アメリカ側の2列リベット計算結果が適切であるなら、日本側の2列リベットおよび1列リベットの結果は小さすぎるという話ですし、
逆に日本側の1列リベットの応力推定が正しいのなら、アメリカ側の1列リベットの結果は小さすぎます。この矛盾を解消するには、
アメリカ側の1列リベット、日本側の2列および1列リベットの計算結果が間違いだったと解釈しないといけません。
さらに言うと、これらの計算値というのはあくまで短い区間での破断の話なので、L18接続部の全面破断の計算をしているわけでもないのです。
疲労亀裂の伸長が飛行回数に比例するとも限りません。
それでも飛行回数と一致しているのは、入力値を調整して一致させているとしか思えないです。
アメリカ側の2列リベット耐久回数を最低限度の回数としてある程度信用しますと、日本の事故調の計算は矛盾だらけの間違いという結論になります。
計算しているのが設計上保証できる耐久回数の意味ということでしたら、実際はその数倍の耐久回数があってもおかしくないです。
ここでの設計上の耐久回数の意味は、最悪中の最悪ケースの場合でもその飛行回数では壊れない最低保証の回数の意味です。
設計上保証できる回数というのはかなりのマージンが考慮されているわけなので、よほど杜撰な設計でない限りは現実世界ではその回数程度では破壊は発生しません。
計算したのが設計上の回数であるなら、実際はその飛行回数では壊れません。
報告書p102「本来2列リベットで結合されるべきL18接続部の1部が1列リベットで結合されることとなり、この部分の強度は本来の強度の70パーセント程度に低下」とあります。
尻もち事故修理後の話ですから疲労亀裂が発生する前という前提の数字です。修理ミスの1列リベット部分は正常結合の70%の強度があると説明してます。この70%という値はどういう計算から算出されたのかは今一つよく分かりませんでしたが、
報告書付録p4「リベット孔縁に働く有効応力を求めると、形式Bの応力は形式Aの応力の約1.4倍となる」とあります。これは孔に欠陥がない状態の話ですから、1.0/1.4=0.714なので、これが70%の出所でしょうかね。
形式Aが2列リベットのことで、形式Bが1列リベットのことです。欠陥のない状態の孔一つの応力の違い、つまりこれが強度の違い70%っていう根拠でしょう。おそらく。
強度のマージンぶんを考慮しますと、70%でも十分な強度があるでしょう。70%というのは孔に欠陥がない場合の違いなのに、欠陥がある前提での実験や計算を採用しているのも意味不明です。
70%の違いだけの状態からたった1万数千回飛行で疲労亀裂が伸長して、全面破壊になるのでしょうか。ならないでしょう。
アメリカ側は欠陥がそこそこある状態の2列リベットで215000回と言っているのです。それが隔壁全体のほんの一部分が70%の強度低下なだけで、なぜ1万数千回になってしまうのですか。極端すぎるでしょう。
疲労亀裂によるL18接続部全体の強度低下は過大に見積もりすぎです。

前述のアメリカ側の回数が「欠陥がそこそこある状態」という根拠を示します。
アメリカ側からの1列リベットの耐久回数というのは13000回でした。これは、
(4000+22000)/2=13000回
という計算の結果となってます。1列リベット部分の引張の応力は35201psiと推定されていて、
上記4000回はリベット孔欠陥ありのグラフ値
上記22000回はリベット孔欠陥なしのグラフ値
となってます。一方、2列リベットの耐久回数というのは215000回でした。これは、
(60000+370000)/2=215000回
という計算の結果となってます。2列リベット部分の引張の応力は17601psiと推定されていて、
上記60000回はリベット孔欠陥ありのグラフ値
上記370000回はリベット孔欠陥なしのグラフ値
となってます。
なお、ここでのグラフというのはボーイングが使用している2種類のS-N曲線のことです。
なぜ足してから割る2しているかと言いますと、単純に平均をとっているだけです。
つまり、リベット欠陥なし、ありの2種類は同数が存在しているというかなり大雑把な前提があるのです。
しかし、1列リベットでも2列リベットでも同じように平均を計算しているということは、機体のどこであろうとも、その程度の欠陥は常に普通にあるということを意味してます。
要するに、「欠陥がそこそこある状態」ということを想定しているわけです。
ところで、応力の割合を見てみますと、35201/17601=2.000です。つまり応力が1列リベットはきっちり2倍になっているということでして、いかにもざっくりな計算ということが分かります。
さて、例えば、仮に1列リベットの応力を2倍ではなくて前述の事故調の実験結果「形式Bの応力は形式Aの応力の約1.4倍」(強度が70%の意味)から1.4倍としてみます。17601×1.4=24641psiです。そうしますと、
リベット孔欠陥ありのグラフ値は約18000回です。
リベット孔欠陥なしのグラフ値は約96000回です。
(18000+96000)/2=57000回が1列リベットでの耐久回数となりました。これがアメリカ側の計算を事故調の実験結果から少し厳密にした正しい数字です。事故調の1万回強の回数よりもこちらのほうが現実的だと思いますし、
そもそもリベット孔の欠陥が半数もあるという前提ですと、ある確率で欠陥が集中することがありえます。それですと機体のどこかで常に破断が発生するという話になりますから、その前提もやりすぎだろうと思うのです。
ですので、単純な平均で求めた数字というのは、設計における最低保証回数みたいなものと解釈しておくほうが正しいのではないでしょうか。
事故調の回数の推定というのは、1列リベットでの回数を推定してから、2列リベットの回数を推定しているようです。
それは推定手順としては本来逆です。正常な2列リベットの回数を推定して、それがボーイングの設計上の回数を大きく下回るようでは、その時点で計算は正しくないと気が付くべきです。
正常時の推定すら外しているのなら推定に使用するS-N曲線が不適切なのか、もしくは基準となる2列リベットでの応力が高すぎる(強度が低すぎ)のです。いくら試験データがあったとしてもずれた推定にしかならないです。

ところで、事故調の疲労亀裂の数値解析の計算結果としては報告書付録p18「付録1 付図-7 疲労亀裂進展計算結果:リベットNo.41」のグラフとなってます。

横軸の1が1万回という意味ですので、このグラフ(グラフの題名の通りリベット41番です)からは1列リベット(赤線)では事故調の主張する1万回強の回数で鉛直方向へ無限大の伸長スピードになっていることが分かります。
いかにも1万回強で一気に破断しているような傾きです。
しかし、前述の「着陸回数-疲労亀裂長さ」のC整備のグラフにてリベット41番のグラフがありますけれども、
あちらは、実際のストライエーションの溝の計測データから回数を計算してグラフにしているものなのですが、リベット41番のグラフでは、そのような鉛直方向への傾きにはなっていないのです。
図を重ねてみました。

縦横のスケールは合わせてますが、41番のグラフと赤のグラフは全く一致してません。
実際のストライエーション計測からのグラフ(※これも計測値そのままではなくて、数式で近似しているため誤差もあるので、もっと勾配は小さいほうが正しい可能性もあります。サンプル数が少ないからです。)と、
解析から出てきたグラフでは同じ41番なのにこれだけ違っているのはなぜでしょうか。おそらく解析のほうが間違いなのです。
参考までに53番のグラフについては、報告書のほうで数式のパラメータの記載がありまして、その近似した数式と53番のグラフが一致するのは下記の通り確認済です。最後の方が鉛直方向のような急角度にはなってないですね。

左図の「リベット孔中心からの距離-ストライエーション間隔」のグラフの計算式は報告書p46に記載がありまして、パラメータm=1.43、C=0.00192となっているので、縦横軸の単位をmmに統一しますと計算式は
S=1.92×pow(a × 0.001, 1.43)となります。powはべき乗の意味です。これは亀裂の長さから1つのストライエーション間隔を推定できる式です。
左図に対応する報告書p46のグラフは縦横軸が等間隔ではないのですが、本質的には左図と同じです。
この計算式から繰り返し回数ぶんストライエーション間隔をプラスする処理をすると、中央の回数のグラフになりまして、スケールを合わせて合成しますと右図になります。
計算式の1.43という数字は報告書p47「表-5 リベット孔中心からの距離(a)と、ストライエーション間隔(s)の関係及びこれらより算出したストライエーションの数(N)」の表に記載されているのですが、
1.92は表には記載されていない(例としてp46の計算式に記載されているだけ)ので、他のリベット番号のグラフでは、2つのパラメータのうちの1つが不明で確認ができません。
ちょっと不親切ですね。記載されていないのはなぜでしょうか。
計算式を作るためのサンプルデータは1つの亀裂につき10個未満のものが多くあって、それでは誤差が大きすぎてグラフの曲率は正しく決まらないと思います。
全部のサンプルデータをプロットしたようなグラフがあれば一番分かりやすかったのですが無いのです。
p47の表のストライエーションの溝の数というのは、電子顕微鏡での計測結果と誤解している人が多いと思うのですが、サンプルデータを元にした計算での推定値です。
ストライエーションの溝の数というのはストライエーション間隔を求める式から計算で求めているのだろうと思いますけれども誤差が結構でてきそうですし、計算の元となるピックアップされたデータ測定もどこまで正確なのかは疑問があります。

1985年12月20日 朝日新聞 東京朝刊トップ
「金属疲労は、顕微鏡で調べると、ストライエーションという筋目が現れるのですぐわかる。
1飛行ごとに1本の筋目がつくため、筋の本数を数え、同機の運航記録と比べ合わせると、いつから疲労が始まったかがわかるとされているが、
これまで採取した標本では完全なものがないうえ、顕微鏡で筋目を正確に数えるのは非常に困難なため、本数ははっきりしない。」
とのことです。筋というのが溝のことです。これは第三次中間報告時点の話ですから最終的な報告書作成の段階でも「はっきりしない」状況だったのかもしれません。
1万個の溝(筋)を全部数えていたわけではないです。ピックアップした10個くらいの溝の位置と間隔長さから計算で個数は求めているのだろうと思います。
なぜ、表の溝のサンプルデータ数がばらばらで、数個しかないものが多いのか?不思議だったのですが、もしかしますと、はっきりしたものが少なかったからなのかもしれません。
疲労亀裂の最終的な長さは目視で見えるのでそのデータは信頼できそうではありますが、溝の数はあまりあてにはならないのかもしれないです。
報告書にも溝の写真は掲載されてますが、木の年輪のようでもあり、うねうねとしていて、きっちりと測れるものでもなさそうです。どの溝を測るかで相当結果は変わってしまいそうです。
電子顕微鏡で計測した溝の長さから、巨視的な疲労亀裂の長さに到達する回数を推定するっていうのも誤差は大きいだろうなと思います。
p47の表でこのパラメータの範囲を確認しますと、最小が0.815で最大が8.280です。また、53番の相関係数より高いのは17個の亀裂のうちの3つしかありません。(相関係数が小さいほど誤差が大きい)
普通は、材質によってパラメータが決まるのですが、ばらばらなんですよ。例えば、61番のグラフは53番のグラフ縦軸を半分くらいにスケール変換すると形状がほぼ同じ形になります。
疲労亀裂それぞれ個別にパラメータが異なるということは、伸長速度が亀裂の長さが同じ時点でも異なるということです。
そんなばらばらな状況でL18接続部の破断時期を予測したとしてもなかなか当たるものではないと思いますよ。

さて、報告書付録p5では以下のように解説されてます。
===============================================================================================================================================
解析計算の結果として、客室差圧8.9psiが繰り返して負荷される場合のリベットNo.41の孔縁に仮定した初期貫通欠陥の亀裂進展状況を付録1の付図ー7に示す。
またリベットNo.44についても、ほぼ同様の結果が得られた。
付録1の付図ー7から次のことが推定される。
(1) 形式Bの1列リベット結合の場合には、事故機の状態にまで疲労亀裂が進展するのに要する負荷回数は、1万回強である。
===============================================================================================================================================
つまり、解析結果である赤色グラフが実際と大きく違っているということは、1万回強という推定回数もだいぶ違うということでしょう。
この解析はアルミ合金片の引張試験のデータを元に行っているので、その引張試験のデータからでは実際の状況が再現できていないということになります。
また、赤線グラフでわかることは、L18接続部が水平に全破断するタイミングが鉛直方向の急角度になっている時点ということです。
赤線グラフのほうが黒線グラフより全体的に低い縦軸の位置に描かれているので、実際より厳しい条件で解析したんじゃないかと思われるかもしれませんが、そうではありません。
まず、8月12日の異常事態発生のグラフの終点の疲労亀裂の長さというのは決まってますから、その終点は合わせる必要があるのです。
終点で破断が開始されなければいけないとしますと、必然的に、終点付近で伸長が急加速するようにならないといけなくて、
そうしますと、逆にそれまでの期間の亀裂の長さは実際よりも短くしないと辻褄が合わなくなるのです。
黒線グラフ程度のカーブでは本当は破断に至らないというわけです。
黒線グラフでも終点近くで少し加速しているように見えるかもしれません。黒線グラフ自体が推定値のグラフなのでもっと加速が抑え気味なのが本当かもしれないのです。
41番のグラフの計測データ点は10個です。どのあたりで推定値の誤差が大きいのかは詳細不明なので分からないのですが、
53番は詳細があるのでそれを例にしますとサンプルデータ数は一番多い15個ですが、それでも亀裂の長さが長いところで下振れするデータが2点出てます。(下図の黄色点の3つのうちの2つ)
具体的には12mmの亀裂の長さの位置で3.3mmの位置と同じストライエーション間隔が計測されてます。

左が報告書掲載の図で、真ん中が独自にプロットしてみた図(見た目で左図と合うようにプロットしているので誤差はあります)です。Excelで近似直線を自動で引きました。右図は黄色3点を除外してExcelで近似直線を自動で引きました。
この右図のように3点は除外されている図の直線が報告書の図の直線と近くなるようです。
つまり黄色3点のデータは計算式のパラメータ推定では無視されていて事故調の描くグラフには反映されていないことが分かりました。
相関係数の計算のほうは、どうでしょうか?報告書の表では0.93(=93%)です。
Excelで相関係数を出してみますと、全部の点を計算すると、0.60で、3点を除外しますと0.96と近い値になりましたので、おそらく相関係数が高くなるように外れ値は除外して出してます。
ですので、一見すると、相関係数が高いから実際のデータと誤差が小さいと思ってしまうかもしれないのですが、相関しないデータを単に無視していただけでした。
データ数に掲載されている数字は、無視しているデータ込みですから、実質いったい何個のデータでパラメータを推定しているのかは全く分からないわけです。
もしも、あの報告書で疲労亀裂の事故調解析が正しいことを証明できるのだとしたら、それは結論ありきの話ですね。ここまで詳しく調べていないだけだと思います。
それと、図の縦横軸は対数目盛なので、始点付近よりも終端のほうが実際の距離への影響が大きいです。
ということは終点付近で下振れ誤差がありえますので、前述でパラメータを変更して確認しましたように、加速がもっと小さい可能性があるのです。
つまり、計算結果であるストライエーションの溝の数は本当はもっと多くて1つの溝の間隔が長く伸長加速が小さいのが本当かもしれません。
そうしますと、53番のグラフは緑の直線に近くなるような、もっと一定の勾配に近くなり、グラフ全体の途中のC整備時点の縦位置はもっと上になって、終点付近での上がりがゆるやかになります。
先ほどの右図の直線の式はExcelで計算しますとy=0.288073x-0.48709です。真ん中の図の直線の式はy=0.173287x+0.175786です。
今回は事故調の線も直線に見えますので、とりあえずべき乗ではなくて直線の式で計算を進めます。直線近似できるということは伸長の加速度は一定という意味です。
リベット孔半径を2.5mmとして、グラフをそれぞれ作成してみまして、それをC整備の53番の図に重ねてみます。

青線が右図の式のグラフです。53番の事故調の黒線グラフとかなり近いことを確認できますから、外れ値の3点を無視しているという推測がある程度正しいということが分かると思います。
赤紫の線が真ん中の図の式のグラフです。終端近くの傾斜が緩やかなままということが確認できます。これが15点全てを網羅した平均的な曲線です。53番の黒色グラフとは少し違いがあります。
予想と違って横軸の回数が少なくなりましたが、直線の式はかなり線の引き方でいろいろありえますので、少し違うと、横軸の回数が多く出てもっと緑線に近くなることもあるとは思います。
少なくとも、事故調解析の41番の赤線グラフとは全く似てないですね。破断に至るような終端にはなってないです。

※参考に、左の事故調の図に合わせてべき乗の式(単位m)になるように独自に計算しますと右図がS=0.00008764587030814939 × pow(a, 0.8298299529758952)で、真ん中の図がS=0.001382050397767865 × pow(a, 1.3853170273895496)でした。(単位はm)
それをグラフにしますと、以下です。縦横スケールを合わせて並べてみます。
事故調解析独自解析15点のグラフ独自解析3点除外のグラフ
報告書掲載は
C=0.00192,m=1.43
プログラミング言語の科学技術計算用のライブラリを使用して回帰計算で自動的に計算式のパラメータは決定してます。(Excelより使い慣れているので使っただけで、Excelでも出来ると思います。)
上段のグラフの縦横軸は対数目盛ではないので、前述のグラフとは見た目の形状が違いますが、同じ点にプロットされてます。このほうが直観的に点のばらけ具合がよく分かります。
左列が事故調解析を再現したもの(C整備の53番の黒色グラフと完全に一致します)。真ん中の列が15点データでの独自解析、右列が3点除外での独自解析です。
3点除外でも計算式のCとmの式のパラメータは事故調解析とは違いますが、結局ほぼ直線とみなしていいのがわかりますし、15点全部を考慮しますと、線の引き方も自由度が高いです。これよりデータ数が少ない亀裂はもっと任意の傾斜で線が引けてしまいます。
真ん中のプロットを見ますと、これだけ点が赤線から離れてばらけてますと、このデータからなにか結論を導き出すのは恣意的になってしまいそうです。
左列の事故調解析は他の2つのグラフに比べても急角度に上昇していることが分かります。
例えば、必ずしも疲労亀裂は事故調が想定する計算式(パリス則と思われます)の通りになるとも限らないので、外れ値の選択次第で近似曲線はだいぶ変わります。

適当にお絵描きした緑線を入れてみましたが、これが正解かもしれないのです(むしろ事故調よりプロットとの乖離が小さい)。疲労亀裂が途中で伸長しなくなることだって現実ではありえるのですが、
どの曲線が正しいのかは、データ数がもっと多くないと誤差が大きすぎてなんとも言えないです。報告書の表ではデータ数が3という亀裂すらありますし、最もデータ数が多い(15個)53番の亀裂長が11.76mmで、隣の54番は5.2mmと半分くらいですが、データ数は4しかないのです。それでなにが分かるのかという疑問があります。
例えば、金属板に孔が空いていたら応力が分散して疲労亀裂の伸長を防ぐことがあるということは知られてます。形状によってはそのようなことが起こりますから、複雑構成の圧力隔壁での実際が一枚板での理論と異なることはありえるわけです。
事故調の解析は1枚板の引張試験データを採用しているので、それならパリス則が適用できるのだと思いますけれど、現実、そうはなっていない形状なのだから単純に計算結果を採用してはいけないし、現実の計測値と乖離していることは証明しました。
ボイスレコーダーやフライトレコーダーの開示も重要ですけれど、個人的にはそれに加えて解析に使った詳細記録も公開してもらえると真相が判明すると思ってますので、事故調査に関係する公開できる情報はすべて公開する方向で政府は検討してほしいです。


53番も41番も事故調として都合のいいベスト3に入っている亀裂だと思いますから、一歩引いて冷静に見る必要はあると思いますよ。
事故調の想定ですと、途中のC整備時点での亀裂の長さが短いのですが、短いから発見できなかったのも仕方ないという論理に加えて最後に急上昇をさせることで、ボーイングと日航の双方に配慮したつもりだったのかもしれません。
もしも途中のC整備時点での亀裂の長さが本当はもっと長かったと仮定した場合は、亀裂を発見できなかった事実とますます矛盾が出るわけですが、
C整備で亀裂が発見できなかったのは、前述の通り、元々亀裂を発見できるような点検はしていないというのが本当なのかもしれません。(だから責任がないという話ではないです)
日航が主張していたように、もしも本当は整備での発見確率がかなり低いというのが真実だったとしたらどうでしょうか?グラフの勾配が一定に近いものであっても、矛盾はなくなります。

それと、2列リベット(前述付録1付図-7での黄色線)の解析のグラフでは25000回あたりで鉛直方向へ急角度になってます。おそらくこれが、1万強の2倍、の具体的な回数です。コーナー欠陥ありの前提だからそんなに回数が少ないのですが、
1列リベットの解析で「初期コーナ欠陥の有無が、疲労亀裂進展に与える影響は少ない」と事故調が解釈しているのは、結果に間違いがあるからそう解釈できるのです。
あまりにも1列リベットの推定回数が少なすぎたために、欠陥ありなしで誤差が小さかっただけです。
実際、2列リベットでの欠陥ありなしでは大きく結果は違ってます。
スプライスプレートの修理ミスをしたうえで、さらにリベット孔に欠陥があったなんて偶然が重なることはまずないのだから、前提が間違ってます。
他の航空機事故で疲労亀裂から破断が起きているのは、金属腐食で強度が弱まっていることが原因の場合が多いので、123便でも初めにそれを疑ったと思います。事故調もそれを調査してます。
しかし、報告書にも記載がありますが金属腐食はありませんでした。事故調としてはおそらく困ったと思いますが、なぜかそのまま押し通してリベット孔欠陥ありという前提のままで検証を進めているのです。
もっと言うと、1つのリベット孔だけの欠陥の前提でもなくて、隣接したリベット孔にも欠陥がないといけない前提になってます。
それが、いわゆるマルチサイトクラックが起きる条件です。その条件がないと亀裂は1つのリベット間を断裂させることはできたとしても、亀裂はそこで止まってしまうのです。
リベット孔というのは亀裂の伸長を止める働きがある場所なのです。
そんなに欠陥がたくさん隣接していたなんて確率的にありえないわけなので、本当は欠陥なし(または、そこそこあり)の2列リベットを基準にしてその1.4倍の応力で推定すればいいのです。前述で計算した通り最低でも57000回となります。
123便においてマルチサイトクラックでの破断が起きたことは事故から数十年の間に既成事実化していて、そのような現象があるのだと刷り込まれているわけですが、それまでの航空事故調査では用いていなかった事故調の一つのアイデアや仮説に過ぎません。
詳しく調べてみますと計測データの取り扱いからして客観的とは言えないことが分かりました。意図的とも思えるミスリードが多分に含まれてます。
疲労亀裂のマルチサイトクラックが原因でのL18接続部全面破断は起きていないとしても、報告書掲載の計測データとは矛盾しないばかりか、そのほうが整合性が高いです。
少なくとも疲労亀裂に関するもっと多くのデータが公開されないことには、事故調の推定した曲線が正しいという確認はできません。
それに加えて、計測データから推定した事故調の曲線と、破断の解析で使用した事故調の曲線が大きく異なっていたこともわかりましたので、マルチサイトクラックでの破断が起きた、と言える根拠がないことは明らかになったと思います。
事故調の説明を鵜呑みにするだけでは検証したことにはならないのです。

テレビ番組は入手した情報の一部分だけを切り取って放送しますから、それだけでは真実は見えてきません。
興味のある方は、ここでの考察を参考にしていただいて、本当はどういうことだったのかというエビデンスを探してみてください。
本考察では、責任がどこのだれにあろうとも、それがけしからん、というような感情論にならないように心がけてます。技術的に正しいのか間違っているのかを問いたい。
事故調査の手法としては責任の所在が明らかになったとしても処罰はしないというのが国際的な流れです。その前提があったほうが事故調査を正しく行うことができるからです。
個人的には相当な過失がない限りはその方針でいいと思ってますが、責任の所在を明らかにすることは最終的には事故原因を確認するために必要なことです。しかし、事故調査に限ればそれは粛々と行えばいい。なにより最重要なことは、真実を明らかにすることです。
間違いがあったならあったで、根拠が薄く既成事実化していることは白紙に戻してから再検証してほしいです。

(補足)
2024年6月のロイターのニュースではB787において、多くの不適正な製造があることが報道されてます。
Exclusive: Boeing investigates quality problem on undelivered 787s
「ボーイング社の工場での不適切なトルクまたは締め付けが含まれており、それは1機あたり900個以上の留め具」となってます。
これはおそらくB787以外でもこんなものなのだろうと想像するのですが、「There is no immediate concern about flight safety」と記載の通りでこれはボーイングにとっては普通のことであって、特に安全上問題ないということだろうと思うのです。
この記事から思うことは、123便事故当時の几帳面で過剰品質良かれな日本人の製造業感覚ですと、正確無比に整列したリベットこそ正しい製造だと思っていたのだろうと思うのです。しかしアメリカ人の感覚ではそうではなくて、乱れが多少あっても問題なしという感覚だったと思うのです。
それ以上に強度にマージンがあるから多少の乱れは想定内ということだと思うのです。
だから、機体を細かく見れば、留め具の乱れや小さい亀裂なんてものは至る所から見つかる、それでも問題なしの品質、ということなのだろうと思います。
この記事でのボーイングの安全上問題なしの自己評価は間違いとは言えない、まずまず正しいと個人的には思うのですが、
123便において、機体のどこにでもよくある乱れを逆手にとって、それで修理ミスの部分のリベットにも乱れがあるとして、事故調査の計算式に過剰に盛り込むのは違うと思いますよ。


断熱材と水平尾翼の違和感


水平尾翼(羽のほうではなくて胴体内部のセンタセクション内)に断熱材が付着していたことが圧力隔壁破損説の証拠とされてます。
この断熱材についての話は別Webページでも記載していて動画でも触れていて、何度もしつこいから書かないほうがいいかと思ったのですが、やはり違和感がどうしてもあるので、このページにも書きます。
その断熱材は具体的には元々どこに設置されていた断熱材なのか?という疑問です。
別Webページでは他の航空機では、圧力隔壁の与圧側面にびっしりと断熱材が敷き詰められていることを書きました。123便ではどうだったのか?報告書には説明がないということを書きました。
それについて、結論を出しておきます。やはり123便においても、圧力隔壁の与圧側面にびっしりと断熱材が敷き詰められていた。これが正解のようです。
1985年9月11日 朝日新聞 東京朝刊 (23)
「運輸省・航空事故調査委員会は10日までに、墜落現場から回収した機体尾部の残がいの内側数カ所に、圧力隔壁の断熱材の一部が付着しているのをみつけた。断熱材は隔壁の客室側に張り付けてあることから、
隔壁が飛行中に破裂した際に、噴出した空気と一緒に後ろへ吹き飛ばされた可能性が強く、調査委は隔壁破裂を裏付けるものと重視、分析を急いでいる。」
「断熱材は、直径4.5メートルの半球状の隔壁の客室側に全面に張り付けられている。」
となってます。
ということで、他の航空機同様に、隔壁の客室側に全面に張り付けられている、のは確定でいいかと思ってます。まあ、そうですよね、って感じでそれ自体に驚きはないです。それが普通だからです。
どうでもいいと思われるかもしれませんが、「隔壁の客室側」という分かりやすい表現はなかなか探しても出てこないです。これが違和感です。
表現としてあるのは「客室内の断熱材」「与圧室の内側に取り付けられている断熱材」「胴体内側より吹き出したとみられる断熱材」などです。
「与圧室壁」というと、圧力隔壁は含んでいないニュアンスのように聞こえなくもないです。
報告書がなぜ「隔壁の客室側」断熱材について、間接的な表現しかできないのか?
墜落現場の隔壁写真には断熱材らしきものは付いてないので、そこの断熱材はどこへ行ったのでしょうか?
事故調にとって一番都合がいいのは、隔壁の客室側断熱材は全部、隔壁開口部から抜けて、一部が水平尾翼内に留まり、それ以外はすべて相模湾に落ちた、とすることですが、それを主張していないのはなぜなのか?
新聞記事時点で「圧力隔壁の断熱材」と断定しているように、報告書でも水平尾翼内に存在していた断熱材は、隔壁の客室側断熱材の可能性が高い、くらいの主張はあってもよさそうなのですが、ないのです。
事故調にとっては断熱材というのは重要ポイントであるはずです。新聞記事の時点では「圧力隔壁の断熱材」だったものが、なぜ、報告書では、はぐらかしているのでしょうか?
なにかが判明して方針が変わった?
もしかして、言えない理由があるのかなと思ってしまいます。水平尾翼内の断熱材が隔壁の客室側断熱材であったらなにか都合が悪いとか?
もしかして、事故調は隔壁の客室側断熱材ではありえないことを知っているとか?
「隔壁の客室側」の可能性を匂わすこともしないというのは、書いてしまうと嘘になることが確定しているからなのでしょうか。
例えば、墜落現場で隔壁の客室側断熱材はすべて回収できているとか、成分分析で隔壁の客室側断熱材でないことが判明しているとか、なにか理由がないと、思い込みで突っ走るのが得意な事故調が珍しく、主張しないのは逆に不自然なんです。
事故調によると客室内は強い風は吹いていないのでしょ?だとしたら、隔壁の客室側以外の別の場所の断熱材が剝ぎ取られるって可能性低いじゃないですか。だとしたら、隔壁の客室側断熱材としてもいいと思うけど?違うの?
主張できないということは違うという理解でいいのかな。
解説書では「後部圧力隔壁の前方に取り付けてある断熱材等をはぎ取って与圧室外に吹き飛ばした」としていて、あいまいな表現のままです。
解説書の図解では隔壁と離れた場所の断熱材が描画されてますから、「隔壁の客室側」断熱材ではなさそうな絵になってます。
いったいなにがそうさせているのでしょう?まるで「隔壁の客室側」断熱材がタブーのようになってます。
「隔壁の客室側」断熱材の存在というのは、検査での亀裂の発見確率と関係してきますね。客室側からは断熱材が邪魔で亀裂は見えないわけですから、反対側からしか見えないことになり、発見確率は下がります。
その点も報告書では触れていないのも不自然なのです。まるで気が付かれてはいけないみたいな。
事故調としては、墜落現場で見つかった客室後部の化粧室天井部分の破片を隔壁開口の証拠とみなしてます。
報告書p107「客室最後部の化粧室シーリング・パネルの破片及び同化粧室へのエントリウエイ・シ ー リング・パネルの破片が水平尾翼作動ジンバル落下地点から発見されたことから、
後部圧力隔壁破壊に伴う流出空気流により、客室最後部化粧室及びその付近の客室内装の一部が破損し、与圧室から後方へ飛散していたと認められる」
なぜ、事故調はこれを墜落時(一本から松衝突以降)の事象として異常事態発生時の事象と切り離して考えなかったのか?
それこそ化粧室天井破片内に断熱材があったからに他なりません。事故調としては断熱材を証拠にしたかったに違いないのです。
もしも、化粧室天井破片内に断熱材がなかったら、化粧室天井破片を圧力隔壁開口の証拠にしたでしょうか?してないでしょうね。
断熱材は客室周囲の壁や床や天井にはまんべんなくどこにでもあるのだから、墜落で破壊されたところに断熱材が混じることだってありえるわけです。
異常事態発生時に化粧室付近の断熱材が剥ぎ取られる状況で、客室後方では強い風が吹かないとみなすのも論理として苦しいと思うのです。わざわざ苦しい論理にしてます。
もしかして、非与圧側で見つかった断熱材が「隔壁の客室側」断熱材ではないと分かっているから、化粧室付近の断熱材が隔壁開口時に剥ぎ取られたことにしないといけなかったとか?そんなことを想像してしまいます。
考えてみれば、断熱材というのはフィルムの袋の中に入っているわけなので、「隔壁の客室側」断熱材が隔壁開口から滑り出すように排出されたなら、
水平尾翼内でフィルムと一緒に付着していてもよさそうなのですがフィルムは無いのです。だから「隔壁の客室側」断熱材ではない、と判断しているとか?
それとも、化粧室天井部分の破片というのは、水平尾翼作動ジンバル落下地点で発見されているので、それが墜落時に混じった断熱材と判断されると、水平尾翼内の断熱材に関しても墜落時に混じったことと見なさなくてはいけない論理があるとか?
なにか言及したくない理由があると思いますよ。

水平尾翼に関する破損の詳細は報告書p10に記載されてます。抜粋します。
(5) 水平尾翼は胴体から分離し、左外側昇降舵は安定板から脱落していた。安定板付根の前縁の一部は破断分離していた。
    水平安定板センタ・セクションの前方及びSS165.73付近までの左前縁部が破損していた(写真一6参照)。
(6) 水平尾翼作動ジンバルは安定板から破断分離し、安定板から約80メートル離れた南方の斜面から回収された。
(7) 水平尾翼作動ジンバル落下地点から客室最後部の化粧室シーリング・パネルの破片及び同化粧室へのエントリウエイ・シーリング・パネルの破片が回収された。
水平尾翼はU字溝前方でも残骸は発見されてますが、それとはまったく別の(一本から松の500mほど右前方)場所で水平尾翼本体が発見されてます。
水平尾翼作動ジンバルがどちらで発見されたのかが図を見ても分からないのですけれども、以下では本体の80m南で発見されたと仮定して考察します。
ここから推測できることは、機体本体からの分離タイミングとしては、水平尾翼本体と化粧室天井破片は同時ということです。
化粧室というのは客室最後部に位置しているので水平尾翼との間には圧力隔壁があります。
機体本体から分離する以前というのは、化粧室天井破片はどこに存在していたのでしょうか?
元々の化粧室天井の位置なのか?それとも水平尾翼のほうに移動していたのか?事故調としては新聞記事の通り隔壁開口時に水平尾翼のほうに移動していたとみなしているのです。
少なくとも水平尾翼の内部ということはないと思います。そこから断熱材以外の部材は発見されてないですし、発見地点も少し離れてます。
異常事態発生時に隔壁開口から移動したとして、それが、水平尾翼内にも入らずに、どこかに留まることがあるかというと難しいと思うのです。大抵は海に落ちますね。
仮に、どこかに留まる偶然があったとして、それが、同じような地点まで飛散するのかどうか?水平尾翼作動ジンバルにくっついていた?どうでしょうかね。
水平尾翼作動ジンバルなるものがなんなのか知らないのでなんとも言えないですが、偶然が重ならないといけないことは分かります。
事故調は水平尾翼本体は一本から松の地点から直線的に飛散したのではなくて、どうやらU字溝のほうから右カーブを描くような軌跡で飛散したと推定しているようなので、
その軌跡はブーメラン形状の水平尾翼本体でしか描けませんから、水平尾翼本体にくっついた状態で化粧室天井破片も一緒に飛散したと考えていることになります。
しかしながら、水平尾翼本体近くでは、機体胴体の外板や右主翼部品も発見されてますから、元々の設置場所が異なっていても近くまで飛散したというのが事実です。
そうなりますと、一本から松の地点から直線的に飛散した可能性のほうが高いように思えます。
おそらく真実としては、水平尾翼と一緒にくっついた状態で飛散したというよりは、近くに飛散したものしか発見できていないだけだと思うのです。(飛散のシミュレーションは別Webページでブラウザ上で行うことができます。)
元々の設置場所が異なっていても近くまで飛散したことを前提とするなら、化粧室天井破片も元々の化粧室天井の位置から分離した可能性があるわけです。水平尾翼にくっついて飛散する必要性がありません。
また、元々の化粧室天井の位置から分離したとしますと、そこにあった断熱材は「隔壁の客室側」断熱材ではなく、客室内の断熱材という話になります。
分離するということはそこが破壊されているわけなので、近くの断熱材が分離時に混入したと考えたほうが無理がないからです。
もちろん、化粧室天井破片は圧力隔壁破損説の証拠にはならなくなります。
事故調の水平尾翼にくっついて飛散した前提で、くっついている部分の断熱材が「隔壁の客室側」断熱材ではなく客室内の断熱材であるなら、水平尾翼内の断熱材も客室内の断熱材である可能性が高くなってしまうので、
それだと「隔壁の客室側」断熱材を行方不明にしないといけなくなります。
これが違和感の原因でしょうか。あくまで個人的な、報告書を読んでピンとくる感覚なのかもしれないのですけれど、報告書では意図して慎重に言葉を選んで避けているようにしか思えないので、おそらくなにかあるのでしょう。
このあたりの情報も開示してもらえれば、真相が分かると思います。

それと、水平尾翼作動ジンバルも、化粧室シーリング・パネルの破片も、化粧室へのエントリウエイ・シーリング・パネルの破片も、残骸分布の地図上で探すことができないのですけれど、
水平安定板がHなんとかっていうマークで図示されているとして、一応、Hなんとかを全部見ても80m南にはなにも図示されていないのですよ。どういうことですか?
もしかして、U字溝より少し先の地点のことを言っている?

水平尾翼前縁部というのが、U字溝前方で発見されてますから、どこかの地点で水平尾翼本体と分離したことは間違いない事実です。
気になるのは、両翼で同じような位置の水平尾翼前縁部が分離しているということです。水平尾翼本体が地面や木などと衝突した衝撃で分離したと仮定するなら、そんなに均等に両翼から分離するのかなという疑問があります。

いくつか可能性を考えてみましょう。
・異常事態発生時にその部分に噴流が入って壊れやすい状態であった。
・異常事態発生時に水平尾翼センタセクションが慣性で前方へ移動してセンタセクション前方部分が破壊されたから、一体となっている両翼の前縁部にも衝撃が波及して壊れやすい状態であった。
・一本から松またはU字溝衝突時に水平尾翼センタセクションが慣性で前方へ移動してセンタセクション前方部分が破壊されたから、一体となっている両翼の前縁部にも衝撃が波及して分離した。
・一本から松またはU字溝衝突時に水平尾翼前縁部が両翼ともに地面または木に接触して破壊分離した。
この4つくらいでしょうか。
まず噴流(爆風かもしれません)が入ったかどうかを検討してみます。
機体内部と水平尾翼両翼の間には蓋となる仕切り(ボディシール)があります。
報告書p62の理屈では、ボディシールのうち、内圧で破壊されやすそうな部分というのが下方のスライディングブレードシールという部分で、その損壊がわずかだから、飛行中に大きな開口部になっていない、としてます。
要するに、水平尾翼は異常事態発生時にはほぼ破壊されていないと事故調はみているのです。
この説明でもって噴流の流入が無かったとはならないです。まず、小さな開口部であっても流入はありえますし、また、下方のスライディングブレードシールに限定しているのも不可解です。
報告書p171「付図-35 ボディ・シール損壊図」を確認しますと、未回収部分が結構あるのですが、下方のスライディングブレードシールが一番回収できているのです。
事故調が下方のスライディングブレードシールに限定させたかったのは、回収できていた部分を証拠にしたかったという意図が感じられます。また、圧力隔壁からの噴流を分散させるわけにはいかない事情もあるでしょう。
このように回収されていない部分が結構あるということは、相模湾上で破壊されて海に落ちている可能性もあるわけでして、
また、下方のスライディングブレードシールにおいても、未回収部分はパッと見15%程度ですが、ほぼ前方部分に集中してます。
そうしますと、異常事態発生時になんらかの噴流がボディシール前方部分を破壊してそこから流入があって両翼の前縁部にも衝撃が波及したとしても辻褄は合うのです。
それであれば、両翼前縁部に対して均等に力がかかった説明にはなりますし、加えて、実は翼の前縁部のすぐ近くの位置の残骸というのが未発見なのです。左右どちらの翼もです。
その部分も海に落ちたのなら未発見でも辻褄が合いますから、可能性としてはありえると思います。

他のセンタセクションが慣性で移動して破壊された可能性も結構あるかと思います。センタセクションが隔壁と衝突して隔壁に穴を空けたとするなら、その際に断熱材が移動したということもありえます。
どの可能性が高いかまで断定は出来ないですが、地面または木に接触して破壊分離した可能性については、機体が地面や木と平行になっていないと両翼に均等に力がかかるなんてことはありえなさそうです。偶然の可能性は低いでしょう。



固体伝播音が鍵

日航123便の事故調査報告書において、機体フレームを通って音が伝わる速度を考慮した計算結果というものは一つもありません。
つまり事故調は固体伝播音を考慮した計算は行っていないです。
CVRに固体伝播音が記録された可能性が高いことは当然考慮されるべきことなのですが、事故調としては空気伝播音しか記録されていないという考えのようです。
そのため、爆発音の最初に記録された400Hzの電源周波数漏えいが、爆発音より前で起きたことでなく、隔壁破損開始と同時に起きたと解釈しているようです。
400Hzの電源周波数漏えいと爆発の前兆音に0.1秒から0.2秒の時間差(400Hzと爆発音とは0.3秒以上の差)があるのは爆発音が空気伝播音で時間にずれがあるから、としていて、
その時間差は圧力隔壁付近で発生した爆発音がコックピットのマイクまで空気中を通って到達する時間とみなしているようです。つまり発生時刻は同時とみなしてます。
その事故調の解釈が間違いということを繰り返し動画で主張してきました。今回は前述のチャイナエアライン611便の事故調査報告書を使ってさらに深く見ていきます。
チャイナエアライン611便の事故調査報告書(中国の飛航安全調査委員会)
実は、チャイナエアライン611便の事故調査報告書では、機体フレームを通ってCVRマイクに音が伝わることが、さも当然のように書かれてます。

(チャイナエアライン611便事故調査報告書p190 2.6.4 The Last Sound Signature)
音が伝達する経路はパス1,2,3があってそれぞれ,
パス1(プリカーサ):機体構造を通る
パス2(非与圧領域でのイベント音):外気から機体構造を通り、客室およびコックピットの空気中を通る
パス3(与圧領域でのイベント音):客室およびコックピットの空気中を通る。
この説明で分かる通りで、パス1,2が固体を経由して伝播している経路です。
611便の初期破損部分は後部胴体下なので、123便と同様に後部が音源位置ということもあって音が伝達される状況としては似てます。
この事故の爆発音の波形も掲載されてます。

(チャイナエアライン611便事故調査報告書p143 2.2.3 CVR Signatures)
EVENT SOUND(イベント音)という部分が爆発音で、その前のPRECURSOR(プリカーサ)が前兆の音です。
イベント音よりも先にコックピットマイクに到達しているプリカーサは前述のパス1に相当しますので固体伝播音という解釈としていることが分かります。
123便でいうところの8Hzや16Hzの爆発音の前兆となる低周波波形のことです。
このようにもしも8Hzの波形が固体伝播音であったなら、固体伝播音の伝達速度はとても速いので、8Hzと、400Hz(電気的ノイズなので伝達時間はゼロとみなす)の電源周波数漏えいの発生時間差はほぼ下図の通りのはずです。

この図は以前の動画でも使ってまして、123便の爆発音および8Hzと400Hzの波形を並べて分かりやすくしたものです。
空気伝播音の爆発音の前に固体伝播音の8Hzの波形のぶれが確認できて、さらに
8Hzの波形のぶれよりも先に400Hzの波形のぶれが発生していることが確認できます。
8Hzと爆発音との関係は、611便のプリカーサとイベント音の関係にそっくりです。
そうしますと、やはり8Hzの音はプリカーサの固体伝播音ということになりますから、
8Hzの前兆に先立って400Hzの電源周波数漏えいが発生していたということになるのです。それが真の事故原因です。
TWA800便の事故では400Hz波形のぶれは電気ショートであり、それによって気化燃料が爆発した事実を考慮しまして、
さらに、図のOAT(外気温度)エラーがもしも高温爆発を表しているのなら、
最も可能性の高い仮説は、APU本体の熱(APUが起動していなかった場合は残熱)によって気化した燃料が漏れ出し(そのような事故例もあります)、電気的ショートによる着火で爆発したという仮説です。
電気ショートが起こりうる可能性が高いところは、APU防火壁下部にあるバッテリー制御の回路です。(ここが原因での火災事故例もあります)
事故調が固体伝播音を考慮しないのは、リベット打ちの実験で機体フレームを伝わる音の減衰が大きかったからです。
しかし、リベット打ちの音よりも実際の爆発音は大きかったでしょうから、単に小さい音の実験だったからマイクまで到達しなかったと考えるべきです。

実は、事故調も当初は固体伝播音がマイクに伝わったとみなしていたと思われる新聞記事もあります。

読売新聞 1985年9月15日朝刊22頁
======================================================================================================
第二回中間報告で、墜落日航機のボイスレコーダー(CVR)のマイクが操縦席でとらえた「ドーン」という衝撃音の音響分布図を公表した。
さる八月二十七日公表された第一回報告では、この衝撃音は一回とされていたが、分布図の波形は、約一秒間続いた音響の中に、二つの山があり、「ドーン」が二回だったことを記録していた。
音響分布図によると、まず午後六時二十四分三十五・六秒ごろ、強い音の立ち上がりが見られ、0・二秒後くらいに減衰を示している。
その頂上には、小さなヤマが二つあるが、これは、隔壁破裂の衝撃音がまず、機体の外板など金属部を直接伝わり、続いて同じ音が機内の空気を伝播して記録されたものとみている。
さらに、これから約1秒後の同二十四分三十六・五秒ごろ、再び強い音波の立ち上がりが確認されている。
事故調査委では、尾翼などの機体破壊をきっかけに機外に出た衝撃波が、音速(高度七千二百メートルで秒速約三百三十メートル)を超えるスピードで機体を追いかけ、操縦室に到達したか、尾翼そのものの破壊音のいずれかと見て、さらに調べる。
このような事実は、事故調査委が伊豆半島で行った目撃者の聞き取り調査とも符合した。それによると、同半島東岸にある静岡県・河津町の(※氏名が書いてありますのでこの考察では掲載を一部省略します)
…二人は、事故機の異常発生と同時刻ごろ、伊豆急河津駅前で客待ち中に、突然「ドーン」という雷のような音を後ろの方で聞いていた。驚いて振り向くと、三、四秒してから、東の上空に飛行機が現れた。
飛行機は尾翼付近から水蒸気のような煙を噴き出しており、フワフワした飛び方で右旋回していったという。
事故調査委では、この証言で、「音が最初に到達、機影はあと」とする点を重視。音響分布図の解析結果と合わせ、音速を超す強い衝撃波発生は間違いないと判断、今後、この衝撃波が機体破壊にどう絡むかを具体的に裏付けたいとしている。
======================================================================================================
要するにこの新聞報道では、事故調は1回目の大きい爆発音に固体伝播音と空気伝播音の2つの山があるとみなしていたという話です。
前述の123便のプリカーサも固体伝播音によくみられる低周波だったのだから、固体中を伝わった音であった可能性が高いです。
そうしますと、400Hzの乱れの事象が、事象発生の順番としてはやはり一番初めという話になります。
最後の文の、「音が最初に到達、機影はあと」だから、音速を超す強い衝撃波発生は間違いない、の論理がわからないのですが、単純に考えますと、音速は時速約1224kmなのだから飛行機の速度より音が速かっただけでもいいような気はしますけど。
機体視認と音感知の時間差4秒で音速だと、目撃者のいる地点から視認した時の123便までの距離が短くなりすぎて、それでは見上げ角度が大きくなりすぎるから、音速を超す速度が必要という話なんですかね。
この証言というのはテレビインタビューでも登場するのですが、情報が断片的なので全容がよくわからないです。目撃地点付近上空で機体を見たという話になっていたり、3,4秒で機体が現れたという話がなかったり、煙の話が無かったりします。
少し計算してみます。河津駅前から異常事態発生地点までの水平距離は約11.5kmです。その時の高度は24000feet(=約7.3km)です。地上から上空への直線距離ですと、約13.6kmです。
音速で音が到達したとして、音速を340m/sとすれば、到達まで40秒かかります。機影目撃に4秒かかったとして44秒としますと、44秒での移動距離は異常事態発生時の対地速度を800km/hとすれば、9.8kmです。実は異常事態発生後数分は飛行速度がやや上がっているので、850km/hとしたほうがいいかもしれません。そうしますと、10.4kmです。
11.5-10.4=1.1kmが123便視認時点での河津駅前からの水平距離ということになります。この時の高度を24000feet(=約7.3km)としますと、見上げ角度はatan(7.3/1.1)=81.4度となり、ほぼ真上です。ただ、これはあくまで河津駅前上空を通過したという仮定の計算です。
これが「東の上空に飛行機が現れた」となるのかどうか、実は、後の2005年8月12日放送フジテレビ「特別企画 8・12墜落 20年目の誓い」のテレビインタビューでは北西の上空を指さして「見えたのはこの辺」と語ってますから、報道にぶれがあるのです。
東であるなら、異常事態発生地点は事故調予想よりも本当はもっと遠くのほうが一致しますし、北西であったならもっと近くのほうが一致します。どちらが正解でしょうか。
東であるなら、事故調の予想航跡上でもいいのですが、北西の場合は、事故調の予想航跡よりも北にずれていた可能性が高くなります。この新聞記事よりもテレビインタビューのほうが正確だろうという印象を受けるのですが、
一方でテレビインタビューでは3,4秒という話も煙の話もないので、なにが正しいのかはよく分からなくなります。音の方向(北東)へ振り返ってからたった4秒で逆方向(北西)上空で機影を見たというのも可能なのかなと思いますから、実際は3,4秒ではなくて15秒でしたら、駅前上空を通過して北西上空の機影を見つけたとしてもいいのかもしれません。
また、別のテレビインタビューでは同じ人なのかよくわからないのですけど、山の稜線を指さしてます。機影の再現をしているようにも見えるインタビューですが数秒しかないシーンなのでよく分からないです。
とりあえず、単純に地上まで音が伝わるほど音が大きかったということでしょうか。音の大きさからして「音速を超す衝撃波」という意味なのでしょうか。記事には説明がないのでよく分かりません。
音速を超す速度が必要だとすると、圧力隔壁破損説では説明が難しくなります。
なぜなら最終的な事故調査報告書では、音速を超す衝撃波ではなく単に内圧上昇でAPU防火壁や垂直尾翼は破壊されたという解釈に変更しているからです。
APU防火壁や垂直尾翼の破壊音ではなくて隔壁が破壊された瞬間の音だとすると、音速は超えたかもしれないですが、隔壁は機体内部ですから、大きな音が外気に出るのは難しいと思います。
そうしますと「音速を超す強い衝撃波発生は間違いない」という話ではなくなってしまって矛盾しますから、なにかが爆発したほうが辻褄が合ってしまうのです。これは第二次中間報告の記事なので、最終的な報告書に仕上げる途中で話が変わったのか?謎ですね。
ともかく、事故調がリベット打ちで固体伝播音の確認をしたのは、やはり音が小さすぎだとは思います。
ついでに、1985年9月15日 朝日新聞 東京朝刊23Pの解説でも「機体の尾部で発生した音は、機内の空気を通じて伝わるほか、胴体の金属部分を通じるなど、きわめて複雑な経路を通る」としてます。
普通はそう考えますから、最終的に仕上がった報告書の固体伝播音は減衰してマイクに音が伝わっていないかのようなスタンスは科学的には間違いなのです。
「尾翼付近から水蒸気のような煙を噴き出しており」というのはその後、あまり報道されてないですね。
例えば、エアコンの暖気が圧力隔壁の穴から後方へ流れたとして外気と合わさって霧として見えたとか、飛行機雲とか、エンジンの排気とか、そんな理屈も付けようと思えば付けられそうなので、
この報道が減った理由はマスコミの忖度なのか、これを火災とみなすと都合が悪いからなのか、見間違いと思っているのか、関心が低いだけなのか、気になるところではあります。
煙のようなものの色に関してはバスの排気ガスのような色(おそらく当時の劣悪な排気ガスの黒い色のことだと思います)だったという話もありまして、水蒸気が灰色に見えるという解釈もあるのですけど、
個人的には飛行機雲は白色という印象しかありませんから、灰色というのでしたら、水蒸気ではない可能性も少し視野に入れておくほうがいいと思ってます。
隔壁開口から流れた暖気による霧とするなら、たしかに正常時はエアコンで除湿がされるので、除湿がされない暖気が外気と触れて白く霧になったということはありえる理屈です。
しかし圧力隔壁破損説の場合ですと、その時はすでに客室内気圧は外気と同じですから、客室内空気を噴き出すとしても最大でエアコン排気程度の空気量でしかありません。
そのような同じ状態が墜落まで継続していたことになりますから、ずっと水蒸気が白く流れていたということになるんじゃないかと思ってしまいます。
水蒸気とするなら、むしろ一瞬の客室気圧乱高下の後でのゆっくりとした減圧の最中としたほうがここの地点だけの現象としては合うようにも思えます。もしくは、黒っぽい灰色なら火災の煙か、エンジン排気のほうが色としては合ってます。
ところで、墜落7分前に撮影された機影の写真には煙は写ってなさそうなのですが、撮影者はTBS「8.12日航ジャンボ機墜落事故 30年の真相」で撮影前の話として「飛行機が黒い煙を吐きながら」「エンジンをいっぱいにふかしたらしくて煙がすごかった」と語ってますから、
やはり水蒸気よりはなんらかの煙の可能性が高いのだろうと思います。

TWA800便の事故調査報告書に400Hzの説明がありますので、リンクを貼っておきます。
AIRCRAFT ACCIDENT REPORT Trans World Airlines Flight 800
p59の下欄注意書きには次のような記載があります。
The CVR wiring is routed from the cockpit to the tail of the airplane with numerous wires and cables 
that are powered by the airplane’s 115-volt (400-Hz) electrical system, which results in the CVR recording a 400-Hz background noise. 
Most airplanes’ a.c. electrical systems operate on a 400-Hz frequency; this background noise hum is a common feature on CVRs.
要するにコックピットからCVR本体へ繋がる電線に流れる電気信号自体が115ボルトの400Hzで動いているので、バックグラウンドノイズとして記録されるということです。
ですので、400Hzの音というのはマイクから入力された音ではなくて電気的介入で記録されているという意味です。なんらかの電気的な漏えいがあれば、時間遅れなく400Hzの波形は乱れて記録されます。
p117では、
Tests conducted by Boeing indicated that strands of steel wool can be ignited by as little as 32 milliamps from a 25-volt 400-cycle a.c. source.
25ボルト400Hzのたった32ミリアンペアの電流でスチールウールに点火する、という実験結果ということです。
参考に、p182には電気的な不具合の他の事故例が20以上掲載されてます。

サーキットブレーカーで電気ショートは阻止出来るのではないかという疑問については、p284で説明があります。
circuit breakers cannot be relied upon to prevent short circuits
「サーキットブレーカーは短絡を防ぐことができません」ということです。



ボイスレコーダーの流出テープについて


123便関連のテレビ番組からヒントをさがして考察してみました。
ボイスレコーダーの流出テープについての考察



あとがき

Youtube動画非掲載の内容がWebページにはありますし、逆もありますので、どちらもご覧いただけると分かりやすいかと思います。
公式見解とは違う意見で、かつ、フラッター説や外部飛翔体説以外の説があることも知ってほしいところです。
外部飛翔体説に関しては、爆発音に先立って8Hzや400Hzの波形が前兆現象としてCVRに記録されていた証拠で否定されると考えてますが、その議論すら見たことがないです。
この前兆現象がフラッターの証拠とする説もあるようなのですが400Hzの乱れはフラッターでは出ないのではないでしょうか。
また、垂直尾翼破壊が一番初めだとすると前方加速度の突出よりもあとに横方向加速度の振動がある事実を説明するのは難しいと思います。
事故原因を特定する基本線としては、どのような異常が初めにあったかということを調査することだと思います。記録されている初めの異常は400Hzの電源周波数漏えいなのです。
事故調説否定派で、初めの警報音を離陸警報ではなく客室高度警報と解釈している人は非常に少なく、それはおそらく書籍や動画の影響だと思うのですが、
事故調と同じく客室高度警報と解釈した上で、それから批判の議論を展開することの試みはとても少ないです。
多くの事故調説否定派とは違う見方をしていることになりますので、事故調説肯定派からはもちろんのこと、否定派からもあまり賛同が得られないのは承知の上です。
それでも、それが最も真実に迫れる論法と考えてます。
事故の風化と、正しい否定意見の浸透と、どちらが早いかというと、風化のほうが残念ながら早そうです。
まだ、時間は残っているのでしょうか?時計を逆転させる方法はやはり調査当事者に再考いただくことです。
公開しているからには、できれば、日航や運輸安全委員会の方々の目にもとまってほしいです。
そして、なるほどと思うことがあれば、ぜひ再調査に向けた行動をしていただけると幸いです。
羽田衝突事故のデータも参考にして、あらゆる可能性を考えてみることが必要だと思います。本考察では可能性のいくつかを提示しました。
羽田衝突事故のCVRで、もしも、衝突音の固体伝播音が記録されていたなら、それは日航123便の事故調査を否定する根拠にもなります。
なぜそう言えるのかというのは過去動画でも説明している通りで、固体伝播音は記録されていないという前提で圧力隔壁破損説は理論構築されているからです。
事故調の主張する圧力隔壁破損説の絶対的証拠というのは存在しませんし、むしろ否定する証拠証言のほうが科学的に信頼できるものです。
あらゆる可能性を考えてみることは、誰よりもJTSB(運輸安全委員会)が主体的に行ってほしいです。それは事故調査の本来あるべき姿だと思います。



第一次中間報告でのCVR書き起こし


1985年8月27日 事故調査委員会 第一次中間報告でのCVR書き起こし



事故調査報告書の参考ページ
 報告書
   p6 2.1 飛行の経過
  p19 2.8 気象に関する情報
  p28 6 破壊順序の推定
  p29 2.15.1.2 後部胴体の損壊に関する調査
  p35 2.15.1.5 後部圧力隔壁の損壊に関する調査
  p42 表2 機械的性質
  p43 (7)後部圧力隔壁の破面調査
  p45 表-9 疲労論証の分布状況
  p46 図-7 孔縁間疲労損傷比の分布
  p46 図-8 ストライエーション間隔の変化(53番目のリベット)
  p47 表-5 リベット孔中心からの距離(a)と、ストライエーション間隔(s)の関係及びこれらより算出したストライエーションの数(N)
  p51 (カ)エンジン駆動ポンプ(2個)及び空気駆動ポンプ(4個)
  p56 (3) 表内 APU回転計
  p58 2.16.1 後部胴体非与圧区域での断熱材の付着状況調査
  p66 3.1.1.2 残留強度の評価
  p68 3.1.2.1 ストリンガとリプ・コ ー ド取付部の強度
  p101 3.2.2 昭和53年大阪国際空港における事故による損傷の修理作業並びにその後の事故機の運航及び整備点検について
  p103 (2)昭和53年以降の運航、整備及び不具合について
  p107 3.2.3.5 客室後部の損壊
  p163 付図-27 垂直尾翼損壊図(左側)
  p166 付図-30 水平尾翼損壊図(上面)
  p168 付図-32 後部圧力隔壁損壊図
  p245 2 同機の損壊の状況
  p250 付図-1 昭和53年6月の事故による損壊部位(1)
  p258 1.7 運行中の客室与圧つについて
 報告書付録
  p3 付録1 後部圧力隔壁破壊の解析のための試験研究
  p11 付録 1 付表-6 後部圧力隔壁L18接続部部材の推定破断圧力
  p12 付録1 付図-1 後部圧力隔壁 L18接続部
  p14 付録1 付図-3 後部圧力隔壁の解析モデル概要
  p15 付録1 付図-4 L18接続部の上側ウエブにかかる応力:全部非破断の場合(亀裂が全くない場合)
  p16 付録1 付図-5 疲労亀裂伸展解析モデル
  p18 付録1 付図-7 疲労亀裂進展計算結果:リベットNo.41
  p22 付録2  垂直尾翼破壊の解析のための試験研究
  p31 付録2 付表-1 垂直尾翼部分構造内圧破壊試験結果
  p34 付録2 付図-1 試験供試体の部位
  p45 付録2 付図-13 フロント・スパー及びリア・スパー位置での外部空気力
  p62 付録4 付表-1 基礎式
  p64 付録4 付表-2 各室諸元
  p65 付録4 付表-3 計算条件 (a)固定条件及び数値
  p67 付録4 付表-4 主要部分を通る空気流量(Kg/s)
  p73 付録4 付図-4 基準ケース (a)与圧室圧力変化
  p74 付録4 付図-4 基準ケース (b)客室、コックピット温度変化
  p77 付録4 付図-4 基準ケース (e)隔壁通過流量
  p78 付録4 付図-5 隔壁開口面積の影響 (a)耐圧限界到達時間に対する影響
  p79 付録4 付図-5 隔壁開口面積の影響 (b)警報発生時間に対する影響
  p84 付録4 付図-7 隔壁開口部拡大、縮小変化 (b)縮小の場合の与圧室圧力変化
  p85 付録4 付図-8 ゆるやかな減圧時の与圧室圧力変化
  p93 付録5 付図-1 DFDR拡大図
  p93 付録5 付図-2 異常事象発生のシーケンス図
  p95 1.1.1 前後方向加速度LNGG(4サンプル/秒)
  p96 1.1.2 横方向加速度LATG(4サンプル/秒)
  p108 3 DFDR による推定飛行経路
  p109 4 墜落直前の飛行状況の推定
  p119 付録7 付図-4 異常外力の推定
  p123 付録6 付図-6 尾部/垂直尾翼欠損形状
  p162 付録8 付図-1 プリレコーデッド・アナウンスの録音状況
  p162 付録8 付図-2 CVR記録によるPRAの開始時刻の推定
  p192 付録11 4.1 画像入力及び前処理
  p196 付録11 付図-1 処理の概要
  p197 付録11 付図-3 TVカメラの位置と模型の姿勢
  p198 付録11 付図-4 直線で近似・推定された垂直尾翼の残存部及び隠れた部分(幾何補正前の画像)
  p199 付録11 付図-6 正射画像による面積率
  p200 付録11 付図-8 左右側面の重ね合わせ(論理演算)を行った垂直尾翼損壊図
  p201 付録11 付図-10 推定された垂直尾翼の残存部とその面積率
  p203 6. 2 疑似アフィン変換
  p206 付録11 付図6-2 推定された事故機の飛行位置及び飛行方向(写真撮影時)
  p207 付録12 目視点検による亀裂の発見について
  p212 付録12 付図-1 着陸回数に対する推定疲労亀裂長さの変化
   解説書
  p2 2 最近の急減圧の事例
  p3 3 急減圧に要する時間の説明
  p5 4 風の強さについての説明
  p9 5 温度の説明


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